映画:『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』あらすじ・感想!ただの猫映画にあらず?感動と異色の“電気”映画!

(C)2021 STUDIOCANAL SAS - CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION

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19世紀末から20世紀にかけて、独特な猫のイラストで一世を風靡したイギリスのイラストレーター、ルイス・ウェイン。

彼の波乱万丈な人生を鮮烈に描いた伝記映画『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』が12月1日より公開されます!

かわいい猫ちゃんがメインの映画と思う事なかれ…!猫映画・伝記映画としても素晴らしい作品でした!

ポイント
・相変わらず個性的な人物がハマるベネディクト・カンバーバッチ
・伝記映画の型にとらわれないサイケデリックな演出
・かわいい猫映画だと思うと度肝を抜かれる良作!

それでは『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』をネタバレなしでレビューします。

『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』あらすじ【ネタバレなし】


上級と下級の結婚

1881年、イギリス。上流階級に生まれたルイス・ウェイン(ベネディクト・カンバーバッチ)は亡くなった父親の代わりに、一家の大黒柱として働く日々を送っている。

母親と大勢の妹を支えるために、ルイスはイラストレーターとして絵を描く一方、電気の発明で特許を取得しようとしていた。

ある日、妹たちの家庭教師エミリー(クレア・フォイ)がルイスたちの家にやってくる。泊まり込みで教えることになるエミリーだが、ルイスは家庭教師を雇う金がないと反対する。

しかしエミリーの魅力に惹かれたルイスは、最初断っていた新聞社のイラスト仕事を請け、そのお金でエミリーを引き留める。

一方のエミリーもルイスに惹かれ、2人は共通の趣味であるオペラを一緒に鑑賞する。しかし、ルイスたちの近所に暮らす貴婦人が2人の関係を周囲に言いふらしてしまう。

当時、下級の女性と上級の男性が結ばれることは世間的に批判されることが多かった。しかし1884年、ルイスとエミリーは家族の反対も押し切って結婚する。

愛するエミリーの死と猫のピーターとの出会い

ルイスとエミリーは世間体を気にせず仲睦まじく暮らしていたが、結婚から半年ほどたったころ、エミリーに末期の乳がんが見つかる。

悲しみに暮れる2人だが、ある日家の庭に一匹の子猫が迷い込んできた。彼に「ピーター」と名付けた2人はペットとして彼を迎え入れ、ルイスは猫の絵を描くようになる。

しかし、当時は写真が普及し始めた関係でイラストの仕事が減っていた。そんな中、ルイスを昔から気にかけていたイラストレイテド・ロンドンニュース社オーナーのサー・ウィリアム(トビー・ジョーンズ)は、エミリーに残された時間を共に過ごすべきだと説得する。

ルイスはエミリーを楽しませるために猫のイラストを描くと、エミリーはそのイラストをサー・ウィリアムに見せるよう説得する。

すると、サー・ウィリアムはルイスの描いた猫の絵を見て、クリスマス用の紙面に猫のイラストを使いたいと提案する。これを機に、ルイスの独特な猫のイラストは注目を集めるが、ついにエミリーがこの世を去ってしまう。

楽しげな作風に反して精神を病んでいくルイス

1891年。ルイスはエミリーを亡くした死の悲しさを埋めるように、猫の絵を描き続けていた。一方で、ルイスはイギリスで人気のイラストレーターとして注目を集め、各地で引っ張りだこの存在となっていた。

しかしルイスはエミリーの死後、次第に支離滅裂な言動や妄執にとらわれるようになる。ルイスの家族に問題が起き続ける中でも、彼はひたすら楽しげな猫の絵を描き続けるが…。

なぜ死の瀬戸際でエミリーが「どんなに悲しくても書き続けてほしい」とルイスに言い遺したのか。その本当の意味を知ることになる──。

『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』感想

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相変わらず個性的な人物がハマるベネディクト・カンバーバッチ

主人公ルイス・ウェインを演じるのは『エジソンズ・ゲーム』(19)や『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(14)にて主演を務めるベネディクト・カンバーバッチ。

クセの強いキャラを演じさせたら右に出る者はいないほど、どの作品でも強烈な印象を残す俳優のひとりです。

今作も例に漏れず、ルイス・ウェインというかなり個性派な人物を演じています。

ルイスは常に働き続け、ときにユーモアあふれ、ときに取り乱す姿は見るものを圧倒させます。今でいう「スキマ時間」を有効活用し続けた結果、両手を使って高速でイラストを描き上げるなんて技も披露していました(笑)。

ちなみに今作でルイスが絵を描くシーンは吹き替えではなく、ベネディクト・カンバーバッチ本人が行っています。

トリッキーなルイスのキャラに反して、エミリーを演じるクレア・フォイの落ち着いた様子や、病に苦しみながらもルイスの支えになろうとする縁起も必見です。

また、世間の価値観など気にせず、自分たちの価値観を大切にする強さも備えています。当時、イギリスでは下級の女性と上流階級の男性が結婚することに批判的でした。

脇を固めるキャストも豪華です。ルイスを気にかけてくれる新聞社のオーナー、サー・ウィリアムことウィリアム・イングラム卿を『裏切りのサーカス』(11)や『ハッピーエンド』(17)に出演するトビー・ジョーンズ。

ナレーションには『ファーザー』(20)『ロスト・ドーター』(21)での演技も記憶に新しいオリヴィア・コールマンが担当しています。

さらに意外な俳優がカメオ出演していたので、こちらも合わせてチェックしてみて欲しいです!マーベル映画で有名なあの人がチラッと登場します。

伝記映画の型にとらわれないサイケデリックな演出

色彩豊かなルイスの画風に反して、作中では妻の死や絵にのめり込む一方で精神を病んでいくルイスの姿も鮮烈に描いています。

その描き方がかなりサイケデリック。ルイスのトラウマや、現在の苦しみを描く手法は、悪夢ともまた違ったダークなファンタジーを見せられているかのような演出です。

原題が「The Electrical Life of Louis Wain」とあるように、もともとルイスは電気に関する特許を取ることが目標でした。イラストの仕事はあくまで生活の足しにする程度だったのです。

ゆえにルイスの奇行や支離滅裂な言動には、電気にまつわるものが多くなります。サイケデリックなルイスの妄執も、この電気にまつわる物事からきているのです。

ルイスの心境を決して悲観的に描くばかりではなく、必死に生きようとするルイスのパワーを感じられる演技や演出がとても良かったです。

可愛い猫映画だと思って観ると度肝を抜かれる良作!

エミリーを亡くしてからのルイスといえば、彼女と一緒に庭で見つけた猫のピーターだけが心の友達です。

猫の可愛さと現実の過酷さを描いた作品といえば、同じイギリス映画の『ボブという名の猫』シリーズがあります。しかし『ルイス・ウェイン』はそれとは一味違った作品になっています。

当時のイギリスにおいて猫は「ネズミ狩り」の役目を果たすために飼っていることがほとんどでした。ルイスやエミリーのように、ペットとして飼う人は稀で、貴族たちは猫を不気味に思い、犬がペットとしての市民権を得ていたのです。

しかしルイスの描く猫は滑稽で、これまで人々が抱いていた猫へのイメージを一新するほどの魅力がありました。

ルイスの絵が人気を得ると同時に、猫がペットとして飼われるようになった背景も非常にわかりやすく描かれています。

ところが、猫の人気やルイスの楽しげな画風に反して、ルイスはどんどん精神的に追い詰められていきます。家族、そして自分自身の病。借金地獄。ルイスの作風やキャラが無ければ、目をそむけたくなるほど辛いことの連続なのに、なぜルイスの描くイラストはいつも楽しい絵ばかりなのか?

そしてなぜエミリーはルイスに絵を描き続けるように言い残したのか?

その答えを気にしながら観ると、ラストの感動もまたひとしおです…!

『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』あらすじ・感想まとめ

要点まとめ
・「伝記映画は退屈そう…」という人ほど見てほしい!
・ベネディクト・カンバーバッチの個性豊かな演技
・猫映画であり伝記映画でもある良作!

以上、ここまで『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』をレビューしてきました。

個人的には猫映画としても、今年観た映画としてもベスト5に食い込むレベルでよかったです!

伝記映画としても、型にとらわれていない自由な演出が印象的でした。ルイスのことを知らなくても、彼の生き様やエミリーや猫との愛情がひしひしと伝わる良作です!

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