『リトル・フォレスト 春夏秋冬』あらすじ・ネタバレ感想!田舎→都会→田舎と渡り歩き、気づいた幸せの本質

映画『リトル・フォレスト 春夏秋冬』あらすじ・ネタバレ感想!

出典:『リトル・フォレスト 春夏秋冬』公式ページ

映画『リトル・フォレスト 春夏秋冬』は、4歳の頃から田舎に暮らし高校生になり都会に憧れ都会へと大学進学をしたものの、疲れ果てて「帰る場所」に戻ってきた1人の女性の物語。

大自然に囲まれた小さな里に暮らすことで、四季折々の風景と旬の食事と共に変わる主人公の心境の変化を美しくかつ繊細に描いた「ヒーリングストーリー」です。

原作は日本の漫画家五十嵐大介の”読んで美味しい”と話題の大人気コミック。

主演は韓国映画界で話題の女優で、韓国映画の巨匠パク・チャヌク監督の『お嬢さん』のオーディションで1500分の1の競争率を勝ち取った若手実力派女優キム・テリ

そして、キム・テリと田舎暮らしを共にする幼馴染に、日本でも人気急上昇で映画『毒戦 BELIEVER』での演技力が話題の俳優リュ・ジョンヨルと、本作で監督を務める監督イム・スルレが自ら発掘した逸材女優チン・ギジュ

さらに、もはや“安心して見ていられる女優”ムン・ソリが、キム・テリ演じるヘウォンの母親役で登場します。

ポイント
  • 日本の「読んでも美味しい」で話題の大人気漫画を映画化
  • 映画界の話題の若手女優・俳優が勢ぞろい
  • 休息」のような映画を贈りたい。。。という監督の思い

都会の生活に疲れ、あれだけ嫌がっていた「田舎」へ帰る決心をした女性ヘウォン。

都会の会社に就職するも、田舎へ戻って農業を始めた青年ジェハ、ソウルへ行くことを夢見る町の農協で働くウンスク、そして突然ヘウォンの前からいなくなったヘウォンの母。

4人の心が、自然の恵みと豊かで丁寧な暮らしで、日に日に変化していくのが描かれた『リトル・フォレスト 春夏秋冬』。

韓国の超話題作『リトル・フォレスト 春夏秋冬』を、さっそくネタバレありでレビューしていきたいと思います。

『リトル・フォレスト 春夏秋冬』作品情報

作品名 リトル・フォレスト 春夏秋冬
公開日 2019年5月17日
上映時間 103分
監督 ム・スルレ
原作 五十嵐大介
出演者 キム・テリ
リュ・ジュンヨル
ムン・ソリ
チン・ギジュ

『リトル・フォレスト 春夏秋冬』あらすじ


恋愛も就職もうまくいかず、故郷に帰ってきたヘウォン(キム・テリ)は、旧友のジェハ(リュ・ジュンヨル)とウンスク(チン・ギジュ)と共に、自ら育てた農作物を料理して食べる毎日を送っていた。

冬から春、夏、秋を過ごし再び冬を迎えて、ヘウォンは自分が故郷に戻ってきた真の理由を悟る。

そして新たな春を迎えるために前へ進もうとする。
出典:シネマトゥデイ

【ネタバレ】『リトル・フォレスト 春夏秋冬』感想レビュー

自分の力で生き抜くとは

都会の生活に疲れ果て、田舎の実家に帰ってきたヘウォン(キム・テリ)。

ですが、家に帰っても誰もいません。

オンマ(母親)は、ヘウォンが大学受験時にソウルへ出かけた時に、突然置手紙を残し家を出て行ってしまったのです。

最初は、母への嫌悪感と孤独感が一気に押し寄せ、意地でも「自分1人でも生きていく!」と決めたヘウォンですが、知らず知らずに「本当の意味での生き抜く力」を蓄えていきます。

“生き抜く力”と言っても毎日食事を作り食べる行為なわけですが、実はここに「丁寧さ」が加わることで、さらなる“生き抜く力”が備わるわけです。

そんなヘウォンは、幼い頃がからオンマ(母)の横で見つつ、体験しつつ、食べながら、「丁寧さ」と「生き抜く力」を自然に備え付けていたのでしょう。

私も2人の子を持つ母ですが、ヘウォンのような「丁寧に生き抜く力」を身につけて欲しいなぁ…と本作を観て思っています。

「見て美味しい!」手作りの素晴らしい料理の数々

とにかく『リトル・フォレスト 春夏秋冬』を観ていると、「お腹が減って料理がしたくなる」ほど四季折々の食材を丁寧に使い素晴らしい料理がたくさん出てきます。

韓国料理の枠にとらわれない、シンプルでも見栄えもよく、ですがひと手間を惜しまない料理の数々。

寒い冬に帰ってきたヘウォンは、いきなり雪の中から白菜を採り温かいスープにします。

それを美味しそうにがっつくヘウォンに、まずは見てる私達たちも笑みがこぼれます。

そこから、ヘウォンの料理の七変化が「見ても美味しい!」をたくさん見せてくれます。

白菜をフライパン広げ焼き、小麦粉を水で溶き、雪かき分生地を寝かせてすいとんを作り、また白くかわいいお花と葉を天ぷらにしたり、一番美しかった料理が紫と白の小花をパスタの上にたっぷりとかけて食べるのです!

なんとも斬新かつ見た目も美しく、「花びらって!?食べれるの!?」とその美しいパスタに釘付けでした。

もう一つの感動は、韓国の伝統菓子で米粉などで作る餅「シルト」も作っていたこと。

緑と黄色の鮮やかな餅に、上には丁寧に炊いた小豆を乗せてケーキのように盛り付ける。

できたての湯気が立っている時の映像は本当に食欲がそそりました。

他にも、キャベツとたまごの具だくさんのサンドイッチや、じゃがいもパン、そして柿の皮を綺麗に剥き干し柿に、山で栗を拾い丁寧にアクを抜き栗の甘露煮など、「自然のおやつ」ともなる常備食も登場。

どの料理もシンプルなのですがいずれも「ひと手間かけて、丁寧に…」をモットーとしています。

私も毎日料理を作る身ですが、本作『リトル・フォレスト 春夏秋冬』を観てワクワクしつつ、普段の料理に反省してしまいます。

やはり、人の心を癒すのは「美味しい料理」なのだと。

どんなに忙しくても、ほんのひと手間かけてあげたい。

ヘウォンがここまで「丁寧な料理」ができるようになったのも、やはり「母から娘への伝授」だと思います。

ですが、そんなヘウォンの母はどうして家を出てしまったのでしょうか?

母から娘への「溢れんばかりの限りない愛」

久々に実家へ帰ってきたヘウォンですが、実家には待っている人がいません。

なぜ?と思いますが、ヘウォンは4歳の頃から母と2人暮らし。

でもその母は当時大学入学前のヘウォンを1人残し、置き手紙だけ残してどこかへ行ってしまったのです。

当時は全く手紙の意味がわからなかったヘウォンも、1人で知らぬ間に四季折々の農作物で毎日食事を作り食べれる喜びを持ち、「人として自分の力で生きていく」ことができています。

全ては「母のヘウォンへの溢れんばかりの限りない愛情」があったからなのです。

ヘウォンの母は決して、身勝手に家を出たわけではなかったのです。

親として、母の努めとして、子どもに生きる力・術を伝え、辛いことや苦しいことがあっても、「ここに帰ってこれば安心できる。」と根付く場所を娘に与えたかったというヘウォンの母。

そして母はいずれ娘が里を出て行くタイミングで、自分が今までやれなかった夢を叶えるために家を出たのです。

映画の始めでは、「母はどこへ?身勝手だなあ」と思いましたが、ヘウォンの母はしっかり色々考えていたのですね。そりゃ最愛の1人娘ですから。

ヘウォンの母も、「田舎へ戻ってくるための長い旅」をしたのです。

すでに時遅しと思いつつも、チャレンジしてみたい!という全国のお母さまにヘウォン母のことを知って頂きたいと思えるほど素敵でした。

豪華な実力派キャスト陣

出演キャストは少ないながらも、インパクトがあるのはやはり実力派女優・俳優が集結したからではないでしょうか?

若手の3名は今や韓国ドラマ・映画では一目置かれている方々ばかりです。

主役のヘウォンを演じるキム・テリは、冒頭でも書きましたが韓国映画の巨匠パク・チャヌク監督の『お嬢さん』のオーディションで1500分の1の争いを見事勝ち抜き迫真の演技を見せました。

この他にドラマでは『ミスター・サンシャイン』に出演し確実に韓国を代表する女優へとなっています。

『リトル・フォレスト 春夏秋冬』では、今までに見せてこなかった最高の笑顔とユーモラスを見せており、清々しさを感じます。

そして、ヘウォンの幼馴染で幾度か迷いながらも自分の目指し信じる道を歩むジェハを、リュ・ジョンヨルが演じています。

彼はまだ出演作品数は少ないものの、様々な役柄を演じており、韓国映画界の期待の星とも言えます。

2019年に公開された『毒戦 BELIEVER』では、狂った麻薬組織を相手に冷静沈着に戦いを挑む役柄を演じています。

なんと『毒戦 BELIEVER』の撮影と並行して心優しいジェハ役を演じていたようで、同時期に全く真逆の役を演じる彼は本当に「天才」としかいいようがないほどです。

さらに、『リトル・フォレスト 春夏秋冬』でイム・スルレ監督に見出された女優チン・ギジュは、本作が初映画出演になりました。

都会ソウルに憧れる田舎の農協に勤務するウンスクを演じたチン・ギジュ。

ユーモラスな中にも、繊細で少女のような気持ちを持つウンスクを演じ、映画初出演ながらも好印象を与えました。

最後にヘウォンの母役で回想シーンに登場するのは、韓国を代表する名女優のムン・ソリ。

イム・スルレ監督の作品にはすでに3作出演していて、監督からも絶大な信頼を得ているようです。

ムン・ソリの代表作と言えば映画『オアシス』で、重度の脳性麻痺の障碍者の役を演じ国内外に衝撃を与えました。

そんな彼女が演じる「懐の大きな優しい母」の役は本当にハマり役で、素敵な女優だなぁと改めて関心しました。

このように、多種多様な俳優・女優の演技を最大限に引き立てたイム・スルレ監督も、本当に素晴らしいと思います。

『リトル・フォレスト 春夏秋冬』感想:「休息となればうれしい」ヒーリング映画!

日本でも韓国でも就職難や都会での行きづらさを痛感させられる作品が多いように思います。

ヘウォンが教員を目指しながら、コンビニでバイトする様子やジェハが就職先で上司に屁理屈を言われている場面が少し登場しますが、みんな「競争社会での疲労感」を持っています。

『リトル・フォレスト 春夏秋冬』の監督であるイム・スルレ監督は「映画を観た方々の休息になれば嬉しい」と本作への想いを述べています。

人は、どんなに傷つき失敗し、つまづいても何度でもやり直すことができる。

だから、少しでも「休息」すればいいと、悩める若者たちへのメッセージが込められています。

また、家事や育児に終われやっとの思いで自由な時間をもてる母親のみなさんへのエールも込められています。

ヘウォンの母のように、結婚が早くてやりたいことができず、うまくいかないかもしれないけど、夢だったことをやってみると人生やりたいことに遅すぎるとかないよ!という世の母親みなさまへのエールなのでは?と思います。

私はとても共感できました。

若い方だけでなく、人生に迷える全ての人にぜひ「休息してほしい」と感じさせられる内容の映画だったように思います。

『リトル・フォレスト 春夏秋冬』まとめ

以上、ここまで映画『リトル・フォレスト 春夏秋冬』についてネタバレありで紹介させていただきました。

要点まとめ
  • シンプルかつ丁寧な「手作りの料理」を見て堪能して楽しんで頂きたい。
  • 「本当の幸せとは?」「自分で生きていく力」はとても重要
  • 「休息して」初めてわかる本当の気持ちを大切に