『ル・アーヴルの靴磨き』あらすじ・ネタバレ感想!人々の優しさと、粋なハッピーエンドに心が満たされる傑作

出典:シネマモンド

フィンランドの巨匠アキ・カウリスマキ監督の傑作。

フランスのノルマンディー地域圏、ル・アーヴルの青い海のふもとで人々の優しさが生み出す、奇跡の物語。

ポイント
  • フランス、ル・アーヴルを舞台にそこで暮らす人々の人情に心あたたまる
  • アキ・カウリスマキ監督のユーモアたっぷり。クスッと笑える数々の細工
  • 名作『カサブランカ』を彷彿とさせる、粋でハッピーなエンディング

それではさっそく『ル・アーヴルの靴磨き』のレビューをしたいと思います。

『ル・アーヴルの靴磨き』作品情報

『ル・アーヴルの靴磨き』

出典:映画.com

作品名 ル・アーヴルの靴磨き
公開日 2012年4月28日
上映時間 93分
監督 アキ・カウリスマキ
脚本 アキ・カウリスマキ
出演者 アンドレ・ウィルム
カティ・オウティネン
ジャン=ピエール・ダルッサン
ブロンダン・ミゲル
エリナ・サロ
イヴリーヌ・ディディ
ピエール・エテックス

『ル・アーヴルの靴磨き』あらすじ


昔パリで暮らしていた芸術家のマルセル(アンドレ・ウィルム)は、今は港町ル・アーヴルで靴磨きをしながら生計を立てている。

彼は自分に尽くしてくれる妻(カティ・オウティネン)と愛犬ライカとの暮らしに満足していた。

だが、ある日妻が病気で入院した後、アフリカからの難民の少年と出くわし、警察に追跡されている彼をかくまうことにする。
出典:シネマトゥデイ

『ル・アーヴルの靴磨き』みどころ

『ル・アーヴルの靴磨き』みどころ

『街のあかり』などのフィンランドが誇る巨匠アキ・カウリスマキ監督によるヒューマン・ストーリー。

フランスの北西部にある港町を舞台に、毎日を必死に生きる庶民たちの生活を描くと同時にヨーロッパとは切っても切れない関係にある難民問題についても問い掛ける。

『白い花びら』でも共演したアンドレ・ウィルムとカティ・オウティネンが今回は仲むつまじい夫婦を好演。

ごくありふれた人々が紡ぎ出す、心温まる奇跡の物語が観る者の琴線に触れる。
出典:シネマトゥデイ

『ル・アーヴルの靴磨き』を視聴できる動画配信サービス

『ル・アーヴルの靴磨き』は、下記のアイコンが有効になっているビデオ・オン・デマンドにて動画視聴することができます。

なお、各ビデオ・オン・デマンドには無料期間があります。

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注意点
  • 動画の配信情報は2019年3月23日時点のモノです。
  • 動画配信ラインナップは変更される可能性もありますので、登録前に各サービスの公式ページにて必ずご確認ください。

ご覧のとおり、2019年3月23日現在はどこのビデオ・オン・デマンドでも配信開始となっておりません。

動画配信が開始になり次第、追って情報を掲載させていただきます。

【ネタバレ】『ル・アーヴルの靴磨き』感想レビュー

フィンランドの巨匠アキ・カウリスマキ監督

アキ・カウリスマキ監督は、フィンランド出身の監督です。

『過去のない男』や、最近上映された『希望のかなた』などが有名ですが、これらはフィンランドの首都ヘルシンキが舞台となり撮影された映画です。

色彩の使い方、渋い音楽などが印象的なアキ・カウリスマキ監督。

また、さらに印象的なカメラワークや、登場人物達の独特の間などは『東京物語』などで知られる小津安二郎監督の影響を受けているといわれています。

全体的にゆったりとした映像にもかかわらず、移民や人種差別などを題材にした作品も多く『ル・アーヴルの靴みがき』もまた例外ではありません。

『ル・アーヴルの靴みがき』は、そんなアキ・カウリスマキ監督がフランスで撮った二度目の作品。

のんびりとその雰囲気を楽しむこともできるけれど、見た後は現代の抱える問題にはっとさせられる。

素敵だけれど深みのある。心を豊かにしてくれる作品です。

マルセルとその周りの近所の人々

主人公マルセルは、若いころはパリで気ままな生活を送っていた元芸術家。

ル・アーヴルでは、ベトナム人のチャングと靴みがきの仕事をしています。

子供はおらず、愛犬ライカと、妻との二人暮らし。

給料も少なく、決して裕福な暮らしではないけれど、慎ましい生活にマルセルは満足気に暮らしていました。

そんなマルセルの楽しみは、仕事終わりに妻からもらったお小遣いでお酒を飲むこと。

行きつけのカフェには、ヒッピー風の若いグループなどもいて、ほどよく賑わっている様子。

仕事仲間のチャングとも合流して、なんだか少しフィンランドを思わせるアコーディオンの音楽を聴きながら、カフェのマダム、クレールも交えて語らいを楽しみます。

近所には、パン屋を営むイヴェットと、八百屋のジャン=ピエールが暮らしています。

彼らはマルセルの未払いのツケを見逃してくれたり、気楽な交流を楽しんでいました。

妻アルレッティの病気と密航者のイドリッサ

そんな誰もがうらやむ穏やかな生活に、不穏の影が見え始めます。

妻アルレッティが難病にかかり、入院してしまうのです。ショックを受けるマルセル。

時を同じくして、ル・アーヴルの港で密航者が乗ったゴンドラが発見されます。

その中にいた密航者の一人であるイドリッサは、アフリカのガボン生まれの男の子。

父親が教師で高い教育を受けていましたが、国を追われ母の働くロンドンを目指して祖父と一緒にフランスまでやってきたのでした。

イドリッサは警察の目を盗んでなんとかその場を逃げ去りますが、新聞にも掲載され追われる身となってしまいます。

そんなニュースを知ったマルセルは、妻の病気のこともあってか、どこか感傷的にその事件のことを考えていました。

そんな時、なんと偶然にもマルセルはイドリッサと接触します。

そして、マルセルはイドリッサを助けようとするのですが、そこに登場するのがモネ警視。

彼は知事からイドリッサの捜査を任されていたのです。

白いシトロエンを乗り回し、黒いハットとマントに身を包むその姿は、淡いブルーや黄色、オレンジなどを基調とした『ル・アーヴルの靴みがき』の中では異色に映ります。

厳格な物言いに鋭い瞳孔。なんだか堅物感満載のモネ警視。

マルセルはそんなモネ警視を警戒しながらも、家に転がり込んできたイドリッサを無事ロンドンへと送り届けることを決意します。

クスッと笑える。ユーモアたっぷりな数々の細工

近所の人たちやカフェの仲間の協力もあって、イドリッサをロンドンに送り届ける計画がどんどん進んでいく姿に心が温まります。

そして、ここで気になってくるのが、やっぱりあの独特なカメラワーク。

画面いっぱいに映し出される登場人物の顔は、口数も少なく、また時には無表情だったりと、なんだかぶっきらぼうな印象を受けます。

しかし、考えられた色彩や背景とうまく溶け合っていて、私たちは登場人物の視線から物語を読み取ることにすんなりと集中できるのです。

イドリッサをロンドンまで運んでくれる船を見つけたマルセル。しかし、大金が必要となりました。

そこで仲間にカフェで相談し、慈善コンサートを開こうという計画がもちあがります。

そして、起用されるのがリトル・ボブ。彼は、ル・アーヴルに住む本物のロッカーです!

コンサートで歌を披露する姿が映画の中で一曲まるまる見られるのに加えて、リトル・ボブの演技も少し見れちゃいます。

それは、ミミという奥さんと喧嘩してしまって、歌う気力を失っていたリトル・ボブに慈善コンサートで歌ってもらうために、マルセルが二人を仲直りさせるシーンです。

カフェで一人飲んでいるリトル・ボブ。彼には最初、ほとんど光が当たっていません。

「ミミに会って謝れるならなんでもするよ」

そういって、暗闇にうつむくリトル・ボブのもとにマルセルが連れてきたミミ登場!そして、二人は見つめあいます。

その瞬間、暗かった照明がぱーっと明るくなり、優雅な音楽まで流れ始めるのです。

なんともベタな演出ですが、個人的にはかなりツボでした(笑)

他にも冒頭で出てくる金髪オールバックの男が意味のわからぬままに殺されてしまい、物語と全く関係しなかったり、マルセルが靴屋の前で靴みがきをしていると、ショウウィンドウから店番がマルセルのことをじっと睨んでいたり(笑)

おまけに、映画『大人は判ってくれない』で、少年審判所から逃走する子役を演じたジャン=ピエール・レオをなんと密告者として起用したりと、細かい細工に思わすクスッとさせられます。

また、モネ警視にイドリッサを探すように命令している知事が、モネ警視とキリスト教会で密会しているようなシーンも印象的です。

直接的な表現ではありませんが、帰る場所のない密航者を捕まえ母国に強制搬送しようとしている知事が教会に通っている…。

うーん。なんだか考えさせられるシーンです。

モネ刑事の真実

イドリッサをなんとかロンドンに渡そうとするマルセルの前に、何かと現れるようになるのがモネ警視。

イドリッサを探す怖い存在に思われますが、彼ははじめから実はイドリッサをかばっていたのです。

もちろん。マルセルがイドリッサをかくまっていることも知っていました。

しかし、マルセルにはいつも直接そのことを伝えずに、忠告するまでにとどめています。

そしてモネ警視には、マルセル行きつけのカフェのマダムクレールとの間にある過去がありました。

それは、クレールの旦那さんを逮捕したという過去です。

また、彼は警視の仕事についても「嫌われる仕事だ」と言っているシーンもあります。

淡々とした口調ではありますが、心を痛めていたに違いありません。

マルセルの家に突然現れるシーンでは、警察が調査に来るから早くイドリッサを逃がせと言わんばかりに「荷物を早く手放せ」と、モネ警視特有のやり方でマルセルに忠告しています。

最後に船に乗ったイドリッサが隠れていた扉をモネ警視が開けてしまうシーンも最高です。

イドリッサを数秒見つめるモネ警視。そして扉をばたんとしめると、その上に座り込んでしまうのです。

警察がやってきて「どいてください」と言ってもどきません。

そしてモネ警視の協力も加わって、イドリッサを乗せた船は無事、ロンドンへと向かっていったのです。

素晴らしいハッピーエンディング!

粋なモネ警視とマルセルの関係が、まるで『カサブランカ』のルノー署長とリックのようですね。

そして、さらに奇跡が起こります。

イドリッサを送り届けたマルセルが妻の元にお見舞いに行くと、病室に妻の姿がありません。

困惑するマルセル。一瞬あの不穏がまた蘇ります。看護師に言われるままに医師のいる診断室へ。

すると、なんとそこには黄色いワンピースを着た妻アルレッティの元気な姿が!

医師たちも口々に「奇跡だ!」と言って驚いています。

マルセル達のイドリッサを助ける心が、またひとつ奇跡を生み出したのです。

『ル・アーヴルの靴磨き』まとめ

以上、ここまで『ル・アーヴルの靴磨き』の感想を述べさせていただきました。

要点まとめ
  • 心が幸せで満たされる
  • 決して派手な映画ではないけれど味があって奥深い