『私の帰る場所』ネタバレあらすじ・感想!アメリカのホームレス問題を独自のアプローチで訴える

私の帰る場所

出典:Netflix

2021年11月にNetflixオリジナルドキュメンタリー『私の帰る場所』が配信されました。

40分の短編作品ですが、アメリカで社会問題となっているホームレスの増加に対して、独自の演出やアプローチで問題提議を行っています。

Netflixオリジナルのドキュメンタリーは一風変わった作品が多い中で、本作も重厚な社会派ドキュメンタリーとは少し異なる様子を見せていました。

ポイント
・社会派らしくない独自の演出
・他人の問題を自分に置き換えて見れる作品
・ホームレスになってしまった人たちの様々な理由を捉える

それでは『私の帰る場所』をレビューします。

『私の帰る場所』あらすじ【ネタバレあり】


ホームレスに関する非常事態宣言が出されたアメリカ

私の帰る場所

出典:Netflix

本作はロサンゼルス、サンフランシスコ、シアトルを拠点に、2017〜2020年に撮影されたドキュメンタリー。この3都市ではホームレスに関する非常事態宣言が出されており、深刻な社会問題となっている。

作品の構成は多くのホームレスとなった人々を撮影し、「提携エントリープログラム」と称した支援のもと、様々な質問が行われる。中には込み入った質問も飛び出すが、それもあくまで彼ら・彼女らの実態を把握して支援するため。

しかし、多くの人たちが個人的な質問をされると涙ながらに答える。彼らがホームレスになってしまったのは、病や障害、支えてくれる家族との断絶など、自分ひとりの力ではどうにもならない問題も数多くあった。

矛盾してしまう支援

私の帰る場所

出典:Netflix

一方で、ホームレスに対する生活支援を受ければ、それですべてが解決するわけではない。住む家を提供してもらえても、仕事がないため家賃を支払えず、また路上に戻るケースや、家賃を保証してもらえても食費が賄えないなど、不完全な支援システムも垣間見えた。

あるホームレスの女性は「自立を目指すと、状況が緩やかに悪化していく」と話す。

別のホームレスの男性は、恋人と一緒になりたいために職と住める家を探す。また別の若い女性のホームレスは妊娠しており、家族の協力を得ようとするがうまくいかない。

子どもを連れている女性は過去にパートナーからストーキングを受けた上に、乱暴されて妊娠した過去があった。自宅にいるのが危険になった女性はホテルに避難し、NPOに申請をするが許可が下りず、そのまま家を失ってしまう。子どもを連れたままホームレスになってしまったのだ。

ホームレスの支援に反対する人たち

問題は支援だけではない。地域の人々からの反発や警察からの強制退去などである。

ホームレスのためのシェルターを設置しようとすると、近隣住民から反対運動を受ける。彼らの大半はホームレスは皆犯罪者や薬物乱用者など、危険な人ばかりだと思い込んでいる。

さらにホームレスが集まっている盆地には、突如警官が現れ「危険物がある可能性」を訴えるとホームレスを強制退去させる。再び行き場を失うホームレスたちに対して、都市部ではまだまだ支援が行き届いていないと訴える人々。

そしてコロナの影響もあって、今後は「支援をするなら異次元・劇的な変化を起こさなければならない」と会議で話される。しかし現状では毎晩50万人のアメリカ人がホームレスを経験している。

『私の帰る場所』感想

アメリカの社会問題を独自の演出で描く

『私の帰る場所』はアメリカで深刻化しているホームレス問題を捉えたドキュメンタリーですが、シリアスな社会派作品というよりは、実際にホームレスになってしまった人々の日常や過去を捉えたドラマ要素が強い作品となっています。

作中では「家」をテーマにした既存曲が使用されたり、窓の奥に見える暖かく明るい家に暮らす人たちとの対比演出も印象的です。

むずかしい説明はあまりなく、あくまでホームレスになった人たちの生活と実情を赤裸々に映し出しています。

誰しもホームレスになる可能性がある

今作で特に強く感じたのが、ホームレスの人々を糾弾する”反対派”の存在です。彼らはホームレスを薬物常用者や犯罪者だと思い、家がないのも自業自得といわんばかりの発言をします。
確かにそうした人もいるかもしれませんし、2017年に公開された映画『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』の主人公ジェームズも薬物中毒者(作中では断薬中)でした。

しかし彼が薬物に手を出したのは、家族問題で自分の居場所がなく追い詰められたためです。

こうした「自分ではどうにもできない問題」に苦しんで、家を失う人もいることを『私が帰る場所』では教えてくれます。

つまり、作中でホームレスを糾弾していた人や、私たちにも、何かのきっかけでホームレスになる可能性があることもこの映画で描かれているのです。

他人事を自分事のように捉える構成

上記で書いたホームレスを糾弾する人たちは、あくまで固定観念だけで話しているように感じられます。

この映画では、様々な理由で家を無くした人たちの生活に肉薄しているため、彼らの現状を知り、自分事のように感じさせてくれる構成が見事です。

「ホームレス」の問題に限らず、意識しなくてはいけないけど、いまいち問題の大きさがイメージしずらいときこそ、自分を他人と置き換えて考えてみることの大切さを教えてくれる作品でした。

『私の帰る場所』あらすじ・感想まとめ

要点まとめ
・社会派らしくない独自の演出が見どころ
・ホームレスを支援する人と、反対する人の対比が強烈
・誰もがホームレスになる可能性を、自分事として見れる作品

以上、ここまで『私の帰る場所』をレビューしてきました。

ヤマダマイ

40分という短い作品ですが、アメリカのホームレス問題の実態をはじめ、どんな人たちが支援し、どんな人たちが抗議しているのかよくわかる構成となっています。今回の問題をよく知らない人でも理解しやすい内容となっていました。
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