2021年5月14日(金)に公開される、フランスのヒューマンドラマ『海辺の家族たち』の見どころをネタバレなしでご紹介!
本作は寂れてたマルセイユの小さな港町を舞台に、3兄妹の目線から社会問題や移民について、優しく穏やかな目線で描いた群像劇でもあります。
監督は「フランスのケン・ローチ」とも称されるロベール・ゲディギャン。
監督の過去作品にも出演したキャストが勢ぞろいするなど、40年近い監督人生の集大成として生まれた本作の見どころを解説していきます!
- 監督の故郷であるマルセイユの港町が素敵
- 社会問題を身近な目線で優しく描く
- 見る世代によって感じ方が大きく変わるドラマ要素
それでは『海辺の家族たち』をネタバレなしでレビューします。
目次
映画『海辺の家族たち』作品情報
作品名 | 海辺の家族たち |
公開日 | 2021年5月14日 |
上映時間 | 107分 |
監督 | ロベール・ゲディギャン |
脚本 | ロベール・ゲディギャン |
出演者 | アリアンヌ・アスカリッド ジャン=ピエール・ダルッサン ジェラール・メイラン ジャック・ブーデ アナイス・ドゥムースティエ |
『海辺の家族たち』あらすじ【ネタバレなし】
父が倒れたことで集まった3兄妹
フランス、マルセイユの小さな港町。
パリで女優として活動するアンジェル(アリアンヌ・アスカリッド)は、父が倒れたと聞きつけ、20年ぶりに故郷であるこの町に帰郷します。
アンジェルのほかに、次男のジョゼフ(ジャン=ピエール・ダルッサン)は若い婚約者・ヴェランジェール(アナイス・ドゥムースティエ)に愛想をつかされていながら、一緒に父の様子を見に帰省します。
長男のアルマン(ジェラール・メイラン)は父のレストランを継いで、1人町に残っていました。
病に倒れた父は意識があるものの、動くことも話すこともできない状態に。
父の今後について話し合う3兄妹ですが、それぞれが問題を抱えており、思うように事態は進みません。
アンジェルは過去にこの町で起きた「ある悲劇」のせいで、家族にも心を開くことができずにいました。
アルマンたちが暮らす近所に住む幼馴染のマルセルとその妻は、家賃を上げられたことで住む家を失う寸前。
夫婦を心配して、町を出ていた息子が金銭の支援をしたいと申し出るも、息子から施しは受けられないと断り続けます。
さらにこの町では、ときおり移民がボートで港に流れ着くことが問題となっており、常に憲兵が町を見廻りしていました。
静かな港町に現れた3人の移民
せっかく集まった3兄妹ですが、なかなか距離は縮められずにいました。
さらにジョゼフの婚約者・ヴェランジェールはマルタン夫婦の息子・イヴァンに好意を寄せるように…。
ほかにも港町で漁師として暮らす青年バンジャマン(ロバンソン・ステヴナン)は、年の離れたアンジェルに猛烈なアタックを続けます。
アルマンは人が減って整備が行き届かなくなった土地を、一人で整えていました。
あるとき、人が乗っていないボートが港に流れ着き、憲兵は移民がすでに町に隠れているのではないかと捜索を続けます。
そんな中、3兄妹にある悲劇が起きてしまい…。
その後、アルマンたちが土地の整備をしていると、移民の3姉弟が林に身を潜めているのを発見します。
言葉が全く通じない中、なんとか3姉弟を介抱するアルマンたち。
親はすでに憲兵に捕まっているか、死んでいるかもしれない中、アルマンたちは3姉弟の世話を続けるか、憲兵に引き渡すかを決断しなくてはならなくなりーー。
映画『海辺の家族たち』感想
監督の故郷であるマルセイユの港町が素敵
監督のロベール・ゲディギャンがマルセイユを舞台にするのは『海辺の家族たち』がはじめてではありません。
むしろ、これまでの作品のほとんどがマルセイユやその周辺を舞台にしています。
監督の故郷ということもあり、一貫してこの地を舞台にすることで、独特の制作スタイルを確立しているのです。
今作『海辺の家族たち』の舞台となる港町は、以前は観光地として栄えていたものの、今ではすっかり寂れてしまっています。
住人も3兄妹と近所に住む老夫婦以外、ほとんど登場しません。
ヤマダマイ
港の周囲は小高い山に囲まれていることもあり、閉鎖感さえ感じられる場所です。
しかし山に沿って立ち並ぶ家は素敵なデザインが多く、3兄妹の父が住む家のテラスから見渡す景色も圧巻。
なによりサントラが一切ないことで、終始風や波の音を聴くことができるのです。
ヤマダマイ
社会問題を身近な目線で優しく描く
社会問題をテーマにした作品と聞くと、どうしてもどこか説教臭かったり、小難しい印象を持ってしまいがち…。
しかし『海辺の家族たち』は小難しい演出はあまりなく、あくまで故郷に帰ってきた兄妹たちの目線から労働者や移民の問題を描いていました。
また「マルセイユの港町」だけに舞台を限定することで、異国の地でありながら、どこか他人事と思えないように見えてくる演出も印象的です。
ヤマダマイ
さらに移民と聞くと、同時にテロリストの問題を考える人もいるかもしれません。
事実、移民に紛れてテロリストが不法入国することを防ぐため、本作に登場する憲兵は血眼になって移民を探しています。
しかし、そんなシリアスな問題にも、次男のジョゼフは「テロリストなら入国に失敗しないだろ?=ボートだけ港に流れ着くことはない」など、皮肉交じりに冗談を飛ばします。
ヤマダマイ
見る世代によって感じ方が変わるドラマ要素
本作の主人公となる3兄妹はおそらく全員50代を超えており、一方で彼らを取り巻く登場人物には若者もいます。
例えばジョゼフの婚約者や、近所に住むマルタンの息子は20代後半から30代前半といったところ。
こうしたキャラクターごとに世代が異なることで、本作では印象的なジェネレーションギャップが発生します。
例えばマルタン夫婦が家賃を上げられたことで家に住み続けられなくなると、息子は積極的に家賃の支払いを肩代わりしたいと提案します。
ヤマダマイ
しかし、老夫婦は頑なに息子の提案を拒否。
別に息子と仲が悪いわけではありません。
あくまで「息子の施しを受ける」自分が許せないのです。
ヤマダマイ
ほかにも、アンジェルに好意を寄せる青年・バンジャマンは、お互いの年の差なんて関係ないと言わんばかりに熱烈なアプローチを続けます。
しかし、アンジェルは「まだ若いのだから、自分の人生をそんなすぐに決めないで」と彼を拒むのです。
年の離れた恋愛に対しても、年代によって受け取り方も異なるのかもしれせん。
ヤマダマイ
映画『海辺の家族たち』あらすじ・感想まとめ
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予告編解禁
\『#海辺の家族たち』⛵
〈フランスの #ケン・ローチ〉と称えられる #ロベール・ゲディギャン 監督の集大成!
マルセイユ近郊の小さな港町を舞台に
人生を変える出会いを描く忘れられない感動作✨5/14(金)より#キノシネマ 他全国順次公開📽
— キノシネマ (@kinocinema_jp) March 18, 2021
- 鑑賞した世代ごとの感想を聞きたくなるドラマ要素
- 波や風の音に優しく包まれるロケーションや演出
- 「社会派映画は難しそう…」という人にこそ勧めたい作品
以上、ここまで『海辺の家族たち』をレビューしてきました。
社会派映画が苦手な人にもおすすめできる『海辺の家族たち』には、監督ならではの優しいドラマの描き方が印象的でした。
特に移民の子どもが見つかってからラストにかけては、「自分が同じ立場ならどうするだろう」と考えずにはいられない展開が続きます。
シンプルでありながら、希望に満ち溢れたラストは記憶に残ることでしょう!
若い世代と年配の世代でそれぞれ意見を聞いてみたい、素敵なヒューマンドラマでした。