『ラストレシピ〜麒麟の舌の記憶〜』あらすじ・ネタバレ感想!愛を知らない天才料理人が起こした奇跡

出典:映画.com

1930年代、天皇の料理番が考案した幻のフルコース・メニュー。

その再現に挑むのは、愛を知らない天才料理人。その味が、失われた時をつなぐ…。

ポイント
  • 切なくて、あたたかくて泣ける!
  • 大人のおとぎ話のようなストーリー
  • 日本アカデミー賞受賞コンビの初タッグ!

それではさっそく『ラストレシピ〜麒麟の舌の記憶〜』をレビューしたいと思います。

『ラストレシピ〜麒麟の舌の記憶〜』作品情報

作品名 ラストレシピ〜麒麟の舌の記憶〜
公開日 2017年11月3日
上映時間 126分
監督 滝田洋二郎
脚本 林民夫
原作 田中経一
出演者 二宮和也
西島秀俊
綾野剛
伊川東吾
笈田ヨシ
竹野内豊
宮崎あおい
音楽 菅野祐悟

『ラストレシピ〜麒麟の舌の記憶〜』あらすじ


佐々木充(二宮和也)は、「最期の料理人」として顧客の「人生最後に食べたい料理」を創作して収入を得ていた。

絶対味覚を持つ天才でありながらも、彼は料理への熱い思いを忘れかけていた。

そんな折、彼のもとにかつて天皇陛下の料理番だった山形直太朗(西島秀俊)が作り上げたという、“大日本帝国食菜全席”のレシピを再現する仕事が舞い込む。
出典:シネマトゥデイ

『ラストレシピ〜麒麟の舌の記憶〜』みどころ

『ラストレシピ〜麒麟の舌の記憶〜』みどころ

『おくりびと』などの滝田洋二郎監督と『母と暮せば』などの二宮和也が初タッグを組み、幻のレシピを追い求める男の姿を描く感動作。

“麒麟の舌”と呼ばれる究極の味覚を持つ料理人が、戦時下の混乱の中で消失した伝説の“料理全席”を追い求めるうちに、約70年前のある謎に迫る姿を描写する。

西島秀俊、宮崎あおい、綾野剛、竹野内豊といったキャスト陣が共演。

異なる時代に生きた二人の天才料理人の宿命に息をのむ。
出典:シネマトゥデイ

『ラストレシピ〜麒麟の舌の記憶〜』を視聴できる動画配信サービス

『ラストレシピ〜麒麟の舌の記憶〜』は、下記のアイコンが有効になっているビデオ・オン・デマンドにて動画視聴することができます。

なお、各ビデオ・オン・デマンドには無料期間があります。

u-next
注意点
  • 動画の配信情報は2019年3月23日時点のモノです。
  • 動画配信ラインナップは変更される可能性もありますので、登録前に各サービスの公式ページにて必ずご確認ください。

ご覧のとおり、2019年3月23日現在はどこのビデオ・オン・デマンドでも配信開始となっておりません。

動画配信が開始になり次第、追って情報を掲載させていただきます。

【ネタバレ】『ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~』感想レビュー

麒麟の舌をもつ「最期の料理人」

依頼人の“人生の最後に食べたい料理”を再現して高額の報酬を得る「最期の料理人」佐々木充(二宮和也)。

佐々木はすべての味を記憶し再現するという絶対味覚をもった天才料理人です。

その腕も才能も確かで、かつては理想の創作料理を追及して起業し自分の店を持っていました。

最高の食材をいかして世界中の食通をうならせるほどのこだわり。

しかし、料理へこだわりが強すぎるがために仕上がりに納得がいかないときは、佐々木の料理を食べにきた客たちに食事を提供することなく帰らせてしまうなどの暴挙ともいえる行動に出たりしました。

従業員たちはそんな佐々木についていけず辞めてしまい、客も来なくなり、結果として経営は失敗。多額の借金を抱えることとなります。

佐々木は幼少期を施設で過ごしていました。すずらん園という、その施設でともに育った柳沢健(綾野剛)という男がいます。

15歳のころ2人で施設を抜け出し、佐々木が経営していた料理店でも従業員として働いていた、そんな柳沢からの電話で物語は始まります。

育ての親である園長の葬儀に顔も出さない佐々木に対して、柳沢は怒り心頭で電話をしたのです。

そんなある日、中国人の楊清明(笈田ヨシ)という男から佐々木のもとに仕事の依頼がきます。チケットを用意するから北京まで来てほしい、報酬は300万出すと言われて佐々木は楊を訪ねました。

そして満州国で日本人の料理人・山形直太郎(西島秀俊)が考案した、人類の宝物のような伝説のフルコース「大日本帝国食菜全席」のレシピを探し出して再現してほしいと依頼されます。

電話で言っていた300万は頭金で成功報酬は5,000万とまで言われて、うさんくさいと思いつつも引き受けてしまう佐々木。

まずは宮内庁の大膳課を訪ねろと促され帰国しました。

天皇の料理番をしていた山形直太郎の軌跡をたどるため言われたとおりにしましたが、宮内庁の資料には退職までの記録しかありませんでした。

得られたのは山形と同じ日に入所した辰巳金太郎(真田五郎)という男の情報のみ。

なにかの手掛かりになるかもしれない、と辰巳の元・割烹辰巳という料理店を訪ねると「主人はもう15年も前に亡くなった」と言われてまたも行き止まり。

かと思いきや、やたら豚の角煮を勧めてくるおかみさんいわく、豚の角煮は山形の得意料理を辰巳が引き継いだものだったといいます。

そして、おしゃべりなおかみさんから山形には千鶴(宮崎あおい)という妻がいたこと、満州国から山形と千鶴は戻らず山形の助手として同行した蒲田(西畑大吾)という男だけが戻ったということを知らされました。

割烹辰巳のおかみさんの言葉から次は蒲田正太郎を訪ねると「レシピはここにはない」と言われてしまい、そのレシピがどうやって生まれたかと話すことしかできないと告げられます。

もう70年も前の話、満州という新しい国に大きな希望を抱いていた蒲田少年の話が始まります。

山形という男

1933年、満州。山形と千鶴、助手の蒲田は彼らを満州へ招いた満州国ハルビン関東軍司令部大佐・三宅太蔵(竹野内豊)に「世界が驚くような料理を作ってほしい」と依頼されます。

満願全席やルイ王朝の料理をはるかに凌駕する料理を日本人の手で作り上げたい、そのためには腕のいい料理人が必要であると、若いころからパリで修業し天皇の料理番をしていた山形に白羽の矢が立った経緯を話しました。

大日本食菜全席は極秘任務として、日本軍の食堂の厨房の奥にある、軍の管理する厨房で最高の環境を用意された状況で創作するよう命じられます。

案内された厨房には、不慣れな地での食材集めなどに困らないように助けとして用意された満州の料理人・楊清明がいました。

翡翠冬瓜の水晶煮をふるまう楊。山形はじっくりと味わい、席を立って冬瓜を調理し始めます。初めて入った厨房でその場にある食材をもちいて、楊が今作った料理の味を再現してみせたのです。

「僕はね、一度食べた味は絶対に忘れないんだ」と。

大日本食菜全席のレシピを作るために山形、楊、蒲田、千鶴の奮闘が始まります。

あるとき楊は、春巻が得意だと言って山形に差し出します。しかし山形はレシピに必要なのはそういうことではない、と言い蒲田に好きな料理を問いました。

蒲田の答えは、鮎の塩焼き。それを受けて鮎を三枚におろして骨を素揚げにし、スイカのソースを作って、春巻の皮で包みました。

僕たちがこれからやろうとしていることは、これだと。

個人が得意な料理をレシピにするのではなく満州と日本、国を超えて融合するための創作料理をつくるのだと言いました。

そして、それが山形のレシピの記念すべき第一号となるのです。

ほかにもキャビアと素麺の天の川風、スッポンのコンソメドゥーブルなど最高の素材をいかした料理を完成させ、三宅大佐に振る舞いました。

その多種多様な料理に素晴らしいとの評価を得て、自分たちの目指す方法は間違っていなかったと喜ぶ山形でした。

しかし理想を追い求めるがあまりに山形は楊や蒲田に厳しくあたることもあり、自分自身にさえストイックになっていきます。

ある時から千鶴は山形の料理しているところを写真におさめるようになりました。

相変わらずこだわりの強い山形は、レシピを書いては思うようにいかないと紙をくしゃくしゃにしてしまいます。

千鶴はその書き損じを手に取り広げ、文字だけのレシピに自分の撮った写真をつけることを提案しました。

写真つきのレシピを見ながら、山形の手を借りずに料理をする楊と蒲田。

わかりやすいと口々に言い、ちゃんと料理を再現することが出来たのです。こうして日本の四季を取り入れて4部構成とした112品目のレシピ作りは先へと進んでいきます。

なにかを成し遂げるためには、なにかを犠牲にしなければならない

やっと完成した112品目。

すべてそろったところで候補を書きだしただけに過ぎないからダメなものは作り直していこうと言う山形。

季節は冬になっていました。山形はおなかの大きくなった千鶴を置いて、2~3日で戻ると食材探しへと向かいます。

憑りつかれたようにレシピ作りに固執していく、その背中を見送りながら「なにかを成し遂げるためには、なにかを犠牲にしなければならない」と千鶴は言いました。

そんな千鶴の思いを知ってか知らずか、山形は側で支え続ける千鶴にも辛く当たるようになっていきます。そしてある夜。

少し口論になった場面で、千鶴は「あなたは民族を融合する料理を作りたいのに、目の前にいる楊や蒲田さえ信用できない。自分以外の誰も信用できない。自分以外の誰も信用できない人間に、世界中の人が喜ぶ料理なんか作れるはずがない。」と山形を諌めました。

その出来事のあと、時間の経過の描写がないのでどれくらい経っているかはわからないけど翌日とかそれくらいなのでしょうか。

楊や蒲田が厨房の掃除を懸命にする様子を微笑みながら眺める山形。そこへ千鶴が出産した知らせが舞い込みます。

生まれたのは元気な女の子。しかし破水と同時に大量の出血をして千鶴は命を落としてしまいました。

悲しみに暮れる人々のなか、山形は厨房で肉の下ごしらえをしていました。

結婚の申し込みをしたときに作ったカツを作っていたのです。いつでも再現できるのに、一度も作ってやれなかった。

その思いに揺さぶられ、レシピ作りや周りの人たちへの態度が少しずつ変わっていきます。

すべては偽り…?

蒲田の昔話は「すべては偽りとも知らずに」で区切られます。

あとは、この人に聞きなさいと佐々木にメモを渡します。

この人、というのはハルビンのスラバホテルで支配人をしているロシア人のダビットという男でした。

山形と交流があったのは父のヨーゼフであり、自分は山形の娘・幸と仲が良かったのだと昔話を始めます。

そしてダビットも、すべては偽りだったと言いました。

大日本帝国食菜全席は、天皇陛下が満州国を訪問した際に振る舞われるものとして山形に創作を依頼されたものですが、裏に隠された目的があったのです。

それは天皇陛下に振る舞う料理に毒を盛って、中国人助手である楊にその罪を着せるというものでした。

すべては満州国の独立を阻止するために。そして日本人助手の蒲田は、その一連を監視する謂わば山形の見張り役でした。

日本軍の企みを知った山形は、楊を助けるために当時横行していたスパイの疑いをかけて厨房を追い出すかたちで逃がします。

しかしそんなことをしても助手に中国人がいたという事実があるため、楊を犯人に仕立て上げることに変わりはないと、楊の命は日本軍に握られているのだと三宅大佐に通告されてしまいました。

レシピがある限りこの謀略は止められない。そう気付いた山形は、製本したレシピの他にもうひとつ、山形の書き損じたものを千鶴が保管していたレシピの数々を元に書き直し、写真を貼って作りました。

出来上がった大事なレシピはホテル支配人のヨーゼフに、いつの日か楊の手元に届くようにして欲しいと託されます。

そしていよいよ大日本帝国食菜全席の料理を披露する日。要人たちの集まるその席で、山形はレシピに火をつけ燃やします。

当然ながら三宅大佐の逆鱗に触れ、山形は銃殺されてしまいました。

大切なものは、すぐ近くにあった

終戦後に楊は山形の娘である幸を探し出して、ヨーゼフから預かったレシピを渡します。

幸は山形がこの世を去ってから、満州の日本軍の厨房で働いていた鈴木という男に育てられました。

そして成長した幸は、料理人をしている夫と死別し3歳になる息子とともに暮らしていました。

楊から受け取った、想いの詰まったレシピをもとに幸は飲食店を開店します。山形が果たせなかった理想をつなぐように、楊や蒲田たちも協力しました。

しかし開店初日、隣の店から出火して幸の店にも火がうつってしまいます。

店内にあるレシピを取りに燃え盛る火の中へ飛び込んでいった幸は、焼死しました。

このとき残された一人息子、この子こそが佐々木充だったのです。

充を引き取ったのは、幸と兄弟のように過ごしてきた鈴木の息子である太一でした。

この男は孤児やわけあって親と一緒に暮らせない子供たちを預かり育てる施設を運営していました。

そう。映画の冒頭の葬儀は、この施設の園長・太一の葬儀。

育ての親である園長の葬儀に顔も出さなかった充に、大切なレシピをただ渡すだけではいけないと案じた柳沢たちが計画を立ててレシピ探しをさせたのです。

山形直太郎の孫である佐々木充を、救うために。

レシピの最後には幸の手によって、充の好物であるカツサンドが書き加えられていました。

出てくる料理がおいしそう!

国と国の融合を目指している創作料理のレシピということで、だいぶ独創的なものも多いのですが映画館で観ているときにうっかりお腹が鳴った料理もありました。

ちなみに映画館では2度観たんですけど2度とも見事に鳴りました。

途中でトイレに行きたくなるのが嫌で、鑑賞前も鑑賞中も飲み食いしないのが悪いんですけどね!

ひとつめはスラバホテルの支配人、ダビットのもとを訪ねたときに佐々木が聞いたエピソードに出てくるロールキャベツ。

ロシアの伝統料理であるそれの中に餅を入れ、だしを使ったスープで作るものなんですがこれが本当においしそうで!私も食べて「フクースナ!」って言いたくなります。

ふたつめは、ところどころ挟んでくる、柳沢が雇われ店長をしている中華料理店で作るチャーハン。

昼間からああいうお店でビールを飲みながらチャーハン食べるとか最高かよ…ってなります。

そしてもうひとつ、充の好物であるカツサンド。幸の思い出の料理であり、充の大好物でもある料理。

物語の最後のほうに充が食べるシーンがあるんですが、感情込み込みで「うまい」です。

お家でこの映画を観る人はカツサンドを買ってきてから観ましょう、そうしましょう!

『ラストレシピ〜麒麟の舌の記憶〜』まとめ

以上、ここまで『ラストレシピ〜麒麟の舌の記憶〜』について感想を述べさせていただきました。

要点まとめ
  • 異なる時代をつなぐ人々の想いが詰まったレシピの、あたたかなストーリー
  • 金だけのために動いていた佐々木と、ラストの佐々木の表情の違いを見て欲しい
  • 各所ではミステリーと称されている今作ですが私は大人のおとぎ話だと思います