2017年に発表され、第90回アカデミー賞では作品賞をはじめ5部門にノミネートされた青春映画『レディ・バード』。
ちょっと痛い女子高生が送る青春の輝きと葛藤を、母と娘の関係にフィーチャーしながら描いた作品です。
第92回アカデミー賞で6部門にノミネートされ、衣装デザイン賞で受賞を果たした映画『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』の監督であるグレタ・ガーウィグと主演のシアーシャ・ローナンが初めてタッグを組んだ作品でもあります。
今回はそんな大注目の監督と女優が手がけた『レディ・バード』をネタバレありでご紹介します。
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目次
『レディ・バード』作品情報
作品名 | レディ・バード |
公開日 | 2018年6月1日 |
上映時間 | 93分 |
監督 | グレタ・ガーウィグ |
脚本 | グレタ・ガーウィグ |
出演者 | シアーシャ・ローナン ローリー・メトカーフ トレイシー・レッツ ルーカス・ヘッジズ ティモシー・シャラメ ビーニー・フェルドスタイン スティーヴン・ヘンダーソン ロイス・スミス オデイア・ラッシュ ジョーダン・ロドリゲス キャスリン・ニュートン ジェイク・マクドーマン ローラ・マラーノ ダニエル・マクドナルド マリエル・スコット |
音楽 | ジョン・ブライオン |
【ネタバレ】『レディ・バード』あらすじ
女子高生、レディ・バード
舞台はカリフォルニア州・サクラメント。
17歳の女子高生であるクリスティン(シアーシャ・ローナン)は自分の名前が気に入らないと言って、自らを“レディ・バード”と呼んでいます。
レディ・バードは生まれ育った田舎町から飛びだすことを夢見ていました。
カトリック系の高校に通っている彼女は、受験を控えた最上級生。
ニューヨークの大学に進学したいと考えていますが、レディ・バードの母(ローリー・メトカーフ)は地元の大学で十分だといって聞く耳を持たず、口論になってしまいます。
かくいうレディ・バードは田舎での平凡な暮らしを変えたいと思うものの、どうしたらいいのかわからずにいました。
母にニューヨークの大学への進学を反対された彼女は、父(トレイシー・レッツ)に相談。
助成金の申請手続きに協力してほしいとお願いします。
ある日、シスターの後押しもあって親友のジュリー(ビーニー・フェルドスタイン)と共に学内のミュージカルのオーディションを受けたレディ・バードは見事合格。
その後、オーディションで知り合った青年・ダニー(ルーカス・ヘッジズ)が気になるレディ・バードは、積極的にアピールし、ついにキスをします。
ハッピーな気持ちで帰路につくレディ・バードでしたが、帰宅するなり母が叱りつけてきました。
理由は部屋が散らかっていたからでした。
父が失業したことを告げた後、子供がだらしないと父の印象も悪くなって就職が難しくなるという母に彼女はうんざりしてしまいます。
レディ・バードは学校での進路指導でも地元の大学への進学を勧められました。
そもそも内申を上げないと進学が難しいといわれ、また気が重くなってしまいます。
レディ・バードの憧れと現実
レディ・バードは順調にダニーとの仲を深めていました。
ある夜、2人で星空を見上げているとき、レディ・バードは自ら「胸を触っていいよ」といいます。
ダニーは大切な人だから汚したくないと伝えたうえで、「愛してる」と囁きました。
彼女はその言葉に感動し、「愛してる」と返します。
感謝祭の日にはダニーに誘われ、ダニーの叔母さんの家に行くことになりました。
感謝祭を家族と過ごさないなんて親不孝者だと母は怒りましたが、ダニーが迎えに来てくれたので自宅を出ます。
ダニーの叔母さんの家は、レディ・バードがずっと憧れていたサクラメントの高級住宅街にあるお屋敷でした。
夢のようなひと時を過ごして帰宅すると、また母のお小言が始まってしまいました。
1人で家の外にいると兄の彼女(マリエル・スコット)がやって来て、レディ・バードの母のことを寛容な人だと評価し、彼女を励まします。
感謝祭のイベントでトイレの待機列が長くて待ちきれなかったレディ・バードは、ジュリーを連れて空いていた男子トイレに入りました。
そこで、ダニーが男子生徒とキスをしているところを目撃してしまい、慌ててその場を離れるのでした。
後日、レディ・バードは母に命じられて始めたアルバイト先で、ある青年を見かけます。
それは感謝祭のイベントに出演していたバンドの青年でした。
その青年のことが気になって仕方ないレディ・バードはついに話しかけ、カイル(ティモシー・シャラメ)という名前を聞き出します。
そんなある日、バイト先にダニーがやって来ました。
ダニーは先日のトイレで見たことを誰にも言わないでほしいといって、同性愛者であることが恥ずかしいと泣きだしてしまいます。
レディ・バードはダニーの苦悩を知ってそっと抱きしめ、誰にも言わないことを約束しました。
恋に恋するレディ・バード
カイルのことが気になるレディ・バードは、クラスの中心的な存在でカイルとも親しいジェナ(オデイア・ラッシュ)と仲良くなります。
ジェナと行動することが増えた彼女から、親友だったジュリーは離れていきました。
レディ・バードはしばらくしてカイルと愛しあうようになり、激しくキスをされて応じていましたが、経験がないことを伝えます。
すると、カイルも経験がないといい、レディ・バードは安心して結ばれました。
一方、ジェナとは将来について語り合います。
ニューヨークの大学に進学して町を飛び出したいレディ・バードとは違って、ジェナはこの町で母親になりたいと言いました。
ある日、学内で開催されたイベントで問題発言をしてしまったレディ・バードは停学処分を受けてしまいます。
家に帰れば相変わらず母と口論ばかりで、打ちのめされていくのでした。
そんな中、カイルとの関係にも亀裂が入ります。
お互いに初体験だと思っていましたが、実はカイルは経験があり、嘘をついていました。
ショックを受けながらも一緒にプロムに行きたいとお願いしてしまうレディ・バード。
レディ・バードが落ち込んでいることに気づいた母が心配し、気晴らしに遊びに連れ出してくれました。
束の間の楽しみの後、兄(ジョーダン・ロドリゲス)がレディ・バード宛ての手紙、つまり合否結果の書かれた書類を持ってきます。
奪い取るように部屋に持ち込み開封すると、残念ながら不合格通知が続きましたが、最後にひとつだけ“補欠合格”の通知がありました。
シスターと面会したレディ・バードは、「あなたはこの町を愛しているのね」と言われます。
「注意を払っているだけよ」と答えると、よく観察していることと愛していることは同じじゃないかというのです。
サクラメントへの気持ちを考える中、母とプロムで着るドレスを探しに行きます。
レディ・バードは1着のドレスを気に入りますが、母は何も感想を言ってくれません。
何も言わない母に、ただ母に好かれたいだけだという想いを真っ直ぐに伝えるレディ・バード。
しかし、母は娘をちゃんと育てたいだけだと告げるのでした。
レディ・バードの旅立ち
ついにやって来たプロムの日。
カイルとジェナ、そしてジェナの恋人が車で迎えに来ました。
プロムに向かう途中でカイルは、プロムに行かないで遊びに行こうと言い出します。
レディ・バードは初めこそ同意しましたが、自分だけでもプロムに行くと断り、ジュリーの家まで送ってもらいました。
ジュリーの家を訪ねると、自分は幸せになれないといってジュリーが泣いていました。
そんなジュリーを慰め、お母さんのドレスを借りてプロムに行こうと誘うレディ・バード。
2人はすぐに元の友情を取り戻し、プロムに乗り込んで楽しい時間を過ごしました。
卒業式を迎え、地元の大学にも合格したレディ・バードは、兄の就職祝いも兼ねて家族で食事をしていました。
そこに偶然通りかかったダニーがニューヨークの大学への補欠合格のことを話してしまい、母に秘密にしていたことから再び口論になってしまいます。
そして、母が怒って口を利かなくなってしまったまま、レディ・バードはニューヨークへ飛び立ちました。
レディ・バードの乗った飛行機を見上げて、母は涙を流します。
そんなことも知らず、ニューヨークに着いたレディ・バードは、荷物の中に入れた覚えのない紙が入っていることに気づきます。
よく見ると、それは母からの手紙でした。
自分の想いを伝えようと何枚も何枚も書かれていましたが、母は結局ゴミ箱に捨ててしまったようです。
それを見つけた父がそっと取り出し、荷物に忍ばせてくれたのでした。
父に電話すると、内緒で入れたけど母の愛情は本物だと笑います。
その後、酒場で初めて会う男性に自らをレディ・バードではなく“クリスティン”と名乗りますが、アルコールの過剰摂取で病院に運ばれてしまいました。
翌朝、よく晴れた日に思い立って教会に行ってみると、聖歌隊が歌っています。
教会を出たクリスティンは、家に電話をかけ、留守電に自分の気持ちを吹き込みました。
サクラメントで初めて車を運転して町に出たときの感動と、クリスティンという名前を気に入っていること、そして家族への感謝。
母にずっと伝えたかった「愛してる」を…。
『レディ・バード』感想
前向きでフレッシュな作品
『レディ・バード』の劇中では、特別大きな出来事は起こりません。
しかし、高校生たちの日常を真正面から映し出し、その心情を繊細に描くことでエンターテイメントとして完成しています。
誰もがどこかしら覚えのあるような体験や感情。
自分とは何者なのか思案する日々。
その一瞬一瞬が散りばめられていることで、気づいたら物語に引き込まれている…。
そうして人々の記憶に残る作品となるのです。
urara
そんな大人と子供の狭間に立つ若者のきらめきと葛藤を、緻密に表現した青春映画です。
また、母と娘のドラマとしての側面も持っています。
青春映画で中心となりがちなのは男女間の恋愛関係ですが、『レディ・バード』では恋愛や友情が周りを取り囲み、中心にあるのは母娘関係です。
母への想いを素直に伝えられない娘と、娘を想うほどにそっけなくなってしまう母。
どちらかだけが正しいことを言っているわけでも、間違っているわけでもありません。
urara
これは全ての人間関係に言えることですが、理解しきれなかったとしても本当に大切な相手なら簡単に愛がなくなることはないし、相手を想う気持ちは変わりません。
理解しあえなくてつらい思いをしても、リスペクトがあれば絆は途切れないものです。
レディ・バードと母の関係、親友のジュリーとの関係、一度は恋をしたダニーとの関係。
全てそこに収束するでしょう。
主人公の成長を描きながら周囲の人々の想いや悩みをも映し出した『レディ・バード』。
urara
瑞々しいキャストたち
パンクな女子高生、レディ・バードを演じたのはシアーシャ・ローナン。
9歳の頃に子役デビューし、2007年には『つぐない』でアカデミー助演女優賞にノミネートされますが、当時13歳だったシアーシャは史上7番目の若さでのノミネートだったため、大きな話題を集めました。
2009年には『ラブリー・ボーン』、2015年には『ブルックリン』に出演し、数々の賞にノミネートまたは受賞するなど、着実にキャリアを積んでいます。
続いて2017年の本作『レディ・バード』、2019年の『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』でも高く評価され、今やアカデミー賞の常連女優となりました。
urara
レディ・バードが恋をする2人の男子生徒を演じた彼らも大注目の俳優です。
まず、カイル役にはティモシー・シャラメ。
urara
幼少期からコマーシャルに出演、2008年には短編映画デビューし、翌年からはテレビドラマで活躍を始めます。
2014年に出演した『ステイ・コネクテッド~つながりたい僕らの世界』、『インターステラー』で徐々に知名度を集め、2007年には主演を務めた『君の名前で僕を呼んで』のヒットと共に高く評価されました。
『君の名前で僕を呼んで』ではアカデミー主演男優賞やゴールデングローブ主演男優賞をはじめ、複数の賞にノミネートまたは受賞し、話題を呼んだ今ホットな俳優の1人です。
そして、ダニー役にはルーカス・ヘッジズ。
映画監督で脚本家のピーター・ヘッジズの元に生まれ、幼少期から映画製作のそばで過ごします。
2012年に『ムーンライズ・キングダム』へ出演したことをきっかけにキャリアをスタートし、2016年の『マンチェスター・バイ・ザ・シー』でアカデミー助演男優賞をはじめとする多くの賞にノミネートまたは受賞したことで、一気に人気俳優の仲間入りを果たしました。
urara
『レディ・バード』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
#グレタ・ガーウィグ によるドリームチーム結成⁉
ベテランから若手まで豪華メンバーが集合したキャスティングについて語る特別映像が解禁🎬#レディ・バード #羽ばたけ自分 pic.twitter.com/x7sTEuiD7Z
— 映画『レディ・バード』 (@ladybirdmoviejp) May 31, 2018
- キラキラしたところも恥ずかしいところも“あるある”な青春映画
- “母と娘”の関係が織り成す切なくて愛おしいストーリー
- “愛”を伝えることの難しさと大切さが問われる作品
いかがだったでしょうか。
母と娘の関係を中心に置きながら、主人公のレディ・バードをはじめとする若者たちの生活を繊細に描いた青春映画『レディ・バード』。
前を向きたい時、将来に悩んだ時、今に満足できない時。
この作品を観てみると、何か発見できるかもしれませんね。
また『レディ・バード』のグレタ・ガーウィグ監督、シアーシャ・ローナン主演の最新作、『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』は2020年初夏公開予定。
ぜひ、劇場に足を運んでみてはいかがでしょうか?
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