アニメ映画『雲のむこう、約束の場所』は、『君の名は。』で一世を風靡した新海誠監督による長編アニメ映画の第二弾にあたる作品です。
背景の美しさや日常を切り取ったかのような滑らかなアニメーションはこのころから健在でした。
また、ストーリーの作り込みも非常に深く、若者が持つ憧れがひとつの大きなテーマとして描かれています。
- 昨今の新海作品に負けずとも劣らない作画とアニメーションの出来栄えは圧巻です。
- 憧れと現実のギャップに苦しみながらも奮闘する主人公たちの姿に胸を打たれます。
- あまりにも切ないラストシーンは涙なくしてはみられませんでした。
自分のやりたいことがわからず悩んでいる若い世代の方に特にオススメできる内容です。
それではさっそく『雲のむこう、約束の場所』をレビューしていきます。
▼動画の無料視聴はこちら▼
目次
『雲のむこう、約束の場所』作品情報
作品名 | 雲のむこう、約束の場所 |
公開日 | 2004年11月20日 |
上映時間 | 91分 |
監督 | 新海誠 |
脚本 | 新海誠 |
出演者(声優) | 吉岡秀隆 萩原聖人 南里侑香 石塚運昇 井上和彦 水野理紗 木内秀信 中川里江 |
音楽 | 天門 |
『雲のむこう、約束の場所』あらすじ・感想【ネタバレなし】
作画・アニメーションが秀逸。これぞ新海誠クオリティー。
作画の良さにも様々あると思いますが、『雲のむこう、約束の場所』で優れていた点は空の作画でした。
映画のタイトルにもなっているだけあって、細部にわたり丁寧に作り込まれた空の作画には非常に新海誠監督の気合いとこだわりを感じます。
私が今まで見てきたアニメーション映画の中でも、空、特に夕日の美しさについてはぶっちぎりで一番でした。
美しさの中にどこか寂しさを感じさせる作画は本物の夕焼けさながらなのです。
また、アニメーションの動きも非常に滑らかで電車の動きひとつとっても、現実と遜色ない出来栄えに驚きます。
古い映画だから絵が受け付けないと食わず嫌いしている方がいたら騙されたと思って手に取っていただきたいです。
一度観ればあなたも新海ワールドの虜になります。
等身大の若者の葛藤に多くの人が共感する。
異性への憧れや、まだ見ぬ遠い地への憧れは、誰しもが持つ感情だと思います。
このような人間の根源的な欲求を今作では巧みに描いていました。
『雲のむこう、約束の場所』で好感が持てるのは、ご都合主義の幸せな展開は一切なく、追い続けても届かないもどかしさや、憧れを追い続けることの難しさ、といった現実の厳しさまで忠実に再現していたところにあります。
主人公の藤沢浩紀は、憧れていた同級生・沢渡佐由理の突然の失踪を機に、憧れを馳せていた空を一度諦めてしまいます。
二つの憧れを同時に失った彼は、惰性的な日々を過ごすしかない袋小路に迷い込んでしまいます。
彼はこの生活を「深く冷たい水の中で、息を止め続けているような毎日」と語っていました。
自分の人生に生きがいや目標のない人間には非常に共感できる言葉だと思いますし、私自身にも胸に刺さった印象的な言葉でした。
そんな彼が、どのようにして再び憧れを追い始めるのか注目して観ていただきたいです。
現実で憧れを追うことはいばらの道だと思います。
それでも『雲のむこう、約束の場所』の視聴後には、憧れが人生を能動的に楽しむためには必要だなぁと思えてくる。
そんな観る人の背中を少しだけ押してくれる作品です。
吉岡秀隆ら豪華声優陣の演技に注目
今作で主人公の藤沢浩紀の声優に抜擢された吉岡秀隆といえば、ドラマ『北の国から』シリーズや『Dr.コトー診療所』で活躍した人気、知名度ともに一流の俳優です。
そんな彼の声優としての演技力に、視聴前は期待半分と不安半分でした。
特に今回の吉岡秀隆が演じる主人公は、思春期の少年という設定で実年齢との差があるため厳しいものがあるのではないか?と予想していたわけです。
しかし、いざ蓋を開けてみれば、主人公の少し影のある人柄や、自信が持てない一面などを見事に演じていて、吉岡秀隆のマルチな一面を感じることができました。
人によって感じ方は違ってくると思いますが、個人的には浩紀の声は吉岡秀隆が一番しっくりくると思いました。
また、吉岡秀隆の他にも俳優として活躍する萩原聖人が主人公の親友・白川拓也役として声優を務めています。
豪華な声優陣が命を引き込む青春ドラマは必見です。
切なすぎるラストシーン。主人公の胸中を想うと目頭が熱くなる。
物語の終盤で、主人公の浩紀は、世界を救うか・大切な人を救うかの二択を迫られます。
浩紀がどのような選択をして、どのようなラストを迎えるのかについてはあえて伝えないでおこうと思います。
それが『雲のむこう、約束の場所』における最大の見どころでもあると思いますし、ラストシーンに対しての解釈が多岐に渡るため、まずはご自身の目で結末をご覧になっていただきたいです。
個人的な見解としましては、実に新海誠監督らしい現実的なラストを迎えたという印象を受けました。
最後になりますが、今作『雲のむこう、約束の場所』の内容には、難しい専門用語や複雑な設定が含まれているため、一回の視聴ですべてを網羅することは困難だと思います。
一方で、視聴を重ねるたびに新たな発見や異なる解釈を見出せる素晴らしい映画であることも事実です。
噛めば噛むほど味が出る、するめのような映画ですので、考察が好きな方や複雑な話をひも解いていくことに楽しさを見出せる方にはぜひおすすめです。
『雲のむこう、約束の場所』まとめ
サユリ「私ね、さっき一瞬だけ、夢見てたんだ。」
ヒロキ「夢?どんな夢?」
サユリ「忘れちゃったなぁ。でも多分、あの塔の夢。」
タクヤ「嘘みたいな眺めだもんなぁ、ユニオンはすごいよ。」
ヒロキ「塔の先、他の世界まで繋がっていそうだ。」
サユリ「はぁ、夕日、なかなか沈まないね。」 pic.twitter.com/xw7XKSRmge— 雲のむこう、約束の場所bot (@bella_ciela) 2016年12月20日
以上、『雲のむこう、約束の場所』について感想を述べました。
最後に本作の要点をまとめておきます。
- 作画やアニメーションの作り込みが素晴らしい。
- 豪華声優陣の演技力の高さが光る作品である。
- 切なすぎるラストシーンは何度観ても胸にこみ上げてくる。
▼動画の無料視聴はこちら▼