『この世界の片隅に』あらすじ・ネタバレ感想!松坂桃李×松本穂香で描く太平洋戦争中の切ない夫婦愛

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出典:U-NEXT

『この世界の片隅に』は、こうの史代の漫画を原作として、2011年に日本テレビ系でテレビドラマ化された作品です。

主人公のすずは、オーディションで3,000人から選ばれた松本穂香

彼女の持つ天然で素朴な感じは、すずにぴったりです。

夫役は松坂桃李、すずのことを愛おしく思っている様子がほのぼのと伝わってきます。

ドラマでは、太平洋戦争の最中、広島県の江波から呉に嫁いだすずが、嫁ぎ先の北條家で暮らす日常が描かれています。

戦争前後の生きるだけで精いっぱいという中、広島弁で交わされる普通の夫婦愛、人々を思いやる言葉が臨場感をあおります。

また、遊女としてはかなくも強くこの世を生き抜いた二階堂ふみ演じるリンの存在も印象的です。

今回はそんなドラマ『この世界の片隅に』をネタバレありでレビューしたいと思います。

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『この世界の片隅に』主要キャスト

松本穂香 / 役:北條すず

  • 広島市江波で育ち、呉の北條家に嫁ぐ。
  • 絵を描くことが得意で、のんびりした性格。
  • 戦争で国が暗くなっている中、前向きに明るく生きようとする芯の強い一面もある。

松坂桃李 / 役:北條周作

  • すずの夫。
  • 物静かだけど、秘めた情熱と優しい心を持ち合わせる。
  • 海軍で軍法会議の録事をしている。

尾野真千子 / 役:黒村径子

  • すずの小姑で、周作の姉。
  • この時代には珍しく恋愛結婚したが、ある事情で嫁ぎ先から娘を連れて出戻ってくる。
  • 口調が強く、多少強引なところがある。

二階堂ふみ / 役:白木リン

  • 呉にある朝日遊郭の遊女。
  • ひょんなことからすずと出会い、奇妙な友情をはぐくむ。

村上虹郎 / 役:水原哲

  • すずの幼馴染で、初恋の相手。
  • 亡くなった兄の遺志を継ぎ、海兵団に入隊する。

榮倉奈々 / 役:近江佳代

  • 2018年夏、東京から呉を訪れている。
  • 呉に来たのは、ある目的があったため。その目的とは?

【ネタバレ】『この世界の片隅に』あらすじ・感想

第1話 すずの幼少期と周作との縁

ドラマは現代からスタートします。

平成30年夏、近江佳代(榮倉奈々)は、恋人・江口浩輔(古館佑太郎)と広島県呉市へ向かいます。たどり着いた無人の古い家、玄関には北條の表札があります。佳代は家屋の中に入って行き、タンスの中の「すず」と彫られたツゲの櫛を手に取り、感慨深げに見つめます。

時を遡ること昭和9年、広島市江波に住む浦野すず(新井美羽)は、海苔の養殖業を営む父・十郎(ドロンズ石本)と母・キセノ(仙道敦子)、兄・要一と妹・すみと共に、貧しいながらも幸せに暮らしていました。

ある日、両親に頼まれたお使いを済ませたすずは、絵を描いていると人さらいの男に捕まり荷車の中に押し込められます。荷車の中には同じように捕まった少年・北條周作(浅川大治)がいました。

すみへの土産に買ったキャラメルを周作と分け合ったすずが「諦めるのは納得できない。」と言うと、彼女の言葉にハッとした周作は人さらいの隙を見てすずと一緒に逃げ出し、2人は無事に帰宅することができました。

数日後、すずは祖母・イト(宮本信子)宅を訪れた際に、ある少女に切りたてのスイカと新しい着物を渡します。お礼を言った少女は女衒ぜげんによって売られていきました。この少女は後に出会うリンです。

女衒とは?
女衒は主に若い女性を買い付け、遊廓などで性風俗関係の仕事を強制的にさせる人身売買の仲介業であり、人買の一種。歴史は古く、古代からこのような職業が存在していたと考えられている。

それから数年後、兄の要一が南方に出征します。そして昭和18年の秋、すず(松本穂香)に縁談が持ち上がります。

その相手とは、人さらいから一緒に逃げ出した北條周作(松坂桃李)でした。足の悪い母・サン(伊藤蘭)から結婚を急かされた周作が、すずのことを思い出したのです。

すずの自宅を訪問した周作を物陰からこっそり見るすずですが、周作を思い出すことができませんでした。相手が幼馴染の水原(村上虹郎)ではなく内心がっかりしていました。縁談話が進んでいく中、不安を感じますが、キセノから励まされ周作との結婚を決意します。

ささやかな祝言が北條家で行われ家族が帰ってしまうと、周作の姉・径子(尾野真千子)がきつい口調で嫌味を言ってきます。元来おっとりした性格のすずは、嫌味に反応せずのんびり構えていると、呆れた径子は嫁ぎ先に帰っていきました。

その晩、周作が「すずさんは、わしに力をくれるけぇ。あんたと一緒に生きていきたいんじゃ。よう来てくれたのぉ。」と優しく語りかけると、すずは安心するのでした。

一方、呉の遊郭では美しい布地で作られた袋を大切そうに眺める遊女リン(二階堂ふみ)がいました。昔、すずからスイカと着物をもらったあの少女です。

話は2018年に戻り、すずのツゲの櫛を眺めていた佳代は「私、決めた。ここで暮らそうと思う!」と宣言します。

第2話 北條家での生活と里帰り

すずは朝早く起きると朝食の用意をします。井戸へ水汲みにいくのも嫁の仕事です。そして、軍の録事(書記)をしている周作と航空機の製造工場に勤める義理の父・円太郎(田口トモロヲ)を毎朝見送ります。

慣れない家事に奮闘するすずを心配した周作が「働き手が欲しくて嫁をもらったと思っていないか?」と声をかけると、すずは「それでも幸せです。うちが必要じゃということですよね」と健気に答えるのでした。

北條家の隣に住む刈谷幸子(伊藤沙莉)、夫が出征中の堂本志野(土村芳)ら隣組のメンバーを紹介されると、すぐに打ち解け、畑仕事にも精を出すのでした。

ところが、径子が6歳の娘・晴美(稲垣来泉)を連れて実家の北條家に戻ってくると、すずへの嫌みを連発します。そして、径子に「実家の広島に帰ればいい」と言われ、すずは実家に帰ります。江波に帰ったすずは寝てばかりいました。家族はすずの頭に大きな円形脱毛症ができているのを見つけ、彼女の苦労を思いやるのでした。

すずは父からもらった小遣いを持って町へ行き、スケッチブックとキャラメルを買います。そして、キャラメルを食べながら絵を描こうとした瞬間、子供の頃に人さらいに捕まった時に出会った少年のことを思い出しました。その少年が周作だと気づいたすずは、周作が本心から自分を必要としていることを悟り、北條家へ帰ります。

北條家の前にいた径子を見ると、すずは家に入ることができず、ぼんやりと港を眺め座り込んでいました。すずを見つけた周作は、呉の海を通行する船について説明し、巨大な戦艦・大和が姿を現すと「お帰り、大和!お帰り、すずさん」と嬉しそうに叫びます。すずは、夫にそっと寄り添うのでした。

第3話 遊女リンの過去

2018年、すずが住んでいた北條家で古民家カフェの開業を決意した佳代は、開業セミナーを受講します。浩輔には「あの家の持ち主さんには許可を取ってあるの」と笑顔で答えます。

時は遡って昭和19年6月、戦争の被害を恐れた北條家と刈谷家は防空壕を掘ることにしました。周作をどんどん好きになるすずは、防空壕を掘る彼の姿を見つめてうっとりしています。彼女の一生懸命さが伝わり、すずは家族の一員として馴染んでいきます。

ある日、径子から周作に別の結婚話があったことを聞きショックを受けたすずは幸子に尋ねますが、はぐらかされてしまいます。そんなとき、砂糖入りの瓶を誤って水がめに落としてしまい、闇市まで買いに行きます。闇市からの帰り道を間違えたすずは、遊郭が立ち並ぶ場所に迷い込んでしまいます。

途方にくれてしまい、道端でスイカやキャラメルの絵を描いていると、遊女・リン(二階堂ふみ)が声をかけてきて帰り道を教えてくれました。お礼にスイカの絵を描いてあげると、リンは嬉しそうに眺めました。そして、すずが北條家の嫁だと知ると、早く帰るように促し、寂しそうにするのでした。

一方、周作が同僚と町の酒場へ行くと、帰港したばかりの水兵が大勢いました。ひょんなことからケンカになってしまいますが、殴られた周作を助けた水兵はすずの幼馴染の哲でした。周作と哲はお互いの無事を祈って別れます。

翌日、すずは周作の忘れ物を届けに待ち合わせ場所に向かいました。その頃、一足先に待ち合わせ場所に着いた周作はリンと遭遇しますが、黙って自分を見つめる周作にリンは頭を下げました。すずがやってくると、彼女を食堂に連れていきます。食後のデザートにアイスクリームが出てくると、遠慮しながらも美味しそうにアイスクリームを頬張るすずを周作は嬉しそうに見つめます。

すずが「夢の中にいるようだ」と言うと、周作は「人には過ぎてしまったことや選ばんかった人生があるけど、わしはすずさんを選んで幸せじゃぁ」と答えます。

第4話 自分は代用品?

遊郭から出られないリンのために、呉の海や町並みをスケッチしていたすずは、憲兵からスパイ容疑をかけられてしまいます。激高する憲兵に北條家まで引っ張られたすずはショックを受けてしまい、倒れてしまいました。

なかなか回復しないすずは妊娠を疑い病院へ行きますが、栄養不足と過労が原因でした。妊娠を期待する北條家の人々に申し訳ない気持ちになり、病院の帰り道、すずはリンの遊郭へ行きます。話を聞いたリンは「売られた子供でもなんとか生きとる。誰でもなんか足らんくらいで、この世界に居場所はのうなりゃせんよ。」と励ますのでした。

すずから名前を聞かれたリンは、優しいお客さんが書いたというノートの紙片を見せます。この紙片は、字の書けないリンのために周作が書いたものでしたが、すずはまだ知りません。

周作の冬物を整理していたすずは、リンドウの花が描かれたきれいな茶碗を見つけます。数日後、すずは草むらのリンドウの花を見て、リンドウ柄のリンの着物や彼女が北條家の地理に詳しかったことなどを思い出します。そして、周作の引き出しを開けて表紙の破れたノートを発見すると、すずは周作の相手がリンだと気づきます。自分がリンの代用品ではないかとモヤモヤするのでした。

第5話 初恋の人・哲との別れ、周作とのけんか

昭和19年12月、水平の哲は彼女の前に姿を現しました。そして、米や缶詰などを差し出して泊めてもらうことになります。周作が帰宅すると、哲とは酒屋で以前会ったことを思い出しますが、すずを呼び捨てにし彼女との思い出話を始めたため面白くありません。

周作と2人だけになった哲が死への覚悟を語ると、周作は哲に納屋で寝るように言い、すずには思い出話をしてくるように言います。すずが玄関を出ると、周作が母屋の鍵をかけてしまうので、それ以来すずは不信感を抱き続けることになります。

納屋の2階では、哲が南国の船上で拾ったという白い羽を貰い、それを羽ペンにして鳥の絵を描き始めました。哲がそっと抱き寄せましたが「いつかこんな日が来るのを待っていた気がする。でも、今はこんなふうに仕向けた周作に腹が立ってしょうがない」と言うすずに、哲は彼女の気持ちが周作にあると思い知るのでした。

「普通でないことが多い状況の中で、普通にしているすずが嬉しい。」「死んだら英霊として拝むのではなく、笑顔で自分を思い出して欲しい。それができないなら忘れて欲しい。」と言うのでした。翌朝、すずに見送られた哲は、旅立っていきました。

昭和20年2月、戦死した兄・要一の葬式に参列するため、周作とすずは江波の実家に帰ります。上司から渡された骨壺には遺骨ではなく小さな石ころが入っていました。周作が「遺骨がないのは兵士全員死亡したということ」と答えると、キセノは泣き崩れます。祖母イトは「こんな粗末な石が要一のわけがない」と骨壺の石を捨て、キセノを慰めるのでした。

帰りの汽車の中で、周作は「何か言いたいことがあるんじゃないか」とすずに問うと、すずが「哲のいる納屋に向かわせたのは、自分に子供ができないから?」と怒ります。周作は「あん人と本当は一緒になりたかったんじゃろう」と言い返し、喧嘩になってしまいます。

周作は戦地に向かう哲への思いやりとヤキモチが混じっていたということ、すずには哲への気持ちがなく、子供ができないことを気にしていることがわかり、わだかまりを吐き出した2人は夫婦の絆が深まったようです。

数日後、すず以外の北條家の人々が風邪で寝込んでしまいます。ザボンを闇市で手に入れたすずは、リンドウの茶碗を持ってリンの遊郭へ寄ります。窓際の部屋にいた遊女にリンへの茶碗を託し、咳をして苦しむ彼女にザボンを与えます。その様子をリンが2階の窓から見ていました。

第6話 迫りくる戦争

昭和20年春、戦闘機の出現により戦火が間近に迫っていることを人々は感じ取っていました。最後の思い出にと、家族全員で公園へ花見に行きます。桜が満開の公園の人でごった返す中、すずはリンと偶然再会し、桜の樹に登り話します。リンは、ザボンをもらった遊女が肺炎で亡くなったと知らせ、形見の紅を渡しました。

リンは「人は死んだら記憶がのうなる。秘密も。それはそれで贅沢かもしれん。自分専用のお茶碗みたいにね。」と微笑みながら語るのでした。すずを探していた周作は、少し微笑んで通り過ぎるリンを見かけます。すずを見つけた周作は「知り合いに会った。笑っとって安心した。」と話し、「うちは周作さんが笑っとって安心しました。」と笑顔で答えるのでした。

数日後、円太郎の勤務先の工場が爆撃され、居場所がつかめなくなります。さらに、周作が武官として勤務することになり、3ヶ月間家を留守にすることになります。すずは、「うちは周作さんが好きです。じゃけぇ、この家で待っとります。」と言い、彼の顔を忘れないようにスケッチするのでした。その後、円太郎が入院中であることが判明し、サンは安心するのでした。

2018年夏、佳代と浩輔は広島を訪れ、すずの娘である老女・北條節子(香川京子)と会い、一緒に慰霊碑に手を合わせます。東京で介護の仕事をしていた佳代の悩みを聞き、励ましてきた節子は、佳代のカフェ開業を喜んでいました。そして、節子が描いたカフェのデザイン画は素晴らしく二人が歓喜すると、節子は「お母ちゃんが絵を教えてくれたんよ」と言います。

再び昭和20年、径子は晴美と下関に疎開するため、駅で切符を買う列に並んでいました。径子に命じられて、すずと晴美は円太郎の病院へ見舞に行く途中、突然空襲警報が鳴り響き近くの防空壕に避難しました。戦闘機が過ぎ去ったと思い外に出ると、近くにあった爆弾が爆発します。

第7話 晴美の死、右腕を失ったすずの不幸

北條家で意識を取り戻したすずは、自分が右手を失っていること、晴美がすでに遺骨となっていることを知り絶望します。径子は「あんたがついていながら…。人殺し!晴美を返して!」とすずを責めます。サンは、「あんたが生きていただけでも良かった。」と慰め、世話をしてくれました。

回復したすずを外に連れ出した幸子は、「晴美さんを守れんかった。消えてしまいたい。」と嘆くすずの頭を突然殴り、「悔しかったら左手で殴りゃいい」と言います。左手で殴り返すすずの目からは涙がこぼれ、幸子と志野も泣いていました。空襲の激しさが増し、北條家の自宅にも焼夷弾が落とされ、必死に火を消します。

軍隊の訓練が中止になり帰宅した周作は、すずの姿を見て驚きます。すずは「ごめんなさい。」と何度も呟きます。周作は「あんたが生きとって良かった」と言います。そして、すずから「友達の白木リンさんの様子を見てきて欲しい」と言われた周作は、困惑するのでした。

一方、広島の江波の実家では、すずが右手を失ったことを知ると、妹のすみがすずのもとへお見舞いに訪れ、空襲のない広島へ帰ってくるように勧めました。

呉に空襲が続き、防空壕に避難する日々が続いていたある日、すずの頭上に現れた爆撃機が銃弾を撃ち、寸でのところで周作に助けられます。側溝の中で、突然「私、広島に帰ります」と言い出し、子供のように何度も「帰る」を繰り返しました。周作は「あんたがいる家に帰るのは楽しかった。でも、あんたは違うのか。」と答えるのでした。

昭和20年8月6日、外が一瞬ピカッと光った後、激しい爆音が聞こえてきました。広島の方角に大きなきのこ雲が現れると、心配になったすずは実家に電話を掛けますが通じません。

第8話 多くの犠牲を払った戦争が終わる

すずは、ハサミでバッサリ髪を切り、広島に行く看護師・ハル(竹内郁子)に同行したいと懇願しますが断られてしまいます。すずは、爆風で広島から呉まで飛ばされてきた障子を見て「うちは負けんよ。もっと強くなりたい」と呟き、空を見上げるのでした。その後、米軍が日本国民に降伏を促すビラ「伝単」を拾ったすずらは微妙な雰囲気になります。

昭和20年8月20日、ラジオ放送で正午から重大発表がありました。ラジオから聞こえる天皇陛下の声は雑音で聞き取れず、みんな戸惑っていると、近所の老人・堂本安次郎(塩見三省)が静かに「戦争は終わった。」と告げました。

するとすずは「こんなの納得できん!」泣き叫びます。家を飛び出した彼女は、戦争の犠牲になった家族や哲の姿を思い浮かべて畑で号泣します。晴美の遺骨を抱えた径子は「もっと戦争が早く終わっとりゃ。」と泣き崩れるのでした。

昭和20年9月のある日、すずの右手を診察した医師は、周作に「ケガは回復しているが、骨髄炎の危険性があるので広島へ行くのは無理だ」「悲惨な状態なので見せないほうがいい」と話します。広島から戻ったハルも原爆の影響で体調を崩しました。

ある夜、すず宛てのハガキが届き、すみが草津にいることがわかり喜びます。一方、隣家のタキが「ベロベロになった皮膚の男性が自分の息子だったが、母親なのに気づかなかった。」と泣き崩れます。その話を聞いた幸子の婚約者・成瀬(篠原篤)は、刈谷家に養子に入ることを決め、タキを慰めました。

すずは、リンのいた遊郭へ行ってみると、そこに建物はなく瓦礫が残っていて、その中にリンの茶碗の欠片も落ちていました。リンの生前の言葉を思い出したすずは、彼女のはかない人生を思いやるのでした。

そして、平成30年の北條家では、佳代、浩輔、節子が屋内の片づけを始めます。節子から「片付けが終わったらみんなで会いに行こう」と誘われた佳代と浩輔は、「誰に?」と首をかしげていました。

第9話(最終回) 再生が始まる広島、新しい家族

終戦から3ヶ月後の昭和20年11月、円太郎と径子は働きに出るようになります。すずは海兵団に招集された周作の帰りを待っていました。

物資不足のため、洋服や着物を集めて物々交換に出しますが、少ししか食料が手に入りませんでした。その後、志野が待ち続けた夫・春夫(毎熊克哉)が帰ってきて再会を喜び合い、すずと幸子も嬉しそうに眺めていました。

昭和20年12月、草津に住む祖母のイトから手紙が届き、母・キセノが行方不明で、妹・すみの体調が良くないことを知ります。すずは草津へ行き、寝たきりのすみと再会します。すみから、原爆の日、帰宅しないキセノを探しに一緒に出掛けた父・十郎がすぐに亡くなったこと、学校の校庭で他の遺体とともに荼毘に付したことを聞きます。

すみの腕には赤紫の斑点ができていて「治るかねぇ」と呟くすみに「治るよ。」と励まし、すずは左手で描いた漫画を渡します。すみは漫画を抱きしめて感涙します。翌朝、イトは「自分が無事じゃったことが悔しい。でも、今できることは精一杯生きるだけ」「すずちゃんも負けんさんな」とエールを送って見送りました。

海兵団から戻った周作は、入れ違いで草津のイト宅を訪ねてきました。周作が「すずさんと一緒に生きていけるのは、幸せじゃぁと思うとります。」と話すと、イトとすみは安心するのでした。思い出の場所「産業奨励館」の前で座り込んでいたすずは、「すずさん」という声に振り向くと、そこには周作が立っていました。

周作は「わしはどこにいてもすずさんを見つけられる自信がある。」と言うと、すずが「この世界の片隅にうちを見つけてくれてありがとう。ずっとそばにおってください。」と答えます。周作は彼女の手を握りしめて頷くのでした。

そして、駅の待合室で、すずと周作は1人の幼い女の子・節子と出会います。父を戦争で母を原爆で亡くした節子は、4ヶ月間を一人で生き延びてきたのでした。節子はすずの袖口にそっと寄り添い「おかあちゃん」と言います。

すずは「この広島でよう生きとってくれんさったね。ありがとう」と声をかけ、彼女を北條家に連れて帰ります。北條家から温かく迎えられた節子は、すずと周作の養女になります。翌年の春には、海軍にいた哲が無事帰し、江波の海に「生きるでー」と叫んでいました。

平成30年、佳代や浩輔と親しくなった節子は、彼女たちをスタジアム球場に案内します。その球場には「負けんさんな、広島」と声をかける年老いたすずの元気な姿があったのです。

『この世界の片隅に』まとめ

ドラマ『この世界の片隅に』は、戦争の悲惨さとその中でも強く生きることの大切さを描かれた傑作だと思います。

戦争に突き進んでいく中、庶民の普通の暮らしがそのまま続いています。物資が不足し、家族や友人が戦場に送られていく中、不安と闘いながらも前向きに健気に生きるすずの姿は、現代にも通じるものがあります。

生きづらさを感じながら今を懸命に生きる人ともつながっており、時折、現代を懸命に生きる榮倉奈々演じる佳代の登場が、より一層私たちの身近な幸せの大切さに気付かせてくれたように思うのです。

とても素敵なドラマなので、ぜひ見てみてください。

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