第38回モントリオール国際映画祭・最優秀監督賞受賞作『そこのみにて光輝く』(2014)、第37回モスクワ国際映画祭コンペティション部門出品『きみはいい子』(2015)で高い評価を得た監督・呉美保と脚本・高田亮の黄金コンビが三たび手を組んだ完全オリジナル新作『ふつうの子ども』が、9月5日(金)よりテアトル新宿ほか全国で公開される。
本作は「いつだって、世界は『好き』で、まわってる」をキャッチコピーに、10歳の小学4年生・上田唯士が初めて知る「好き」という感情を軸に展開する子ども映画。環境問題をテーマにした子どもたちの一途な思いが、思わぬ大騒動へと発展していく姿を、ユーモアと温かさを交えて描いている。
目次
作品情報

©2025「ふつうの子ども」製作委員会
監督:呉美保
脚本:高田亮
出演:嶋田鉄太、瑠璃、味元耀大、蒼井優、風間俊介、瀧内公美、少路勇介、大熊大貴、長峰くみ、林田茶愛美
製作:「ふつうの子ども」製作委員会
配給:murmur
製作年:2025年
公開日:2025年9月5日(金)
上映劇場:テアトル新宿ほか全国
公式サイト:https://kodomo-film.com/
あらすじ
上田唯士(うえだ・ゆいし)は10歳の小学4年生。両親と三人家族で、おなかが空いたらごはんを食べる、いたってふつうの男の子だ。最近、同じクラスの三宅心愛(みやけ・ここあ)が気になっている。
心愛は環境問題に高い意識を持ち、大人にも臆せず声を挙げる女の子。「私たち子どもが生まれる前から二酸化炭素を出し続けているのは大人たちです」と発表し、先生に注意されても「じゃあ子どもが悪いんですか」と物怖じすることなく自分の意見を口にする。
そんな心愛に惹かれた唯士は、図書館で偶然を装って環境問題の本を読む心愛に近づき、「いいよね、カーボンニュートラル」と勉強した知識で声をかけるが、心愛の反応はそっけない。そこにクラスの問題児・橋本陽斗(はしもと・はると)が絡んできて、三角関係の様相を呈してくる。
心愛の提案で「大人の意識を変えるには行動を起こさなきゃいけないんだよ」と”環境活動”を始める三人。しかし、子どもたちの一途な思いがエスカレートし、親たちも巻き込んだ大騒動へと発展してしまう──。
キャスト紹介
主演・嶋田鉄太(上田唯士役)
主人公の唯士を演じるのは、映画『LOVE LIFE』(2022/深田晃司監督)や『アンダーカレント』(2023/今泉力哉監督)、ドラマ「それでも俺は、妻としたい」(2025/足立紳監督)など、気鋭の監督たちに愛されてきた嶋田鉄太。呉監督の作品には『ぼくが生きてる、ふたつの世界』に続く出演となり、平凡な小学生の日常に訪れた刺激的な冒険の日々をまっすぐに演じきった。
瑠璃(三宅心愛役)
唯士が恋心のようなものを抱く、大人びた同級生の心愛に抜擢された瑠璃は、本作で初めての本格的な芝居ながらも、物語を牽引する強い存在感を披露している。環境問題に対する意識の高さと、大人に対する毅然とした態度が印象的なキャラクターを見事に演じている。
味元耀大(橋本陽斗役)
土曜ドラマ「3000万」(NHK)や日曜劇場「VIVANT」(TBS)に出演し、映画の公開待機作も多く控える味元耀大が、場の空気を惹きつける華やかさと秘められた繊細さの両面から訴えかけるクラスの問題児・陽斗を演じる。
実力派大人キャスト
唯士の母親・恵子役には蒼井優。育児に悩みながらも、我が子を信じ、褒めて伸ばそうとする母親を、丁寧に、そして温かく演じている。
担任教師・浅井役には風間俊介。確かな演技力に定評のある風間が、30人の児童たちと日々向き合う小学校教師という役柄を自然体で演じた。
心愛の母親・冬役を演じた瀧内公美は、登場シーンは限られているものの強烈な印象を残し、答えのない人生と相対する大人の様を体現している。
制作陣の思い
呉美保監督のビジョン
昨年『ぼくが生きてる、ふたつの世界』で9年ぶりとなる長編映画を発表し、国内外で高く評価された呉監督。出産・育児を経てブランクを経験したことも事実だが、仕事や子育てに追われる中で、「子どもも大人も、共に楽しめる映画」を作ることへの情熱を強くしていた。
「ありのままの子どもを思いっきり描きたい!」という思いを長年温めていた呉監督にとって、本作は自らも親となった経験を活かした、特別な意味を持つ作品となっている。
高田亮脚本家の想い
シリアスなサスペンスからラブコメディまで幅広く手がける高田が、「ずっと前から書きたいと思っていた」という子ども同士の人間ドラマ。自身のまわりで目にする生身の子どもたちの姿に魅了され、小学校への取材を重ね、オリジナルのストーリーを書き上げた。
自らも親となった監督と脚本家の二人が、今の日本に生きる子どもたちと、彼らと同じ時間に向き合う大人たちにフォーカスした本作は、「ありそうでなかった子ども映画」として誕生した。
本予告の見どころ
今回解禁された本予告では、「ウンチをしたら流す!紙で拭くのを忘れずに」と教室で元気よく作文を発表する唯士の姿から始まる。友だちとワイワイ登校し、家では母と楽しく笑い合う、ふつうの小学生の日常が描かれる。
そんな唯士が”好き”を知る相手は同級生の心愛。図書館で偶然を装って環境問題の本を熱心に読む心愛に近づき、教室では「いいよね、カーボンニュートラル」と心愛に近づきたい一心で勉強した知識で声をかける姿が微笑ましい。
しかし心愛の反応はそっけなく、そこにクラスのちょっと問題児の陽斗が絡んできて、三角関係の様相に。心愛の提案で「大人の意識を変えるには行動を起こさなきゃいけないんだよ」と”環境活動”を始める三人だが、子どもたちの一途な思いがエスカレートし、親たちも巻き込んだ大騒動へと向かってしまう。
「10歳になったら半分大人になるって言われました」という言葉が胸に残る、”好き”という思いを巡る嬉しさ、楽しさ、そして戸惑いが詰まった予告となっている。
場面写真が語る物語
併せて解禁された場面写真は、唯士、心愛、陽斗たちのイキイキとした日常、そして子どもたちを取り巻く大人たちの事情をビビッドに切り取ったもの。子どもたちと一緒に出会い直す私たちの世界は、こんなにも明るくて、スリリングで、ドラマチック!そんな物語を予感させる場面写真となっている。

©2025「ふつうの子ども」製作委員会

©2025「ふつうの子ども」製作委員会

©2025「ふつうの子ども」製作委員会

©2025「ふつうの子ども」製作委員会

©2025「ふつうの子ども」製作委員会

©2025「ふつうの子ども」製作委員会

©2025「ふつうの子ども」製作委員会

©2025「ふつうの子ども」製作委員会
本作は単なる子ども向け映画ではなく、大人も共に楽しめる作品として作られている。環境問題という現代的なテーマを扱いながらも、10歳の子どもが初めて知る「好き」という感情を軸に、普遍的な人間ドラマを描いている。
リアルな子ども像の追求
メインの3人に加え、クラスメイト役は全てオーディションで選ばれ、ワークショップを通して共通の時を過ごしながら、呉監督と共にそれぞれのキャラクターを創り上げていった。生身の子どもたちの姿を映画に込めたいという制作陣の強い思いが結実している。
世界最古の子ども映画祭でワールドプレミア
5月29日からチェコで開催される”ズリーン国際映画祭”でのワールドプレミアが決定。世界最古の子ども映画祭での上映は、本作の質の高さを物語っている。
感想・まとめ
『ふつうの子ども』は、呉美保監督と高田亮脚本家という信頼できる黄金コンビが手がける、現代の子ども映画の新たな地平を切り開く作品だ。
10歳の唯士が初めて知る「好き」という感情を軸に、環境問題への取り組みを通して描かれる子どもたちの成長物語は、大人にとっても懐かしく、そして新鮮な体験となるだろう。嶋田鉄太をはじめとする子役キャストの自然な演技と、蒼井優、風間俊介ら実力派大人キャストの絶妙なバランスも見どころの一つだ。
「子どもも大人も、共に楽しめる映画」を目指した本作は、きっと観る人の心に温かな余韻を残してくれるはず。世界最古の子ども映画祭でのワールドプレミアを経て、9月の日本公開が今から楽しみな一作である。
映画『ふつうの子ども』は9月5日(金)より、テアトル新宿ほか全国公開!