『クロース』は、郵便配達員のジェスパーの視点から語られる子供たちに笑顔を届ける、トナカイのそりで年に一度やってくる「あの人」の物語。
町はずれにひとり暮らすクロースとジェスパーが不思議な縁で出会い、子供たちに笑顔を与え、争いの絶えない町に平穏をもたらす心温まるストーリーです。
お坊ちゃま気質のジェスパーの成長物語で、ジェスパーとクロースの友情物語でもある『クロース』。ふたりが紡ぎ出したクリスマスの奇跡を描いています。
・怒りと憎しみに生きる町
・ノルマ達成のための手紙
・子供たちの笑顔が町を変えた
・消えてしまったクロース
それでは『クロース』をレビューします。
目次
【ネタバレ】『クロース』あらすじ・感想
横着な郵便配達員
ジェスパー(ジェイソン・シュワルツマン)は、郵便局長の父のコネでロイヤル郵便アカデミーに在籍するのに、学ぶ姿勢が全くない落ちこぼれ生徒。
恵まれた家庭に育ち、甘えた態度のジェスパーに、手を焼く郵便局長は、荒療治でジェスパーに極寒のスミレンズブルグに赴任を命じます。
1年間で6000通の手紙を届ける実績をつくらないと勘当すると、厳しいノルマを課した父に従い、ジェスパーはしぶしぶアカデミーを後にしたのでした。
いがみ合うクラム族とエリングボー族
スミレンズブルグに足を踏み入れたジェスパー。
そこは、世界から切り離された寒くて辺鄙な場所というだけではなく、長年クラム族とエリングボー族が町を二分する争いを続けている陰鬱な町でした。
住民たちの敵対は激しく、お互いの足を引っ張り合い、子供たちの交流も禁止して、学校にもやらない徹底ぶり。
1年で6000通のノルマを課されているジェスパーは、ただでさえ厳しいタスクの絶望的な状況に、暗い気持ちになるのでした。
それでも父に勘当されたくないジェスパーは、住人たちに手紙を出すようにお願いしてまわっては断れ、最後にたどりついたのが町はずれに住む木こりのクロース(J.K. シモンズ)の家。
大きな身体の近寄りがたい雰囲気のクロースに驚いて家に逃げ帰ったジェスパーでしたが、ひょんなことでジェスパーに子供におもちゃを届けてほしいと、逆にクロースの訪問を受けます。
口数の少ないクロースにせっつかれ、戸締りの厳重な家に煙突から侵入して、こっそりおもちゃを少年に届けたジェスパー。
その時、クロースの子供に向けた小さな思いやりが、その後のジェスパーの運命を大きく変えると、この時は思いもよらないのでした。
蔵商店
子供の顔を照らすランタンの明かりは、気分が沈みがちな町に住む子供の心にともる明かりにも似て、とても暖かな気持ちになります。
手紙を出してごらん
ジェスパーの届けたクロースのおもちゃを喜んだ少年をきっかけに、クロースに出す手紙を手に子供たちがやってくるようになった郵便局。
6000通の手紙を配達できるチャンスだと、ジェスパーは、子供たちにクロースにおもちゃを送ってくれるようお願いする手紙を書くようにはっぱをかけます。
そしてクロースには、子供たちの願いに応えるように協力を頼んだジェスパー。こうしてクロースとふたり、夜中に出かけては、子供たちにおもちゃを届けるようになったのです。
クロースのおもちゃに歓喜する子供たちが、続々と手紙を出しにくるようになったことで、一族の争いのせいで学校に行かず字が書けない子供たちがいることにジェスパーは気づきます。
贅沢な暮らしに戻りたいだけのジェスパーは、子供たちに手紙を書かせるのに、学校に戻るように話すのでした。
蔵商店
クロースの無私無欲の思いやりがきっかけで、子供たちの好奇心が刺激され学習意欲を駆り立てる展開がなにより素晴らしい!
子供にとって教育はなによりも大切なもので、大人は子供たちの成長機会を奪ってはいけないと物語は教えてくれるのです。
子供たちの純粋な姿
クロースのおもちゃのプレゼントが評判を呼び、クロースに手紙を書きたい一心で学校に行き始めた子供たち。
いがみ合う大人たちが子供を学校にやらず、教師として働く機会を奪われ腐りきっていたアルバ(ラシダ・ジョーンズ)も、子供たちの学びたいと願う純粋な気持ちに応え、教師としてのやりがいを思い出します。
そしてジェスパーの「クロースは全部お見通し、いい子だけがおもちゃをもらえる」という言葉に子供たちはビックリ。誰にでも優しく、親切に接する子供たちの頑張りは、大人たちの心をも動かし、思いやりや助け合いの精神が芽生えさせたのです。
こうして長く憎しみにとらわれた町から、争いがなくなり、大人も子供も垣根を超えた交流をする穏やかな町へと生まれ変わっていくのでした。
蔵商店
ジェスパーの心に生まれた変化
長年、争い続けてきたクラム (ジョーン・キューザック)とエリングボー(ウィル・サッソ)は、ジェスパーとクロースのふたりがもたらした町の変化が面白くありません。
両家で手を組んで、ジェスパーを追い出そうと手紙の数を操作して1万4千通に達したと、ジェスパーの父に連絡する暴挙に出ます。当初は、元の贅沢に暮らしに戻りたい一心で、子供たちにクロースに手紙を書かせていたジェスパーでしたが、父の突然の迎えに戸惑います。
ジェスパーとクロース、子供たちのおかげで、住人たちが笑顔で暮らせる活気あふれる平穏な町となったスミレンズブルグ。
赴任当初はあれほど嫌っていた町を去るのに悩むジェスパーに、かつての自分勝手な姿はどこにもありません。ジェスパーの父は、息子の成長を心より喜ぶのでした。
クリスマスイブの奇跡
純粋は気持ちではなく、ノルマ達成のために動いていたジェスパーに、裏切られた思いでショックをうけるクロースとアルバ。
ジェスパーと心のすれ違ったまま迎えたクリスマスイブ。子供たちに届けるプレゼントをそりに積み込むクロースとアルバの前に現れた、クラムとエリングボーの一族。
クロースの真っすぐな想いを守ろうとジェスパーは、クラムとエリングボーの妨害を阻止しようと友のために身を投げ出します。そして両家の諍いに終止符をうった小さな奇跡。
ジェスパーたちの子供たちへの想いは人々の心を動かし、スミレンズブルグは、平和な町へと変身と遂げたのでした。
『クロース』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
以上、ここまで『クロース』をレビューしてきました。
・郵便配達と木こり
・善意は人の心を動かす
・年に一度会える大切な友達
おとぎ話ではない切口
「誰もが子供の頃に書いたことのある手紙」を語る郵便配達のジェスパーの言葉から始まり、クリスマスイブに子供たちに笑顔を届ける、赤い服をきた白いヒゲのおじいさんの話は、どう生まれたか?を語る物語。
ジェスパーを含め、誰もが自分勝手で、デタラメなスミレンズブルグの町を描く冒頭から、純粋な想いをもつクロースを象徴として、住民たちが希望を取り戻し、再生していく心温まる作品です。
『クロース』に登場するのは、ごく普通の人間たち。子供たちにプレゼントを届けるのは、あくまで郵便配達のジェスパーで、おもちゃ作りが得意な木こりのクロースは、子供好きな孤独なおじいさん。
月夜に浮かぶ空飛ぶそりをひく魔法のトナカイも出てきません。いがみ合いの続く住民の中で、どうしておとぎ話のようなサンタクロース像が生まれたか、子供の目を通して拡大解釈されていく、なんとも楽しいエピソードが、実に愉快です。
純粋な善意は人を動かす
クロースがひとりの子供に放った善意の矢が、ジェスパーと子供たちを巻き込んで、善意が善意をよぶ展開がなによりも魅力の『クロース』。
子供たちの笑顔が、自己中心だったジェスパーの目を覚まし、妻を失いひとり孤独だったクロースを癒し、アルバに教師としての気力をとりもどさせます。
「純粋な善意は人を動かす」と、人と人が歩み寄るのに難しいことはいらないと物語は伝えます。
きっかけはクロースのおもちゃ欲しさや、ノルマ達成のための行動だったかもしれませんが、その優しさや思いやりが本物になったとき、人は本来の輝きを見せるのです。
クロースの物語
ラストシーンでは、消えていなくなってしまったクロースを、年に一度だけ会える友達と穏やかに語るジェスパー。
クリスマスの精霊となったクロースが、鈴を鳴らしながらやってくるエンディングに、感動を覚えると思います。
蔵商店
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