2023年、原作者である水木しげる氏の生誕100周年記念として生まれたアニメ映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』。
2018年に製作された『ゲゲゲの鬼太郎』のテレビシリーズ第6期をベースに、”鬼太郎の誕生”の秘密、かつての目玉おやじである”鬼太郎の父”と”水木”との出会い、その二人が立ち向かう運命を描いた映画作品です。
この記事では、公開から3日間で興行収入1.6億円、観客動員数11万1500人を記録する大ヒットとなった本作のあらすじや見どころをご紹介していきます。
目次
アニメ映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』登場人物・キャスト
鬼太郎の父(ゲゲ郎)/CV.関俊彦
・幽霊族の末裔であり、かつての”目玉おやじ”
・行方不明の妻を探すため、哭倉村へ向かう
水木/CV.木内秀信
・血液銀行に務めるサラリーマンで、龍賀一族が経営する龍賀製薬を担当している
・龍賀時貞の死後、密命を背負い、自身の出世のため一族に近付くべく哭倉村へ向かう
龍賀沙代/CV.種崎敦美
・龍賀家長女である乙米と克典の娘
・哭倉村から出たことがなく、東京に憧れている
長田時弥/CV.小林由美子
・龍賀家三女である庚子の息子
・身体が弱いが人懐っこく、水木やゲゲ郎にもすぐに心を開く
龍賀時麿/CV.飛田展男
・龍賀家長男
・何年も人前には出ていない
龍賀孝三/CV.中井和哉
・龍賀家次男
・村の禁を破り心を亡くし、ひたすら絵を描くことに没頭している
龍賀乙米/CV.沢海陽子
・龍賀家長女
・夫である克典との夫婦仲は険悪で、突然訪れた水木のことも良く思っていない
龍賀克典/CV.山路和弘
・龍賀家長女である乙米の婿
・龍賀製薬の社長で、時貞からの信頼も厚く、水木のことを気に入っている
龍賀丙江/CV.皆口裕子
・龍賀家次女
・若い頃に男と駆け落ちしたが、連れ戻されている
長田(龍賀)庚子/CV.釘宮理恵
・龍賀家三女
・村長である長田幻治の妻で、時弥の母
長田幻治/CV.石田彰
・哭倉村の村長
・にこやかな顔立ちで、村人からの信頼も厚い
龍賀時貞/CV.白鳥哲
・日本の財政界を裏で牛耳る龍賀家の当主
・太平洋戦争で大きく業績を伸ばした龍賀製薬の立役者であり、時貞の死後、醜い跡目争いが始まる
ある謎の少年/CV.古川登志夫
・おなじみのあの男に似ている長い髭の生えた少年
鬼太郎/CV.沢城みゆき
・人間と妖怪が仲良く暮らす世界を目標に戦う、幽霊族の少年
ねこ娘/CV.庄司宇芽香
・鬼太郎の仲間の猫の妖怪
目玉おやじ/CV.野沢雅子
・鬼太郎の父親
・ある想いを秘めて、鬼太郎とともに哭倉村へ赴く
山田/CV.松風雅也
・廃刊間近の雑誌の記者で、鬼太郎たちに付きまとう
アニメ映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』あらすじ
『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の物語の舞台は、昭和31年と現代の2つの時代に分かれています。
”昭和31年”と”現代”を繋ぐ隠された物語
――現代。
廃墟となっている、かつての”哭倉村”に足を踏み入れた鬼太郎と目玉おやじ。
目玉おやじは、70年前にこの村で起こった出来事を思い出していました。
”あの男”との出会い、そして二人が立ち向かった運命について……。
――時は遡り、昭和31年。
日本の財政界を裏で牛耳る”龍賀一族”によって支配されていた哭倉村。
血液銀行に務める”水木”は龍賀家当主・時貞の死の弔いを建前に野心と密命を背負い、”鬼太郎の父”は妻を探すために、それぞれ村へと足を踏み入れます。
龍賀一族では、時貞の跡継ぎについて醜い争いが始まっていました。
そんな中、村の神社にて一族の一人が惨殺されます。
それは恐ろしい怪奇の連鎖の始まりでした。
【ネタバレあり】アニメ映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』見どころ・感想
昭和映画の雰囲気を持つホラーアニメ作品
『ゲゲゲの鬼太郎』の原作者・水木しげる氏の生誕100周年記念として生まれた本作。
ベースとなっているテレビシリーズ第6期と同様にホラー色が強く、特に製作当初から「大人向けホラー」として作ることが決まっていたといいます。
これまで描かれてこなかった鬼太郎の誕生の秘密、かつての目玉おやじである鬼太郎の父(以下、ゲゲ郎)と水木の出会いが主軸になることもあり、チャレンジングな劇場版となりました。
舞台となる哭倉村は、その土地特有の風習が根強く残る、いわゆる「因習村」。
土着信仰や古いしきたり、閉鎖的な環境から生まれる悪しき風習が蔓延っているという特徴から、ホラーやミステリーの題材になることが多々あります。
古くは横溝正史氏の小説であり映画化もされた『八つ墓村』『犬神家の一族』にはじまり、マンガ・アニメ化された小説『屍鬼』(原作:小野不由美)、ゲーム『ひぐらしのなく頃に』(原作:竜騎士07)、ドラマでは『TRICK』(監督:堤幸彦ほか)など。
近年も、海外映画『ミッドサマー』(監督:アリ・アスター)や、『呪詛』(監督:ケヴィン・コー)が世界的に注目されたりと、さまざまな形態で表現されてきました。
『ゲゲゲの鬼太郎』シリーズでも取り上げられてきましたが、本作を大人向けホラーにするため、前述の『八つ墓村』からインスピレーションを受けて、この方向性に決まったそうです(古賀豪監督のインタビューより)。
過去編の舞台である昭和30年代をリアルに演出するべく、脚本や作画の雰囲気はもちろん、キャストに対しても演技指示が入りました。
当時の日本人の喋り方に合わせた少し早口な演技が求められ、ゲゲ郎を演じた関俊彦氏は、『東京物語』などで知られる小津安二郎監督の作品を参考にしたと語っています(ゲゲ郎役の関俊彦氏、水木役の木内秀信氏のインタビューより)。
こうして戦後日本をノスタルジックに描写し、昭和の実写映画の空気感を演出した本作は、SNSでの口コミを中心に注目度を高めていき、製作陣の予想を超える大ヒットとなりました。
これは昨今のレトロブームとの重なりや、主人公であるゲゲ郎と水木の対照的なビジュアル、キャラクター性が、SNSを利用する若年層に刺さったことが要因の一部と考えられます。
さらに、同じく劇場版が大ヒットした人気マンガ『呪術廻戦』(原作:芥見下々)のような、ダークなストーリー展開とグロテスクな描写を含むバトルシーンが受け入れられたこともあり、何度も劇場を訪れる熱狂的なファンを獲得しました。
二人の男の数奇な運命――”バディもの”としての姿
本作は、後の目玉おやじである鬼太郎の父・通称”ゲゲ郎”と、原作者の水木しげる氏と同じ名を持つ”水木”という、二人の男が主人公です。
まず、水木は血液銀行に務める野心家のサラリーマンで、ある密命を背負い、自身の出世のために龍賀一族の後継争いへ関与し、哭倉村へやって来ます。
一見、強気でクールな都会人に思えますが、先の戦争で玉砕命令を受けながら生き残るという絶望的な過去を持ち、今もPTSDに苦しんでいるようです。
怪我の後遺症なのか足を引きずる描写があったり、当時の早食い癖が抜けていなかったりと、戦地での壮絶な状況が垣間見える一方、その経験が現在の野心に繋がっています。
一方、ゲゲ郎は住所不定無職の謎の人物です。
実は幽霊族の末裔で特殊な力を持っており、行方不明の妻を探して放浪した末、哭倉村へ辿り着きました。
掴みどころがなく、怪しく見えますが、実際には常に冷静で落ち着きがあり、達観した雰囲気の人物です。
人ならざる者らしく人間を好いていないと思われる描写がありつつも、信用した相手や幼い子供にはリスペクトのある行動を取っている姿が見受けられます。
そんな対照的な二人なので、出会った当初は険悪なムードだったのですが、初めて訪れた村の中で部外者なのも二人だけ。
そのため、村で殺人事件が起きてからは隔離され、不本意ながらも行動をともにするようになります。
相容れない二人でしたが、互いの人柄や目的を知るにつれて信頼を寄せるようになり、やがて村の禁域へと足を踏み入れるのでした。
二人は村を調査するうち、龍賀一族が繁栄した理由である「M」という秘薬が幽霊族の血液から作られていること、Mの精製には村全体が関わっていることを突き止めます。
さらに、二人にとっては龍賀家の良心に見えていた沙代や時弥の正体と死、村に巣食う妖怪・狂骨と対峙することに。
物語のラストにはすべての黒幕と戦うのですが、その中でゲゲ郎はやっと見つけた瀕死の妻を水木に託します。
水木は身重であった彼女を大事に抱えて村の外へ脱出しましたが、消防隊に発見された頃には彼女の姿はなく、水木は村での記憶を失っていました。
厚い信頼関係を築いたのに、ゲゲ郎を認識できなくなってしまった水木は、思わぬ形で彼と再会することになるのですが、その後日譚はエンドロールで描かれています。
例えば、『シャーロック・ホームズ』のホームズとワトソンのように、『リーサル・ウェポン』のリッグスとマータフのように、『MIU404』の伊吹と志摩のように、確立されたバディなのかといえば、ゲゲ郎と水木はそうではありません。
それでも、大事な人を託すことができる、託された人を必死で守れる、そんな関係性は、やはり互いにとって唯一無二の存在になれたからこそだと思わざるを得ません。
こうして二人の男の友情が生んだものは、現代へと続いていくのです。
アニメ映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』まとめ
・『ゲゲゲの鬼太郎』シリーズ初心者でも入り込める前日譚
・バディものとしてもアツい良作!
いかがだったでしょうか。
これまで描かれてこなかった鬼太郎誕生以前の物語をしっかりと展開した『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』。
『ゲゲゲの鬼太郎』シリーズが好きな方も、あまり触れてこなかった方も楽しめるアニメ作品になっていました。
エンドロールまでお見逃しなく!