『桐島、部活やめるってよ』あらすじ・感想!21世紀の邦画史上で「宝」と称される傑作【ネタバレなし】

出典:映画.com

国内の各映画賞を総なめにし、話題を呼んだ『桐島、部活やめるってよ』。

21世紀史上で「宝」と称されるこの作品!

SNSがまだ活発じゃない2012年に公開、口コミが大きなブームを巻き起こしました。

ポイント
  • こんな展開アリなんだ!素直にストーリーの斬新さに感動した!
  • 日本映画の金字塔!以後、活躍している俳優ばかりが集結。今では不可能な旬づくめのキャスティング!
  • 校内ヒエラルキーのあるある感が半端ない!どの高校生に感情移入するかによって、全然感想が違う、面白い構成とストーリー
  • 学生時代の自分から「その後、どう生きてますか?」と映画を通して問いかけられた気がした…

それではさっそく『桐島、部活やめるってよ』をレビューしたいと思います。

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『桐島、部活やめるってよ』作品情報

『桐島、部活やめるってよ』

出典:映画.com

作品名 桐島、部活やめるってよ
公開日 2012年8月11日
上映時間 103分
監督 吉田大八
脚本 吉田大八
喜安浩平
原作 朝井リョウ「桐島、部活やめるってよ」
出演者 神木隆之介
橋本愛
東出昌大
清水くるみ
山本美月
松岡茉優
落合モトキ
浅香航大
前野朋哉
高橋周平
鈴木伸之
榎本功
藤井武美
岩井秀人
奥村知史
太賀
大後寿々花
音楽 近藤達郎
主題歌 高橋優「陽はまた昇る」

『桐島、部活やめるってよ』あらすじ・感想【ネタバレなし】


それぞれの目線の先でわかる…好きな人

金曜日、高校生の日常をそれぞれの登場人物の視点で描いていきます。

前田涼也(神木隆之介)、沙奈(松岡茉優)、沢島(大後寿々花)、実果(清水くるみ)…視線だけで、誰が誰を好きなのか、青春らしい入り乱れた恋模様が分かります。

目線に注目してみると度々キュンとしますよ。

甘い恋もあれば、切ない片想いもあり。

きっと恋をしたことがある人ならば登場人物誰かのキモチに共感してしまうはず。

『桐島、部活やめるってよ』の中で描かれる、校内の一番健全な部分かもしれません。

それ以外は、今後少しずつ壊れてしまっていきます…その崩壊が見どころ!

桐島、部活やめるってよ

閉鎖的な学校という空間の中で、スクールカーストのトップに君臨する「桐島」。

彼の衝撃的な動向が緊急ニュースとして校内を瞬く間に伝わっていきます。

なぜが、桐島の親友や彼女までもが知らなかった桐島退部…穏やかだった普通の金曜日に起きたこの騒動が、やがて大きな波紋となっていきます。

この映画の影響で「○○、○○ってよ」のフレーズが流行りましたよね。

メールの文がほとんどコレでした。キャッチーなこのタイトル、さすが朝井リョウという感じがします。

仲良し上位グループで初めて「桐島、部活やめるってよ」という大ニュースをサラッと言うのが、友弘(浅香航大)。この友弘、要チェックです!

上位グループではパッとしない友弘ですが…友弘が動くと、何かが起きます。

何のためにがんばっているんだろうね…

「何のためにがんばっているんだろうね…」

そう言った実果(清水くるみ)は、この後こう続けます。

「羨ましい…沙奈とか、何も考えてなくて…」と。

一生懸命やっても上には上がいて自分の限界が見える…挫折を味わうことは学生時代にかなりの確率でぶつかる壁です。

どうしようもないんですよね。

実果の抱えている苦悩に胸が詰まります。

だけど、あの時代にぶつかって悩んだ人は強い気がするんです。

他人事とは思えず、頑張れー!負けんなー!そう思いながら観てしまいました。

女子ってめんどくさいね…言われてしまった

女子ってめんどくさいのです。大人になっても面倒くさい部分、かなり残っています。

一番わかりやすいのは、持ち物。

学生時代、ブランドもののマフラーはスクールカースト上位しか身に着けられない。

目には見えない規制がかかっちゃうんです。

この作中でも、梨紗(山本美月)だけが「バーバリーチェック」のマフラーを身に着けていました。おしゃれ女子の定番アイテムですよね。

沙奈(松岡茉優)の大きめシュシュや化粧グッズもそう…よほど周りに許されていないとなかなかドピンクは持ちにくかったりします。

4人組の会話のやりとりは、まさしく女子高生のプチブラックな感じ満載。

梨紗を皆が気遣い持ち上げる感じもリアル。

「そうだったな~」って思い出して懐かしくなりました。

何とも思わずに会話していたら一言「女子ってめんどくさいね!」と言われてしまい…やはり男目線では理解できないところがあるようです。

男性も多少あるようですが、女子ほど厳しくはなさそうです。

バッグに付けているアクセや小物、そういったところから「本当はどの人とどの人が仲良しなのか」…わかりますよ。

細部にこだわって演出されているので、持ち物ひとつ見ても人間関係が理解しやすいようになっていておもしろいんです!

思わず「えー!!」と言った。盲点だった…かすみ(橋本愛)の存在

大人しい印象のかすみ(橋本愛)。

4人組の中では自分を抑え気味の人物です。

しかし、予想できなかった秘密があります。

その秘密を知ったとき、驚きました!やっぱり、物静かなタイプほど底知れない…素直に驚きました。

どんどん人間関係が複雑になるのにも関わらず、混乱せずに観ることができたのが、『桐島、部活やめるってよ』の素晴らしい構成の賜物です。

要所でガッと掴まれるような展開に食い入るように観ました。

のっぺりしているけどいいキャラ、キャプテン(高橋周平)

ソフトな物腰で、常に菊池を部活動へ誘い続けるキャプテン(高橋周平)。

キャプテンとは言えど、3年生の彼はもう引退しているのです。

ちなみにそんなに凄い実力の選手じゃありません。

彼が菊池の近くに寄ってくると、どんな誘い方をするのかちょっとワクワクしてしまいます。

なぜ、彼は続けているのか…理由が鋭角で笑ってしまいました。

答えはラストに明かされますよ。

ラスト20分からはじまる、屋上シーンがすごい!

「特殊な隕石」を蹴ったことにより、屋上でゾンビの反乱がおきます。

まさに下校上!校内ヒエラルキーが壊れていく様子が描かれます。

あっちもこっちも、ゴチャゴチャのようで全て繋がっている屋上の顛末に衝撃を受けます!

吹奏楽の壮大な曲に合わせて、青春の熱と、冷たさと、怖さと、理不尽さと、友情と…いろんな感情を全部料理してくれる感じがしました。

ラスト20分はぜひ瞬き少なめで!

戦おう!ここが俺たちの世界だ。俺たちはこの世界で生きていかなければならないのだから

前田の映画脚本のセリフです。

まさに学校(社会)はこういうものだ!ということを一文で表しているよう…深いな~と思った言葉です。

映画の中でセリフとして聞くのではなく、何気なく発されるんです。

映画部の後輩が前田に「なんでしたっけ?あのセリフ?」といった感じで…なんの感情も込めず、スルッとこの言葉がでてきます。

観ている人の取り方次第で、ひっかかるかどうか…この演出感動しました。

きっと今回は自分に刺さらなかったモノが、まだ隠されているかも。「また観てみたい!」そう思うんです。

カメレオンのように、その時々でジーンとくる場面が違ったり、新たに発見したり、観る側の感情にフィットしてくる映画です。

評価が高いのもうなずけます。

フィルムだとなんかいいの?

前田に宏樹が話しかけてきます。前田の熱量に反応した菊池。思わず聞きたくなったのだと思います。

普段は絶対に交流を持つことなどないふたり。屋上の壮絶な戦いのあと…そのやりとりがとても印象的です。

菊池がファインダーを覗いたら、クラスメイト前田の本当の姿が見えました…。

前田がファインダーを覗いたら、人気者(菊池)の本当の姿が見えました…。

このシーン、かなりグッときました。

人間は人間に影響されるということを改めて実感。

自分が何者か模索する時期に、お互いの存在はかなり眩しかったはず。

ただ、1対1でファインダーを覗いたときに、見えたものがあったのだと感じました。

神木隆之介と東出昌大のイイ化学反応が生まれています!必見です!

生きていると視野が狭くなりがちですよね。

映画部顧問の「自分の半径1メートル理論」、大人がこんな事いってちゃダメですよね。

たまには出来る範囲で、見る世界をちょっと大きくしてみようと思います。

そうした時に見えてくるものを楽しみにしたいと思えた映画でした。

『鉄男』が気になる

作中に出てくる1989年公開の塚本晋也監督の『鉄男』。

怖いシーンの多い映画でしたが、何故か興味をそそられます。

マニアックな映画まで観る、前田の映画熱の高さが伝わってきました。

その後の人生、オタク最強説。

大人になった前田はきっと大物になってるんじゃないか…そう想像してしまいます。

高橋優「陽はまた昇る」

この映画の滾った感じをエンディングでも感じることができます!

熱い熱い叫ぶような歌唱に、ラストの余韻も冷めず「いい映画みたなー」と浸れること間違いない曲です。歌詞も、かなり熱いですよ。

「同じような孤独を君も感じている」という歌詞があります。

この映画にとてもマッチした歌詞です。

『桐島、部活やめるってよ』まとめ


以上、ここまで『桐島、部活やめるってよ』の感想を述べさせていただきました。

要点まとめ
  • 神木隆之介のオタメガネ、オタク走りとオタ蹴りがリアルすぎ。
  • 学校のトップ桐島の不在から学校中に広がってゆく動揺と人間関係の歪み…ひとつの事象からポロポロと崩れてしまう、学校生活特有の不安定な感じをうまく表現している
  • 前田と武文のアツい友情に胸がキュンとした!
  • 題名にまで名前が入っている「桐島」自体が謎のまま…興味が湧き、どんどん物語に惹きこまれる
  • 爆笑問題の太田光が「(この映画に)ひとり化け物のような女優が出ていた。やけに上手い。」とラジオで絶賛した松岡茉優の演技は必見!

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