東野圭吾の大人気推理小説「加賀恭一郎シリーズ」の最高傑作との呼び声高き名作『麒麟の翼』が映画に!
無念の死をとげることとなった男が、この世を去る直前に命を燃やして愛する息子に残した魂のメッセージを、刑事・加賀恭一郎が見事に読み解きます!
最期に残した2つの親心に泣けるミステリー…愛深き“想い”に触れた時、目頭が熱くなります。
読みながら頭に描いた通りのシーンが次々と出てくると、東野圭吾が称賛した映画の世界が堪能できます。
- 1人の男が謎めいた死をとげる殺人事件を通して「悲劇からの希望と祈り」が描かれる
- 心を揺さぶる天才・東野圭吾が誘う終盤…切ない真実に触れて涙腺崩壊必至
- 2011年を経験した人々の心に優しく寄り添ってくれた物語
それでは、『麒麟の翼 〜劇場版・新参者〜』をネタバレありでレビューします。
映画『麒麟の翼 〜劇場版・新参者〜』作品情報
作品名 | 麒麟の翼 〜劇場版・新参者〜 |
公開日 | 2012年1月28日 |
上映時間 | 129分 |
監督 | 土井裕泰 |
脚本 | 櫻井武晴 |
原作 | 東野圭吾 |
出演者 | 阿部寛 新垣結衣 溝端淳平 松坂桃李 菅田将暉 山﨑賢人 柄本時生 竹富聖花 聖也 黒木メイサ 山﨑努 三浦貴大 劇団ひとり 秋山菜津子 鶴見辰吾 松重豊 田中麗奈 中井貴一 |
音楽 | 菅野祐悟 |
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【ネタバレ】映画『麒麟の翼 〜劇場版・新参者〜』あらすじ・感想
はじまりはあるサラリーマンの死…麒麟像の下で亡くなった青柳武明(中井貴一)
街灯灯る日本橋。
背中を曲げてよろよろと麒麟像の方へと歩いていくスーツ姿の男に巡回中の警察官が気づきます。
「どうしました?」と声をかけながら視線を向けると、突然倒れた男。
よく見ると腹部にナイフが突き刺さり、シャツには大量の血がついています!
「傷害事件発生。日本橋麒麟像前、救急車要請願います!」
警察官が狼狽しながら、無線で緊急要請をかけます。
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このとき刺されて亡くなったのは、建築部品メーカーカネセキ金属の製造本部長・青柳武明(中井貴一)53歳。
亡くなった際、青柳は携帯は持っておらず、所持品は名刺入れとキーケースとハンカチのみ。
凶器として使用された折りたたみ式ナイフの指紋は、布のようなもので拭きとられていました。
刺された現場は江戸橋地下道、そこから日本橋までは歩いて7~8分。
犯行時刻は夜21時頃、まばらですが人通りがある時間帯でした。
「なぜ被害者は胸を刺された状態で交番を素通りして誰にも助けを求めず、歩いてきたのか?」
現場に駆けつけた加賀恭一郎(阿部寛)は疑問を抱きます。
武明のカバンは意外な場所から発見されます。
「お父さんがネットカフェ?」
見つかったカバンの中の所持品・ネットカフェの会員証を見た武明の娘・青柳遥香(竹富聖花)は意外そうに呟きます。
武明の妻・青柳文子(相築あきこ)も「こんなの持ってたかしら?」と小紋トンボ柄のメガネケースを手に取って首を傾げます。
もう一つ、遺族から武明のものと確認できなかったのはデジタルカメラ。
中にデータはありませんでした。
刑事にいろいろ問われても知らないことばかり…遥香が涙ぐみながら後悔の念を語ります。
「駄目だね…私たち。お父さんのこと何にも知らない。刑事さんに聞かれても、なに一つまともに答えられない。もっとお父さんとちゃんと話をすればよかった…」
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青柳のカバンを所持して逃走した容疑者・八島冬樹(三浦貴大)
「俺、えらいことやっちまった…」
恋人である中原香織(新垣結衣)に電話して、声を震わせながら話す八島冬樹(三浦貴大)。
彼は直後、職務質問してきた警察官から逃げてトラックに轢かれて亡くなります。
冬樹がいたのは、青柳が刺された現場から800m先の浜町緑道。
そしてなんと、冬樹は青柳武明の財布やカバンを所持していました!
青柳武明殺しの容疑者が死亡したことで、事件は暗礁にのりあげます。
捜査会議が行われ、冬樹を被疑者として捜査する方針に決定。
小林主任(松重豊)は「冬樹が犯人ならば、事前に凶器を用意していた点が気になる」と述べます。
用意周到、明らかに殺意を感じる凶器。
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調べてみると、以前冬樹は国立にあるカネセキ金属の工場で派遣勤務していました。
同僚・横田省吾(柄本時生)によると「冬樹は半年前クビになった」と。
冬樹はクビ直前に工場内で起きた事故で腰を痛めたのに、労災の届け出をしてもらえず、さらには雇用期間終了前に一方的に契約を切られ解雇…その後、再就職先がみつからずにずっと苦しんでいたといいます。
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“労災隠し&強引な派遣切りへの逆恨みによる冬樹の犯行”というのが、捜査本部の見解でした。
「いち派遣社員が本社の本部長を?それも、解雇から半年も経って?」
まだ腑に落ちない小林主任は、ナイフが八島冬樹のものだという証拠がない点を指摘。
冬樹が被疑者と知った香織は「彼はそんなことしない!」と擁護します。
ナイフも見覚えがないと証言しました。
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刺殺された青柳武明(中井貴一)、事件前の不可解な行動の謎…無駄足捜査を駆使して探れ!
加賀恭一郎の相棒は、いとこの松宮脩平(溝端淳平)。
脩平は、恭一郎の亡き父・加賀隆正(山﨑努)刑事に捜査の基本を叩きこまれたエリートです。
「無駄足をどれだけ踏んだかで捜査の結果が変わる」と叔父さんに教えられたと言って、父譲りの恭一郎の無駄足とも思える捜査活動に付き合ってくれます。
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人形町界隈マスター・加賀が、次々と真相へ繋がるピースを見つけだします。
- メガネケースは人形町の土産店・ほおづき屋で購入したものと判明
- 日本橋のカフェ黒茶屋店員・青山亜美(黒木メイサ)の証言
- 「半年前までこの辺りに来たことはなかった…歩いてみるといい街だ」と武明が言っていた。ジャーナリストで観察眼の鋭い亜美が言うには「デジタルカメラは、目的があって何かを撮影するために持っていたようだ」と。
- 武明が半年前から勤め先近くの西新宿にあるネット王国というネットカフェへ度々通っていた
- 家族にはゴルフと嘘をつき、土日の休日に外出していた
- 武明が百羽鶴奉納をしながら“日本橋七福神めぐり”をし、その様子を写真に納めていた
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嘘をついてまで、武明が訪れていた人形町界隈とネットカフェ。
「青柳さんは人形町やネットカフェで何を?」
加賀も注目する、殺害されるまでの直近で普段とは明らかに違う武明の行動が2つ!
一つ目は、事件3日前になぜか息子である青柳悠人(松坂桃李)の母校・修文館中学に電話していたことです。
武明の電話相手は、悠人が所属していた水泳部の顧問・糸川肇(劇団ひとり)。
「最近、息子との仲がうまくいかず悩んでいる」という相談内容だったと糸川は証言しました。
二つ目は、不可解な武明の行動の最大の謎。
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犯行時間からして、そのときに一緒だった人物が犯人の可能性が高いと推測されます。
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罪を抱えたまま生きる恐怖…青柳悠人(松坂桃李)がずっと隠し続けた中3夏の過ち
生前の武明が気がかりだったのは、息子の悠人が中3の夏から大好きだった水泳を辞めてしまったこと。
水泳部でスイマーとしての才能に秀でていたのになぜ…。
悠人に泳ぎを教えたのは武明だったため、無念でなりません。
武明は“悠人が水泳から離れた真相”を、探りはじめます。
半年前から突如はじまった武明の日本橋七福神巡りの目的は、悠人が水泳を辞めてしまったことに深い関係が。
さかのぼること3年前、暑い夏の夜。
悠人の後輩・吉永友之(菅田将暉)が、夜の修文館中学プールで溺れてしまうという事故が起こります。
その場には、悠人と杉野達也(山﨑賢人)と黒沢翔太(聖也)が一緒にいました。
異変に気づいて駆けつけてきた顧問の糸川は、溺れた友之に心臓マッサージを施しながら悠人たちにこう告げます。
「このことは誰にも言うな!お前たちはいなかったことにしろ!」
友之は、一命はとりとめたものの意識がない状態でそのまま何年も目覚めることはありませんでした。
糸川の助言通りにした悠人たち。
事件は、“友之が一人で夜のプールに忍び込んで溺れてしまった事故”として処理されました。
実は…友之が溺れてしまったのは、悠人たちからの過度な練習強要のせいだったのです。
久しぶりに麒麟の翼見てたんだけど
やっぱりこのスリーショットって
今思えば凄いですねぇ😭😭😭#麒麟の翼 #松坂桃李 #菅田将暉 #山崎賢人 pic.twitter.com/dnQPnyPvRP— ♡ (@tor__m_kk) March 11, 2017
事件の夜、悠人たちは水泳大会でミスを犯した友之に罰として特別練習をさせていました。
泳ぐことから離れ、罪の意識が消えぬまま2年。
悠人は、友之の母・吉永美重子(秋山奈津子)が綴っている友之の看病日記ブログ“キリンノツバサ”の存在を知ります。
悠人は“東京のハナコ”というハンドルネームで、友之のために百羽鶴奉納をしている様子を写真に納めてブログに送るようになりました。
「こんなことしたって許されない。わかってるけど、何もしないよりはマシなんじゃ…」
ブログタイトル“キリンノツバサ”は、友之の母・美重子の思いが詰まったものでした。
日本橋・麒麟像の翼には「ここから日本中に羽ばたいていけるように」という意味があると知った美重子。
「麒麟の翼はきっと、勇気の翼なんだ!」
勇気をもらった彼女は、ブログのタイトルにしたとブログに記載。
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「どうして水泳を辞めた?女の名前で誰にメール送ってる?」
パソコン画面を見た武明から問い詰められ、怖くなった悠人。
その日から口を閉ざして鶴奉納もやめてしまったのでした。
武明は、悠人がかつて修文館中学で事故に遭った水泳部員の母が綴るブログに、“東京のハナコ”として励ましのメッセージを送り続けていることを知ります。
「俺のせいで百羽鶴奉納が途絶えた…後輩の回復を祈る息子の思いを自分が止めてしまった。」
武明は悠人の思いを引き継ぎ、代わりに東京のハナコとして鶴奉納をはじめます。
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八島冬樹(三浦貴大)が、恋人・中原香織(新垣結衣)のため最後に願ったこと
3年前、冬樹と香織は福島からヒッチハイクで上京して荒川区のアパートで同棲をはじめます。
冬樹にはまだ打ち明けていませんでしたが、香織は妊娠中。
彼が殺人者の容疑をかけられたまま亡くなったことで、子どもを産んでいいのか悩みます。
そんなとき、彼女は上京した日のことを思い出しました。
2人を乗せてくれた人に「東京のスタート地点まで!」と行先をお願いした香織。
「日本の道はすべてここからはじまってる。つまり、ここが東京のスタート地点!」
親切なその人が2人を連れて行ってくれたのは、日本橋の麒麟像の前でした。
麒麟像を見上げ、“東京”を実感した2人。
「ばんざーい!」
何度も何度も両手を真っ直ぐ空に伸ばして叫びます。
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あの日を思い出し、「私だけは冬樹くんを信じる!」と決めた香織。
そんな香織のために、加賀は事件当日の冬樹の足取りを必死に捜査します。
すると、冬樹が「必ず今日、就職を決めたい!」と意気込んでいたとの証言が。
なんと事件当日の6月13日は、2人の上京記念日でした。
冬樹はその大切な日に、再出発のチャンスを懸命に掴もうとしていたのです。
そして、彼はその前日に水天宮へお参りに行っていたことが明らかとなります。
香織の妊娠を知らなかったはずの冬樹の書いた絵馬には、「生まれてくる子供のために早く仕事が決まりますように」との願いが記されていました。
香織は、その絵馬を見て子供を産むことを決意します。
カネスエ金属を恨む思いから、出来心で青柳のカバンを持ち逃げしてしまった冬樹。
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加賀恭一郎(阿部寛)が読み解いた、青柳武明(中井貴一)が命を燃やして伝えたかった思い
次第に友之の事故に悠人が関係しているのでは?と危惧しはじめた武明。
真相を知るため、当時水泳部の顧問だった糸川に電話します。
そののち、友之の事故の関係者の1人に会った武明は刺されてしまったのです。
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友之くん事件関係者の中に犯人が…。
加賀に隠ぺいのことを問われ「あのときは子どもたちの将来を傷つけたくなかった」と弁明する糸川。
「あんたのせいで…教え子の将来はどうなった?」
俯く糸川の胸ぐらを掴んだ加賀が吠えます。
「あんたが間違ったことを教えたからだ!“過ち犯しても隠せばどうにかなる”、3年前にそうあんたが教えたから…青柳君は被害者遺族になった。それがあんたが作った将来だ!」
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一方、松宮から「お父さんは麒麟像の下で力尽きた」と聞いてハッとした悠人。
彼は、ブログを久しぶりに開きます。
すると、なぜか“東京のハナコ”は存在し鶴奉納を続けている…この時初めて父が自分の代わりにしてくれていたことを知ります。
事実を知った悠人に加賀が語りかけます。
「3年前、君たちが真実から逃げなければ、お父さんは命を落とすこともなかった。お父さんはきっといつも君と向き合おうとしていたはず、君の過ちに気づいたときも。なぜお父さんが重傷を負いながら、救急車も呼ばず、助けも求めず、あの麒麟像までたどり着いたのか…このブログを見ていたなら、“麒麟の翼”の本当の意味はわかるよね?」
美重子がブログタイトルに込めた切なる思いは、悠人にちゃんと伝わります。
「お父さんは君と向き合う勇気が持てなかったことを悔やんでいた。なんとしてもあの麒麟像までたどり着きたかった。吉永君に君がしてしまったことを償うために。そして、君に最後のメッセージを伝えるために。」
加賀は、武明の車から見つかった、まだ百羽に足りない折鶴を悠人に見せます。
「勇気を持て。真実から逃げるな。自分が正しいと信じたことをやれ。」
加賀を通して、悠人へ父からの願いが伝わったのでした。
加賀が読み解いた青柳武明が最期に残したメッセージは、過ちから逃げないことを願う父心。
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映画『麒麟の翼 〜劇場版・新参者〜』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
以上、ここまで『麒麟の翼 〜劇場版・新参者〜』をレビューしてきました。
- 大人の間違った教えが子どもの未来を狂わせてしまうという怖さ
- 過ちから逃げない…息子に死をもって教えた父の魂のメッセージにグッときた
- 亡くなった2人の男。死の間際に彼らがそれぞれ願ったのは我が子の未来