『キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series』は、まだあどけなさの残るキノと、喋るモトラド(二輪車)のエルメスが、様々な国を巡る物語です。
国と言っても、たいていは都市が一つだけの都市国家で、技術力や法律、人々の価値観などが全く違います。
1話ごとに独立した話となっており、キノ以外の視点で描かれた話も多く、飽きにくい作りです。
感情表現は控えめで、作品にはどこか哲学的な雰囲気が漂っています。
アクションなどは控えめですが、話自体がとても面白く、大人の方が楽しめる作品だと思います。
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目次
『キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series』作品情報
作品名 | キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series |
放送年 | 2017年10月〜2017年12月 |
話数 | 全12話 |
原作y | 時雨沢恵一 |
監督 | 田口智久 |
声優 | 悠木碧 斉藤壮馬 梅原裕一郎 松田健一郎 佐倉綾音 |
音楽 | 出羽良彰 |
主題歌 | オープニング「here and there」 エンディング「砂糖玉の月」 |
『キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series』声優・キャラクター紹介
キノ(声優:悠木碧)
- 本作の主人公で、1つの国には最大3日間滞在というルールで、各地を旅している旅人
- 年齢は10代半ばの、一見すると少年にも見える少女
- パースエイダー(銃)の才能に優れている
- 名前の由来や相棒のエルメスとの出会いは、第11話「大人の国」で語られている
エルメス(声優:斉藤壮馬)
- キノの相棒の言葉を話すモトラド(二輪車)
- モデルは「ブラフ・シューペリア SS100」
- 軽妙で人懐っこいが、独特な哲学を持っており、人の死にも動じることがないドライな性格
- 知識が豊富な反面、よく変な間違い方をした慣用句やことわざを使う
シズ(声優:梅原裕一郎)
- 日本刀を使う、黒髪長身でスリムな容姿の青年
- 誠実で慈悲深く、人助けになるなら無償であっても積極的に引き受ける
- 定住できる国を求めて4輪バギーで旅をしている
陸(声優:松田健一郎)
- シズと共に旅をする人語を話す白い犬
- 「シズ様の忠実なる下僕」を名乗っている
- シズを助けたこともあって、キノに対しては好意的だが、エルメスとの仲は非常に悪い
- ふわふわで抱き心地がよさそう
師匠(声優:Lynn(回想)、沢田敏子(老人))
- キノや相棒の男から師匠とだけ呼ばれる女性
- キノに戦闘や銃器の訓練、旅の心得などを教え込んだ
- 欲望に忠実で、自身の利益を最大にするためなら不道徳なことも平然と行う
- 第7話『歴史のある国』で、若いころの話が描かれている
【ネタバレ】『キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series』あらすじ・感想
第1話「人を殺すことができる国」
第1話の「人を殺すことができる国」。
どの話も面白いのですが、もっとも興味深かったのはこの話ですね。
「人殺しが禁止されていない国」と聞けば、道端に死体が転がっているようなとんでもなく荒れた国を想像してしまいますが、実際は違いました。
道端に死体は転がっていませんし、むしろ普通の国よりも穏やかでした。
なぜでしょうか?
「人を殺すことを禁じられていないが、許されてはいない」
商店にはショットガンが置かれているし、老婦人のカバンにも拳銃が入っています。
国民一人一人が人を殺す覚悟と武器を持っているため、その武器を理不尽に振るえば圧倒的多数の周りの人間から殺される。
結果、武器を振るう人間がいない平和な国になっているのです。
この話は、核の抑止力の話に似ています。
現代の地球では、アメリカ、ロシア、中国、イスラエル、イラン、北朝鮮など核を持つ国が増えるにつれて大きな戦争は減っています。
なぜなら核を使った国は、全ての国から袋叩きにあって滅びてしまいますし、核保有国同士で戦争はできないからです。
全ての国が核を持った方が世界は平和になるんじゃないか、という議論は結構あります。
もちろん、一時的に平和にはなるでしょう。
もし、イラクが核ミサイルを実戦配備していたら、イラク戦争は起きなかったでしょうしね。
ただし、核配備による平和は、かなり危ういバランスの上に成り立っています。
アインシュタインは、第3次世界大戦で文明が滅びると予言しました。
人を殺すことができる国も、いったん大きな争いが起きれば、国ごと滅びてしまうでしょうね。
ただし、それは起きるかどうかもわからない争いです。
起きなければ平和なままです。
さて、どちらの方が幸せでしょうか。
とても考えさせられる話でした。
シズと陸
第3話「コロシアム」でキノが出会った、元王子様。
第4話「船の国」、第8話「電波の国」は、シズたちが主役となって描かれています。
4輪バギーで、喋るもこもこの白い犬と、「船の国」で出会った幼女のティーを連れて、定住先を求めて各地を巡る旅人です。
イケメンで刀使いで、喋る犬と幼女を連れた旅人。
定住先なんて見つけなくても、とても楽しそうですけどね。
意外とハードボイルド
『キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series』は、わりと簡単に人が死んだりしますし、キノが殺すこともあります。
人だけではなく、第12話「羊たちの草原」では、羊を大量にひき殺したり焼き殺したりしています。
人の生き死にによって、キノが激高したり動揺することはなく、常に淡々としています。
第11話「大人の国」は、キノが旅を始めるきっかけの話でしたが、さすがにちょっと冷たく感じました。
そんなキノだからこそ、第10話「優しい国」などで少しだけ見せる感情が、とても切なく響きます。
悠木碧さんの少年声も素敵でした。
相棒の喋るバイクのエルメスも、非常に淡々としています。
特に人の生き死にに対してはかなりドライで冷淡に感じるのですが、「まあバイクだからな」と納得できてしまいます。
登場人物でありながらナレーションのような存在感です。
文字も読めないので、キノが音読するシーンが不自然に感じませんし、物語において喋るバイクというのはとても便利な存在でした。
作品の根底にあるモノ
全12話を見終えて、まるで自分がいろんな国を旅したような気分になりました。
そして感じたのは、世界にはいろんな人がいて、いろんな考え方があるんだな、ということです。
もちろん、『キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series』は創作ですが。
どういった生き方が幸せなのか、どういった死に方が幸せなのか。
キノたちは、その答えを探して旅をしているような気がします。
もちろん、登場人物としてのキノたちは楽しいから旅をしているのでしょうけど、作者さんに「こういう人生はどう思いますか?」と聞かれている気分でした。
「人の状況は考え方次第でどうとでもなるよね」
最終話のラストシーンでの台詞。
第3話「迷惑な国」にて、巨大な移動要塞としてキャタピラで移動するこの国は、目的が「旅」であるため、進路上の森などはなぎ倒して進みます。
そして進路上に、他の国があれば、その圧倒的な科学力で押しとおります。
とても迷惑な国ですね。
うん、迷惑な国というサブタイトルに相応しい…と思いきや、なぎ倒された国は平野を封鎖し、高い通行料をふっかけている国でした。
迷惑だったのは移動要塞の国でしょうか、平野を封鎖していた国でしょうか。
平野を封鎖されて困っていたキノにとっては、平野を封鎖していた国の方が迷惑でしたし、平野を封鎖していた国にとっては、移動要塞の国はとても迷惑な国だったでしょう。
視点や考え方を変えれば、違う答えが見つかる。
それを示唆するような話が、多かったですね。
こだわりの表現
キノが訪れる国ごとの微妙な違いを表現するため、美術監督や美術制作会社を各話数ごとに変更する手法がとられているらしいです。
あまり聞いたことがない手法です。
このことを頭に入れて見直すと、違った発見があるかもしれませんね。
やなぎなぎさん
オープニングテーマ「here and there」と、エンディングテーマ「砂糖玉の月」は、共にやなぎなぎさんが担当されています。
『化物語』のエンディングテーマを歌っておられた方ですね。
透明感があり、歌詞と一緒に気持ちが伝わってくる素敵な歌声で、お気に入りの曲になりました。
『キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series』声優/キャラ・あらすじ・ネタバレ感想まとめ
今日5月16日は「旅の日」なのだそうですよ!旅アニメと言えば「キノの旅」ではないでしょうか?
毎回異なる文化を持った国が登場するストーリーはもちろん、旅先の国ごとに背景美術製作会社を変えるなどのこだわりにもご注目いただきたい作品です♪ #キノの旅 pic.twitter.com/ZrLtBhjGfM— TVアニメ『キノの旅』公式 (@kinonotabianime) 2018年5月16日
- 哲学的な雰囲気
- 喋る犬やバイク
- 切ないラストの話もある
昔、原作も読みましたし、アニメも見たのですが、その頃は「退屈だなあ」という印象しか抱きませんでした。
子供だったので、理解できないことが多すぎたんでしょうね。
今回は、物語の奥深さを感じましたし、とても面白かったです。
改めて原作も読みなおしたいですね。
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