日本でも女性の活躍は増えてきていますが、どうしても性差による「差別」は避けられない世の中。
『82年生まれ、キム・ジヨン』では韓国での「女性の社会問題」を主役であるキム・ジヨンとその母親オ・ミスクの2世代を通して赤裸々に描いています。
原作の同名小説は、日本を始め世界中の女性たちや、意外にも男性層にも大ヒットし一大ブームを巻き起こしました。
やりたかった仕事で優秀に働いていたものの、出産と育児で家庭に入り、家事や姑との関係、世間から向けられる目など、あらゆることを抱え込みます。
そして心が病んでしまい、突如自分の中に「別人」が現れるもそれに気づかないジヨン。
そんなジヨンの異変に気付きながらも彼女を懸命に支えていく夫、そしてジヨンの母親オ・ミスクの人生も合わせながら、韓国での女性の在り方を映し出しています。
キム・ジヨン役には『新感染 ファイナル・エクスプレス』や『ヒマラヤ〜地上8,000メートルの絆〜』に出演のチョン・ユミ、ジヨンの夫デヒョン役にチョン・ユミと3回目の共演となるコン・ユ、ジヨンの母親オ・ミスク役には数々のドラマや映画で母親役を演じるキム・ミギョン、ジヨンの弟ジソクには『刑務所のルールブック』『長沙里9.15』のキム・ソンチョルなど豪華顔ぶれがそろいました。
- 韓国社会での「女性問題」を赤裸々に描く話題作。
- 小説と映画の違いを見ても面白い。
- 共演3度目にして初の夫婦役のチョン・ユミとコン・ユの熱演。
それでは『82年生まれ、キム・ジヨン』をネタバレありでレビューします。
目次
『82年生まれ、キム・ジヨン』作品情報
作品名 | 82年生まれ、キム・ジヨン |
公開日 | 2020年10月9日 |
上映時間 | 118分 |
監督 | キム・ドヨン |
脚本 | ユ・ヨンア |
原作 | キム・テソン |
出演者 | チョン・ユミ コン・ユ キム・ミギョン コン・ミンジョン パク・ソンヨン イ・ボンリョン キム・ソンチョル イ・オル キム・ジョンヨン イェ・スジョン ヨム・ヘラン |
音楽 | キム・テソン |
【ネタバレ】『82年生まれ、キム・ジヨン』あらすじ
「別人」になってしまうジヨンに気づくデヒョン
1982年の春に生まれたキム・ジヨン。
アパートのベランダで風を感じながらたたずむジヨンは、時に「閉じ込められたような」気持ちになるときもありますが、優しい夫・デヒョンと2歳になる娘・アヨンとの幸せな生活、そしてなかなか会えない実家の家族がジヨンの生きがいであり、よりどころでした。
キャリアウーマンを目指していたジヨンにとって、結婚・育児・家事の毎日は幸せですが「過酷」です。
いつからか何気ない会話の中で、ジヨンが突如「別人」になることがあると気づくデヒョン。
ある時は最近亡くなった友人になってデヒョンに話しかけてきたのです。
デヒョンはその時は笑っていたのですが、たびたび訪れる「別人」のジヨンによって、彼女を失うのか?と言う不安にさらされていました。
お正月、毎年恒例でデヒョンの釜山の実家に帰省するのですが、嫁として姑に気を使い、さらにデヒョンの姉夫妻も現れ気を揉む中、ジヨンに例の「別人」が現れます。
今回は、ジヨンの母のオ・ミスクになり、「お正月くらい娘を実家に戻してあげてくださいよ」と言ってしまったのです。
驚くデヒョンの両親や姉夫妻。
デヒョンは慌ててジヨンとアヨンを連れて釜山の実家を後にし、その足でジヨンの実家に向かいます。
唯一安心できる場所である実家でも寝てばかりのジヨン。
ミスクが心配するのですが、ジヨンは「大丈夫」というだけです。
その様子を見ているデヒョンは、なんとか彼女を病院へ行かせようとしますが…。
ジヨンの過去と母・ミスクの過去
ある時ジヨンは、自分の過去と母ミスクの人生を思い出します。
ジヨンは姉と世界地図の前ではしゃぎ、いろんな国へ行く壮大な夢を持っていた子供でした。
その後、少し歳の離れた弟・ジソクが生まれ、父や祖母はジソクばかり溺愛するようになります。
高校生の頃には変な男に付きまとわれ父に助けに来てもらいますが「誰にでもいい顔するからだ!」と逆に怒られてしまいました。
大学卒業間近で就職も決まっていない時には父は「早く嫁に行け!」と言うのですが、そこでミスクは初めて父に反論!
ジヨンには「自由に生きなさい!自分の思っている道を歩めばいいのよ!」と言うのでした。
ジヨンは幼い頃、母に夢を聞いたことがありました。
それは「学校の先生になる」こと。
ですがミスクは、弟たちの学費を稼ぐために早いうちから工場での仕事をしなければならなかったのです。
昔は、このようなことは「当たり前」なのですが、その「当たり前」をミスクは子どもたちにさせたくはなかったのです。
ミスクも姑との同居でのストレスや「女の子ばっかり!男の子もいないとね」と、2人の娘を産みながらも言われるプレッシャーなど、傷つきながら生きてきました。
ミスクは、自分の教訓を胸に娘たちは自分と同じような境遇には合わせたくないと、しっかり大学にも通わせ、それぞれの進みたい道へ導いていました。
古風な考えの父の代わりに娘たちをしっかり育てていたミスクですが、それでも長男・ジソクとの扱いに差が出てしまうことがあります。
かとリーニョ
厳しい現実と受け入れられない事実
育児と両立しながらもなんとか働きたいと思ってるジヨン。
昔の職場の友人から「尊敬していた上司が起業したのよ」と聞き、ジヨンは思い切って尊敬していた上司に連絡を取り、久々に会うことになります。
そして上司もジヨンの力を借りたいと採用してくれたのです。
それを聞いたデヒョンはジヨンの病のことが心配でしたが、「ジヨンが幸せでいられるなら」と就職することを受け入れ、デヒョン自身も育児休暇を取ると言い出します。
デヒョンの言葉に感激し、心はずむジヨンは母ミスクにも連絡。
ミスクもジヨンの仕事復帰を応援し、アヨンのお世話もするから頑張ってと激励してくれますが…。
ジヨンの様子を気にした姑がジヨンに電話をかけると、彼女の「私、働きます!デヒョンさんも休暇を取って協力してくれるんです!」という報告に激怒してしまいます。
姑は「デヒョンをそんな風に育てたつもりはない!育児休暇なんて!デヒョンの収入がなくて、何ができるというのですか!」と言い、ミスクにも電話を入れました。
事実を確認しようとミスクは、デヒョンと共にジヨンの元に行きます。
姑からの言葉でショックを受け放心状態のジヨンにそっと声をかけるミスク。
そして突如ジヨンは母に「別人」になった姿を見せるのです。
病と向き合うこと
母ミスクの前で「病」が出てしまったジヨン。
そしてミスクは、あまりのショックにどうしたらいいのかわからず、家でも寝込んでしまいます。
ミスクの見たジヨンは、「ミスクの姑」として言葉を発していた別人でした。
ジヨンの実家では、父親がジソクのために漢方薬を煎じてもらったと持って帰ってきていましたが、ミスクが突然「ジソクばかり!男ばかり!ジヨンにも漢方薬を持って帰ってこれないの!」と激怒。
家族は驚きそしてジヨンの現状を知ることになります。
そしてジヨンは、夫デヒョンからスマホのとある動画を見せてもらい、やっと自分の病を知ります。
涙ぐみ、気づいてなかった自分の病を教えてくれてありがとうとデヒョンに感謝するジヨン。
デヒョンはジヨンを失うのが怖かったとなかなか言えなかったことを告白します。
テーブルの真ん中で手を取り合い、これから病に共に立ち向かう決意をした2人。
覚悟を決め病院に向かい診察室に呼ばれたジヨンに担当の医師は、「ここまで来てくださっただけでも立派な治療です。」と優しく言います。
精神科まで連れてくるのと、受け入れるのすら大変で、なかなか診察までこれない人が多いのが現状の中、ジヨンはひたむきに治療に向き合います。
復帰しようとしていた上司のオフィスに向かい、復帰はできないと伝え、さらに「精神科に通っているんです」と正直に話すジヨン。
そして数年が経ちました。
アヨンのお迎えに行くデヒョン。
そしてポストを覗き書類に目を通すジヨンの姿が…。
かとリーニョ
【ネタバレ】『82年生まれ、キム・ジヨン』感想
全ての女性が声をあげる世の中へ
女性の活躍も目立つようになってきた時代ですが、育児や家事、仕事の両立、ここまで理解してくれる人もまだまだ少ないようです。
かとリーニョ
のジヨンのようにまだ2歳の子どもはとっても手がかかりますし、まだまだ意志の疎通も難しく、余計にストレスが溜まってしまうのもとてもわかります。
最近では、育児休暇制度の定着で仕事に復帰する女性も増え、よくなってきたなと思うことが多かったのですが、『82年生まれ、キム・ジヨン』を見て「現実の厳しさ」を痛感しました。
かとリーニョ
「母親が笑顔だと、その家は幸せだよ。女性が笑顔だと、世界は幸せだよ。」
女性の位置づけがとても大切なのを現した言葉だと思うのですが、まさに本当だなぁと思います。
かとリーニョ
もちろん、全ての女性にご覧頂きたい映画でありますが、ぜひ「男性にも!」ご覧頂きたい!
これから結婚される方、すでに結婚されている方、全ての男女へ…。
また小説もぜひ読んでみてほしいです。
『82年生まれ、キム・ジヨン』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
メイキング映像と共に紡がれる
映画『82年生まれ、キム・ジヨン』
特 別 映 像 解 禁 #チョン・ユミ、#コン・ユ、#キム・ドヨン 監督それぞれが
決意と覚悟を持って本作に挑んだ姿が
収められています#82年生まれキムジヨン 大ヒット公開中!#これは私の物語 pic.twitter.com/AYnhzkPniG— 映画『82年生まれ、キム・ジヨン』絶賛公開中! (@KimJiyoungJP) October 14, 2020
以上、ここまで『82年生まれ、キム・ジヨン』をレビューしてきました。
- 全ての女性に、さらに「男性」にもご覧頂きたい作品
- 「育児うつ・産後うつ」という病とはどんなものなのか?
- 「女性が笑えば世界は幸せ」、女性が凛と声あげれますように。