映画館に行くと何度も予告で流れていた作品。
上海国際映画祭で、金爵賞アニメーション最優秀作品賞を受賞しただけのことはあり、主人公・向水ひなこの思い出が、あの曲を聞いただけで思い出すことができる不思議な感覚に陥りました。
辛いことから逃げず、どう乗り越えていくか。
そして、大事な人との思い出は、幾年たっても消えず、「思い出」の素晴らしさを感じました。
映画を見終わった後も、気づけば「あの歌」を口ずさんでしまい、素敵なシーンは手に取るように脳裏で蘇ってきます。
- 海、波、消防の水、コーヒーなど、様々な「水」の表現が楽しめる。水の中に映る港も必見。
- 港がいろんな意味でイケメン過ぎて…3次元に幻滅する
- 港を失ったひな子。死とどう向き合い、どうやって前に進むか。悩む人に生きるエネルギーをくれる
笑って泣いて、勇気を出して乗り越えて、元気に前に突き進んでいこう!
そんな気持ちにもさせてくれた作品です。
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目次
『きみと、波にのれたら』作品情報
作品名 | きみと、波にのれたら |
公開日 | 2019年6月21日 |
上映時間 | 96分 |
監督 | 湯浅政明 |
脚本 | 吉田玲子 |
声優 | 片寄涼太 川栄李奈 松本穂香 伊藤健太郎 |
音楽 | 大島ミチル |
『きみと、波にのれたら』あらすじ・感想【ネタバレなし】
とんでもない吊り橋効果から始まった恋
小さいころからサーフィンが好きな向水ひな子は、大学入学をきっかけに、海の近くの家へ引っ越してきました。
1人暮らしを始めるも、荷物を整理することをすっぽかし、さっそく海へGO!
そして波に乗ります。
近くの消防署に努める雛罌粟港は、そんな彼女を訓練中にも眺めていました。
「彼女は、僕のヒーローなんだ」
という謎の言葉をいうものですから、後輩の川村山葵も気になっていきます。
引っ越して間もなくのこと。
無許可で花火を打ち上げる若者たちのせいで、ひな子のマンションが火事に!
普通慌てふためくと思うのですが、ひな子はサーフボードだけ持ち、淡々と屋上へと上がっていきました。
波に乗るひな子にとって、火はそんな怖くないの!?と驚くばかりです。
出動した消防隊。
行方不明の女性が一人いると言われ、山葵は非常階段を使って必死に探します。
屋上に辿り着いたひな子は、全力で自分の存在をアピール。
山葵が屋上へたどり着いたその時です。
真正面からクレーン車で降りてきた港。
人以外を乗せてはいけないのですが、ひな子のお願いを聞き、サーフボードごと彼女を乗せて下りました。
いや、これは惚れますよ!吊り橋効果ってレベルじゃないですよ!
どっちがヒーローだよ!
なんて心の中でツッコみまくりました。
リア充爆発しろ!というほどラブラブだから悲しい
火事での救助がきっかけで、距離を縮めることとなった港とひな子。
サーフィンを教えるという名目で、港はひな子を車に乗せ、波が激しくない海へとデートです。
車の中にはウミガメとイルカに似た“スナメリ”のストラップ。
「Brand New Story」を聞きながら向かった先で、港はフルウェットの水着!
夏なのに…。
何度も何度も練習するうちに、波に乗ることができるようになった港。
すると、ふたりの距離もだんだんと縮んでいきます。
恋人となったふたりは、どこへ行くのも楽しそう。
千葉県のデートスポットと呼ばれるような場所にもいろいろ行きます。
キャンプをすれば、港が美味しい料理を作ってくれます。
大好きなオムライスの作り方を教えてもらうひな子ですが、港の料理テクニックが遥かに高く、港はコーヒーブレンドまでやってくれます。
いいなあ、飲みたい…。
港の誕生日プレゼントには、ビニール製のスナメリ!
空気を入れて、一緒にカラオケで歌っちゃいます。
携帯はふたりそろえるとスナメリの顔になるオシャレな仕様!って、どんだけ仲良しなんですか!?
気持ち悪いほどのラブラブです。
喧嘩のシーンとかなかったような…。
凄まじすぎて言うしかありませんでした!リア充爆発しろ!
コーヒーショップに入れば、「消火器はきちんとあるね」と職業病も発生。
仕事にも真面目、彼女も大事にできる良い男。
3次元に幻滅するほどの彼氏力を発揮する港に愛され、ひな子は世界一幸せでしょう。
さらに!
お互いの名前を書いて飾ると幸せになりというスポットで、港の苗字を書こうとするひな子。
漢字が苦手なうえ、「雛罌粟」なんてサラッとかけません。
必死に悩んだ結果、ひらがなで書くひな子。
仕方がないですよねーって思った矢先、港くんやってくれました。
「自分の苗字になった時どうするんだよ」
最初は何を言っているんだろうという顔をするひな子ですが、その意味がわかると赤面!
見てるこっちもキャーキャーなりました。
思い出すだけで、今でもキャーキャーなります。
しかし、幸せな時間が多ければ多いほど、この先の展開にショックを受けることになるのだろうなあ…と思うのです。
「上げてから落とす」
よくある手法なんですが、とんでもなく上げてくれているせいで、落ち方はどん底ってレベルじゃないです。
港はもういない。しかし水の中にいる
雪が降ったあとの波は一段と大きく、その波に乗ることができれば願いが叶うと聞かされた港は、ひな子が花屋でアルバイトをしている間に1人でその波に挑戦しようとします。
しかし、海に溺れた人を助けたことで、港は帰らぬ人となってしまったのです。
バイト後に駆け付けたひな子でしたが、洋子と山葵から港の死を聞かされてショックを受け、海の見えないところへと引っ越し、引きこもりになってしまいました。
抜け殻状態になったひな子は、実家からの電話にも出ません。
港の死を受け入れられないひな子の元にやってきた山葵と洋子は、彼の遺品を持ってきました。
携帯にはパスワードがかかっており、港がなにを想っていたのかがわからず四苦八苦するひな子。
無気力状態が続く中、ひな子の耳に入ってきたのは「Brand New Story」でした。
「きーみーが 眺めていーる 水面は鮮やかに煌めき」
港と何度も歌った曲を口ずさむひな子。
すると、目の前のコップの中に、シャカポーズをする港が見えたのです。
「港が、いた」
しかし、山葵や洋子、他の誰にも見えません。
ついにおかしくなったのかと思われますが、どうやらこれはひな子の幻覚ではないのです。
ひな子が歌えば、水は形を変え、そして港も出てくる。
橋の上から携帯を落とし歌うと、水が盛り上がって携帯が戻ってきました。
信じられない現象。
ひな子は思い切って橋から飛び降りて歌うと、海の中で港と会い、そして橋に戻されました。
何か未練があって水の中にいる港。
ですが、今のひな子は、港が目の前にいることが嬉しく、それだけで心が救われた気分になります。
ひな子は前に進めない
水筒を買って持ち歩き、港に消防署の様子を見せたり、ビニールのスナメリに水を入れ、一緒にあちこち出かけるひな子。
傍から見たら完全にヤバい人です。
そんなひな子が心配になった山葵ですが、気づけば惹かれていました。
ひな子が花屋で働いているところにやってきた山葵。
花を包んでもらうと、そのままひな子にプレゼントします。
気が動転したひな子はトイレに逃げ込み、便器の中に港を呼びました。
港がいるのを理由に、山葵の想いを受け取ることができないひな子でしたが、港は「あいつは良いやつだ」と背中を押してきます。
死んでもなお、歌が聞こえればひな子の目の前に現れることができる港。
しかし、ひな子に触れることはできません。
目の前でひな子が他の男に声にかけられたとき、港は嫉妬心と共に、守ってあげることができないと嘆いていたのです。
ひな子は、波には自由に乗ることができるが、陸では何にもできません。
料理は苦手だし、勉強も得意ではありません。
だから港は、ひな子が陸でもしっかり地に足を付けて歩けるように支えると約束したことがありました。
だからこそ港は、ひな子には自分がいなくても頑張っていってほしいと思うのです。
ひな子はこれを拒否し続けますが、それではいけないと思う事件が起きます。
ひな子の目の前で車が衝突。
火が出てしまい、ひな子は助けに行かなくてはと一歩踏み出します。
しかし、火の勢いは強く、このまま飛び込めば巻き添えで死んでしまうことは明白。
山葵はこれを必死に止めると、ひな子は歌い、港に助けを求めました。
水のそばで起きた事故だったこともあり、港は水を持ち上げて消化。
しかし、力を使ったせいで港は危うくこの世から切り離されてしまいそうになるのです。
ひな子は初めて「このまま港に頼ってばかりではいけない」と思うようになり、歌うこともしなくなりました。
ひな子の進路、港の過去
長い間海にいることが多かったひな子。
そして、消防士として人を助けていた港の影響を受け、ひな子はライフセイバーの資格を取ることを決意します。
港のように人を助けたい。
港のように海で死ぬ人を出さないために、という想いで挑みます。
しかし人工呼吸の訓練をしようとすれば、横たわる人形が港に見えてしまい、逃げ出してしまうことも。
港に会いたくても呼んではいけないと自分に強く言い聞かせるひな子。
切なくも応援したい気持ちになりました。
そんな最中、洋子は港とひな子の思い出のカフェでアルバイトを始めていました。
いつかはカフェをやりたいという兄の夢を、自分が叶える。そう決めたのです。
ひな子は洋子にお願いし、港のことをもっと知るため、雛罌粟家を訪問。
というのも、ひな子はまだ港が何を思ってあの日波に乗りに行ったのかがわからなかったのです。
携帯のパスワードは、水の中にいる港は教えてくれません。
洋子や山葵、そして自分たちの誕生日を入れても、開かない。
両親が不在のうちにお線香を立て、手がかりをつかむため、ひな子は港の部屋に足を運びました。
壁一面に本!そして筋トレ道具が置かれていました。
共働きの両親に代わり料理をしていた港は、美味しいご飯を作るため、本やテレビで勉強し、コーヒーの知識も本から学んでいました。
毎日筋トレをして消防士として完璧になろうともしていた港。
ひな子はここで初めて、港がカナヅチだったことを知らされます。
それでも必死に泳ごうと努力していた港。
こんな人リアルにいるのだろうか…。
そしてさらなる真実、港は小さい頃に海で溺れかけたことがありました。
陸に上げられた港の記憶に微かに残っていたのは、スナメリのサーフボードを持った女の子だったのです。
そう、港が山葵に言っていた「彼女は、僕のヒーローなんだ」という言葉がここに繋がるのです。
- もしかして携帯の暗証番号は…
- 港がなぜ一人で波に乗ろうとしたのか…
- 港が遺したひな子への想いは…
ここからどんどん紐解かれていき、物語は佳境へと向かって行くのです。
水がとにかくキレイ
海の波、水中、川、コーヒー、水筒、コップの水、ビニールの中の水、そして消防車の水など、あらゆる「水」が表現されています。
透明で少し歪んだ形をしていたり、青いなかに、光が虹色に輝いていたり、勢いよく暴れたり、四角く切り取ったように空中に浮かんで行ったりと、とても不思議で見ごたえがあります。
とくに、映画終盤の水の表現はダイナミックで面白く、息を呑む素晴らしさ。
これは湯浅政明監督が力を入れた部分で、決まった形のない水を描くのが好きで、観察したり実験した結果がこの作品に活かされているみたいです。
普段の生活じゃ考えられないような水の表現。
物事の可能性の広さを感じさせられました。
本当に美しい。
ただ青い水、ではなく時と場合によってこんなに変えていくことができるのかと感心しました。
『きみと、波にのれたら』あらすじ・感想まとめ
\千葉県の #きみ波聖地 🤙/
今回紹介するのは【釣ヶ崎海岸(一宮海岸)】サーフィンの聖地として有名なスポット🤙
港とひな子がよくサーフィンをしている物語の鍵となる海岸です🌊#きみと波にのれたら #きみ波
\大好評上映中🌊/ pic.twitter.com/AcFBKnDMCn— 映画『きみと、波にのれたら』【公式】 (@kiminami_movie) July 22, 2019
- 「Brand New Story」を聞くと、港との思い出とひな子の軌跡が蘇る
- 最愛の人の死を乗り越え、自分の進む道を真剣に見つけるひな子を見習いたい
- 海に行きたくなる。料理が上手になりたいと思うようになる。こんな素敵な恋人がほしくなる!
もしこの映画を最後まで見たなら、主題歌であるGENERATIONSの「Brand New Story」を歌詞を見ながらフルで聞いてほしいです。
さんざん泣いた後に爽やかなこの曲を聞くと、もう一度泣けるし、よりこの作品が好きになります!
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