映画『華氏119』あらすじ・ネタバレ感想!マイケル・ムーア節炸裂、トランプ政権を痛烈に皮肉ったドキュメンタリー

出典:『華氏119』公式ページ

映画『華氏119』はトランプを批判する映画かと思いきや、アメリカという国の問題、トランプを当選させてしまった政治の元からの腐敗や病理を突き詰めて批判し、マイケル・ムーアの意見を盛り込んだ映像エッセイのような作品でした。

ポイント
  • トランプ大統領の誕生に対する2016年11月9日の米国民のリアルすぎる反応
  • そこから始まるアメリカの諸問題への言及
  • 自由過ぎるニュースやバラエティ番組、映画の映像の引用
  • 関係ないように見えた問題がトランプ政権を生んだという批判へ
  • トランプとヒトラーを同一視して徹底批判

それではさっそく『華氏119』についてレビューしたいと思います。

映画『華氏119』作品情報

『華氏119』

出典:映画.com

作品名 華氏119
公開日 2018年11月2日
上映時間 128分
監督 マイケル・ムーア
脚本 マイケル・ムーア
出演者 マイケル・ムーア
ドナルド・トランプ

映画『華氏119』あらすじ


2016年11月。共和党のドナルド・トランプは、アメリカ合衆国大統領選挙で民主党のヒラリー・クリントンを破り、第45代大統領の当選が確定する。

数々のドキュメンタリー作品で自ら取材を行ってきたマイケル・ムーア監督は、トランプについて取材し、トランプを当選させたアメリカ社会の問題に迫る。
出典:シネマトゥデイ

映画『華氏119』みどころ

『華氏119』みどころ

『ボウリング・フォー・コロンバイン』『華氏911』などのマイケル・ムーア監督が、アメリカ合衆国第45代大統領ドナルド・トランプに迫るドキュメンタリー。

自身が突撃取材を行うスタイルで知られるムーア監督がトランプファミリーが崩壊しそうなネタを暴露し、トランプ政権による暗黒時代からどのように抜け出すかを示す。
出典:シネマトゥデイ

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【ネタバレあり】映画『華氏119』感想レビュー

トランプ大統領誕生の瞬間

まず2016年11月9日、大統領選挙開票の日が描かれます。

マスコミや世間の予想はみんなヒラリー・クリントンが勝つと予想していました。

アメリカの女性たちは、ついに女性大統領が誕生すると沸き立っていました。しかし、結果はトランプが当選。

ワシントンのリベラルたちが熱狂から絶望に包まれる様が描かれます。

そして、見ていて一番「え?」っとなるのは、当のトランプやその選挙陣営たちが静まり返って暗い様子なこと。

大統領に当選したのにまったく喜んでいなかったのです。

ナレーションでマイケル・ムーアは「トランプはおそらく大統領になるつもりはなかった。自分のビジネスの宣伝を兼ねて出馬し、落ちた時はいつもの強弁で選挙システムを批判していただろう」と語ります。

それでもトランプは大統領になってしまい、イスラム系の入国を制限し、メキシコとの間に壁を作り始めました。

また人工中絶を規制する法律を通そうとしたり、銃規制を緩めようとしたりと、リベラル層の意見とは程遠い政治をしています。

そんなトランプを支持しているのはアメリカの少数派の人々。

アメリカの人口4億人のうち、投票したのはたった6000万人ほどでした。

しかし無党派層で投票に行かなかった人々が1億人以上いたために、トランプが大統領になってしまったのです。

華氏とは温度のこと。

マイケル・ムーアの過去作『華氏911』は、9.11テロをきっかけにアメリカが国民の反対も押し切ってイラク戦争に突入することになってしまったことを批判する映画でした。

アメリカの民主主義が燃え尽きてしまう温度という意味で、『華氏911』というタイトルになっていました。

つまり本作の『華氏119』というタイトルは、トランプ当選の11.9にちなんで、アメリカの民主主義が燃え尽きる温度が911度から119度に一気に下がったという皮肉も込められているのです。

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ミシガン州フリントでの悲劇と民主党への批判へ

本作は「トランプ政権がひどいなんてことはもはや大前提」としたうえで、そんな事態になってしまった原因を糾弾しています。

ちなみに、この映画はマイケル・ムーアがエッセイのように思ったことをしゃべりながら、それに対応した記録映像、ニュース映像、フィクションからの引用が流れるのですが、それがあまりに多様かつ大量で情報が洪水のように雪崩れ込んできます。

集中して見ないと置いてけぼりにされます(笑)

ムーアは、まずヒラリーが大統領選でアメリカ中部の衰退した重工業の労働者が多い地域を無視していたことを非難。

トランプはその地域で頻繁に演説し、労働者たちを救済すると語っていたので、票を大量に獲得したのです。

しかしムーアは、過去の悲劇を鑑みてトランプがその地域を救うと言うのも信用できないと言います。

実はミシガン州のフリントという町では、2010年にミシガン州知事スナイダー氏が公共事業を民営化して、コスト削減のため五大湖からではなく近くの水質の悪いフリント川を水道の水源にした結果、生活用水に訛りが混入し多くの人が健康被害を受けるという悲劇が起きました。

しかし、そんなことが起きてもスナイダ―は何の罰も受けることなく州知事任期を満了。

そして当時のオバマ大統領も民主党もフリントの人々を救うこともなく、ろ過した水を飲んで見せるというようなパフォーマンスをするだけで問題は放置されました。

それはアメリカの政治が拝金主義に毒されているからだと語るムーア。

その問題は民主党も共和党も関係ないのです。

その後言及される、銃の所持を規制せずに各地で乱射事件の悲劇が起きることや、教師の職場の待遇がひどいままであることなども、一見関係ないことに見えて政治体質の問題だと語られます。

そしてムーアは政治家たちだけでなく、政治に対しあきらめの感情をもち、大統領選で55%しか投票に行かなかったアメリカ国民たちにも怒りを向けます。

ムーアは「アメリカは左派の国だ」と語ります。

大多数のアメリカ人は社会保障の拡充も人工中絶も銃規制も移民受け入れも支持しています。

しかしその大半が選挙に行かず、反対の考えを持つコアな保守層が投票に駆け付けたため誕生したトランプ大統領は彼らに向けた政治をしてしまっているのです。

国民が無関心無気力になった時に民主主義は崩壊すると語り、かつて世界一民主的だと言われたドイツのワイマール憲法のもとで巧妙に極右的独裁体制を築いたナチス・ドイツとトランプ政権を映像的に重ねながら批判します。

要するにムーアは、様々な諸問題に言及しながら「トランプ政権が誕生したのはあくまで結果。原因はそれまでの政治や、国民一人一人が作り出してしまっていたのだ」と語っているのです。

非常に辛辣な語り口ですが、真理を突いていると思います。

投票に行かないという行為も責任を放棄しているのではなく、政治の悪化という事態の責任を担ってしまっているのです。

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エンタメとして終わらせてくれない現実へのメッセージ

相変わらず容赦のない語り口を見せるムーアですが、希望を持てることも描いてくれています。

2018年2月に起きたフロリダ州バークランドのマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校での銃乱射事件で17人が死亡した事件。

その高校の生徒たちは怒りを爆発させ、全米ライフル協会の支持を受けている議員を落選させようとデモ活動を始めます。

またムーアは、トランプに負けてしまった民主党を変えようとしている20代の若手候補者が当選し、新たな政治を始めているさまもカメラに収めます。

彼らは2020年のトランプ再選を防ごうと前向きに活動しているのです。

ムーアは最後に「アメリカはまだ完璧な民主国家ではない」と語ります。

なぜなら、まだ有権者が全員投票に来ていないからです。

もちろんそれは理想です。

現実になる可能性は低いですが、ムーアはその理想とする社会を“守る”と語っています。

「理想なんてお花畑だ、現実を見ろ」という声もありますが、その理想を守らずに楽な方へ流れるとどんどん世の中は悪化していきます。

これはアメリカだけでなく、日本、いや全世界に関係する話でしょう。

ラストカットでは、銃乱射事件で殺された高校生たちへスピーチを捧げるデモ活動リーダーの女子高生エマ・ゴンザレスさんの姿が映ります。

泣きながらもまっすぐ前を向く彼女の姿に勇気をもらう人も多いでしょう。

決して楽しい気分になれる映画ではありませんが、現実への危機感と戦う意欲をもらえる傑作ドキュメンタリーです。

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映画『華氏119』まとめ

以上、ここまで『華氏119』について感想を述べさせていただきました。

要点まとめ
  • マイケル・ムーア節全開の映像エッセイ
  • トランプ政権ではなく、それを生んでしまった国全体の問題を徹底批判
  • それでも希望も理想も捨てずに前を向くムーア監督や若者たちに勇気をもらえます

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