映画『JUNK HEAD』あらすじ・ネタバレ感想!堀貴秀の狂気がさく裂、海外でも高評価のSFストップモーションアニメ

映画『JUNK HEAD』あらすじ・ネタバレ感想!堀貴秀の狂気がさく裂、海外でも高評価のストップモーションアニメ

出典:『JUNK HEAD』公式ページ

『JUNK HEAD』は2021年3月に公開されたストップモーション・アニメーション映画です。

映像制作経験のなかった堀貴秀監督が独学で制作を開始し、約7年かけて完成させました。

海外ではすでに高い評価を受け、満を持しての日本公開で、ド級の作品として口コミが広まっています。

ポイント
  • 驚異的な情熱によって生まれたストップモーションアニメ
  • 緻密に作り込まれたディストピア世界
  • ストーリーの面白さ、世界観の広がり、クリエイターの価値観と作品の関係

それでは、『JUNK HEAD』をネタバレありでレビューします。

映画『JUNK HEAD』作品情報

『JUNK HEAD』

(C)2021 MAGNET/YAMIKEN

作品名 JUNK HEAD
公開日 2021年3月26日
上映時間 99分
監督 堀貴秀
脚本 堀貴秀
出演者 堀貴秀
音楽 堀貴秀
近藤芳樹

映画『JUNK HEAD』あらすじ【ネタバレなし】


環境破壊が止まらず、地上が汚染されてしまった未来。

人類は生き延びるために地下開発に乗り出し、その労働力として人工生命体「マリガン」を創造します。

しかし、次第に自我を持ったマリガンが人類に反乱を起こし、地下世界を乗っ取ってしまったのです。

『JUNK HEAD』

(C)2021 MAGNET/YAMIKEN

それから1600年後、人類は遺伝子操作によって永遠に近い命を手に入れたことと引き換えに、生殖能力を失っていました。

そんな人類は新種のウイルスの蔓延で、人口の3割が死亡。

絶滅の危機に立たされた人類は、地下世界で独自の進化を遂げ、文明まで作っている「マリガン」の調査を開始することに。

その調査に乗り出したのは、元ダンス講師の男で、体を改造された彼は地下世界で出会ったマリガンたちと絆を深めます。

『JUNK HEAD』

(C)2021 MAGNET/YAMIKEN

そして、一緒に人類再生の道を探すことになるのですが、地下は恐ろしい生物と秘密に満ちていて…。

【ネタバレ】映画『JUNK HEAD』感想

驚異的な情熱によって生まれたストップモーションアニメ

本作『JUNK HEAD』は、映像制作の経験が全くなかった堀貴秀氏がたった1人で作り始めました。

本業の内装業、また過去に絵や彫刻を作っていた経験から、精巧な人形とセットを使ったストップモーションアニメを選びます。

ストップモーションアニメとは、人形を少しずつ動かしながら連続で撮影し、パラパラ漫画のように人形を動かす手法。

ねお

いきなり新人が手を出せる代物ではありません。

しかし、堀監督は実際に映像を完成させるまでに様々な技術を新たに独学で習得し、結果的に原案、絵コンテ、脚本、編集、撮影、演出、照明、アニメーター、デザイン、人形、セット、衣装、音楽までもすべて堀監督が担当しています。

ねお

「どのカットも絵になる構図」にこだわり、実写映画に近いアングルを狙って撮影を進めた、と語る本作の映像には、一瞬たりとも目が離せない迫力と創作に対する驚異的な情熱に満ちています。

緻密に作り込まれたディストピア世界

本作は緻密な地下世界、グロテスクでどこか愛嬌のあるマリガンたちの造形美などとともに、独創的で心踊るディトピア世界が広がっています。

『JUNK HEAD』

(C)2021 MAGNET/YAMIKEN

ねお

『不思議惑星キン・ザ・ザ』や『エイリアン』、『ヘル・レイザー』といった好きな映画から影響を受けている、と堀貴秀監督は語っていますが、壮大で恐ろしいスケール感とストップモーションによる独特な温かみの組み合わせは今までに体感したことのないものでした。

二転三転するストーリーの面白さ

本作『JUNK HEAD』はやはり映像の完成度の高さに注目が集まっていますが、ストーリーの構成も個性的で面白いです。

前半は一直線の鬱展開。

地下世界の調査へ向かった主人公はまず降下中に襲撃を受けて、記憶を失います。

その後、初めこそ親切なマリガンに助けられたものの、凶暴なマリガンからの襲撃を受けて地下世界のさらに下層へ落下。

『JUNK HEAD』

(C)2021 MAGNET/YAMIKEN

襲撃に次ぐ襲撃、下層へ下層へとひたすら落ちていきます。

落ちるたびに体の自由を失い、もはや調査どころか地上に戻ることは絶望的、そもそも生き延びることすら困難な状態に陥ります。

ところが、後半1人の老いたマリガンを助けたところでストーリーの方向性が変わります。

一つ上の階層に戻ることができた主人公は最初の階層で出会った親切なマリガン「3バカ兄弟」と再会。

『JUNK HEAD』

(C)2021 MAGNET/YAMIKEN

ここまでの旅の途中で少しずつ記憶を取り戻していた主人公は地下世界にやってきた目的をマリガンたちに話し、マリガンの生殖に関する重大な情報も入手します。

「3バカ兄弟」と共闘の末、道を阻む凶暴なマリガンを打ち破り、いよいよ地下世界の中心へ。

ねお

鬱展開から一転救いのある展開へ、V字の構成が面白かったです。

本作のラストはマリガンとの戦いまでしか描かれておらず、地下世界の核心に迫ることなく映画が終わります。

ねお

ほとんど前情報なしで観ていた筆者は「え?ここで終わり?」と思ってしまいましたが、堀貴秀監督の脳内には3部作の構想があり、すでに続編の制作が始まっているとのこと。

「ここで終わり」どころか「壮大なサーガの幕開け」です。

『JUNK HEAD』

(C)2021 MAGNET/YAMIKEN

続編は本作から1000年前の事件が描かれる予定となっており、これからさらに広がっていく『JUNK HEAD』の世界に期待が膨らみます。

少女の描写から見る監督の価値観

ところで、映画の中盤から「少女」のようなマリガンが登場して主人公との恋愛へ発展していくような演出が入るのですが、彼女は雌雄や美醜の概念がなさそうなマリガンたちの地下世界の中でかなり浮いているように見えました。

『JUNK HEAD』

(C)2021 MAGNET/YAMIKEN

ねお

「か弱く」「健気な」少女がこの荒廃した世界観でどういう意味を持つのか、あれこれ考えていた矢先、堀監督がTwitterで女性の観客を「奇女・珍女」呼ばわりした、というニュースを知りました。

このニュースによって堀監督が持つ「SFやカルト映画は男性が好むもの」という偏見が露呈しましたが、価値観の根底に男女二元論があるからこそ超常的なディストピア世界なのにステレオタイプな「少女」が登場してしまうのだろう、と納得しました。

『JUNK HEAD』

(C)2021 MAGNET/YAMIKEN

ファンタジア国際映画祭最優秀長編アニメーション賞を受賞したほか、世界的に高い評価を受けている本作は性別や国籍に関係なく注目されて当然です。

ねお

実際に本作は素晴らしい作品であり、続編にも期待が高まっているからこそ、時代に合わせてクリエイター自身の価値観がアップデートされていくことを願います。

映画『JUNK HEAD』あらすじ・ネタバレ感想まとめ

以上、ここまで『JUNK HEAD』についてネタバレありでレビューしました。

要点まとめ
  • 絶望から希望へ、前半と後半でがらりと変わるストーリーの方向性が面白い
  • 本作は「シリーズ第1作」ここからさらに広がる壮大なサーガに期待が膨らむ
  • より良い続編のためにも、古い価値観からの脱却を期待