『ジュリアン』あらすじ・ネタバレ感想!フランスで社会問題のDVをシビアに描いた傑作サスペンス

映画『ジュリアン』あらすじ・ネタバレ感想!

出典:『ジュリアン』公式ページ

今、フランスでもっとも社会問題となっているDV(家庭内暴力、ドメスティック・バイオレンス)について、シビアに描いたヒューマン・サスペンス。

本作『ジュリアン』でもっとも恐ろしいのは人間の心の奥に潜む、憎悪が増幅した悪い感情です。

この物語は、誰にでも起こり得る話です。

隣人が、ご近所が…。身内の誰かが、突然牙を向いてきます。

それではさっそく映画『ジュリアン』をレビューしたいと思います。

『ジュリアン』作品情報

映画『ジュリアン』作品情報

出典:映画.com

作品名 ジュリアン
公開日 2019年1月25日
上映時間 93分
監督 グザヴィエ・ルグラン
脚本 グザヴィエ・ルグラン
出演者 レア・ドリュッケール
トーマス・ジオリア
ドゥニ・メノーシェ
マティルド・オネヴ

『ジュリアン』あらすじ


11歳の少年ジュリアン(トマ・ジオリア)は、父アントワーヌ(ドゥニ・メノーシェ)と離婚した母ミリアム(レア・ドリュッケール)と姉の三人で暮らすことになる。

親権は共同となり、ジュリアンは父と隔週の週末を一緒に過ごさなければならない。

アントワーヌは、自分と会おうとせずに連絡先も教えないミリアムの所在を、ジュリアンを通じて探ろうとする。

ジュリアンは、母を守るために父にうそをつく。
出典:シネマトゥデイ

『ジュリアン』みどころ

映画『ジュリアン』みどころ

第74回ベネチア国際映画祭で最優秀監督賞にあたる銀獅子賞に輝いたヒューマンドラマ。

離婚した両親の板ばさみになる少年と家族の行く末を描く。

メガホンを取るのは『すべてを失う前に』のグザヴィエ・ルグラン。

『青の寝室』などのレア・ドリュッケール、『晴れ、ときどきリリー』などのドゥニ・メノーシェらが出演する。
出典:シネマトゥデイ

『ジュリアン』を視聴できる動画配信サービス

『ジュリアン』は、下記のアイコンが有効になっているビデオ・オン・デマンドにて動画視聴することができます。

なお、各ビデオ・オン・デマンドには無料期間があります。

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注意点
  • 動画の配信情報は2019年8月25日時点のモノです。
  • 動画配信ラインナップは変更される可能性もありますので、登録前に各サービスの公式ページにて必ずご確認ください。

ご覧のとおり、2019年8月25日現在はどこのビデオ・オン・デマンドでも配信開始となっておりません。

動画配信が開始になり次第、追って情報を掲載させていただきます。

【ネタバレ】『ジュリアン』感想レビュー

誰を中心にした物語か?

この映画の主となる登場人物は、離婚と親権問題に揺れる夫婦でしょう。

しかし、タイトルとなる夫婦の息子ジュリアンが、本作の真の主人公と位置づけてもいいのではないでしょうか?

夫妻の離別と暴力の間に挟まれて、動揺する彼の姿が不憫に思えてなりません。

子供が親を選べない代わりに、親は子供の未来を導いてあげないといけません。

若いカップルのように、別れたい、別れたくないと争う前に、我が子をしっかり見つめてあげて欲しいと切に思います。

ただ、そこに暴力がある限り、自分を守ることで必死になってしまうのでしょう。

本作の主人公の男の子が、父親の粗暴な態度に怯える様子は、まるで小さい頃の私を見ているようでした。

私も幼い時はよく親から怒られては、ビクビクしていた記憶があります。

親に怒られることは誰だって経験したことがあると思います。

だから、人が叱られる気持ちは誰もが共感できることでしょう。

でも、父親の狂暴さは桁外れでした。あんな暴力は見たくもないですし、経験したくもない。

もし、近くにそんな子供がいたら、私は助けてあげることができるのか?

助けたいと思っても、尻込みしてしまいそうです。

暴力で暴力を返しても、何も解決されることはない。

物語の主人公の男の子を助ける術はあるのかと、映画を観ながらずっと考えてしまうのでした。

子供の視点で表現されている画作り

唐突ですが、この作品のどこが素晴らしいかと言えば、カメラワークやアングルが一貫している点です。

場面のほとんどが、ある視点から終始物語が進行されています。

徹底されたカメラの角度が、作品の伝えようとしているメッセージを放っているのです。

その者の感情に同調してしまいそうな画作りに、監督自身の作品の何を届けようとしているのか痛いほど伝わってきます。

それは、子供にしか分からない親への恐怖心です。

大人となった私たちが、忘れてしまった子供の時の感情を本作は思い出させてくれています。暴力に支配される恐怖を。

夫婦関係の問題は、一番子供に影響を与えていると私は思います。

物語の最後まで、男の子から見た父親の狂気が彼を通して私たちにまで伝わってきそうです。

我が子の幸せを願うなら、子供に正しい道を示すべきです。

しかし、本作に登場する父親は、常に自分本意で、前妻との寄りを戻すことしか考えていないのが残念に感じます。

父親にとって、子供は利用する道具にしかすぎず、まったく彼に対する愛が感じられませんでした。

子供のいない私が言うのもおかしな話ですが、私利私欲のために存在しているのではなく、ちゃんと愛してあげてほしいです。

親は子供の将来を導いてあげる存在であるべきです。

子供の視点から描かれた本作は、家族の在り方を強く訴えかけてくる作品になっています。

子役の存在感

本作でもっとも注目してほしいのは、やはり子役の存在です。

ジュリアン役のトマ・ジオリアは、映画初出演でありながら、両親の間で苦悩する少年を見事に演じています。

親の離婚だけでなく、共同親権で振り回され、父親の激しい暴力に晒される男の子という難しい役どころです。

映画のような家庭環境と比べるつもりはありませんが、一般的に普通に生活していれば、家庭内暴力は簡単に巡り合わない環境だと思います。

ですので、作品の設定を容易く理解して、役作りするには人一倍の想像力が必要になってきます。

大人の役者でも複雑な役柄を人生経験の少ない10代の少年が見事に演じられていました。

演技が上手いのは、作品やキャラクターに対する理解がしっかり成されているからではないでしょうか?

暴力を振るう父親に対して怯えたり、困惑したりする彼の表情が恐怖を訴えているようでした。

画面越しからでも伝わってくる家庭内暴力の危険度を、彼が演技力で上手に体現してくれています。

家庭内で起きる離婚や親権問題がメインとなる作品です。

だけど、この物語で主役になるのは愛のない夫婦に振り回される子供です。

『ジュリアン』まとめ

本作に登場する暴力を振るう男は、ひどいぐらい粗野で繁忙な人物として描かれています。

ただその反面、過去の失敗を反省しています。

なんとか夫婦の関係を取り戻そうと奮闘もしていますが、空回りばかりです。

その上、家族の誰にも相手にされない有り様。

少しかわいそうにも見えますが、自ら撒いた種で苦しんでいるだけのうようにも見えます。

もっとも一番苦しんでいるのは、彼の元妻と子供たちです。暴力の支配下に置かれた母親は、成すすべもありません。

子供は、やり返すこともできず、ただただ父親からの仕打ちに耐えるだけです。

まず、何よりもひどいのは、冷めた夫婦生活を取り戻すため、純粋な子供を利用しようとする父親の姿なのです。