人につくすばかりで、自分に時間をさくことのない色あせた毎日を打ち捨てて、心のおもむくままに旅に出たファニータの幸せを探す姿を描いた『ライフ・アズ・ファニータ』。
人生を取り戻すのに行先を決めず、長距離バスに飛び乗ったファニータを演じるのは、実力派女優のアルフレ・ウッダード。
たどりついた小さな町で人を支えるだけでなく、支えられることで自信を取り戻し、人生の再起をはかる女性を、きめ細やかな演技で魅せてくれます。
・空想だけが逃げる場所
・西へと向かう旅
・新たな出会いときっかけ
・自分の帰る場所
それでは『ライフ・アズ・ファニータ』をレビューします。
目次
【ネタバレ】『ライフ・アズ・ファニータ』あらすじ・感想
行先を決めない旅
オハイオ州コロンバスで病院ヘルパーとして働くファニータ(アルフレ・ウッダード)は、いつだって物憂げ。長時間労働で賃金は少ない上、家には無職の息子ラショーン(アコレ・ホワイト)と子連れで転がり込んできた娘のバーティ(ジョーダン・ニア・エリザベス)がいます。
ラショーンはうさんくさいことに足を突っ込んでいるし、バーディは娘の世話をファニータに押しつけて遊びに行く不届き者だし、ふたりして身勝手にファニータに頼るばかりで、感謝の言葉のひとつもなし。
思うようにならない現実に、大好きな俳優ブレア・アンダーウッドとの素敵な妄想トークに逃げ込むのだけど、あまりのストレスに空想の中のブレアまでもが金を貸してと言い出す有様。
職場の病院で気にかけていた患者が亡くなったことを機に、ファニータは自立できない子供たちから離れ、行先も予定もない気ままなひとり旅に出ると決心したのでした。
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シェ・ペーパームーン
ドラムのビートの止まった時に、ファニータが地図で指さした場所はモンタナ州のビュート。
長距離バスで大陸を横断する西の地を目的に決めたものの、長い移動と未知の場所に尻込みするファニータは、途中のトイレ休憩で悶々と弱音を吐く始末。
そんなファニータに、「前に進んだ方がいい」と何気なく声をかけたのは大型トラック運転手のピーチス(アシュリー・アトキンソン)。
最終的にたどりついたのは、ビュートではなく、ピーチスの勧めるモンタナ州の小さな町にあるレストラン「シェ・ペーパームーン」。
腕のいい料理人で、町唯一の素敵な店なのに、朝からしゃちほこばったフランス料理をだすジェス(アダム・ビーチ)に、物申したファニータ。
朝食メニューをもっと気軽なものにしてほしいという店の常連の言葉も手伝って、ひょんなことからファニータは、ジェスの厨房を手伝うことになるのです。
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再生していくふたり
ファニータが、厨房で働くようになって、繁盛をしはじめたジェスのレストラン「シェ・ペーパームーン」。ジェスやスタッフともすっかり打ち解け心穏やかに過ごすファニータは、過去の中東への従軍経験で大きなトラウマを抱え苦しむジェスにも出会います。
そんな中、ジェスたち家族につれられ、ジェスのルーツである先住民の集いに参加してパニックに起こしたファニータ。
ネイティブ・アメリカンの文化にも触れ、家族と離れ遠くへ来てしまったことに途方に暮れるファニータに寄り添ったのもジェスでした。
そしてファニータとジェス、いつしか心を通わせ、距離を縮めるようになるのでした。
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ここは君の帰る場所
ファニータとの関係を前に進めたいジェスと、旅を続けたいというファニータ。
ジェスに心を預けることに二の足を踏むファニータに、ジェスは腹をたてることもなく、「俺は、ここで君を待っている。」と伝えるのでした。
そんな中ファニータを訪ねて来たのは、コロンバスの刑務所から仮釈放をうけた、もうひとりの息子のランディ(マーカス・ヘンダーソン)。ランディのモンタナ入りを、ランディのたっての希望で内緒にしていたジェスの善意をなじってしまったファニータは、人を信用できずに心を閉ざしていた自分に気づくのです。
旅を続けることを決めたファニータが、次の目的地のカルフォルニアに旅立つ朝。
ピーチスの大型トラックに乗り込むのを前に、ジェスが家族や常連客の前で披露したのは、新しい店の看板「シェ・J&J」。
ジェスとファニータの名前の頭文字をとったその看板は、ファニータの帰りを待つジェスのファニータへの真心。
ファニータは、そんなジェスの気持ちを胸に、モンタナを後にするのでした。
『ライフ・アズ・ファニータ』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
以上、ここまで『ライフ・アズ・ファニータ』をレビューしてきました。
・知らない土地での新たな生活
・心の平穏のあるところ
自分を取り戻す旅
思い通りにならない現実に幻滅したファニータが、ひとりになりたいと行先を決めずに旅にでるところから始まった『ライフ・アズ・ファニータ』。
子供たちに都合のいいように頼られ、面倒をみるばかりの毎日から、ファニータが飛び出したのは、みじめな気持ちと決別したかったから。
物語の冒頭でファニータが生きていたのは、独り言と空想の世界。自由になれるのは大好きな俳優のブレア・アンダーウッドを妄想してトークを展開させるぐらい。
そんな逃げ込んだはずの滑稽な世界なのに、ブレアから金の無心や、ママと呼ばれる迷走ぶり。これではいけないと、心の平穏を探す旅にでるのです。
オハイオ州から大陸を縦断して、ファニータがたどりついたのは、遠く離れたモンタナ州にあるレストラン「シェ・ペーパームーン」。ネイティブ・アメリカンが、多く住むモンタナ州の大自然の中の小さな町で、それまでと全く異なる環境で身を置くことになったのです。
前半は、ファニータの言葉で、カメラ目線の独白調の場面やブレアとの空想シーン、長距離バスではミュージカル風な場面も登場するのに対して、モンタナについてからはそういった場面はなくなります。
ファニータの心情が変わっていくのを浮き彫りにする故意の演出なのかもしれませんが、トーンに一貫性がなく戸惑うこともあります。
それでも物語はアルフレ・ウッダードのたおやかな表現力に助けられて、ファニータに共感、彼女の心が癒されていく様が心地よいのです。
アルフレ・ウッダードとジェス役のアダム・ビーチの相性もよく、過去の従軍経験のトラウマで悪夢に苦しむジェスに寄り添いながらも、心の鎧を外しきれずにいるファニータを見事に演じきっております。
地元スラムでは閉そく感にとらわれ、人間としてよりひとりの母親だったファニータが、まるで違う文化や環境の片田舎のひとすみで女性としての輝きをとりもどすヒューマン・ドラマの『ライフ・アズ・ファニータ』。
心の平穏があるところが、自分の帰るべき場所。そうはっきり、自覚したファヒータと空想の世界のブレア・アンダーウッドとの最後の会話は、滑稽でありながら、ファヒータが不幸だった過去の自分と決別したことを、なにより雄弁に語るのです。
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