2000年代初頭に彗星のように登場した美少年作家J・T・リロイ。
謎めいた私生活や中性的でファッショナブルなセンスで瞬く間に時代のアイコンになりました。
そのJ・T・リロイにまつわる真実の裏側をドラマチックに描いたのが、今回ご紹介する『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』。
2020年の92回アカデミー賞で助演女優賞を受賞したローラー・ダーンと『トワイライト』シリーズで圧倒的な人気を博し、近年、目覚ましい活動を見せているクリステン・スチュワートという実力派女優同士の競演は必見です。
- 嘘のような実話をベースにした物語に目が離せない!
- 豪華キャスト陣勢揃い!
- 真実がいつ露見するのかハラハラドキドキ
それでは『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』をネタバレありでレビューします。
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目次
『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』作品情報
作品名 | ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏 |
公開日 | 2020年2月14日 |
上映時間 | 105分 |
監督 | ジャスティン・ケリー |
脚本 | ジャスティン・ケリー サバンナ・クヌープ |
出演者 | クリステン・スチュワート ローラ・ダーン ジム・スタージェス ダイアン・クルーガー コートニー・ラヴ ケルヴィン・ハリソン・Jr. ジェームズ・ジャガー |
音楽 | ティム・クバスノスキー |
【ネタバレ】『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』あらすじ・感想
サヴァンナの目線から描く真実の話
J・T・リロイを取り上げた作品としては、この作品以外にも2016年に日本でも公開された『作家、本当のJ.T.リロイ』があります。
しかし『作家、本当のJ.T.リロイ』はドキュメンタリー作品でJ・T・リロイ成りすまし事件の創作担当だったローラ・アルバートをメインとした作品であり、『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』とはまた趣向が異なる作品です。
『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』では文壇史上最大のペテンとも言われた事件の黒幕であるローラの存在は『作家、本当のJ・T・リロイ』に比べると薄めであることは否めません。
それもそのはず。
そもそも、この映画はJ・Tの肉体役を担ったサヴァンナ・クヌープの自叙伝『Girl Boy Girl:How I Became JT Leroy』の映画化で、彼女は脚本の執筆にも参加しています。
/#ふたりのJ・T・リロイ
スカイプ取材中📞📞
\18歳から25歳までJ・T・リロイを演じていた張本人、サヴァンナ・クヌープさんにスカイプでインタビューしております#クリステン・スチュワート #ローラ・ダーン#ジム・スタージェス
2.14(金)公開 https://t.co/iQ82OuiTd3 pic.twitter.com/N6YQl89HRN
— 映画『ふたりのJ・T・リロイ』 (@JTleroymovie214) January 30, 2020
まさに、この映画は文壇史上最大のペテンと言われた事件を、流されるままに共犯者になってしまったサヴァンナの目線で描いた作品なのです。
物語はサヴァンナが親元を離れて、兄の元に身を寄せるところから始まります。
この頃のサヴァンナは、スタイルこそボーイッシュでバイセクシャルの傾向はありますが、寡黙でシャイな女の子という印象が強いです。
兄の恋人・ローラに頼まれて自分のビジュアルをJ・Tとして提供するものの、その経緯もローラの勢いに流されてという感じでした。
カメラマンの撮影の際にも極度の緊張により吐き気を催すぐらい、サヴァンナはこの計画には乗り気ではない様子だったのです。
だからこそ、サヴァンナに反比例してローラの異常なまでに高いテンションが滑稽に見え、2人のギャップが面白いシーンでもあります。
このように初めは、どこかJ・T計画にもどこか第三者的だったサヴァンナですが、中盤に「創作をしているような気がする。」と呟くぐらい、次第に自身の意志でJ・T・リロイでいることを選び始めます。
斎藤あやめ
J・T・リロイとは、一体何だったのでしょうか。
その実態はないに等しく、世に出されている外見は変装したサヴァンナであり、内面をプロデュースしたのと小説を書き上げたのはローラなのです。
斎藤あやめ
小説を書き、バンド活動をしているローラはもちろんのこと、サヴァンナも創作に関心があり、アーティストとして活動していると伺える描写が見られます。
だからこそ、サヴァンナもアーティストとしてJ・T作りの楽しさや表現することの自由さに気付いてハマっていたのではないでしょうか。
しかし2人のアーティストが同じ1つの作品の創り手だとそれぞれが自覚を持った時、それまでなかったはずの軋轢が生まれてしまいます。
終盤のサヴァンナとローラの対立は、まさにアーティスト対アーティスト。
サヴァンナのまさかの反撃に対するローラの表情は見ものです。
そして物語ラスト、騒動から1年ぶりに再会する2人は、まるで戦友のようにも見えます。
斎藤あやめ
まさにこの2人だからこそのやりとりと言えますので、ぜひエンディングにもご注目ください。
豪華な出演者が勢ぞろい!2人の実力派女優たちの競演は必見
『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』は、決して派手な作品というわけではありません。
しかしながら、洋画好きならばたまらない豪華キャストばかりです。
主役のサヴァンナを演じるのはクリステン・スチュワート、ローラ役には2020年のアカデミー賞助演女優賞を獲得したローラー・ダーンという実力派女優を筆頭に、ダイアン・クルーガー、ジム・スタージェス、コートニー・ラヴと行った豪華キャストが脇を固めています。
当たり前と言われたらそれまでですが、そんな豪華なキャストの中でも主演2人の存在感はとにかくピカイチです。
斎藤あやめ
サヴァンナをJ・T・リロイに仕立て上げた直後までは、明るくテンションが高めなお姉さんといった素振りですが、計画がうまく進むに連れて、彼女の表情は七変化していきます。
サヴァンナがだんだん自分の管理下から離れていく時に見せる怒りと不安、1人だけのけ者にされた時に一瞬だけ浮かべる憎悪、そしてJ・Tとして様々の人に電話で対応していく声や表情とローラの1つ1つの表情が印象的でした。
中でも映画の撮影現場に訪れた際に、自分の母がモデルの役を演じるエヴァ(ダイアン・クルーガー)の姿を目にした時のシーンは特に印象的です。
最初は自身の母親サラとそっくりなエヴァを見て、怯えて緊張したような表情と不快感を見せます。
「デジャヴみたいよ。J・T…。エヴァが気持ち悪いったら。サラをみているよう…」と過去のトラウマが刺激され怯えた様子を見せながらも、最後には「アートって不気味なものね。」と少し微笑んで呟く姿からは、その精神状態の不安定さが垣間見られ、観ているこちらも不安定な気持ちになってしまうぐらいです。
物語の序盤でローラがテレフォンセックスで生計を立てていたことが描かれており、劇中でも彼女自身が何かとその話題を持ち出します。
ローラにとって、自分じゃない何かになるのは日常であり、J・Tを世に出してからも電話でJ・Tとして話す姿は、テレフォンセックス時代と何の変わりもありません。
斎藤あやめ
しかしながら不幸にも、自身の分身であるJ・Tにはローラは成りすますことはできませんでした。
彼女自身、自分の風貌がJ・Tのビジュアルイメージとマッチしないことを十分すぎるほど理解していたからです。
ローラがもしJ・Tに成りすませれる容姿の持ち主だったら、このスキャンダルな事件は起きなかったでしょうし、そもそもJ・T・リロイという小説家は生まれなかったでしょう。
そう考えると、J・T・リロイは1人の女性の辛いトラウマが生み出したアートなのではないでしょうか。
斎藤あやめ
逆にクリステン・スチュワート演じるサヴァンナの存在に安心感を覚える人もいるのではないかと思うぐらい、彼女演じるサヴァンナは安定しています。
もちろん気弱になったり、不安になったり、時には怒ったりもしますが、最終的には必ずフラットな立ち位置に戻ってきてくれる安心感があります。
不安定なローラと対照的で、観ていて心地がいい具合です。
ただ安定感があるはずのサヴァンナが不安定になることもありました。
それは彼女の恋人が指摘した通り、大体J・T絡みの時でした。
更に言うと、エヴァの存在も大きく影響していたことに違いありません。
劇中でサヴァンナ自身、自分の性的指向がバイセクシュアルであることは認めています。
J・Tのファンであるエヴァに惹かれていく様子はとても自然に描かれていて違和感がありません。
斎藤あやめ
真実がエヴァにバレてしまったら…と思うと彼女らのラブシーンは観ているこちらがドキドキしてしまいます。
もちろん、真実を隠しながら2人が結ばれる訳がありませんし、エヴァも一筋縄でいく女性ではありません。
物語の終盤、カンヌ映画祭のシーンでは、エヴァへの想いから舞台裏でサヴァンナは取り乱してしまいます。
その姿は無力な少女そのもの。
慰めるローラが母親のように見えるぐらいです。
このシーンの後のエヴァとJ・Tのシーンは、サヴァンナとJ・Tの2つの表情をクリステン・スチュワートが巧みに使い分けています。
斎藤あやめ
ドキュメンタリー作品と併せて見比べるのもおすすめ
前述の通り、同じT・J・リロイをテーマにしたドキュメンタリー映画『作家、本当のJ.T.リロイ』が2016年に公開されています。
こちらはローラ目線で描かれているので、本作とは違った視点で「J・T・リロイ事件」を観ることがができますよ。
実はドキュメンタリーと本作では、少し解釈や事実が違うところがあります。
『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』では、J・Tの真実が発覚後の騒動について簡単にしか描かれていません。
ドキュメンタリーでは大勢の証言者のインタビューなどもあり、いかに当時、センセーショナルな事件だったのかが伺えます。
またローラ自身の過去や抱えていた問題なども描かれているため、本作とは全く違ったテイストになっています。
劇中でローラの発する一言一言に興味や関心を持った人にはおすすめです。
斎藤あやめ
「裏の裏を行く」という言葉が浮かび、この映画にはぴったりだと思ったからです。
また、別の考えをするとおそらく「裏」=J・T・リロイを生み出したローラであり、更にその『裏の裏』はJ・Tの肉体を演じたサヴァンナのことを示すのではないでしょうか。
どちらにしても、「裏」と「裏の裏」のそれぞれの物語を知った時に、1つの事件の本当の真実が分かるのかもしれません。
斎藤あやめ
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『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』まとめ
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以上、ここまで『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』をレビューしてきました。
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- ハリウッド屈指の実力派女優たちの演技は間違いなし
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