アニメ映画『ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦いの物語』あらすじ・ネタバレ感想!日本とサウジアラビアが初のタッグを組み、新たなエンタメ作品を目指す!

(C)2021 マンガプロダクションズ

日本の東映アニメーションとサウジアラビアのアニメ制作会社・マンガプロダクションズが共同で手掛けた、日本・サウジアラビア合作による初の長編劇場アニメ『ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦いの物語』。

2021年6月25日にT-Joy系列の映画館にて公開されました。

古代アラビア半島を舞台に、侵略者に立ち向かい、未来を切り拓いていく主人公と仲間たちの姿を描きます。

映画の主な構成やコンセプトをマンガプロダクションズが、映像制作を東映アニメーションが中心となって作り上げました。

『名探偵コナン』劇場版シリーズや『GOZILLA 怪獣惑星』などで知られる静野孔文が監督を務め、『機動戦士ガンダム』の古谷徹や『進撃の巨人』の神谷浩史、『美少女戦士セーラームーン』の三石琴乃など実力派人気声優陣が顔を揃えました。

今回はそんなアニメ映画『ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦いの物語』をネタバレありでご紹介します。

アニメ映画『ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦いの物語』あらすじ


メッカの民vs侵略者

貿易都市であるメッカの民は、海の向こうからやって来た侵略者・アブラハ(黒田崇矢)に信仰の放棄と奴隷となることを要求され、当初望んでいた平和的解決から一転、戦うことを決意します。

そんなメッカ防衛隊の志願兵の中に、一人の青年・アウス(古谷徹)がいました。

アウスの運命はかつて盗みに入った家に暮らす男から信仰の大切さを説かれたことで大きく変わり、その男の養子となったのち、彼の娘・ヒンド(三石琴乃)と結婚したことでより信仰心と意思を強くするのでした。

過去の罪を贖うため、そして家族との幸せな生活を守るため、剣を手にしたアウス。

やがて、彼らメッカの民と強大な力を持つアブラハ軍の戦いが幕を開け……。

アニメ映画『ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦いの物語』登場人物・キャスト

アウス/古谷徹

・危機に瀕したメッカと愛する家族を守るため志願兵として防衛隊に参加した青年
・強い信仰心と固い意思を持つ
・信仰の大切さを説いてくれた男の娘であるヒンドを妻とする
・少年時代には暗い過去が……

ズララ/神谷浩史

・傭兵として防衛隊に加わった青年
・綺麗事が嫌いで報酬のために戦っている
・格闘術に長けた大戦力
・暗い少年時代をともに過ごしたアウスと再会する

ニザール/中村悠一

・防衛隊の小隊長
・メッカいちの豪腕で人望も厚い
・アウスの過去を知る数少ない人物
・アウス、ズララとともにメッカの民を代表して前線に出る

ヒンド/三石琴乃

・アウスの妻
・父が養子として迎えたアウスと結婚した
・両親と息子とともに戦地から離れた場所へ避難
・戦場へ向かうアウスにお守りとしてアイシャドウを渡した

ムッタリブ/麦人

・メッカを治める長老
・当初争うことなく解決しようと試みていた
・敵軍の長であるアブラハに「神の御業を知ることとなる」と厳しく告げる

アブラハ/黒田崇矢

・強大な軍隊を引き連れて海の向こうからやって来た侵略者
・メッカの民に信仰の放棄と奴隷となることを要求
・無慈悲で冷酷な支配者

【ネタバレあり】アニメ映画『ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦いの物語』見どころ・感想

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三つの説話

日本とサウジアラビアの初の合作ということで注目を集めた『ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦いの物語』。

主人公のアウスが仲間とともに侵略者である悪敵と対峙する冒険活劇が主軸ですが、作中にはいくつかの説話が挿入されています。

大きく“ノアの方舟”、“モーセの海割り”、“円柱のイラム”の三つです。

ノアの方舟は、旧約聖書の『創世記』に登場する神が起こした大洪水にまつわる物語で、物語中の主人公・ノアやその家族、雄雌一対ずつの多くの動物を乗せた方舟自体のことを表します。

本作では旧約聖書ではなくコーランの解釈を引用しているため、ノアの立ち位置には神に遣わされた預言者の存在があります。

モーセの海割りは、旧約聖書の『出エジプト記』に登場するエピソードの一つで、奴隷たちがエジプトから逃亡する際に神の御業によって海が割れ、敵の手から逃れることできたという逸話です。

この二つは日本でも広く知られているのではないでしょうか。

一方で、円柱のイラムはあまり馴染みがないかもしれません。

円柱のイラムは、コーランに登場する伝説の都市の名称で、そこは不信仰者である強者の一族が信心深い弱者の一族を虐げる形で成り立っていました。

このことに怒った神によって罰が下され、日照りや暴風などで都市と強者だった一族が崩壊していく様子を描いています。

これらの説話が挿入されることにより、彼らにとって信仰とは絶望の中でも自身を突き動かす大きな力になっているという理解が深まります。

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そして、その信仰心の強さを表す演出の数々が「信じる者たちにもたらされる奇跡」に繋がり、作中の見どころともいえる終盤の神の御業のシーンへと導きます。

とはいえ、宗教的な価値観が違う日本人にとっては説教臭く感じてしまう場合もあるかもしれませんし、説話のシーンが差しこまれることによって本編の流れがストップしてしまうというデメリットもありました。

しかし、現地の若い世代に向けた教育アニメとしての側面を持つことからもわかる通り、イスラム教やコーランの教材として優れた作品になっていると思います。

サウジアラビアのエンタメ革新

本作は日本の東映アニメーションとサウジアラビアのマンガプロダクションズのタッグにより制作されています。

マンガプロダクションズは、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が設立したMiSK(ミスク)財団の子会社で、クリエイティブ産業の分野に特化した活動を行っています。

活動内容としては、アニメーションやビデオゲーム、コミックの制作と配給、現地の若者の才能育成、そしてクリエイティブコンテンツ産業への投資などがあるそうです。

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ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、“サウジ・ビジョン2030”を2016年に提言しており、石油依存型の経済を脱し、教育や観光、エンタメなど多様な産業を推進していくことを定めました。

本作が日本との合作で制作されたことも、その一環といえます。

この背景にはムハンマド・ビン・サルマン皇太子自身が大のアニメ好きであることや、サウジアラビアをはじめとするアラブ諸国の若者の間で『進撃の巨人』や『ONE PIECE』、『キャプテン翼』などの日本アニメが人気を博しているという事実があります。

近年、“サウジアニメエキスポ”など大型のアニメイベントが開催されるようになり、日本からもアニソン界で有名な水木一郎やLinked Horizonが参加したことが知られていますが、こういった状況下で実際にタッグを組み、アニメ制作を行うのは自然だったのかもしれません。

さらに、東映アニメーションはインターンシップ生として選抜された現地の若者たちを受け入れ、人材育成の面でも協力関係を結んでいます。

こうして若い世代の人材育成やエンタメ産業の発展に尽力しているサウジアラビア。

今後の動向やアニメ制作にも注目が集まります。

アニメ映画『ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦いの物語』まとめ

いかがだったでしょうか。

日本とサウジアラビア、記念すべき初の合作となったアニメ映画『ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦いの物語』。

古代アラビア半島の歴史を現地のカラーで、そして東映アニメーションらしいタッチで描いた本作。

日本ではなかなか触れる機会のないイスラム伝承を迫力あるアニメーションで目撃しながら、古谷徹や神谷浩史、三石琴乃といった豪華声優陣の好演を楽しめる作品となっていました。