およそ109分の箱に詰め込まれた7本のショートフィルム。
『Jam Films2』、『Jam FilmsS』と続くシリーズの第一作目。
長編でもTVドラマでもCMでもない、この作品でしか見られない役者陣の魅力が盛りだくさんです!
- 毛色の違う7つの作品、楽しみ方も人それぞれ
- 1本1本の時間が短いからあれこれ考える間もなく終わっちゃいます
- 一番アツいところだけ濃密に作られた場面を楽しむもよし、見終わってからあれこれ考察するもよし
それでは『Jam Films』をネタバレありでレビューします。
▼動画の無料視聴はこちら▼
目次
『Jam Films』作品情報
作品名 | Jam Films |
公開日 | 2002年12月28日 |
上映時間 | 109分 |
監督 | 北村龍平 篠原哲雄 飯田譲治 望月六郎 堤幸彦 行定勲 岩井俊二 |
脚本 | 高津隆一 渡部貴子 飯田譲治 望月六郎 三浦有為子 行定勲 岩井俊二 |
出演者 | 魚谷佳苗 北村一輝 坂口拓 山崎まさよし 篠原涼子 山田幸伸 氏家恵 あがた森魚 大沢たかお 角田ともみ 筒井康隆 吉本多香美 篠原さとし 麿赤兒 佐々木蔵之介 秋山菜津子 妻夫木聡 綾瀬はるか クリスチャン・ストームズ 新井浩文 広末涼子 |
【ネタバレ】『Jam Films』あらすじ
「the messenger-弔いは夜の果てで-」監督・北村龍平
地下室へと続く階段を下りていく黒いドレスをまとった女(魚谷佳苗)。
首に刺青の入った彼女は、狙った獲物は必ず仕留めるという噂のメッセンジャーです。
女が向かった部屋には一人掛けのソファに腰掛ける男(北村一輝)の姿がありました。
メッセンジャーが財前という人物からのメッセージとして“最後の親心”を伝えると、男は「凄腕の殺し屋・メッセンジャーの噂を知っている」と虚勢を張ります。
しかし自分を殺しに来たと思われる女は、私は殺しに来たわけではないと言い、「あなたはもう死んでいる」と言うのです。
みるみるうちに血に染まっていく男は半ば発狂して目の前にあった拳銃を女に向けて発砲します。
その時、男が死んだ状況がフラッシュバックするように大勢の人間が表れました。
vito
自分の運命を受け入れた男を導き、部屋をあとにしたメッセンジャーは、出掛けにすれ違った男(坂口拓)に先ほど成仏させた男の声色でメッセージを伝え、その男の魂もまた導いてあげるのでした。
「けん玉」監督・篠原哲雄
監督・篠原哲雄
包丁を二本使って肉をミンチにする女(篠原涼子)はどこか少し不機嫌そうにハンバーグを作っていました。
そこに帰ってきたのはアキオ(山崎まさよし)。
玉ねぎを買いに行くよう頼まれていたのですが、帰ってくる途中でぶつかった人と袋が入れ違ってしまったようで持ち帰った袋の中に入っていたのはけん玉でした。
そのけん玉には何やら地図が隠されていました。
地図の通りにたどっていくと、公園のジャングルジムのところにロッカーの鍵が埋められていました。
そしてそのロッカーの中には“目録”としてオーストラリアへの旅行券が入っていました。
しかしアキオは飛行機が苦手で乗れません。
昔一度だけ乗ると言った時のことも忘れ、玉ねぎも忘れていることに対して女は腹を立てます。
しぶしぶ玉ねぎを買いに行ったアキオは、また人とぶつかってしまいます。
けん玉に宝の地図が隠されていることを知っている男女が袋を奪い返しに現れたのです。
vito
その頃、アキオを迎えに行きながらけん玉で遊んでいた女は、さきほどアキオとぶつかった男女に遭遇します。
男女は取り違えたけん玉をどうしても取り戻したくて、適当な嘘を言って女からけん玉を返してもらいます。
5月14日かようび#けん玉の日
1919年の今日、けん玉の原型「日月ボール」が考案されました画像は『Jam Films』から「けん玉」
売れないミュージシャンあきおと今日子は倦怠期中。ある日、あきおは手に入れたけん玉を手掛かりに、オーストラリア旅行を手にする
誕生花はフクシア「慎ましさ、興味」 pic.twitter.com/mAG7LtKyvc— ☘ ☘ (@Siphon_Drip) May 13, 2019
女は引き換えに、玉ねぎの入った袋をもらいました。
結果として玉ねぎが手に入った女は上機嫌でハンバーグを作ります。
オーストラリアへの旅行券はというと、窓を開けている間に風に乗って外に飛んで行ってしまいました。
「コールドスリープ」監督・飯田譲治
音楽室の中、状況にまったくそぐわない近未来的なカプセルで目を覚ましたフジオ(大沢たかお)。
黒板には“おねぼうさん”と書いてありました。
状況がよくわからないため学校の中を歩き回っていると、派手な格好をして隠れていた女性、王様のような格好をして走っていくオジサンを見掛けます。
おろおろしているフジオの前に現れた女・ナオミ(角田ともみ)は「ちょっと目を離した隙に目を覚ましたのね」と言い、ここが地球から20光年離れたところにある惑星だと教えてくれました。
こんな深夜にマニアックな
Jam Films ・・・ウフッ pic.twitter.com/cCuwnWMnqR— yocchi (@long_999) October 2, 2016
そして通信機を取り出して、故障してしまったから地球と通信できないと言いました。
フジオは20年の間眠っていたようです。
学校の中にいるのは、人類移住計画のために惑星にやってきた初めての地球人6人で、フジオとナオミ以外の4人はコールドスリープのせいで脳細胞を破壊されてしまっていました。
彼らが派手な格好や王様の格好、学芸会の仮装でかくれんぼをしているのは、そのせいでした。
学校の外を覆っていた霧が晴れて、見えてきたのは地球ではない景色。
その時、フジオの数学者だったころの記憶が戻ります。
フジオが通信機を直して地球にいるナオミの父(筒井康隆)と繋がります。
父は「戦争や汚染で地球はもう駄目だ。お前たちは最後の人類だ」と言います。
そしてナオミに新たな人類の母となれと告げます。
フジオは自分が父となるのかと勘違いしますが、その時、他の5人と同じように脳細胞が破壊されてバカになってしまいました。
ナオミは、利口な子を産むためにと父が残した何者かの精子を自分の胸に刻まれたパスワードを使って取り出しました。
vito
ナオミは愕然としてへたり込んでしまいました。
「Pandora-Hong Kong Leg-」監督・望月六郎
“秘密”をもち、秘密に翻弄される女(吉本多香美)の話。
彼女のもつ秘密、それは世にも珍しい水虫を患っていることでした。
とてもよく効く秘密の薬だと言って怪しい漢方薬を売っている中国人・周(麿赤兒)に導かれるままに箱の中に足を入れると、中にいる何者かに舐められた感触がしました。
周は「中国4000年、とてもよく効く“薬”だから、たった5回で秘密がなくなる」と言いました。
いつの間にか女にとって治療は快感になっていて、水虫が治ることは嬉しい事ではあったけれど“秘密”がなくなってしまうことをどこか寂しく思うようになっていました。
そして最後の治療の日、箱の中の男(篠原さとし)に話しかけました。
vito
しかし男はいつものように足を差し出せと催促するだけでした。
治療を終えかけた時、周が話しかけてきます。
「中国4000年、たちまち水虫になれる薬あるよ」と。
「HIJIKI」監督・堤幸彦
殺人犯の男(佐々木蔵之介)は、あるアパートの一室に人質とともに立てこもっています。
『Jam Films』(ジャム フィルムズ)は、ショートフィルムを集めた日本映画のオムニバスシリーズ(2002年) pic.twitter.com/cywiU73kMO
— ジャックと豆の木 (@xgbn609WPY5Kil1) April 30, 2020
人質は女が2人、少女が1人。
男が息を荒げていると「切羽詰まってるからひじき煮てやったのに」という女(秋山奈津子)。
さらに男に「人を殺したんだろう?」と言いました。
ドラマでよく見る光景のように、立てこもる犯人を説得する感じで外から話しかけてくる男の母親は、子供のころからのことを大声で話します。
それを聞いていた女は、見てきたかのように男の過去を暴いていきます。
vito
そしてそれを自分の子どものころに重ねて喚きました。
女は妾の子どもで、実の親の葬式にも出られなかった時のことを話します。
その時に慰めてくれたのが夫だったことも。
しかし夫は2人の間に娘(高橋愛)をもうけた後に死んでしまいました。
人質としてテーブルを囲んでいる人を整理すると女、女の娘、女の夫の妹(氏家恵)。
外見と物の言い方に合わず来年ハタチになるという女に説得され、いよいよ決心しようというところで男は声を荒げます。
vito
親切のつもりがありがた迷惑ってこともあるわな…と嘆く女の様子を見て、男は手掴みでひじきをたいらげ、うまいうまいと言いました。
そして、きっちりけじめをつけますと言って着ていたシャツを脱ぎ、白旗を振るようにして外にアピールしたところで下にいた警官に撃たれてしまうのでした。
「JUSTICE」監督・行定勲
ポツダム宣言について外国人教師が英語を読み上げている教室。
真面目に訳をノートに書く生徒、途中で諦めてしまう生徒、端に落書きをする生徒。
そして大きなあくびをして窓の外を見て、おもむろに机に“赤 青 緑”と書く生徒・東条(妻夫木聡)。
vito
色の下に正の字を書いて数を数えていると、赤いブルマの女子1人と目が合ってしまいました。
グラウンドでは星(綾瀬はるか)がハードルを跳ぶ番。
星が転んでしまったのを見て、東条はついうっかり「あ!」と声を出してしまいました。
星が履いていた緑のところに線を加えようとしたところで教師から声をかけられます。
そして、机に書いてあるものの意味を問われました。
何て書いてあるのかと強く聞いてくる教師に対して、東条はバカ真面目にブルマの色だと答えて、グラウンドを指さしました。
教師は怒りましたが、東条は線を引くのをやめられませんでした。
正の字にどういう意味があるのかと更に怒る教師に、東条が「Justice(正義)!」と言うとついには廊下に立たされてしまいます。
バケツを持って廊下に立っていると、さっきグラウンドにいた星から「見てたでしょ」と声をかけられました。
SBS夜の映画劇場 Jam Films(2002)JUSTICE
綾瀬はるか 妻夫木聡 タイトルは聞いたことあったけど見たことなかった映画…いろいろと面白かったけどダントツで綾瀬はるかが可愛かった…2時間ハードルを飛び続けたら凄かったと思う pic.twitter.com/g2U5SoOfE9— ぁおてん (@condoraoten48) August 3, 2018
東条は気まずそうに濁して、去っていく星のブルマを凝視して鼻血を垂らしながら笑うのでした。
「ARITA」監督・岩井俊二
野崎鞠子(広末涼子)の側には、いつからかは覚えていないけれど、ARIITAが存在しています。
鞠子の父は自動車部品の営業をしているけれど、若いころは画家になりたかったらしく、鞠子は父の影響で絵を描くのが好きな子どもでした。どの絵の中にも、ARITAがいます。
大きくなって絵を描くのが上手くなったころでも、どの絵の中にもARITAがいました。
ありとあらゆる紙の上、メモや学校のノートにも現れるARITA。
ある日、鞠子が風邪で一週間学校を休んだ時に友達が貸してくれたノートには、ARITAがいませんでした。
その時は世の中にはARITAがいない人もいるのか…と思っただけでしたが、後日、他の友達のノートをこっそり見た時に気が付きます。
vito
ARITAはただの落書きのようなものではなく、消しゴムでは消えないのでテストの答案用紙に現れた時にはそのまま提出しなければなりませんでした。
それでも先生から咎められることはありませんでした。
そんな風にしてARITAのことは誰にも話さないまま、鞠子は22年間を過ごします。
しかしその頃できた彼氏にまで秘密にしておくことができず、彼に打ち明けようとした時。
ARITAは消えてしまいました。
その時鞠子の頭には疑問が浮かんでいました。
ARITAとは何なのか、どうしてそんな名前なのか、生き物なのか…たとえば燃やしたらどうなるのか。
ARITAが現れた紙を燃やしてみると、火が付いたまま紙から飛び出したARITAは「熱い熱い」と鞠子の周りと駆けずり回って暴れました。
ARITAが逃げ込んだ本を開いてみると、そこには黒い棒人間のようなARITAがいました。
それから一か月、ARITAはずっとうずくまっていました。
鞠子はまるで自分の魂を失ってしまったみたいだと思いました。
ある日、ARITAは復活しましたが以前とはまったく別物になってしまっていました。
vito
鞠子は何も書けなくなって、ペンを持つのも怖くなったのでパソコンを使うようになりました。
そしてまっさきに“ARITA”を検索してみます。
すると自分以外にもARITAの存在を知っている人のホームページを見つけました。
そのホームページの管理人に問いかけます。
「そもそもARITAって何なんですか?」と。
【ネタバレ】『Jam Films』感想
おもちゃ箱のようなオムニバス
vito
短編だからココ!という場面を切り取ったようなものが多くて、あまり登場人物について説明もないし、どうしてそうなるに至ったのかとか人物のバックボーンだとかっていうのは描かれない事の方が多いように思います。
そんな私が一番最初に出会った短編オムニバスがは『Jam Films』でした。
2002年の公開当初は映画を観る習慣がなかったので存在すら知らなかったのですが、初めて見た時は今ほど映画が好きでもなく。おもちゃみたいだなぁと思ったのは割とここ数年のことだったりします。
vito
楽しみ方は人ぞれぞれだし、歌でいうところのサビだけを見ているような気分で立て続けに作品を見られるのを楽しむのも良いし、私みたいにあれこれ“この人はこういう人なんじゃないか”とか“この言葉にはこういう意味合いが含まれているんじゃないか”なんてことを想像して楽しむのも良いと思います。
『Jam Films』においては名だたる監督たちが昔こんな作品を作っていたんだな~とかそういう視点で見ても面白いです。
なので各作品のあらすじと一緒に監督も書いておきました。
あとは俳優陣もさすがに20年近く前の作品なので若いです。
NO3! 綾瀬さんの本当に最初の映画!
このセクシィな衣装魅力的です#Jam Films JUSTICE #綾瀬はるか #妻夫木聡 pic.twitter.com/MMBbUKOqMA— アイランド (@DYpTvhPFucxaWgi) May 23, 2020
vito
『Jam Films』の中で好きな作品
vito
あらすじでは全部そこまで詳しく書いてないけど「けん玉」は落語っぽいっていうか何ていうか、収まるところに収まる感じとか旅行券の行方的なオチも好きです。
なんかJam FilmsのARITA思い出しちゃった。そうだ、私に見えてみるのはきっとGじゃなくてARITA。そして私は広末涼子。うん。 pic.twitter.com/TlnPXOZA3I
— 🌺🏵脳内お花畑🌸🌹 (@46pigs) August 30, 2019
「ARITA」はちょっとだけ自分が普段考えたり思ったりしていることとリンクする部分があるから好き、というかお気に入りです。
vito
世にも奇妙な物語とか、ブラックユーモアが好きな人にも楽しめるんじゃないかな、と思ったりします。
『Jam Films』まとめ
【Jam Films】
7人の監督によるオムニバス作品。
水虫、ひじき、ブルマなどをテーマにし奇妙かつ斬新。昔の世にも奇妙な〜を彷彿とさせる。短編だからなのか監督が好き放題やっている。
飯田譲治監督の「コールドスリープ」、堤幸彦監督の「HIJIKI」、岩井俊二監督の「ARITA」が好みだった。 pic.twitter.com/Yk3B6U5WMB— きゅりん (@ii__________da) April 2, 2020
以上、ここまで『Jam Films』をレビューしてきました。
- 普段どういうジャンルを見るか問わず楽しめると思われる作品です
- 短編のオムニバスの良いところは途中で止めて他のことをするタイミングがたくさんあるところ※一気見しなくても大丈夫という意味で
- あの監督こんなの作ってたんだ…とか、あの俳優こんなの出てたんだ…なんて発見もあると思いますよ!
▼動画の無料視聴はこちら▼