2018年の『カメラを止めるな!』に続き、2019年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭2019で観客賞である「ゆうばりファンタランド大賞」の作品賞を受賞し、カナダのファンタジア国際映画祭の長編初監督コンペティション部門に正式出品された映画『いつくしみふかき』は、新型コロナウィルスの影響での公開延期を経て、6月19日よりテアトル新宿ほかにて公開し、10月までに全国で動員1万人を達成!
東京でのアンコール上映を記念して監督・キャスト共に念願だった舞台挨拶が開催されました。
「ゆうばり映画祭と聞くと長年参加していた私はじっとしてられなくなって自ら舞台挨拶の司会に立候補しました」という笠井信輔アナが舞台挨拶の司会を担当した試写会の模様をお伝えします。
『いつくしみふかき』満員御礼舞台挨拶レポート
日時:11月17日(火)
登壇者:渡辺いっけい、遠山雄、榎本桜、裕樹、飛弾信也、牛丸亮、大山晃一郎監督、笠井信輔アナウンサー
場所:テアトル新宿(新宿区新宿 3-14-20 新宿テアトルビル B1F)
司会は、「本作はゆうばり国際ファンタスティック映画祭2019で観客賞を受賞しました。私は15年以上毎年参加しておりまして、こういった映画こそ応援しなくてはいけないということで、自ら舞台挨拶の司会に立候補しました」と挨拶をした笠井信輔アナウンサー。
笠井アナが「ここまで最低な人間を最近見たことがありません」と言う主人公・広志役の渡辺いっけいは、「満席のテアトル新宿に感動しております。僕は体を10日間空けて長野の飯田に行って楽しく撮影をしただけなんです。後の苦労はみんな遠山くん、大山くんを始めとする他の方々が引き受けてくれて、僕は得するだけでした。撮影から3年経つんですけれど、いまだにこの映画から色んなものをもらっています」と挨拶。
笠井アナが「3年経っていますので、出演時と風貌がかなり変わっていますので、説明が必要かもしれません」と言われたW主演の遠山雄は、「この映画より20kg太って別人です。本当は普段はこういう感じで、この撮影の時に減量して撮影に挑みました」と挨拶し、渡辺演じる広志の舎弟・北別府みのる役の牛丸亮も「更に大きくなりました」と挨拶。
渡辺演じる広志の舎弟・浩二役でもありプロデューサーでもある榎本桜は「3年間ずっと夢見ていた光景が今目の前に広がっていて、とても嬉しいです。本物はチャラ男で、怖くないんでよろしくお願いします」と挨拶し、笑いを誘いました。
大山晃一郎監督は、「見る方によって見え方が違う映画だと思います。進一が広志のことを父と呼ぶまでをゴールにして本作を作りました」と挨拶しました。
笠井アナが「ご覧になった方々がみんないっけいさんを大嫌いになるような熱演でした」と感想を述べると、渡辺は「役者冥利に尽きる」と回答。
広志役のオファーを受けた際の感想を聞かれ、「俺にはできないんじゃないかと思いました。実在の方をモデルにしていて、資料として写真とかも見せてもらったら全然違いました。渡辺いっけいの実家は自分で言うのもなんですが普通で、危なっかしい人も親戚にいなかった公務員の家庭なんです。DNAみたいな話になるんだけれど、脚本を読んでもよくわからないんですよ。でも自分のターニングポイントになるにちがいないと思っていたんです。僕はテレビ中心に役者をやらせてもらっていまして、テレビは不特定多数を相手にするので、どこかわかりやすさを意識するんです。言われなくても芝居もわかりやすい芝居を自然とやっていたと気づき出したのが40代で、このままでいいのかなと立ち止まった時にこの話をいただいたので、やるべきだと思いました。嘘ばかりつく役ですけれど、わからないことはわからないと監督に言い、ストーリーの中で自分で計算はしませんでした。テレビではするんですけれど。大げさにいうとワンシーンワンシーン大山監督とディスカッションをして、納得してワンシーンワンシーン撮りました。なので、出来上がったものをして自分がまずびっくりしました。全然意識していない自分が映っていたので新鮮でした。」と話しました。
笠井アナは、「『復讐するは我にあり』の緒形拳さんが令和に蘇ったようなというような人間の業みたいなものを感じました。」と話し、会場も同意の拍手が巻き起こりました。
大山監督は「普段僕が知っている”いっけいさん臭”が絶対出ないようにしたいと思っていたんです」と言うと、渡辺も、「監督自身がテレビではない渡辺いっけいを撮りたいと思っていたそうです。」と付け加えました。
広志の息子・進一役の遠山は本作の企画者であり、モデルとなった人物の知人。
「モデルの親子は本当は仲が良かったんですけれど、仲が悪いというキャラクターだったりは、大山監督の実際のお父さんをモデルにして物語を作りました。悪事はコミカルに描かれていますけれど、実際はひどいことじゃないですか。7割くらいは事実に基づいています。」と解説。
笠井アナに「葬儀のシーンがポイントになってきますが、出席していたんですって?」と聞かれると、「喪主である息子が(劇中よりは)もっと長い手紙を読んだんですけれど、それをコピーさせてもらって、監督に渡してこの映画が始まりました」と本作のきっかけについて話してくれました。
笠井アナが「首を締めながら、しかしなんとか細い絆を手繰りよせようとする」と言葉にした渡辺演じる父親との強烈な対決シーンについて遠山は、「僕もよくわかるんですよ。“なんでおらんかったんだ。普通がよかった”というセリフがありますが、自分も家庭関係が非常に悪くて、常に幸せそうに見える家と比較して、“なんで他と違うんだろう。自分も普通がよかったな”と常々思っていたので、自分の気持ちを素直に言いました。とはいっても、親は親なので、どこかですがりたい気持ちもあって、あのシーンは究極のシーンでした。本当は言いたくないんだけど出ちゃったんでしょうね」と吐露。
渡辺も、「セリフは台本通りに言っていないんです。気持ちで言っているんです」と撮影当時を回想しました。
大山監督は、「ロケ地が、公園の下の市営の地下駐車場で、端に川が流れていて、初めて見て一目惚れした場所です。あのシーンは心の底として描きたかったので、あの駐車場がピタッとはまりました」とこだわりを話しました。
長野県飯田で撮影した理由を聞かれた遠山は、「登場人物が住んでいたところでやるというのはもちろんですけれど、自分自身が飯田という場所に救われたんです。転校生でずっといろんな土地をたらい回しにされる生活をしていたんですけれど、飯田にじいさんばあさんが住んでいて、傷ついた僕を癒してくれたんです。こんな無茶な企画をしても、あそこで撮ればなんとかなるんじゃないかとすがった思いで、飯田を舞台にしました。」と飯田への想いを語りました。
牛丸は、「僕もいっけいさんのイメージはテレビ越しで見るいっけいさんのイメージだったんですけれど、実際にご一緒させていただいたら、自分の映らないカットの時に、(相手役が気持ちを作りやすいように)カメラの向こう側に立ってくださった。立ち振る舞いが、こうあるべきだなと改めて感じました」と撮影の裏話を披露してくれました。
最後のメッセージとして、渡辺は「この映画から元気をもらっていると言いましたけれど、コロナ禍で自分自身が落ちたりしたんですけれど、今立ち直って、前向きに、エンターテイメントの世界にいる人間なので、俺がへこたれている場合じゃないと思っています。この3年前の僕はゼロからの出発だと思ってこの映画に立ち向かいました。それを見るたびに思い起こして自分自身を奮い立たちます。そういう意味でも僕にとって大事な映画になりました」と自分にとっての本作の重要さを熱弁。
大山監督は、「リアルに悪魔と言われた自分の父に、6月に“撮ったから見にきてくれ”と電話したら、“わかったわ”と言われたんです。その3週間後に奈良県警から電話があって、“お父さんが孤独死されています”と言われて。(ポスタービジュアルになっている)お風呂に入っているシーンを撮りたいと思ってこの映画を撮りました。湯灌の儀式に参加したんですけれど、どの感情かわからない涙が止まらなくて。僕自身もこの映画を撮って救われたところがあるんです。みなさんも疎遠になっている方がいらっしゃったら、許す許さないまで行かなくても、思い出すというところに行っていただければと思います。」と深いメッセージを伝えました。
遠山は、「この映画は、父・息子、小さなボタンの掛け違いの映画だと思います。僕自身もみなさんの人生にもそういう局面があると思います。ふと思い返した時に自分の家族や友人などささいなことで連絡を取らなくなってしまったり、憎しみあったりするのは非常にもったいないと思います。この映画の新宿での公開は、明日明後日もあります。口コミを広めてください。」と熱いメッセージを送り、舞台挨拶は終了しました。
『いつくしみふかき』作品情報
監督:大山晃一郎
企画:遠山雄
プロデューサー:清弘樹、榎本桜
脚本:安本史哉、大山晃一郎
撮影:谷康生
照明:阿部良平
編集:菊地史子
録音:高松愛里沙
美術:榊さくら
音楽プロデュース:吉川清之
整音・効果:渡辺寛志
記録:松村愛香
衣装:深野明美
メイク:長縄希穂
制作担当:津崎雄大
助監督:安養寺工、松村卓
演技事務:清水亜紀
ラインプロデューサー:福田智穂
タイトル題字:高田菜月
主題歌:タテタカコ「いつくしみふかき」
後援:長野県飯田市
特別協力:映画「いつくしみふかき」を応援する会、遠山郷、天龍村
配給・宣伝:渋谷プロダクション
2019/5.1ch/JAPAN/DCP/109min
公式サイト:www.itukusimifukaki.com
公式Twitter:itukusimifukaki
公式facebook:itukusimifukaki
あらすじ
30年前。母・加代子(平栗あつみ)が進一(遠山雄)を出産中に、あろうことか母の実家に盗みに入った父・広志(渡辺いっけい)。
「最初から騙すつもりだったんだろ?」と銃を構える叔父を、牧師・源一郎(金田明夫)が止め、父・広志は”悪魔”として村から追い出される。
進一は、自分が母が知らないものを持っているだけで、母が「取ったのか?この悪い血が!」と狂うのを見て、父親は”触れてはいけない存在”として育つ。
30年後、進一は、自分を甘やかす母親が見つけてくる仕事も続かない、一人では何もできない男になっていた。
その頃父・広志は、舎弟を連れて、人を騙してはお金を巻き上げていた。
ある日、村で連続空き巣事件が発生し、進一は母を始めとする村人たちに、「悪魔の子である進一の犯行にちがいない。警察に突き出す前に出ていけ」と言われ、牧師のいる離れた教会に駆け込む。
「そっちに行く」という母親に「来たら進一は変わらない」と諭す牧師。
一方、父・広志は、また事件を起こし、「俺にかっこつけさせてください」という舎弟・浩二(榎本桜)に、「待っているからな」と言っても、実際には会いに行かない相変わらずの男で、ある日、牧師に金を借りに来る。
「しばらくうちに来たらどうだ?」と提案する牧師。
牧師は進一のことを「金持ちの息子」だと嘘を吹き込み、進一と広志は、お互い実の親子だとは知らないまま、二人の共同生活が始まる。
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