『アイリッシュマン』あらすじ・感想!マーティン・スコセッシが手がけるクライム映画の集大成【ネタバレなし】

『アイリッシュマン』あらすじ・感想!マーティン・スコセッシ監督が手がけるクライム映画の集大成【ネタバレなし】

出典:Netflix公式Facebook

マフィア映画といえばこの人!といっても過言ではないのがマーティン・スコセッシ監督。

ロバート・デ・ニーロを主演に迎え、『グッド・フェローズ』、『カジノ』と裏社会に生きるマフィアたちにスポットを当てた映画を発表してきましたが、その最新作となるのが『アイリッシュマン』。

マーティン・スコセッシ監督が長年構想を練ってきた作品が、ついにNetflix製作で完成しました。

そして現在、アカデミー賞9部門にノミネートされています。

ポイント
  • マフィアを演じてきた大物俳優が集合
  • ノンフィクション作品を基にしたストーリー
  • 3時間を超える大作!

それでは早速映画『アイリッシュマン』をネタバレなしでご紹介していきます。

『アイリッシュマン』作品情報

作品名 アイリッシュマン
公開日 2019年11月15日
上映時間 209分
監督 マーティン・スコセッシ
脚本 スティーヴン・ザイリアン
出演者 ロバート・デ・ニーロ
アル・パチーノ
ジョー・ペシ
ハーヴェイ・カイテル
ボビー・カナヴェイル
レイ・ロマノ
スティーヴン・グレアム
キャスリン・ナルドゥッチ
アレクサ・パラディノ
ドメニク・ランバルドッツィ
ポール・ベン=ヴィクター
アンナ・パキン
ジェシー・プレモンス
音楽 ロビー・ロバートソン

『アイリッシュマン』あらすじと感想【ネタバレなし】


衝撃のノンフィクションがスクリーンへ

『アイリッシュマン』の原作は、チャールズ・ブラントのノンフィクション作品『I Heard You Paint Houses』。

2004年に発表された当時、アメリカで大きな物議を醸した作品です。

アメリカ史において最大の謎といわれているジョン・F・ケネディ元大統領暗殺事件。

その事件と同等の謎として扱われるのが、全米トラック運転手組合の委員長だったジミー・ホッファ氏の失踪事件です。

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『I Heard You Paint Houses』、そして『アイリッシュマン』では、このジミー・ホッファ氏の失踪事件について言及され、今でもその真偽について議論が繰り広げられています。

物語の語り手は、フランク・シーランという一人の男。

ただのトラック運転手だったシーランがどういった流れでアメリカの裏社会と繋がりを持ち、自身の人生が変わっていったかを語る回顧録です。

老人ホームで年老いたシーランが人生を振り返るのが2000年頃。

ドライブ旅行をしているのが1975年のとある日。

そして、第二次世界大戦後から1975年のその日までの数十年間。

主に現在(2000年頃)と1975年が基準となりますが、3つの時間が入れ替わり立ち替わり進んでいく形式になっています。

後半には1975年から2000年頃までのエピローグ的なストーリーも含まれており、淡々と語られるシーランの人生は同時にアメリカの近代史を描いているとも言えます。

マフィアの世界を通して描く人間の一生

時間軸と同様に登場人物も多いのが特徴の一つである本作『アイリッシュマン』。

注目すべき主要人物は3人います。

語り手であるフランク・シーラン(ロバート・デ・ニーロ)。

全米トラック運転手組合の委員長で、のちに起こる失踪事件はアメリカで未解決の謎となったジミー・ホッファ(アル・パチーノ)。

ペンシルバニアを代表するマフィアのボス、ラッセル・ブファリーノ(ジョー・ペシ)。

この3人の関係性が物語の主軸となっていきます。

アイルランド系アメリカ人のシーランは第二次世界大戦中にイタリアの戦線で従軍しており、戦後はアメリカに戻ってトラックの運転手をしていました。

シーランは会社とトラブルを起こしてしまい窮地に立たされますが、とある出来事をきっかけに知り合ったブファリーノが助けてくれます。

その後、ブファリーノの仕事を手伝うようになったシーランは再び問題を起こしてしまいますが、結果としてまた助けられたことから、ブファリーノがボスを務めるマフィアの汚れ仕事をこなすようになっていきました。

公私ともにブファリーノと良好な関係を築いていく中で、シーランはジミー・ホッファのボディーガードをするように頼まれます

ホッファはシーランが所属する全米トラック運転手組合の委員長であり、当時のアメリカで彼のことを知らない人はいないといわれるほどの有名人でした。

そんなホッファに気に入られたシーランは、家族ぐるみで付き合うようになっていきます。

マフィアとの癒着が激しく、国からも一目置かれて誰もコントロールできないことから、大統領に次いで権力を持つ男と称されるホッファでしたが、ある一件から刑務所に入れられることになりました。

映画『アイリッシュマン』

出典:キネカ大森公式サイト

その隙にブファリーノ率いるマフィア側は新たな形態を作っていこうとしますが、今度は新しい大統領と結託して釈放されたホッファ。

刑務所からホッファが出てきたことをきっかけに、シーランはホッファとブファリーノとの間で板挟みになっていきます。

戦時中の従軍時代からトラック運転手を経てマフィアの仕事を手伝うようになった今まで、ずっと真面目に指示されたことを忠実にこなしてきたシーラン。

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殺しや放火、証拠隠滅の作業など、どんなに手の汚れることでも仕事だと割り切ってできていたのは、守るべき家族がいる普通のサラリーマンだったからでもあります。

ホッファを敵に回しても、ブファリーノの言うことを聞くのか。

それとも、ホッファを裏切るようなことはしないのか。

言われたことをこなすだけの仕事で評価されてきたシーランが、初めて自分の良心に問いかけ、モラルと葛藤することになります。

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これは裏社会やマフィアだから起こることではなく、人生の中で誰しもぶつかることのあり得る問題です。

会社や学校、何らかの組織でうまく生きていくためには、どうしても目上の人に従ったうえで優秀な成績を修めることが重要視される傾向にあります。

評価されるために言われたことをやる、いい子でいる、受け身の姿勢でいる、という風に過ごしていると、いつのまにか自分の意志が消えていってしまいます。

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自分のしたいことは何だろうか、するべきことは何だろうか。と、その時に自ら判断できればまだいいのですが、後になって後悔するようでは遅いのです。

家族との関係もまた同じで、心が離れてしまってからでは修復は難しいものです。

そうならないためにどうしたらいいのか、考えさせられる作品になっています。

CGの力で若返る大物俳優たちにも注目

主要キャストの3人は70代後半ですが、30代の頃からの自分たちを演じなければなりませんでした。

そのため、CGと特殊メイクを駆使して顔を若返らせています。

身体つきや動きまでは若返らせることができないので、歩き方など違和感のある点はあるかもしれませんが、今や大御所となった俳優たちの若かりし日の表情が垣間見られる業界屈指の作品に仕上がっていました。

フランク・シーランを演じたロバート・デ・ニーロは『ゴッド・ファーザー PARTⅡ』をはじめ、『タクシードライバー』や『カジノ』など数多くのクライム映画に出演しました。

マフィアを演じることも多く、その中でもマーティン・スコセッシ監督と幾度となくタッグを組んでいます。

ジミー・ホッファを演じたアル・パチーノも同じように『ゴッド・ファーザー』を代表作として挙げられることが多く、マフィアとしての姿が印象深い方もいるのではないでしょうか。

ロバート・デ・ニーロとは『ゴッド・ファーザー』で親子役を演じた他、同世代であることやイタリア系アメリカ人であることから比較されることが多々あります。

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しかし、共演は少なかったため『アイリッシュマン』での再共演はクライム映画好きにとっては胸が熱くなる展開でしょう。

ラッセル・ブファリーノを演じたジョー・ペシもまた『グッド・フェローズ』での演技が評価されアカデミー助演男優賞を受賞した経験があり、マフィア役が板についた俳優の一人です。

この豪華なメンツが集まり、それぞれが70代後半となった今、クライム映画の集大成を共に作り上げているのには大きな意味があると思います。

『アイリッシュマン』まとめ

いかがだったでしょうか。

マーティン・スコセッシ監督がロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシという大物俳優たちを主要キャストに迎えて作り上げた大作映画『アイリッシュマン』。

是非その目でご覧になってください。

アカデミー賞の行方もお見逃しなく!

要点まとめ
  • 淡々と語られる人生の物語
  • 誰しもが考えさせられる作品
  • マフィア映画の集大成!