芥川賞や三島由紀夫賞の候補となった、本谷有希子の小説「生きてるだけで、愛。」が映画化されました。
映画『生きてるだけで、愛。』公式のあらすじを読み、「ふーん」くらいのテンションで観はじめましたが、とんでもない傑作で観てよかったです。
良い意味で、恋愛映画っぽくない恋愛映画でした。
- 躁うつ病からの自立模様
- 要所に散りばめられる素敵なセリフ
- 寧子役である趣里の演技
それではさっそく『生きてるだけで、愛。』をネタバレありでレビューしたいと思います。
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目次
『生きてるだけで、愛。』作品情報
作品名 | 生きてるだけで、愛。 |
公開日 | 2018年11月9日 |
上映時間 | 109分 |
監督 | 関根光才 |
脚本 | 関根光才 |
原作 | 本谷有希子 『生きてるだけで、愛。』 |
出演者 | 趣里 菅田将暉 田中哲司 西田尚美 松重豊 石橋静河 織田梨沙 仲里依紗 |
音楽 | 世武裕子 |
【ネタバレ】『生きてるだけで、愛。』あらすじ・感想
躁うつ病の無職女性と週刊誌記者の男性
躁うつ病になり、過眠の症状に悩む女性・寧子(趣里)と、週刊誌記者の男性・津奈木(菅田将暉)。
二人はコンパをきっかけに、成り行きで同棲し始め、津奈木の部屋で暮らしています。
寧子は津奈木に訳の分からないことで怒ってばかりです。
津奈木は日々増えていく仕事量に疲れはじめていました。
そうやって、二人の関係は側から見たら良いものとは言えなくなっていきます。
気持ちはあるのに起きられない寧子(趣里)
寧子の姉は妹をを心配する気持ちからか、寧子に「バイトとかしないの?」と聞きます。
姉の言葉が気になった寧子は、次の日にコンビニバイトの面接を受けることにしました。
寧子は起きられるようにと目覚ましを何個もかけましたが、結局起きることができず面接をドタキャンしてしまいます。
「面接どうだった?」という姉からの連絡に対し、「そこにすらたどり着けなかった」と寧子は言います。
私はこの「そこにすらたどり着けなかった」という表現がとても好きです。
また、姉の言葉で面接を受けることにしたという寧子のその行動に、もう100点をあげたい…。
私自身、過眠ではなく不眠なのですが、躁うつを繰り返しています。
なので、寧子の気持ちが痛いほど刺さって、刺さって…。
面接に行けなかった日、寧子は夜ご飯を作ろうと買い物へ行きます。
しかし、寧子はちょっとしたことで心が動揺してしまい、買い物すら上手くできずに帰宅しました。
寧子が料理をしようとするとブレーカーが落ち、家の中で泣き叫ぶシーンで私も泣きました。
ここから寧子(趣里)の自立への道が始まる
そんなある日、寧子のところへ津奈木の元恋人・安堂(仲里依紗)が現れます。
寧子は安堂から「津奈木とやり直したいから津奈木と別れて」と説得を受けるのでした。
安堂から「津奈木には言わないでよね」と言われた寧子は、津奈木に相談することもできず…。
「お金が無いから家を出ることができない」と言う寧子に、安堂は「あんた働く気あんの?」と強くあたり、ほぼ強制的にバイト先を決めました。
結果的にこの安堂の行動が、寧子の自立への手助けとなったのです。
「またできなかった」
寧子がほぼ強制的に決められたバイト先は、小さなカフェ&バーでした。
バイト先の人たちはみんな優しく、寧子の自立の手助けをしてくれます。
ある日のバイト終わり、みんなでご飯を食べている時のことでした。
「ウォシュレットって怖くないですか?水ってなんでも切れるんですよ」と言う寧子に対して、バイト先の人々は戸惑いを見せました。
寧子はそのことが引き金となり、死にたくなってしまったのです。
泣きながら津奈木へ電話を掛けますが、電話中携帯を落としてしまいます。
どうしたらいいか分からなくなった寧子は、店のトイレを壊し走り出しました。
最後にギュッと詰まった素敵な台詞たち
走る寧子を見つけた津奈木は、寧子を追いかけます。
アパートの屋上へたどり着き、なんと寧子は裸でフェンスにもたれかかっていました。
津奈木は寧子にコートを着せて、そこから二人は話し込みます。
「俺、仕事クビになった」
「カッとなって、会社の窓からパソコンを投げた」
と、津奈木は寧子に言いました。
すると寧子は「津奈木、私みたいなことしてる」と言い、二人は笑い合います。
そういった会話がどれも素敵で、最後に素敵な台詞がギュッと詰まっています。
そこに安堂が二人の前へ現れますが、津奈木は安堂を置いて、寧子の手を引き部屋へ戻るのでした。
私の一番好きなシーンが、部屋に戻った後に津奈木が寧子を抱きしめながら「本当はもっと分かりたかった」と言うシーンです。
部屋の中、裸で踊る寧子を津奈木が見ているシーンで、映画『生きてるだけで、愛。』は幕を閉じます。
はっきりと描写されていないため、これは私の憶測になりますが「これが最後だから」という言葉があったり、「分かりたい」ではなく「分かりたかった」と過去系な点から、二人はその日で恋人同士ではなくなったのだと思います。
趣里の演技
躁うつ病。
家族や社会からのプレッシャーは大きく、頑張れそうになっても、ひょんなことでうつ状態になったり、訳の分からないタイミングで躁状態になったりします。
訳の分からないことで急に怒ったり泣いたりも。
できないけれど、できない不安や情けなさと戦いながら、これからもこのままでどうしたらいいのかと悩みながら、一生懸命生きることと向き合って毎日を過ごしているのです。
そんな寧子を見事に演じあげたのが、女優・趣里です。
私は映画『生きてるだけで、愛。』で初めて趣里を知りました。
趣里の父は俳優・水谷豊で、母は女優・伊藤蘭とのこと。
心の病気がある方は、趣里の演技がリアル過ぎて、たぶんこの映画はとても刺さります。
周りに寧子みたいな人がいる方は、趣里の演技がリアル過ぎるので、裏ではこんなに悩んでいるんだ…ということを知っていただけると嬉しい。
近年稀に見る圧巻の演技と言っても過言ではありません。
すごい女優さんをまた知ることができました。
『生きてるだけで、愛。』まとめ
そして今年の新人俳優賞のプレゼンターはなんと菅田将暉さんでした!
菅田さんから趣里さんに賞状が手渡され、スピーチでは、感謝を伝える趣里さんに、菅田さんがピースで応える場面も。思いがけず素敵な共演が実現しました✨#生き愛 #趣里 #菅田将暉 #日本アカデミー賞 pic.twitter.com/6dMUTtVKr6— 映画『生きてるだけで、愛。』公開中! (@ikiai_movie) 2019年3月1日
いかがでしたでしょうか。
ほぼ恋愛描写はなく、ちょっと異質な恋愛映画というところが、映画『生きてるだけで、愛。』の最大の良さだと思います。
新感覚の恋愛映画を観ることができて、私は大満足でした。
本作は、どんな方にも一度は観ていただきたい傑作です。
興味を持った方は、ぜひ観てみてください。
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