良い邦題・悪い邦題まとめ!あの洋画は本当はどんなタイトルなのか?『アナと雪の女王』『バス男』など

良い邦題・悪い邦題まとめ!あの洋画は本当はどんなタイトルなのか?『アナと雪の女王』『バス男』など

出典:amazon.co.jp

どうも、ミルトモライターのニコ・トスカーニです。

完全に私事なのですが、海外映画祭出品のため専門の方に英語字幕を発注しました。

ニコ・トスカーニ

2週間ほどで日本語台詞と対応する英語字幕にタイムコードがついた対訳表が納品されたのですが、これは眺めてみると新鮮な驚きがありました。

日本語と英語は文化的にも発音的にも文法的にも全く似ていない言語です。

それゆえに字幕翻訳は、言語の違いという埋めがたいギャップを埋めなければならないわけですが、同じことが洋画の邦題作成にも言えます。

今回は邦題について考察してみました。

英語と日本語の違い

例えば「すいません」は直訳すると”Excuse me”ですが、文脈上「Thank you」と訳したほうが適切なことも多く、一筋縄ではいかない言葉です。

「いただきます」や「ごちそうさま」、「お疲れ様でした」などは日本では挨拶として定着した表現ですがこれらにぴったり合致する英訳はありません。

また、「先輩・後輩」は概念的に英語圏に存在しない代物なので「~先輩」とセリフにあっても「先輩」の部分は削除して訳されるか、あるいはそのまま”~senpai”と訳されます。

ニコ・トスカーニ

どうやら韓国には合致する概念があるみたいですが。

私は原題と邦題を山ほど比較してみました。

すると邦題の付け方にはいくつかパターンがあることに気づきました。

いくつかある邦題のパターン

①タイトルそのままパターン

ゴッドファーザー』(1972)、『ロッキー』(1976)、『ロード・オブ・ザ・リング』(2001)

などもっとも良く見るパターンな気がします。

『ゴッドファーザー』ぐらい短いタイトルならいいですが、『ホワット・ライズ・ビニース』(2000)『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』(2002)など長すぎて目が滑ります。

ニコ・トスカーニ

ただ、このパターンは原題ほぼそのまま(冠詞が抜けてることがありますが)一番文句が出にくいパターンなので手堅いといえば手堅いですね。

②原題の直訳・意訳パターン

市民ケーン』(1941)、『カッコーの巣の上で』(1975)など

それぞれ原題は”Citizen Kane“、”One Flew Over the Cuckoo’s Nest“。

『市民ケーン』は直訳、『カッコーの巣の上で』は直訳寄りの意訳。

このパターンも多い気がします。

ニコ・トスカーニ

個人的にはこのパターンが一番好きです。タイトルというものがいかによく考えられたものかよくわかる締まったタイトルが多い気がします。

スミス都へ行く』(1939・原題”Mr. Smith Goes to Washington”)』、『紳士協定』(1947・原題”Gentleman’s Agreement”)『或る夜の出来事』(1934・原題”It Happened One Night”)など古い映画に多めかもしれません。

③原題に少し足した・引いたパターン

アリー/スター誕生』(2018)『COLD WAR/あの歌、二つの心』(2018)『ROMA/ローマ』(2018)『プライベート・ライアン』(1998)など

『スター誕生(“A Star Is Born”)』は3回リメイクされてるのでどれだか判別するためにもいい判断だと思います。

ニコ・トスカーニ

「COLD WAR」はちょっとわざとらしい気がします。

『プライベート・ライアン』の原題は”Saving Private Ryan”です。”

Saving”が抜けて”Private”を「二等兵」(軍隊で一番下の階級)ではなくそのままカタカナにしたことで奇怪な邦題になってしまいました。

ニコ・トスカーニ

原題を敢えて訳すなら「ライアン二等兵救出」というところでしょうか。

④原題から全く違うパターン

良きにつけ悪しきにつけ最も印象深いパターンです。

今回はこのパターンを実例付きで取り上げます。

というわけで、私的「原題と全然違うけど良い邦題と悪い邦題」選です。

邦題・この捻り方はやめてほしかった選

『暴力脱獄』(1967)

原題は”Cool Hand Luke

訳すなら「冷静沈着なルーク」というところでしょうか。

このように原題とかけ離れた邦題を作るのは基本的には「わかりやすくする」のが目的です。

同作の場合、「冷静沈着なルーク」というタイトルではどんな内容の作品か推測が付きにくい、ということで改変を試みたのでしょう。

邦題を決めるのは映画配給会社の仕事です。

配給会社は映画を売る責任があるので、配給会社がタイトルを原題から大きく変更する必要があると判断すればどんな邦題にでもなり得ます。

ニコ・トスカーニ

ですが、このタイトルはとても内容を表しているとは言えません。
確かに映画の主人公ルークは何度も脱獄を試みますが、それは体制へ反抗する行為であって暴力が目的ではありません。
このタイトルだとアクション映画みたいで酷く内容とミスマッチです。

『ミニミニ大作戦』(1969)

英国製のカーアクション映画。

原題は”The Italian Job“。

イタリアのトリノを舞台に泥棒集団が大仕事をするのでこのタイトル。

ニコ・トスカーニ

邦題が「ミニミニ」なのはマイケル・ケイン率いる泥棒集団が小型車のミニMK-Iに乗っていたことからついたものだと思いますが、字面と語感が幼児向け番組のようで内容と酷くミスマッチです。

同作はアメリカでリメイク(2003)されましたが、リメイク版も同じタイトルがついています。

『歌え!ロレッタ愛のために』(1980)

B級感あふれるタイトルですが、アカデミー賞主演女優賞(シシー・スペイセク)を受賞しアカデミー賞で複数の主要部門を争った名作です。

原題は”Coal Miner’s Daughter“。

直訳すると「炭鉱夫の娘」です。

本作はカントリー歌手ロレッタ・リンの半生を描いていますが、ロレッタの父親が炭鉱夫だったことからこの原題になっています。

邦題の方が内容をより直接的に表しており確かにわかりやすいですが、ここまで語感がB級臭い邦題にする必要はあったのでしょうか?

ニコ・トスカーニ

むしろ邦題のせいで損をしている気すらします。

『バス男』(2004)

日本では劇場未公開。

原題は”Napoleon Dynamite“。

ニコ・トスカーニ

当時日本で流行った『電車男』(2004)にあやかろうとしたタイトルであることが誰の目にも明らかなのですが、まったく内容を表していません。

あまりにも不評だったため2013年には原題に即した『ナポレオン・ダイナマイト』に改題されてディスクが再発売されています。

その際、20世紀FOXホームエンターテイメントはこんなツイートをしています。

『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(2016)

横文字タイトルなので原題にちょい足しパターンと思いきや実は全然違います。

原題は”The Big Short“です。

“short”とは”short selling”=「空売り」(特定の金融商品の価値が落ちることを見越した投資方法)という投資用語を指しています。

本作はサブプライムショックでサブプライム関連商品が暴落することを予見し、空売りで巨額の利益を得た投資家たちを描いています。

敢えて直訳的にタイトルを訳すなら「史上最大の空売り」というところでしょうか。

「マネー・ショート」というタイトルは全く意味不明、と言うか無意味です。

ニコ・トスカーニ

それでも「マネー・ショート」をあえて訳すと「ワタシ、オカネナイ」みたいなカタコトな感じになります。

『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)

原題は“Thor: Ragnarok”で、Ragnarok=ラグナロクとは北欧神話における世界の終末を意味します。

『マイティ・ソー』シリーズは北欧神話を下敷きにしており「ソー」は北欧神話に登場する軍神「トール」の英語読み。

ソーの武器、ムジョルニアは軍神トールのハンマー、ミヨルニルの英語読みです。

ニコ・トスカーニ

確かに劇中でバトルロイヤルはしてますが、それは最も重要な要素ではなく、ラグナロクというタイトルに結末が集約されているからこそのタイトルだと思うのですが……。

関連記事→映画『マイティ・ソー』シリーズあらすじ・ネタバレ感想!最強の雷神「ソー」をわかりやすく解説

『ぼくのエリ 200歳の少女』(2008)

原題は”Låt den rätte komma in”(スウェーデン語)で英題はほぼ直訳の”Let the Right One In

ニコ・トスカーニ

スウェーデン語も英語も同じゲルマン語派の言語なので、並べてみると字面が似ているのがわかります。単語の数も一緒。

言語構造の似た言語は訳しやすくていいですね。

和訳するなら「正しきものを迎え入れろ」というところでしょうか。

それにしてもこの邦題はちょっと酷すぎます。

原題の要素はゼロで、しかも内容を誤認しています。

ニコ・トスカーニ

どこが誤認かを書くとネタバレになってしまうので未見の方は映画をご覧ください。いくらなんでももう少しやりようがあったでしょう。

なお、同作はアメリカでリメイクされていますが、アメリカリメイク版の原題は”Let Me In”(2010)で、邦題は『モールス』です。

ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストの原作が『MORSE -モールス-』のタイトルで翻訳されているので原作の邦題を採用したというところでしょうか。

ニコ・トスカーニ

ところで、このタイトルはサザンオールスターズのヒット曲「いとしのエリー」を連想させようとしているのでは?と邪推してしまうのは私だけでしょうか?

この邪推が正しいのだとしたら、センスがあまりにも昭和です。

番外:『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)

横文字の原題が横文字の邦題になるのは珍しいことではありませんが、これは多くの場合と事情が違い、映画の原題よりも原作小説のタイトルが優先された結果です。

桜坂洋先生の原作小説はそのまま『All You Need Is Kill』です。

映画の原題は”Edge of Tomorrow

訳すなら「明日の縁」でしょうか。

ニコ・トスカーニ

同じ2日間を繰り返す話なので、映画の原題は繰り返しという物語上のギミックを強調した感じですね。

閑話休題

ただ訳しただけの名タイトルたち

タイトルとは作品の内容を煎じ詰めたものだ」というのはかつて通っていた映画学校の講師の言です。

恐らくその講師自身の言葉ではなく、映画界の格言的なものだと思います。

前述のとおり、邦題には「ただ訳しただけ」パターンのものが結構ありますが、これらは非常に引き締まった良いタイトルになっている場合が多いです。

例えば古典的名作の『第三の男』(1949)は原題の”The Third Man”を直訳しただけですし、同じく古典的名作の『アラビアのロレンス』(1962)は原題の”Lawrence of Arabia”を直訳しただけ。

シンドラーのリスト』(1993)は原題の”Schindler’s List”、『羊たちの沈黙』(1991)は原題の”The Silence of the Lambs”のほぼ直訳です。

lambは正確には「子羊」なのでより厳密には『子羊たちの沈黙』ですが。

もっと最近の例なら『君の名前で僕を呼んで』(2017)も原題”Call Me by Your Name”のほぼ直訳です。

これらはタイトルだけ見ても格調の高さが伝わってきますし、内容を実に端的に表しています。

日本映画の古典的名作だと例えば『七人の侍』(1954)や『二十四の瞳』(1954)など内容を煎じ詰めきった素晴らしいタイトルだと思います。

やっぱりタイトルというのはよく考えてつけられているのですね。

ニコ・トスカーニ

というのは閑話休題。この先は、私的邦題傑作選です。

こちらも原題からある程度捻ってあるものをチョイスしています。

邦題・これはファインプレーなタイトル選

『U・ボート』(1981)

ドイツ語の原題は”Das Boot“、英題はそれを直訳した”The Boat”

ニコ・トスカーニ

英語とドイツ語は同じゲルマン語派の言語なので両言語は近しい親戚関係にあります。こうやって並べてみるとそっくりですね。

邦題はちょっとだけ捻って『U・ボート』。

Uボートはドイツ海軍の保有する潜水艦の総称で、映画そのものもまんまUボートの話なので端的に内容を表した良いタイトルだと思います。

ニコ・トスカーニ

シンプル、とてもいいですね。

他にもちょっと捻った系だと、

  • 未知との遭遇』(1977)の原題は”Close Encounters of the Third Kind”で直訳すると「第三種接近遭遇」
  • マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)の原題は”Mad Max: Fury Road”で”death”という単語は原題にはありません。

これらは原題を少し捻っただけですが、このちょい捻りのさじ加減が素晴らしいですね。

『ランボー』(1982)

原題は”First Blood”俗語表現で「先に仕掛けた方」という意味。

邦題は主人公の名前を冠しただけですが、「ランボー」という名前の響きが強そうなので作品の雰囲気が良く出てとてもグッドです。

ランボーシリーズは二作目以降、逆輸入されて英題も『ランボー』になりました。

ニコ・トスカーニ

と思って追加調査したのですが、”First Blood”のタイトルが使われたのは英語圏を含む一部地域のみで他地域では最初から『ランボー』だったみたいです。

『ワイルド・スピード』(2001)

原題は”The Fast and the Furious“敢えて訳すなら「速くて激しい」という感じでしょうか?

ニコ・トスカーニ

これは原題よりもむしろ邦題のほうがしっくりきますね。

激しいカーチェイスがウリの映画なので「ワイルドなスピード」で内容を端的に表しています。

関連記事→映画『ワイルド・スピード』シリーズ全作品あらすじ・見どころを総まとめ!ワイスピを徹底攻略しよう

『あるいは裏切りという名の犬』(2004)

原題は”36 Quai des Orfèvres“で、直訳すると「オルフェーヴル河岸36番地」。

これはパリ警視庁(Préfecture de Police de Paris)の所在地を表しています。

文学的なタイトルですね。

ニコ・トスカーニ

邦題は思い切り原題と乖離していますし、意味不明ですが語感からハードボイルド感が溢れているのでこれは十分アリだと思います。

『男たちの挽歌』(1986)

原題は中国語:「英雄本色」で英題:”A Better Tomorrow”

ニコ・トスカーニ

全然、一欠けらたりとも原題の要素が入っていませんし、意味不明ですが語感からハードボイルド感が溢れているのでこれもアリだと思います。

また、『男たちの挽歌』は登場人物の大半が男なので作品の雰囲気もよく表現されています。

『カールじいさんの空飛ぶ家』(2009)

原題は”Up

ニコ・トスカーニ

これはわかりやすくてとてもいいですね。

『アナと雪の女王』(2013)

原題は”Frozen

『カールじいさんの空飛ぶ家』もそうですが、両者ともファミリー映画なのに原題が酷く不親切な気がします。

“Up”と”Frozen”では映画のジャンルすら推測不可能ですよね。

ニコ・トスカーニ

ファミリー映画であることを考慮した配慮にあふれる良いタイトルだと思います。

関連記事→映画『アナと雪の女王』あらすじ・ネタバレ感想!“アナ雪”旋風が起こったディズニー史上最高の記録的大ヒット作

『ヒトラー 〜最期の12日間〜』(2004)

原題は”Der Untergang“(ドイツ語)で英題はほぼ直訳の “Downfall”

“Untergang”にはいろいろな訳例がありますが、ここで当て嵌まりそうなのだと「失脚」「没落」「破滅」といったあたりでしょうか。

邦題は大分直接的な感じになっていますが内容を端的に表しています。

ニコ・トスカーニ

このタイトルは売り上げ向上にも貢献したんじゃないでしょうか。

『善き人のためのソナタ』(2006)

原題は”Das Leben der Anderen“、英題はほぼ直訳の”The Lives of Others”

訳すなら「他人の人生」でしょうか。

ニコ・トスカーニ

かつて存在した東ドイツのシュタージ(秘密警察)局員とシュタージに監視される反体制派の疑いを持たれた劇作家の話なので元のタイトルは内容をシンプルに表現した感じですね。

邦題の「善き人のためのソナタ」がどこから来ているかというと、劇中に出てくるピアノ曲と本のタイトルです。

これらは主人公のシュタージ局員の心を揺さぶる重要なアイテムになっているので、邦題はいくらか抽象的な方向性で内容を上手く表していると思います。

『ハドソン川の奇跡』(2016)

原題は”Sully“です。

“Sully”=サリーは物語の主人公、チェスリー・サレンバーガー氏の愛称。

本作は、バードストライクでコントロール不能に陥った機体を、機長のサレンバーガー氏が迅速な判断でハドソン川に不時着させ、一人の犠牲者も出さなかった事件=通称「ハドソン川の奇跡(Miracle on the Hudson)」に基づいています。

ニコ・トスカーニ

原題もさりげなくていいタイトルだと思いますが、邦題もシンプルかつ分かりやすくていいタイトルだと思います。

いい邦題・悪い邦題まとめ

以上、思いつく限りの例を挙げてみました。

タイトルは映画を紹介する上でどうやっても外せない要素です。

ニコ・トスカーニ

良きにつけ悪しきにつけ印象に残るタイトルをつけて欲しいものですね。