映画『1秒先の彼女』あらすじ・感想!台湾発の不思議でチャーミングなタイムラグ・ラブストーリー

『1秒先の彼女』

出典:『1秒先の彼女』公式ページ

『熱帯魚』『ラブゴーゴー』を生み出した台湾映画界の異端児、チェン・ユーシュン監督の最新作『1秒先の彼女』。

主人公は、いつもワンテンポ早いのシャオチーと、いつもワンテンポ遅いグアタイ。

2人の間にあるちょっとした「時差」が生み出すかつてない奇跡の物語を描き、2020年・第57回金馬奨で作品賞を含む5部門を受賞したファンタジックなラブストーリーです。

マルコヤマモト

それでは話題の『1秒先の彼女』についてレビューしていきます。

映画『1秒先の彼女』作品情報

『1秒先の彼女』

(C)MandarinVision Co, Ltd

作品名 『1秒先の彼女』
公開日 2021年6月25日
上映時間 119分
監督 チェン・ユーシュン
脚本 チェン・ユーシュン
出演者 リー・ペイユー

リウ・グァンティン

ヘイ・ジャアジャア

ダンカン・チョウ

編集 ライ・シュウション

映画『1秒先の彼女』あらすじ・感想【ネタバレなし】


消えたバレンタイン…

仕事も恋もパッとしないアラサー女子のシャオチー(リー・ペイユー)には、「人よりワンテンポ早い」不思議な習性がありました。

子供の頃から彼女の行動は人より少し早く、合唱の際もリズムが合わなかったり、写真を撮る際には目を瞑ってしまったり、とにかく行動が人よりワンテンポ早いのです。

父親はシャオチーが高校生の時に「豆花(トゥファ)を買いに行く」と言ったきり家に帰らず、シャオチーは妹・弟とともに母親の実家がある新竹市へ引っ越すことに。

現在は台北で郵便局の窓口職員として働くシャオチーでしたが、彼氏もおらず七夕バレンタインの予定も特になし。

マルコヤマモト

作品を楽しむ上での基礎知識として、台湾には2月14日の西洋情人節と7月7日の七夕情人節の2回のバレンタインがあることを覚えておきましょう!ちなみに台湾の人々にとっては七夕バレンタインの方が重要で盛り上がるそうです。
『1秒先の彼女』

(C)MandarinVision Co, Ltd

そんなシャオチーの楽しみは、DJモザイクのラジオに電話し、思いの丈を打ち明けることでした。

マルコヤマモト

シャオチーの部屋の構造を活かし、アラサー女子の痛い妄想を見事に表現した演出がすごい!やっぱり恋のお悩み相談はラジオDJに聞いてもらうに限りますね。

そんなシャオチーでしたが、ある日の仕事終わりにハンサムなダンス講師・リウ(ダンカン・チョウ)に出会い、次第に親密な関係になった2人は、七夕バレンタインの日にデートする約束をします。

『1秒先の彼女』

(C)MandarinVision Co, Ltd

マルコヤマモト

ダンカン・チョウ演じるリウの胡散臭い雰囲気に笑ってしまいますが、予想通りなので安心してOK。ちなみに台湾では公園に集まってみんなでダンス、太極拳などは日常。タイエビダンスは謎だけど、なんか楽しそう〜!

しかし、次にシャオチーが目を覚ますと七夕バレンタインの次の日になっていました。

リウとは連絡がつかなくなっており、肌は真っ赤に日焼けしているシャオチーは、七夕バレンタインの記憶が丸一日なくなっていることに気づきます

いつも通り職場に向かうシャオチーは、その途中で写真展のウィンドウに飾られた目の開いた自分の写真を発見!

写真を撮るときはいつも目を瞑ってしまうシャオチーは、この写真を撮った人物と消えた七夕バレンタインの記憶が関係あることに気づき、相手を探そうとします。

『1秒先の彼女』

(C)MandarinVision Co, Ltd

見覚えのない自分の写真に記憶にない「038」の私書箱の鍵、失踪した父親の記憶…。

そして、消えたバレンタインの鍵を握る人物が毎日窓口に手紙を出しにくるグアタイ(リウ・グァンティン)だということがわかります。

シャオチーは消えたバレンタインの謎を追うべく、写真が撮影された場所を探しに行きますが…!?

マルコヤマモト

前半はシャオチーのせっかちな恋愛を見せられて「おっとっと…」とついていけない感じになるのですが、それも「ワンテンポ早い」の演出と考えると物凄い!シャオチー役のリー・ペイユーの「ワンテンポ早い」演技も正直大変そう!

消えたバレンタインの謎を握る男

シャオチーの消えた七夕バレンタインの謎を握る人物が、人より「ワンテンポ遅い」習性を持つ青年・グアタイ。

子供の頃から「亀」と呼ばれ、いじめられていたグアタイでしたが、実は高校時代にバスの中でシャオチーと出会っていたのです。

マルコヤマモト

それ以来、グアタイがシャオチーを見守る日々が始まることに。

シャオチーが台北から引っ越してしまい、それ以来出会うことがなくなってしまった2人ですが、数年後、バスの運転手として働くグアタイの前にシャオチーが出現。

『1秒先の彼女』

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マルコヤマモト

しかしシャオチーは、グアタイのことを全く覚えていないようです。

以来グアタイはシャオチーが務める郵便局の窓口に通い詰め、毎日どこかへ手紙を送り続けていました。

毎日シャオチーのことを追いかけていたグアタイは、リウと親しそうにしているシャオチーの姿を見てヤキモチを妬くように。

『1秒先の彼女』

(C)MandarinVision Co, Ltd

リウとシャオチーが映画を見に行った夜、リウの正体が詐欺師であることがわかったグアタイは、バスの中で殴り合いの喧嘩をし、「2度とヤン・シャオチーに近づくな!」と警告。

リウとの取っ組み合いの末に傷だらけになったグアタイがバスの中で意識を失い、目を覚ますと次の日の朝になっていました。

しかし、バスや車、街の人々は静止しており、グアタイ1人だけが動いているという不思議な状態に…。

はじめは驚くグアタイでしたが、台北の街をサイクリングしているとバスに乗っているシャオチーを発見。

グアタイは静止したシャオチーと他の乗客を乗せたまま、「僕の秘密基地に案内する」と言って、台中の美しい海岸線へ向かってバスを走らせたのです…!

『1秒先の彼女』

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マルコヤマモト

ワンテンポ早いシャオチーの時間の進み方とは正反対の、ワンテンポ遅いグアタイの時間の進み方に少しホッとします。ここからはシャオチーとグアタイの過去と、失われた七夕バレンタインに何が起こっていたか?の答え合わせが始まります。

映画『1秒先の彼女』感想

台湾映画初心者にもおすすめのポップなラブストーリー

マルコヤマモト

以前台湾映画を探していた際『牯嶺街少年殺人事件』が4時間近くあることを理由に、それ以来なかなか食指が動かないでいましたが、やっと私でも観れそうなポップな作品が登場…!

ということで、初めての台湾映画となる『1秒先の彼女』を鑑賞してきました。

前半で事件を描き、後半でその種明かしをしていくというわかりやすい物語もグッド。

また、主人公の2人がキラキラの10代でもなく恋愛盛りの20代でもなく、「痛いアラサー」だからこそ、色々が成立しているところがなお良し。

マルコヤマモト

典型的なラブコメの世界観、男女それぞれ異なる妄想、何かと濃いキャラに「ふふふ」と笑っていたら最後はつられて泣いてしまうという、予想外の展開に自分でも驚き。
『1秒先の彼女』

(C)MandarinVision Co, Ltd

先述しましたが、ワンテンポ早いシャオチーが描かれる急かされるような前半に比べると、ゆったりとした時間が流れるグアタイが描かれる後半の心地よさ。

2つのテンポ感で描くことで結局は映画全体のテンポのバランスも取れてしまい、最後には色々と辻褄が合ってしまうことが今作の凄いところ

そして全ての謎が解き明かされ2人のテンポが合った時「よっしゃ!ようやく始まったなぁ〜」とすら感じてしまうのです。

マルコヤマモト

美しい台湾の景色も相まって、また台湾へ行きたい気持ちになりました。

ちなみにバスが走っていくシーンが撮影されたのは嘉義県・東石村で、今作の聖地になりそうですね。

『1秒先の彼女』

(C)MandarinVision Co, Ltd

自分の中で重苦しいテーマが多い、アーティスティックというイメージが強かった台湾映画ですが、『1秒先の彼女』は比較的にポップで台湾映画初心者でも気軽に見れる作品だと思いました。

マルコヤマモト

今作が私の台湾映画初体験となったわけですが、良い出逢いで満足です。これをきっかけに台湾映画を深掘りしていきたいです!。

生きづらさを感じている人への応援歌のような作品

1秒先の彼女』は、恋に不器用な人はもちろん、生きづらさを感じている人にも響くところがある作品。

シャオチーやグアタイのように、人と少し感覚が違うということだけでかなり生きづらさを感じている人はこの世に鬼のような数ほどいるはず。

『1秒先の彼女』

(C)MandarinVision Co, Ltd

マルコヤマモト

そんな自分を肯定してもらうという意味でも、今作はかなり優しくてホッとしました。

グアタイに与えら得たボーナスタイムのような奇跡は現実に起こらないにしても、普段生き急いでいる自分に1日くらいご褒美デイをあげても良いんじゃないでしょうか

マルコヤマモト

ゆっくり好きに過ごそうよ、緑豆豆花でも食べてさ!

SNSでのみんなの感想・評判

既に鑑賞した方達から、概ね高評価を得ている『1秒先の彼女』。

多くの人が述べているように、これほど「チャーミング」というワードが似合う作品も珍しいと思います。

マルコヤマモト

シャオチー&グアタイはもちろん、彼らを取り巻く人々も「ある1人の男」を除いては超チャーミング。どの男がチャーミングじゃないかは劇場で。

冒頭からのてんやわんやになんだか不安になりますが、着地はしっかり美しく魅せてくれるので、安心してご覧ください!

マルコヤマモト

グアタイのストーカーっぽい行為は賛否両論あるかもしれませんが、結局は自分のことをよく理解してくれる人の方がいいんですよ。グアタイの見守り方が健気すぎて、だんだん奴のことが好きになっていくのも不思議なんです。

映画『1秒先の彼女』あらすじ・感想まとめ

マルコヤマモト

以上、チェン・ユーシュン監督の『1秒先の彼女』についてレビューしました!
要点まとめ
  • ポップな世界観とチャーミングなキャラクターにすぐさま引き込まれてしまう
  • 恋に悩む人だけでなく、なんとなく生きづらさを感じている人にもおすすめ
  • 台北の街並みや、海岸沿いの美しい風景も必見!

1秒先の彼女』は、エンディングテーマの「Lost&Found」まで秀逸。

歌詞の字幕もしっかり出るので、シャオチーの物語を反芻しながら最後まで聴いてください。

マルコヤマモト

あぁ〜早くまた台湾に行きたい!という気分にさせる映画。とりあえず映画の半券を持って豆花を食べに行ってきます。