映画『羊と鋼の森』あらすじ・ネタバレ感想!これは一人の青年が仕事と触れ合いで成長していく物語。

映画『羊と鋼の森』あらすじ・ネタバレ感想!これは一人の青年が仕事と触れ合いで成長していく物語。

出典:公式Twitter

その時、僕は17歳だった。

このまま何とか高校を卒業して何とか生きていければ良い。

そう思っていたときに出会う夢。

たかが、一つの音。

たった、一つの音。

心の声に寄り添い、探し求める。森の中を。

ポイント
  • 原作は第13回本屋大賞に選ばれた宮下直都によるベストセラー小説
  • 静かにゆったりと描かれる心温まるヒューマンドラマ
  • 日本アカデミー賞受賞コンビの初タッグ!

それではさっそく映画『羊と鋼の森』をネタバレありでレビューしていきます。

映画『羊と鋼の森』作品情報

作品名 羊と鋼の森
公開日 2018年6月8日
上映時間 133分
監督 橋本光二郎
脚本 金子ありさ
原作 宮下奈都
出演者 山﨑賢人
三浦友和
上白石萌音
上白石萌歌
鈴木亮平
堀内敬子
仲里依紗
城田優
森永悠希
佐野勇斗
光石研
吉行和子
音楽 世武裕子

【ネタバレあり】映画『羊と鋼の森』あらすじと感想


夢との出会い

17歳の冬、外村直樹(山崎賢人)は何とか卒業出来ればいいと日々を過ごしていた最中、学校を訪れたお客さんを体育館へ案内するという些細なことをきっかけに夢を持ちます。

案内されたお客さんはおもむろに体育館のピアノに指を置き、何度か和音を奏でたり一音だけ鳴らしたりしては道具を使って“何か”をしていました。

外村は森の木々の揺れる匂いを感じながら、その男性が行う作業を眺めていました。

お客さんはベテランの調律師である板鳥宗一郎(三浦友和)で、体育館のピアノのメンテナンスをしていたのです。

じっと見ている戸村に板鳥は「良い羊はいい音を作る」と言い、ピアノ内部のハンマーには羊の毛で作ったフェルトが使われている事を教えてくれました。

そしてハンマーが鋼のピアノ線を叩いて音が出るという仕組みも教えてくれました。

これを機に外村は調律師を目指すこととなります

2年かけて東京の専門学校を卒業し、故郷の北海道にあり板鳥が働いている『江藤楽器店』に就職しました。

きっと、ここから始まる

教育係になった柳伸二(鈴木亮平)は、何をどう頑張ったらいいのか悩んでいる戸村に対して「堂々としていればいい」とアドバイスしました。

外村は見習いとして柳の仕事について行きメモを取ったり手伝ったりしているうちに、明るい音にして欲しい、のびやかな音にして欲しいというお客さんの要望だったり、グッときたやつが広がるような硬い音にして欲しいなんていう抽象的な擬音を用いた要望にも応えていく柳の背中を追いかけます。

ある時、硬い音と言われてもピンとこない戸村が柳に教えを乞うと、柳は音を茹で卵に例えました。

茹ですぎたくらいの硬いのと、半熟の茹で卵。

お客さんは茹ですぎたものしか食べたことがなくて“硬い”音を望んでいるのか、ふだんから好んで食べている“硬い”音を望んでいるのかを見極めるのが難しいと言いました。

ある日、柳は仕事を終えると大事な用事があるから直帰していいか聞いてきました。

彼女に指輪を渡すのだと言います。

なぜかそれを聞いた戸村が緊張してしまい、柳は笑いました。

外村が一人で楽器店に帰る途中、以前訪れた天才ピアニスト姉妹のいる佐倉家の妹の方・由仁(上白石萌歌)が車に駆け寄って「ピアノが大変なんです!」と言いました。

季節による温度や湿度の変化で音が変わってしまっただけのことでしたが、戸村が調律すると姉妹は満足げにきらきらぼしを弾きました。

しかしそのあと「乾燥のせいか、このあたりの音が暗く感じる」と言われて再び調律しますが、思うようにいかず柳に助けを求めました。

余計な事をして勝手に触って駄目にしてしまった、と落ち込みます。

肩を落として職場に帰ると、板鳥が好きな詩人の歌を教えてくれました。

そして“お祝い”にと、調律道具のハンマーをくれました。

何のお祝いだかピンとこない外村に板鳥は「きっとここから始まる。始まりのお祝いだ」と言いました。

薄暗い部屋の中にある触られもしないピアノ

外村は幼い頃から、祖父が始めた林業が元で山の中で暮らしていました。

ピアノも音楽もない山の中で育ち、調律学校を志したとき両親に「ピアノは世界に繋がっている」と話しました。

弟の雅樹(佐野勇斗)は外村の決心をと笑い飛ばし、両親もまともに取り合いませんでした。

ベテランの板鳥や元ピアニストで耳の良い秋野匡史(三石研)、腕のいい柳に囲まれる環境にある外村は音楽についてそこまで詳しくはなく、曲や歴史をあまり知らないことに引け目を感じていました。

柳は、そろそろ一人で調質してみろと言い出します。

今必要なのは、一台でも多くピアノと向き合う事だと背中を押しました

そんな折に外村は飛び込みで入った一件の仕事先に、一人で向かうことになります。

家を訪れると、けだるそうな青年・南(森永悠希)がドアを開けるだけ開けました。

部屋にいはもうずっと弾かれずに放置してあると思われるピアノ。

外村は乱雑に積まれた楽譜を退けて適当に被せてある布を取り、14年前に調律されて以来、誰にも触られることのなかったピアノを調律していきます。

足元の部分を綺麗にしていたとき、一枚の写真が出てきました。

コンクールで賞を取ったらしく誇らしげにピースしている男の子が写っていました。

調律が済み、弾いてみて欲しいと促された南はずっと手に持っていた犬の首輪をピアノの上に置き、軽やかに一曲弾き上げて少し明るい表情を見せたのでした。

姉と妹、兄と弟

緑が鮮やかな季節を越え、木々の葉が赤く色づき、雪で一面真っ白な季節。

外村は、コンクールをひかえていると言う姉の和音(上白石萌音)と会話を交わします。

妹の由仁は奔放にピアノを弾き、コンクールだから何ということもせず。

自分は何度も何度も練習しても満足がいかないほどだというのに、いつだってたくさん拍手をもらえるのは妹の方だと零しました。

外村も、弟のことを想います。

子供のころ家で将棋をしていたときのこと、自分の方が強いのに町の大会に出るといつも勝つのは弟でした。

その頃、外村は佐倉家の調律師として独り立ちするようになります。

しかしコンクールを過ぎた頃、突然佐倉家から「ピアノが弾けない状態だからしばらく調律を見送って欲しい」と言われます。

舞台でミスをしてから由仁の手がピアノを弾こうとすると動かなくなってしまうようになったのです。

外村は和音の方に合わせて調律してしまった自分のせいだと己を責めました。

そんな中外村の祖母・キヨ(吉行和子)が倒れて、もう駄目だという連絡が入ります。

葬儀を終え、いつも祖母が座っていた外の森の手前にある椅子のところで弟から、祖母は外村が森で迷ってもいつも必ず一人で帰ってくることが出来ると話していたと告げられました。

突拍子もなく調律師になることを志した外村を、陰ながら応援し“自慢の孫だ”と言っていたというのです。

外村(山崎賢人)が選ぶ未来

江藤楽器店に驚くべき嬉しい知らせが舞い込んできました。

板鳥が、ドイツから来日した大物ピアニストの調律に指名されたのです。

外村はホールに出向き板鳥の調律を注意深く見ていました。

コンサート当日、会場に佐倉家の妹・由仁が来ていましたが、姉の和音の姿はありませんでした。

数日後、柳が楽器店の前で窓から中を眺めている和音と遭遇します。

そして由仁がピアノを弾けなくなったからという理由で自分もまったく弾かなくなってしまっていた和音に助け舟を出します。

柳の結婚披露宴の場でのピアノ演奏に、和音を指名したのです。

そしてそのピアノを調律するのは、外村。

時間をかけ丁寧に調律する外村の姿を見て、和音はプロのピアニストになると決意します。

そして由仁は“舞台に上がり演奏するときはいつだって一人”であるピアニストを全力で支える調律師になることを決めます。

外村は披露宴会場の広さ、招待客に用意されたテーブルの間隔、入り口からの距離なども考慮して調律しながら板鳥の姿を思い出していました。

そして、自分も板鳥のようなコンサートチューナーを目指すことに決めました。

板鳥は「大丈夫。外村くんは山で暮らして森に育ててもらったのですから」と言いました。

『羊と鋼の森』のざっくりとした感想など。

私はピアノを弾けるわけではないし、調律師の知識もこれといって特にあったわけではないのですが。

たまたまYouTubeでピアノのコンクールとかの動画を見ていたら関連動画に“調律の違いによる音の変化”みたいな動画があって、見て、そこから調律師に興味がわいて、この作品を見てみました。

vito

周りに見た人が誰もいなくて、誰とも感想を語り合えないとかいう寂しい状況です。

小難しい話だと思って見ないとか、そもそもピアノに興味がないとか、理由は色々あれど専門知識なんて必要ないし出来れば多くの人に見て欲しい映画だなぁと思ったので記事を書くことにした次第です。

端的に言ってしまえば外村直樹という青年がきっかけを経て調律師となり成長していく物語、ただそれだけなのですが。ゆったりと静かに丁寧に、濃密に描かれている作品だと思います。

これは何をしているんだろう?とか、これは何を表しているんだろう?ってほんの少し引っかかるような場面が物語に沿って少し後になって明かされる部分の描き方が丁寧で心地よいです。

vito

それと調律された音を聞いた時だとかピアノが奏でる曲を聞いた時の、外村の中に浮かんでいるイメージを可視化して森とか水の中だったりとして表現されているのが凄く綺麗。
綺麗とかそんな一言で済ませるのがもったいないほど。

音を聞いて受ける感覚っていうのは人それぞれなものだし、この作品の中でも外村と私の抱いたイメージが異なる場面もあったんですけどそんな差異はどうでもよくなる壮大さです。

『羊と鋼の森』というタイトルも秀逸だなぁと思いました。

『羊と鋼の森』の印象に残っている場面など。

全体的に日差しが効果的に扱われているように思います。特に感じたのは14年もの間放置されていたピアノを調律しに行ったパートです。

薄暗い部屋の中で、鬱蒼とした空気が漂っているのを画面から感じるところから外村の手によってピアノが調律されていくにしたがって少しずつ外からの日差しが明るくなって。

ピアノの持ち主である青年の背景が描かれながら演奏を終えた頃にはやわらかい明るさに包まれているんですよねぇ…。

vito

私的に一番好きなエピソードがここなので是非とも映像でご確認いただきたいです。ちなみに私は泣きました。

外村の真面目さというか探究心というか、そういうのが可愛いなと思った場面もあったりします。

調律師として働き始めた頃に先輩である柳にアドバイスされた“茹で卵”の例えのくだりで、外村は家に帰ってから卵を茹でて食べ比べしてみるんですよね。

vito

そこが可愛い。

話の流れに沿っているからっていうのもあるけど、卵を突いたり食べたりしながら調律のイメージもなぞって映像になっているから“何してるんだろう感”もなくて好きです。

あとは多分この映画のキーになっていると思われる、板鳥さんからハンマーを渡される場面。お祝いだって言う最初のところと、あらすじには書かなかったもう一つの場面があったりします。

vito

見て欲しいなぁ…できればここまで読んでくれている人には見て欲しい。

板鳥さんに関して言えば個人的には三浦友和が演じてよかったなぁと思っていたりもします。

vito

あたたかく優しく外村を見守り、でも甘やかすだけではなくて成長のための指摘もする。そんな板鳥さんみたいな人が身近にいたらいいのにとか思ってしまうほど。

あらすじで触れなかった部分で言うと、柳のエピソードも好きだったりするんですけどね。

映画『羊と鋼の森』まとめ

以上、ここまで映画『羊と鋼の森』についてネタバレありでレビューしました。

要点まとめ
  • 人と音、心の触れ合いと成長を感じる物語
  • 割とゆったりした雰囲気ですが隙がなくて間延びする瞬間がないほど濃密です
  • ピアノが好きな人や日常的に触れている人はもちろん、縁のない生活を送っている人にも見て欲しい作品