『ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ』あらすじ・ネタバレ感想!目を背けてはいけない真実を知れ

映画『ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ』あらすじ・ネタバレ感想!

出典:『ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ』公式ページ

極論を言えば、史実を元に作られた映画なのかと思いきや、完全なるドキュメンタリー映画です。

しかし、だからこそ如実に伝わる歴史の闇と人間の醜さ、そして生まれる悲しみがありました。

ポイント
  • 映画の中で語られることは真実、故に未完である
  • 当時の美術品の価値が人の価値であり、欲望を生んだ結末があの悲劇
  • 芸術は矛であり盾であり、芸術家は政治を無視してはならない

ナチス、ヒトラーの行いは許されるべきことではありませんが、これを繰り返さないためにも今を生きる私たちは本作を目にする必要があります。

▼動画の無料視聴はこちら▼

『ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ』作品情報

映画『ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ』

(C)2018 – 3D Produzioni and Nexo Digital – All rights reserved

作品名 ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ
公開日 2019年4月19日
上映時間 97分
監督 クラウディオ・ポリ
脚本 サビーナ・フェデーリ
アリアンナ・マレリ
出演者 トニ・セルビッロ

【ネタバレ】『ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ』あらすじ・感想


当時の美術品の価値とは?

第二次世界大戦が行われたこの年、アドルフ・ヒトラーが独裁政権をしていたナチス・ドイツでは、ユダヤ人の迫害をはじめ、多くの人の命が奪われました。

しかし、奪われたのは命だけではありません。

当時の美術品は、現代の時計や宝石のような「資産価値」の高いものです。

モネやゴッホ、クレー、ロダン、そしてピカソ。

多くの美術品を持つ人間は、あればあるほど地位が高いと見なされてきました。

そして何を隠そう、ヒトラー自身も元は画家志望です。

絵画などの美術品とは切っても切り離すことができない関係だったと言えるでしょう。

これらを手に入れるため、ナチスに従った画商は、市民から絵を奪い続けました。

時には強奪、時には生きることと引き換えに美術品を渡すように…。

ナチスの悪政から逃げ出したい人々は、ビザを得るための資金として絵の売買を決断し、国外へと逃げます。

また、美術品を売ることを拒否すれば、たちまちホロコースト行きであったり、女性であれば慰安施設に連れていかれたり、人権なんてあったものではありませんでした。

ワイヤーで絞殺され、遺体はその辺に捨てられ、墓が建てられることがあっても、そこには収容された際につけられた番号しかなく、個人の名前など書かれません。

ナチスが崩壊し、戦争が終わった今、遺族は取られた美術品を取り戻すため必死の活動を行っています。

奪われた芸術品の総数は約60万点。

しかしこの1/6である10万点が、いまだに行方不明となっているのです。

美術品を見つけ出すだけでも大変なのに、そこから所有権が我が家にあると証明する必要もあり、非常に辛い戦いをしていると感じられます。

悪とはなんであろうか?

ここで間違えてはいけないのは、美術品を強奪するという悪行をしたのが、ヒトラーだけがやったことではないということなのです。

ヒトラーと張り合うほどに収集していた男がいます。

ゲーリング国家元帥といって、ヒトラーの右腕的存在でした。

ユダヤ人の富裕層から奪うこともありましたが、かのルーブル美術館からの略奪も繰り返し、自分の地位を高めていったのです。

そうすれば、もちろんヒトラーだって対抗します。

そして、これに加担する多くの画商も存在します。

手に入れた絵画で多くの展示会も開き、自分の地位の高さも公に公表していたという歴史もあります。

しかしナチスが崩壊し、ヒトラーが自害、そして戦争が終われば、画商たちは裁かれることもなく何事もなかったかのように平穏な暮らしに戻った者もいます。

ヒトラーだけが悪であったのかというと、どうやらそうではないと思わされるのです。

生まれたときから悪人だった者などいるのでしょうか?

悪人と一目でわかるものがあるのでしょうか?

映画の中でも語られます。

「本当に悪い人は一人もいない。弱さを利用して作り出すものである。個人に戻る時は、寝ている時だけだ」

美術品にも物語があり、芸術家の思想がある

ピカソが『ゲルニカ』を描くと、これは「略奪を繰り返した君たちだ」と言ったそうです。

最後の最後にやっと語られたピカソの言葉は、今を生きる私たちにも何かを訴えてきている。そんな気がしました。

多くの美術品は、なにも考えずに描かれたり作られたりしたものはありません。

作者の想いや感性、思想が込められています。

だからこそ、それは“芸術”となり、価値がつけられるのです。

そして、理不尽な手段で所有者が変わっていく美術品も、もしかしたら迫害を受けた被害者なのかもしれないとさえ思ってしまいました。

美術品は盾にも矛にもなります。

生き延びるための手段であり、逆に終焉にもなるのです。

芸術家は、敏感な政治家であるべき。

その言葉が、強く残りました。

『ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ』あらすじ・ネタバレ感想まとめ

ナチス・ドイツは悪、ヒトラーは悪であると歴史の勉強で言われ、世界でも当たり前のことだと思われています。

しかし、どうしてそうなったのかを知る必要もあると思うのです。

ヒトラー1人が悪いのであろうか、生まれた日が数日しか違わないチャップリンはなぜそうならなかったのか、これを考えたことがあるでしょうか。

確かに、最初から悪人であった人はいません。問題はプロセスなのです。

温故知新という言葉がある通り、歴史を繰り返さないためにも、過去の悲惨な出来事も時には知る必要があります。

また、現代では美術や芸術といっても、なじみのないものかもしれません。

ならば、アーティストと考えてみてはいかがでしょうか?

形は変われど、現代に通じることが多く語られ、奪われた美術品を探す闘いが今も続いているということを知るだけでも、世界を見る目が変わっていく気がします。

これを機に、歴史を知る機会を作り、未来についてぜひ考えてほしいのです。

要点まとめ
  • 繰り返してはいけない歴史は、その全貌を知る必要がある
  • 過去との闘いは今も続いている
  • “悪”とは弱さを利用して作り出すもの

最初から悪人だという者はいません。

言い換えればそれは、誰もが悪人になる可能性を秘めているということなのです。

これを知るひとつのきっかけとなった作品だったと、知っていただければ幸いです。

▼動画の無料視聴はこちら▼