一個人が目で見て脳に記憶したことが“脳スキャン”によって第三者にも“見る”ことのできる世界。
犯罪捜査の手法としてそれが許される世界で、秘密として葬られた記憶に迫る機関“第九”を軸に繰り広げられる物語。
- 原作は清水玲子作の第15回文化庁メディア芸術祭優秀賞受賞の漫画「秘密―トップ・シークレット―」
- 秘密に隠された真相に迫るヒリヒリ感、五感を駆使して楽しめる作品!
- 物語の鍵になっている脳スキャンは大画面で見ると没入感が凄いです
それでは『秘密 THE TOP SECRET』をネタバレありでレビューしていきます。
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目次
『秘密 THE TOP SECRET』作品情報
作品名 | 秘密 THE TOP SECRET |
公開日 | 2016年8月6日 |
上映時間 | 149分 |
監督 | 大友啓史 |
脚本 | 高橋泉 大友啓史 |
出演者 | 生田斗真 岡田将生 松坂桃李 織田梨沙 栗山千明 リリー・フランキー 椎名桔平 大森南朋 大倉孝二 木南晴夏 平山祐介 吉川晃司 |
音楽 | 佐藤直紀 |
【ネタバレ】『秘密 THE TOP SECRET』あらすじ
科学警察研究所・法医第九研究室
科学警察研究所・法医第九研究室とは、最先端の科学技術を駆使して死者の脳内に残った記憶を映像化し、それを元に犯罪捜査を行う警察庁の特別捜査機関、通称“第九”。
女子大生が殺される事件が起き、若手刑事の青木一行(岡田将生)は上司の眞鍋駿介(大森南朋)とともに司法浪人生の取り調べに応じます。
青木は第九への異動が決まっており、前日に今井孝史(大倉孝二)が迎えにやってきます。
過去に起きた事件“28人殺し”の犯人である貝沼清孝(吉川晃司)の脳から映像化した記憶を見た5人のうち3人は自殺、1人は精神を患い、残りの1人は特に何の影響もなく生きています。
そのたった1人の生存者が第九室長の薪剛(生田斗真)です。
青木は異動直後“第九”の面々への挨拶をするよりも先に先日取り調べをしていた事件の女子大生が殺される間際に見た映像を見せられました。
現在の科学の力では5年前までの記憶を映像化することが可能ではあるけれど、見たものがそのまま脳に残っているわけではなく状況などによって見た人の“印象”が付加されます。
例えば青木が見ているモニターに映る女子大生の記憶に残っている殺人犯は、まるで悪魔のような形相を浮かべていました。
薪いわく青木が第九に抜擢されたのは17歳で東大に入学し脳科学、法医学、病理学、解剖学、犯罪心理学、行動心理学まで精通しているという類まれな才能だけではありませんでした。
過去に事件で家族を失った青木が、いつか犯人を突き止めることになった時にMRI捜査は有効な手段となりうるであろうことを見込んでの抜擢だったのです。
記憶の映像化を捜査に用いるMRI捜査の最終試験で合格すれば、第九は正式機関として昇格、現在はない法的証拠能力が認められることになります。
最終試験とは、3年前の露口一家殺人事件の犯人である露口浩一(椎名桔平)の脳をスキャンすることでした。
そして得た証拠をもとに行方不明となっている長女の絹子(織田梨沙)を探すことでもあります。
露口一家殺害事件の真犯人
記憶を映像化するにあたって誰か1人の脳内に対象となる脳から直接映像を取り込まなければなりません。
露口の脳スキャンにあたって青木は、薪から3つのことを厳守しろと言われます。
「1つは客観的に見る事。2つめは客観的に見る事。3つめは客観的に見る事」。
青木は客観的に見る、というのが再三言われてわかってはいたとしても難しいことなのだというのを突きつけられます。
実際、青木の前任者は半年ともたずに“あっち側”へ引っ張られてしまっています。
露口の脳スキャンが始まり、第九の面々は各自自席でモニターを確認するなか青木は特別な部屋でよりリアルに露口の記憶を疑似体験することとなります。
見えてくるのは幸せそうで穏やかな露口一家の様子、死刑囚として過ごしている間の露口の視点、絹子の幻想。
第九メンバーは事件当日の記憶に辿りつきました。
1階で次女の死体を発見し、血痕を辿って奥の部屋に向かうとそこには包丁を振りかざした血まみれの絹子がいました。
絹子が持っていた包丁を露口の手に握らせて部屋を去ったあと、露口は絹子を庇うためにMRI捜査で脳をスキャンされ真相を暴かれないようすでに殺されている次女・妻・母の頭部を潰しました。
薪は露口一家殺人事件の真犯人である絹子はいまもどこかで生存している、として上層部に再捜査を要請しました。
しかし再捜査は叶いません。
ある種世間への見せしめの意味もこめて10年ぶりに執行された露口の死刑が、実は無罪だったなんてことが世間にバレたら法相界全体を揺るがしかねないからです。
傍観するしかなかった者・傍観して楽しんでいた者
第九は警察傘下にあるため、脳スキャン映像で証拠が出てきたところで証拠としての効力はありません。
しかし第九とは別のところで証拠が見つかったとなれば話は別。
警察も認めざるを得ません。
薪はそれを示唆して、青木は元上司であり露口を逮捕した人物でもある眞鍋を頼ります。
改めて見返した露口の記憶から、ある時を境に絹子の様子がおかしくなったことに気が付きます。
性欲と独占欲の強いサイコパス特有の性質をもち、持て余した性欲を解消するように男を家に呼び込んでは情事に没頭する絹子。
露口はそれを傍観するしかありませんでした。
そしてある日、露口に見せつけるように情事を続けていた絹子は露口をも跪かせることとなります。
絹子が殺害に用いたモルヒネを提供された人間を探すことを念頭に、絹子と密接な関係をもっていたと思われる男性たちや周辺の人間たちを洗うところから捜査が展開していきます。
青木と眞鍋が絹子の妹・麻子と付き合っていた男に聞き込みを行っている時、薪は斎藤(リリー・フランキー)という医師を訪ねていました。
絹子の主治医であった斎藤は、絹子がサイコパスであると認識しながら、傍観して楽しむことを選んだ人間でした。
露口一家殺害事件と28人殺しの接点…?
そんな折、弁護士が偶然見つけたとして絹子が発見されたという一報が入ります。
絹子は“父親による一家惨殺の影響”で記憶喪失になっていました。
絹子の代理人・木下から第九に連絡が入ります。
薪に会いたいとのことでした。
絹子は自分の父の脳を盗み見たことを罵倒し「ここからたくさん人が死ぬよ」と言いました。
露口一家の事件は明らかな冤罪だというのに真犯人と対面してもあっさり引き下がった薪を見て青木は熱くなりますが、薪は「冷静になるんだ」と言うだけでした。
絹子が斎藤から薪に渡すよう頼まれたと言った書類の束をきっかけに、青木は薪と貝沼事件の関係性について興味をもっていきます。
貝沼の脳スキャン映像を見て自殺したうちの1人というのは薪の仕事仲間だった鈴木克洋(松坂桃李)でした。
正当防衛とはいえ薪は揉み合ったのちに鈴木を撃ち殺したのです。
青木のもとに、絹子と接点のあった山口という男が見付かったという連絡が入ります。
しかし接触まであと一歩というところで山口は飛び降り自殺。
その時、同時刻に全国各地で山口を含む9人の人間が自殺します。
9人の共通点は過去に同じ少年院にいたということでした。
薪は上にかけあい、この事件は全面的に第九が担当することとなります。
薪たちは自殺した9人の共通点から、過去に少年たちを更生させるためにセラピストを呼んでの講演があったことに辿りつきます。
9人の脳スキャンを同日同時刻に合わせて見ると、9人はセラピストから渡された催眠薬を飲まされていました。
そして次の皆既日食をきっかけに「鍵が開き、秘密を保持できなくなる」催眠をかけられていました。
催眠をかけたセラピストこそが、貝沼であるということに薪が気付きます。
貝沼と絹子に接点があるかもしれない、つまり絹子も貝沼から催眠をかけられているのかもしれないと眞鍋の捜査本能に火が付きました。
秘密を握る貝沼の脳
眞鍋は絹子を取り調べますが、何も覚えていないの一点張りでした。
真実を話した者だけが相手に質問することができるというゲームと称して脳波を計測しながら尋問したりもしますが特に重要な発言は得られず、絹子は釈放されます。
青木は鈴木の脳スキャンを見たいと薪に申し出ました。
貝沼の脳データを最後まで見たのは鈴木ただ1人だったからです。
鈴木は何らかの薪に見せたくないものを見てしまったから、薪がデータを見る前に貝沼の脳データを破壊し頭部も破壊していました。
いま、この世に残る貝沼の脳データは鈴木が見たことで鈴木の脳に記憶されているものだけ。
青木はそれを見て真実を掴みたかったのです。
しかしそれをきっかけに薪は青木を任務から外しました。
青木は1人、露口家で、絹子と対面し会話する夢をみます。
うなされて目が覚めた時、絹子の幼馴染が殺されたという連絡が入ります。
時を同じくして薪は鈴木の脳スキャンを見るという決断をします。
貝沼が最初の殺人を犯したのは、薪と教会で出会ってから一年後のことでした。
それから貝沼はまるで誰かに見せつけるかのように殺戮を繰り返していきました。
鈴木の脳データを見た薪は、貝沼が残忍な手段で殺し芸術的に仕立て上げた死体の顔がすべて貝沼の脳内で自分に変換されていたことを知ってしまうことになります。
一方、絹子絡みで向かった事件現場で、絹子に殺された少年を第九に回して脳スキャンしようとした青木を眞鍋が止めました。
少年は全盲だったため、脳スキャンをしたところで視覚からの記録は何も残っていないからです。
八方塞になって自暴自棄になった眞鍋は露口家に行き絹子を撃ち殺そうとします。
絹子の脳を見て、絹子が犯人であるということが証明されれば良いと思ったのです。
しかし真鍋と青木は撃ち合う形になり、眞鍋は絹子にそそのかされて自分の頭を撃ち抜いてしまいます。
その頃、薪が鈴木のデータから貝沼の脳スキャンを見てから5時間が経っていました。
薪は鈴木が見たすべて、自分が鈴木を殺してしまった瞬間、その少し後の鈴木の走馬灯を見ていました。
美しい世界は、きっとすぐそこにある
一命を取り留めた青木が病室で目を覚ますと、絹子がいました。
「いつか私が死んだら脳を送ってあげる」と言って絹子は去って行きます。
ろくに動ける状態ではない青木は駆けつけた看護師に携帯を借り、まだ調べられる脳があると言って第九に連絡を入れます。
そして絹子絡みで数日前に殺された全盲の少年と連れ添っていた盲導犬の脳スキャンを進言しました。
盲導犬の記憶に残っていたのは少年とともに殺された瞬間の出来事、それと直前に少年が絹子に連れていかれた箱庭のような場所。
植物が生い茂る庭には頭蓋骨がいくつも転がっていました。
薪は緊急の事案が発生したとして上に連絡、盲導犬が見ていた場所へ向かうと絹子がいました。
絹子は一帯にガソリンをまいていて、追い詰めた薪と一線を引くようにして火を付けました。
そして「私は生きなきゃいけない。私の代わりに死んでくれた父のために」と言って死んでいきました。
それから一か月、青木はリハビリ中の体で薪のところへ向かいます。
第九は正式機関に昇格しました。
薪は青木が望むならこのまま第九に所属することも可能だと言いますが、青木は退職届を渡しました。
薪はUSBを青木に渡して「時間がある時に一度見てみろ」と言います。
USBにはあたたかく穏やかで美しい世界が、絹子に殺された少年に連れ添っていた盲導犬が見ていた世界が記録されていました。
【ネタバレ】『秘密 THE TOP SECRET』感想
考察もできるモヤモヤする映画
何から書いたら良いのかわからなくなるくらい情報量の多い、感情を振り回されまくる映画です。
見たあと感銘を受けたりだとか自分の実になる知識が得られるかっていうと特別そういうわけではなくて、端的に言えば近い未来に起こり得るかもしれない世界の話、というフィクションです。
そういった意味ではDNAから得る情報で犯罪捜査が可能となった世界を舞台にした『プラチナデータ』と似たようなジャンルの話かな、と思います。
話そのものが似てるっていうわけではなくて、あくまでもジャンル的にの話です。
どっちもたぶん技術の進歩によって実現可能ではあるけど、倫理的なことだとか道徳的な観点から実現はしないんだろうなっていう。
いやわかんない。もしかしたらすでにどこかでは秘密裏に実現されていることなのかもしれない。
そう思ってしまうほどやけにリアルな点もあったりして。
vito
絹子は終始胸糞悪い奴ですね。
尻尾を掴んだかと思ったらひょうひょうとすり抜けていく割に自ら接近して煽ってきたりとか。
一番このくそ!と思ったのは病室で目を覚ました青木に放った言葉「私が死んだら脳を送ってあげる」です。
絹子は知っているのかわからないけど、この世界のこの時点では5年前までの記憶しか脳スキャンできないわけですよ。
絹子が恐らく老いて死ぬころには、露口一家の事件の記録は絹子の脳の中からスキャンできないわけです。
まぁ物語上それより前に死んじゃうんですけど。
vito
あとは結局どういうことだったの?何があったの?みたいな点も残されていてすべてが明らかになるわけではないモヤモヤも残る作品かな、と思います。
vito
何でもかんでも知ることが正しいわけではないんだな、というのを感じながらもやっぱり真相を知らないと進めないこともあるんだなと思ってしまう映画だと思います。
出演陣の中に1人でも好きな俳優さんがいるなら絶対に見た方が良いです
vito
映画なのに演技以外のところでって何?って感じでしょうが“この人ちょっとアレだな”と思ってくれていいので読んで欲しいです。
特筆すべきは衣装デザインを担当した澤田石和寛という人の存在です。
vito
CMのau三太郎の衣装も手掛けている人です。
それと冒頭の3人がどうツボったのかっていうと舞台が舞台なだけに彼らは終始スーツなわけですよ。
vito
でもきっと作品を見たら私が興奮する意味も少しはわかってもらえると思います。
ちなみに生田斗真演じる薪はシャツの下にハイネックを着ているんですけど、その着こなしに違和感を覚える人もいるのかなと思ったりするので豆知識的なことを書くと下に着ている防弾チョッキをカモフラージュするためらしいです。
vito
『秘密 THE TOP SECRET』まとめ
以上、ここまで『秘密 THE TOP SECRET』をレビューしてきました。
- あれこれ考察しながら見るタイプの映画が好きな人におすすめです
- 無関係に思えた2つの事件の接点が見えたときの気持ち良さと、一方ではっきりしないモヤモヤ感が絶妙
- 主要3人以外にも木南晴夏、栗山千明など第九メンバーに注目!
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