“女子が男子に読んでほしい恋愛小説No.1”で話題を呼んだ越谷オサムのベストセラー小説が原作。
大人になって再会した、中学生時代の初恋の人には秘密があった…。
たくさんの場面で陽だまりを感じる、あたたかい作品です。
- 10年ぶりに再会した男女のラブストーリー…かと思いきや?
- なんとなく見たことがない、私みたいな人に見て欲しい
- 設定はファンタジー全開なのに視覚から得るものは現実的だから入り込みやすい作品
それではさっそく『陽だまりの彼女』をレビューしたいと思います。
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目次
『陽だまりの彼女』作品情報
作品名 | 陽だまりの彼女 |
公開日 | 2013年10月12日 |
上映時間 | 129分 |
監督 | 三木孝浩 |
脚本 | 菅野友恵 向井康介 |
原作 | 越谷オサム |
出演者 | 松本潤 上野樹里 玉山鉄二 大倉孝二 谷村美月 菅田将暉 北村匠海 葵わかな 小籔千豊 西田尚美 とよた真帆 木内みどり 塩見三省 夏木マリ |
音楽 | 安井輝 |
主題歌 | 山下達郎「光と君へのレクイエム」 |
『陽だまりの彼女』あらすじ・感想【ネタバレなし】
初恋の人との再会
奥田浩介(松本潤)は日本レイルアド社に勤める営業マンです。
一人暮らしをしている浩介の家には、大学生の弟・翔太(菅田将暉)がよくオール明けの酔っぱらった状態で押しかけてきたりしていました。
そんなドタバタした朝、ボタンダウンの襟が片方ヨレて鈍臭い男全開のまま遅刻ギリギリで出社すると、先輩の田中進(大倉孝二)が女性にフラれピリピリしていました。
レイルアド社の営業部ではよくある光景のようです。
田中とともに新規取引先の女性用下着ブランド、ララ・オロールにプレゼンに訪れた浩介は、中学のころ同級生だった渡来真緒(上野樹里)と再会します。
二人の出会いは浩介の通っていた南藤沢中学校に真緒が転校してきた日。
黒板の前に立ち自己紹介を促す担任を無視して、真緒は浩介の席まで行き「渡来真緒です」と伝えました。
ちょっと変わった子、そして学力も低くさらには里子ということもあって、クラスの女子たちからいじめの対象になってしまった真緒。
あるとき潮田アキ(森桃子)がいじめの一環で真緒の髪にマーガリンを塗りました。
それを見ていた浩介は激怒して、アキの顔にマーガリンを塗り返したのです。
その日から浩介もいじめの対象になり、クラスから孤立していきました。
離れていく周りの人たちと反比例するように、浩介と真緒は仲良くなっていきます。
勉強を教えたり、公園で談笑したり。
そんな日を過ごしていたある日、ジャングルジムの前で浩介は真緒にキスします。
自分の想い、真緒のことが好きだということに気が付いた瞬間でした。
しかし中学三年生の夏、浩介は家の事情で名古屋へと転校していきます。
浩介の転校で離ればなれになってから10年ぶりの再会でした。
好きだった女の子と再会したというのに、奥手な浩介は食事に誘ったりすることもできません。
プレゼンに同席していた真緒の上司・新藤春樹(玉山鉄二)の存在も気になって踏み込めずにいました。
偶然なんてないよ
レイルアド社が提案した広告に合意を得てプレゼンは成功、駅の目立つ場所へのセットボード設置が決まります。
しかし広告のデザインを見た杉原部長(小藪千豊)に「露出が多い卑猥な広告を駅に貼り出すのは無理だ」と言われてしまいました。
真緒が考えたというデザインを通したい浩介は、街頭のさまざまなところにある“露出の多い”ポスターの証拠写真を撮ります。
自転車で夜通し駆け回り、広場のベンチで眠ってしまっていた浩介の前に真緒が現れました。
事情を知って協力すると言ってくれた真緒と、休日に二人で広告調査をすることになりました。
デートみたいな楽しさを感じながらあちこち駆けずり回る二人。
努力の甲斐あって、まとめた写真を資料として杉原部長に提出すると、渋々ながらも説得に応じてもらえて鉄道会社の審査も無事に通りました。
うまくいったことを報告すべく、浩介はララ・オロールを訪れ、真緒に「ありがとう」と言います。
対して真緒は、取引先としてのお礼とかそういうんじゃない「ありがとう」に変な感じと答えました。
中学のころは一度も言われたことがなかった、とも。
当時を思い出していた浩介は「また会えて良かった。偶然でも本当に」と返し、真緒は「偶然なんてないよ」とキスしました。
そして中三のときに浩介が転校する前、東京の大学へ行くと言っていたことだけを頼りに“東京”と名のつく大学をすべて受験したことや、東京の大学に行けばまた会えると思って必死に勉強したことを明かしたのでした。
帰りは駅のホームまで送って終電に乗る真緒を見送る浩介だったのですが、ドアが閉じる直前に真緒は電車から降り、朝まで一緒にいることを選びます。
元警察官で厳しい父親・渡来幸三(塩見三省)には電話で「失恋した友達が泣いているから慰める」と言ってあるから大丈夫だと笑う真緒に、嬉しさを隠せない浩介。
二人は週末に江ノ島へ行く約束をしました。
いっそ、駆け落ちする?
部屋にちょっとした鉄道模型や、もう使われなくなった駅名のプレートを飾っている程度には鉄道オタクの浩介は、久しぶりの江ノ電の“音”を心地よく感じながら江ノ島へと向かいました。
水族館へ行って大きな水槽を眺めていると「おいしそう!」と言い出す真緒にびっくりしたり、自転車に乗りたがる真緒をなだめたり、デートスポットで有名な龍恋の鐘で金網に自分たちの名前を書いた南京錠をつけたり、そんな楽しい時間を過ごします。
「あと何回来れるかな」と呟いた真緒に、浩介は「年1回来たとして、あと50回は来れるかな」と答えました。
浩介は子供のころによく遊んでいた、猫がたくさんいる場所へと真緒を連れて行きます。
その場所は、実は真緒にとっても縁のある場所でした。
奥から響く鈴の音を聞き、浩介に「あったかいのが飲みたいな」と飲み物を買いに行かせている間に、猫屋敷の老女・大下(夏木マリ)と何やら会話を交わします。
飲み物を買って戻った浩介の手を取り、実家に行こう!と引っ張る真緒。
勢いのままに実家へ行き、両親に会わせて「結婚します!」と宣言したのです。
突然のことに両親も、浩介さえも驚きました。
父・幸三は縁側に浩介を連れ出し、真緒のことをどの程度知っているのかと問いました。
知っているのは里子であることくらいだったのでそう伝えると、幸三は真緒が里子として渡来家に来るまでの経緯を話し始めました。
真緒は“全生活史健忘”という記憶障害であること、保護されたときまでの記憶がすっぽり失われていること、保護した自分が養子にして育てていること。
そして、いつまた発症して記憶が失われるかわからないということ。
記憶がなくなってしまった真緒を背負うことができるか?と問われた浩介は、即答できませんでした。
喫茶店に入った二人は潮田と再会します。
中学のころと変わらない潮田は、浩介の向かいに座っている綺麗な女性が誰だかわからず、真緒の悪口を言いました。
耐え切れなくなった浩介が「行こう、真緒」と手を引き店を出ようとすると、綺麗になった真緒に対しての嫉妬からか「まだマッパで徘徊してんの?変態」と罵声を浴びせました。
この一件で浩介は、真緒が自分にとって何よりも大切な存在だと自覚し、駆け落ち同然に二人で引っ越して婚姻届も提出して電話で幸三に結婚宣言しました。
真緒の体の異変、そして。
新居の団地のお隣さんは、両親と幼い息子・しゅうの三人家族でした。
金魚を買って真緒の好きなザ・ビーチボーイズのメンバーの名前をつけ、幸せな新婚生活が始まりました。
ごろごろしながらまどろむ休日、手にある引っ掻き傷のような傷跡について問われた浩介は、小学校3年の時に出会った猫の話をしました。
ロシアンブルーのような毛並みの綺麗な子猫が海辺の岩場に挟まって動けなくなっていて、子供の自分では手を伸ばしても引っ張り出せなかったことや、持っていたお守りを猫じゃらしのようにしておびき寄せて助け出したこと。
傷跡は、その時に子猫にやられたものだと言いました。
幸せな生活もつかの間、真緒に異変が見られ始めます。
薬指の指輪がぶかぶかになるほど痩せ、髪の毛も大量に抜けるのを心配した浩介は病院へ連れていきました。
しかし、検査結果は“異状なし”。
もし、問題があるとしたら失った記憶のなかにある心の問題が影響を与えているのかもしれないと医師は言いました。
それを受けて浩介は幸三を訪れ相談します。
幸三は、真緒が保護されたのは12年前の11月2日であり、戸籍上はその日を誕生日としているだけで、本当の誕生日はおろか実際の年齢もどこから来た何者なのかもわからないと言いました。
クリスマスが近づき、好きな人と過ごすのは初めてだとはしゃぐ真緒は、飛行機に乗ったことがないからニューヨークに行きたいと言います。
浩介は、さすがにそんな急に有給は取れないと返しました。
その少しあと、真緒が自社ブランドの商品の撮影中に倒れます。
新藤が車で送ろうとすると、新居の団地ではなく実家の江ノ島に向かってほしいと言いました。
真緒は猫屋敷へ、老女に会いに行きます。
自分の体が限界に近づいていることに対して「どうにかしてよ」と言いますが、老女は「同じ時間じゃないんだ」と意味深なことを言います。
そして真緒が死んだあとは、一度でも関わったすべての人の記憶から消えてなくなる、とも。
まだ見たことない人に、本当に本当に見て欲しい!
『陽だまりの彼女』、ずっと気にはなっていたんですが、いつでも見られるからってなんとなく見ないままにいたんです。
もっと早く見ればよかった。
オチがある系だっていうのは何となくわかっていて、だから原作も読まずにあらすじも調べたりせずに見ました。
でも、なぜか“こういうことだよね”っていうオチについてふんわり知っていたんですよね。過去に何かで目にしてたのかなぁ。
もともと考察厨なこともあって、冒頭のシーンで上記のふんわりした知識は確信になったわけですが、それでも何がどうなって結末に向かうのかっていう辻褄を追っていくのが楽しかったです。
なので今回の記事ではオチを、というかラストは書かないでおきます。
私以外の誰かにも同じように楽しんでほしいです。
全編通してこんなに愛おしい気持ちでいられる映画ってなかなかありません。
切ないとか悲しいっていう気持ちになる場面も当然あるけど、それを大きく超える愛おしさ。
何に対してなのかよくわからないけど、心があったかくて仕方がない。
このご時世だから手元にDVDがなくてもいつでも見られる。
でも手元に持っておきたい、と思える作品でした。棺桶にまで持って行きたい。
私の中で、こんなにお気に入りの作品になったのは主要人物から周りの人たちまで好きな役者さんが揃っていたというのもあるのかもしれません。
浩介を演じた松本潤ははっきりした顔立ちなので好き嫌いもはっきり分かれると思うんですけど、もし彼が苦手っていうだけの理由で見ていない人がいるなら、もったいないから見てください。
真緒を演じた上野樹里は、この役の設定上ほかの人だったら成り立たなかったんじゃないかと思うくらい適役だと感じます。
ちょっと不思議で奔放で、目の表情が印象的。
そのほか、浩介の弟・翔太役で菅田将暉も出ています。
翔太の好きなセリフは「末永くお幸せにっ!」です。言い方と表情がすんごいカワイイ。
キャストについて思うこと
主人公とヒロインの若い頃の回想シーンで、役者さんがあまりにも雰囲気が違うと萎えませんか?
私は割とそれで入り込めなくなったり、一気に集中力が切れたりする方だったりします。
この作品は奥田浩介と渡来真緒の現在を軸に、中学生の頃の回想が挟まれる構成になっています。キャスト大事。
浩介の中学生時代を北村匠海、真緒を葵わかなが演じているんですけど、似すぎじゃない…?
キャスティングした人神様なんじゃないの…?ってなりました。
中学時代の二人の雰囲気が近すぎて入り込めすぎたくらいです。
北村匠海いわく、奥田浩介という一人の人物を二人で演じるということで、演技が寄るようにリハーサルの段階でお互いのシーンを入れ替わって演じてみたりしたそうです。
この場面そうかな、と感じるところがあるので、これから見る人は頭の隅に置いておくと楽しさ二割増しだと思います。
なにより、葵わかな可愛すぎ問題。ほっぺた触りたくなる。
奥田浩介を演じた松本潤について思うこと
私はDVDとか動画サービスで映画を見るとき、一回目は絶対一時停止も巻き戻しもせず通しで見たい人なんです。
だけど、この作品は一ヶ所だけどうしても巻き戻しをせずにいられませんでした。
真緒の父親・幸三と浩介が話をするシーン、「よそさまに迷惑はかけられない」と言って幸三が立ち去ったあと。
浩介の表情がアップで映って、目が揺れる。
人間って驚いたり動揺したりすると黒目が左右に揺れますよね、小説とかでも文章としてそういう表現をする場合ってあると思うんですけど。
まじで揺れてる。
やれって言われてできる動きではないはずなのに、演技でできるって凄くない…?
そこまで役に入り込んで自然に出た動きなのか、意図して動かしたのかわからないけど私は前者だと思います。
そもそも今作の松本潤の演技がとても好きです。
さえないモテない鈍臭い奥田浩介のイメージと外見が重ならないとかは、さておき。
私はちゃんと鈍臭い人に見えたので問題なかったです。
特に好きな場面としては、物語の冒頭で弟が押しかけて布団にもぐり込んできて目を覚ますところの「上着くらい脱げよ」とか「靴下も!きったないなぁ」とか、ひとしきり怒ってからの時計を見て…“えっ”の言い方。
あとは最後の、浩介の同僚である峯岸の結婚を祝うパーティーで、ザ・ビーチボーイズの「素敵じゃないか」が流れる場面。
今作のキーになっている曲なのですが、グラスに添えた指先がトントンとリズムを刻む画から浩介の背中がずっと映っていて、上司の田中の「お前なんて顔してんだよ」って一言で横顔が映るところ。表情が凄くイイです。
挙げたらキリがなくなるので最初と最後だけっていう。
機会があればひとつひとつ書いてみたいものです。
『陽だまりの彼女』まとめ
以上、ここまで『陽だまりの彼女』について紹介させていただきました。
- 疲れた心がほんわかあったかくなる、愛おしい気持ちがあふれる作品
- “現在”と“中学時代の回想のなか”の浩介と真緒のシンクロ加減も必見!
- ファンタジーが苦手な人も見やすい、現実に寄り添う世界観
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