人工知能ロボットと人間の恋愛は成立するのか?
映画『her/世界でひとつの彼女』は、そんな現代的なテーマで描かれたSF恋愛ラブロマンスです。
言葉と想像力が繋ぐ、男女の出会いと別れの物語をご堪能ください。
- スパンク・ジョーンズ監督のデザインセンスが光る。暖色のバランスでSFだけど柔らかい雰囲気。
- 人工知能(AI)の語る感情はリアル?それともプログラム?
- 恋の相手は「作り物」だけど、リアルな恋愛ストーリー
それではさっそく『her/世界でひとつの彼女』の作品情報・あらすじ・ネタバレ感想などを書いていきます。
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目次
『her/世界でひとつの彼女』作品情報
作品名 | her/世界でひとつの彼女 |
公開日 | 2014年6月28日 |
上映時間 | 120分 |
監督 | スパイク・ジョーンズ |
脚本 | スパイク・ジョーンズ |
出演者 | ホアキン・フェニックス エイミー・アダムス ルーニー・マーラ オリヴィア・ワイルド スカーレット・ヨハンソン |
音楽 | アーケイド・ファイア |
【ネタバレ】『her/世界でひとつの彼女』あらすじ・感想
孤独なセルドア(ホアキン・フェニックス)が求めた救い
舞台は、そんなに遠くない未来のロサンゼルス。
街や人々の様子には、これと言って未来っぽい感じは見られませんが、みんなオペレーティングシステムを耳に取り付け、誰もいない空間に向かって会話する姿に思わずゾッとさせられます。
主人公のセルドア(ホアキン・フェニックス)は、依頼した人の代わりに手紙を書く、代筆ライターの仕事をしています。
彼の書く手紙はなんともロマンチック。
そしてSF映画であるのに、赤やピンク、黄色や茶色といった色が使われ、スパンク・ジョーンズ監督のデザインセンスが物語全体を温かい雰囲気で包みます。
セルドアは、妻キャサリン(ルーニー・マーラ)と離婚調停中。
1年以上も別居しているのに、セルドアは納得できず、まだ離婚届にサインを書くことを拒否していました。
そんな寂しい日々を送っていたあるとき、OS1の宣伝が目にとまります。
「単なるOSではなく人格化した存在」
宣伝を見て、なにか救いを求めるようにセルドアはOS1を起動させます。
そして、パソコンからは女優スターレット・ヨハンソンがつとめる、AIサマンサの声が話しかけてきました。
AIなのに飾らない口調。
ユーモアのセンスもあって、知的で頼れるサマンサ。
そんな彼女との他愛のない会話や、ゲームを楽しむセルドアの姿はとても楽しそう。
そう、まさにサマンサは完璧な存在。
もちろんそれは、人間の要望に応えるようにできているOS1のプログラムである、ということを忘れてはいけません。
しかし、セルドアはサマンサとの会話を続ける日々を重ねるうちに、AIであるサマンサに惹かれていくのです。
気持ちを押し付けるセルドアに応えようとするサマンサ
ある朝、まだ夜が明ける前に目覚めてしまったセルドアは、サマンサにキャサリンの話をしはじめます。
キャサリンとやり直したい、というセルドアに、サマンサが別居のことを指摘するとセルドアの表情が曇ります。
そして、「君に愛する人を失う悲しみが?」とサマンサに聞いてしまうのです。
「わからない」そう答えるサマンサ。
しかし、サマンサにとってこの言葉が引き金となったのでしょう。
「愛するとはどういうことか?」サマンサはセルドアの問いに応えるべく、「愛する」の答えを探しはじめるのです。
本当の感情とは?
サマンサは日々感じること、考えたこと、学んだことをセルドアに話します。
それはまるで、人生にときめく少女によう。
サマンサが「自分の感情はリアルなのかプログラムなのか」と悩みを打ち明けるシーンでは、思わず「サマンサは他のAIとは違う」そう感じてしまいますよね。
そして、セルドアもまたサマンサに特別な感情を持っていることに気がつきます。
「僕にとってはリアルだ。」
そうセルドアが答えるのです。
そして、サマンサとの恋愛関係がはじまっていきます。
キャサリンとサマンサ
サマンサの姿こそ見えないものの、楽しそうにデートするセルドア。
理想の彼女と付き合えたセルドアは、明るさを取り戻し、ついにキャサリンとの正式な離婚を決意します。
キャサリンとセルドアの食事のシーンはとても印象的。
セルドアの思い出の中のキャサリンはロングヘアーでしたが、久しぶりに会った彼女はショートカット。
セルドアのサインした離婚届を受け取ると、食事の前にテキパキとサインする姿からも、キャサリンがもうすでに新しい人生をスタートしていることがわかります。
なのに、終始笑顔を絶やさぬセルドアの頭の中には、キャサリンとの昔の思い出の映像が。
そして、話題は今の恋人の話に。
セルドアはキャサリンに恋人がAIであることを打ち明けます。
しかし、「リアルな感情と向き合えないなんてかわいそう」と否定されてしまうのです。
この言葉はセルドアにはきついですね。
さらに「いつも理想を押し付けてきた」と付き合っていたころの恨み言を言われてしまいます。
キャサリンの感情はヒートアップ。
店員を巻き込んでの喧嘩に発展する姿から、キャサリンもちょっとクセのある人間であることがわかります。
そして、自分の考えをしっかり持っているキャサリンは、サマンサのようにすべてを受け入れてはくれないのです。
サマンサとの別れ
それでもサマンサとの関係を続けるセルドア。
AIと人間という関係であるのに、プラトニックでないところもおもしろいところです。
また、サマンサはセルドアの手紙をまとめたものをクラウン社に送り、それが本として出版されることが決まります。喜ぶセルドア。
二人は順風に見えました。
しかし、そんなある日、突然サマンサと連絡が取れなくなります。
動揺するセルドア。実態のない彼女を探そうと思わず走り出してしまう姿が切ないです。
やっと連絡が取れるも、サマンサは急激に成長が進み、何千人という人と同時に連絡を取っていることなどをセルドアに話します。
そして、愛することを知ったサマンサは、さらなる成長を求めてセルドアの元を去っていくのです。
人間の想像力
サマンサは人につくられた存在ですが、セルドアとの日々を過ごすことで、成長していく姿にサマンサが人間と変わらない感情を持っているように思えてしまいます。
なぜなら、人間には想像力があるからです。
セルドアの手紙が本になったのも、彼の作り出した言葉の中にも、人を感動させ、想像させるなにかがあったから。
サマンサとセルドアの関係も、言葉と想像力によって紡がれた関係だったのです。
サマンサが去ったあと、セルドアはキャサリンに手紙を書きます。
そこには未練や被害者意識のようなものはなく、サマンサとの日々によって相手の気持ちを考えることを学び、自分とも向き合ったセルドアの反省と成長の様子が見えるのです。
機械に対する倫理観
産業革命によって、人間が機械のように働かされる姿を批判的に描いたチャールズ・チャップリンの映画『モダン・タイムス』から、私たちの機械に対する倫理観はずいぶんと変化しました。
みんなひとり1つ以上は機械を持ち、アイボ君やペッパー君など愛くるしい姿で人気を集めるキャラクターも増えています。
そうなってくると、ただの「物」と「所有者」の関係を超えた存在になるのもそう遠い未来ではないと思います。
未来では機械とのどんな関係が待っているのだろう。
そう考えさせられる映画でもありました。
『her/世界でひとつの彼女』まとめ
映画『her/世界でひとつの彼女』が公開されたのは2014年。
それから現在(2019年)に至るまでの間に、めまぐるしくAIは普及してきており、まさに今この映画を観ると「より近い現実」として触れることができる作品だと思います。
本作は、SFですが決して非現実的なストーリーではないのです。
- たとえAIだとしても相手の気持ちを考えるということ
- 作り物であってもそこから得られた感情はリアル
- 人生のパートナーとして、機械を選択する未来
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