「知ってるか?天国じゃ、みんなが海の話をするんだぜ」そんな言葉をきっかけに、余命3日の男と、海を見たことがない少女が病院を抜けて“死ぬまでにしたいこと”を叶えるために走り出す。
- 『鉄コン筋クリート』のマイケル・アリアス監督によるロードムービー
- 脚本は『宇宙兄弟』、2021年の大河『青天を衝け』の大森美香
- 余命いくばくもない年の離れた男女2人が行きつく先は…?
それでは『ヘブンズ・ドア』をネタバレありでレビューします。
▼動画の無料視聴はこちら▼
目次
『ヘブンズ・ドア』作品情報
作品名 | ヘブンズ・ドア |
公開日 | 2009年2月7日 |
上映時間 | 106分 |
監督 | マイケル・アリアス |
脚本 | 大森美香 |
出演者 | 長瀬智也 福田麻由子 長塚圭史 大倉孝二 和田聰宏 諏訪太郎 土屋アンナ 薬師丸ひろ子 田中泯 三浦友和 |
音楽 | Plaid |
【ネタバレ】『ヘブンズ・ドア』あらすじ
2人の出会い
自動車工場で働く28歳の青山勝人(長瀬智也)は、ある日社長(諏訪太郎)から声をかけられ唐突に「新しくバイトを入れる事にしたから今日までで良い」と言い渡されてしまいます。
その日までの給与明細と一緒に渡されたのは健康診断の結果でした。
ひどい耳鳴りやめまいを感じるようになっていた勝人は精密検査を受けに病院に行きます。
検査の結果を聞くと医師(北見敏之)は、脳にこぶし大の腫瘍があるからすぐに入院して欲しいと言いました。
脳幹に近いところに腫瘍があるから手術や放射線治療も効果は見込めない状態。
vito
医師いわく「もって3日、いますぐ命を失ってもおかしくはない状態」でした。
突然突きつけられた余命を受け入れられないまま看護師から病室に連れて行かれ、勝人はとりあえず煙草を取り出して一服します。
同じ病室の“先輩”たちから病室は禁煙だ何だ、肺がんで死ぬぞとまで言われましたが勝人は「肺がんにはならない、脳腫瘍でもって3日なんだから放っておいてくれ」と返しました。
その時、病室に1人の女の子が入ってきて勝人の煙草を床に投げつけました。
そして残りの煙草を奪って出て行きます。
病室の先輩が言うには、その少女は“病院の主”白石春海(福田麻由子)。
主と呼ばれるほど長く入院している患者です。
夜、勝人が眠れずに寝返りを繰り返していると気付かぬ間に背後に春海が立っていました。
勝人から奪った煙草を持って吸い方を尋ねてきた春海に「そんな若いうちから吸ってると肺が真っ黒になる」と言うと、春海は自分の病状について先天性の疾患に骨肉腫、あと一月で死ぬらしいと淡々と言いました。
春海が受け取り損ねてベッドの下に落ちてしまったライターを手探りで探していると、そこには勝人の前にそのベッドを使っていた患者が隠し持っていたお酒が転がっていました。
2人は病院の調理場に忍び込んで塩とレモンを探し、勝人は春海にテキーラの飲み方を教えました。
勝人は塩の匂いを嗅いで「海の匂いがする」と言います。
vito
天国には海がないから、みんな海の話をするらしいという昔見た映画の場面を思い出した勝人は、余命いくばくもない自分たちが天国に行ったあとのことを想像して「海に行ったことがないとみんなとの話に入れなくて仲間外れになる」と言い出します。
そして「行くか?海」と言って春海の手を引いて病院を抜け出しました。
盗んだ車で走り出す!
病院の前に停めてあった高級車に乗り込み、うっかりエンジンがかかってしまったその車で海へと走り出す2人。
立ち寄ったガソリンスタンドでお金を持っていないことに焦って車内をガサガサしている時、春海が拳銃を見つけます。
強盗なのか?と騒ぎ出す店員に、その場の勢いで強盗となった勝人は店からお金を奪って海へのドライブを続けます。
その頃、車の持ち主であるK3ホールディングスの社長・小久保(長塚圭史)は激怒していました。
車が東京方面に向かっていることなどをまとめた書類を部下の辺見(田中泯)と安達(大倉孝二)に渡して「車と奪った犯人を一緒に連れて来い」と命じました。
ドライブの途中、原宿や服屋に寄り道した2人でしたが気に入った服が手持ちのお金では足りず、勝人は「下ろしてくる」と言って出て行きました。
ほどなくして戻ってきた勝人は少し慌てた様子で店員(吉村由美)に札束を渡し、たくさんの服を買って店を後にしました。
どうして大量のお金があるのかと問い詰めると、勝人は郵便局で拳銃を見せて奪ってきたと言います。
後ろめたい気持ちのある春海は自首しようと言いましたが、勝人は発作で倒れてしまいました。
夜になり倒れた時と同じ道端で目が覚めた勝人はうまく立ち上がることもできませんでした。
よろめきながらも昼間買った大量の服を車のトランクに入れようとした時、トランクの中に大袈裟に包まれた菓子箱を見つけます。
綺麗に並べられたおまんじゅうの下には、ぎっしり敷き詰められた札束が入っていました。
死ぬまでにやってみたいこと
県警本部刑事部では勝人が起こした事件について捜査が進められていました。
勝人自身のこと、盗んだ車の出どころ、春海のこと。
ガソリンスタンドで3万ほど奪ったのちに郵便局で強盗をした様子が監視カメラに残されていたのを眺めながら、刑事・長谷川(三浦友和)は部下を割り振り家宅捜索に乗り込みます。
勝人と春海は高級ホテルに泊まることにして、広くてきれいな部屋と美味しい食事を堪能していました。
そして“死ぬまでにやってみたいこと”を紙に書きます。
vito
春海のリストの中に、カッコイイ男の人とキスをしたいというのがあったことを勝人は茶化しました。
春海は勝人のリストを奪い、その中にあった“おふくろに会いたい”というのを見逃しませんでした。
勝人は音楽でビッグになると言って家を出てから10年ずっと実家に帰っていませんでした。
翌朝、春海がテレビを見ていると勝人が指名手配されていました。
誘拐されたことになっている春海の両親がインタビューを受けている場面で、外からパトカーの音が聞こえてきます。
2人は急いで荷物をまとめて、逃げている間に警察から奪った制服でカモフラージュしながら車の元に行くと、K3の辺見が勝人を警察と勘違いして「おまわりさん、これは自分たちの車です!」と訴えかけてきました。
勝人は鍵を渡し、車を諦めてパトカーに乗り込んで逃走します。
人生は一度きり
逃げ続ける2人は遊園地に立ち寄りました。
その後、もう少しで海だというところで徒歩移動していると雨が降ってきました。
雨に濡れても楽しそうに笑ったり踊ったりしていた2人でしたが、突然勝人が発作を起こして倒れました。
春海は急いで薬局に駆け込んで店員に薬袋を見せ「これと同じ薬をください」と言いますが、強い薬なので処方箋がないと出せないと言われます。
お金ならいくらでも出すとまで言うびしょ濡れの少女を怪しんだ店員が親はどうしているのか等あれこれ聞いてきて、追い詰められた春海はバッグから拳銃を取り出しました。
どうせおもちゃだろうと思いながらも店員は「それを渡しなさい」と言いました。
春海は「もし人生が2回あるなら言う事を聞く。でもこれで終わりなんだから聞けない」と言って銃を発砲しました。
春海のお陰でどうにか持ち直した勝人は、周りをパトカーや警察に囲まれたバーの店内で子供の頃のことを思い出していました。
もう死ぬと言われて逃げても何も変わらないなら、このまま終わりというのもアリかもしれないと弱気になる勝人に、それでも海まで走ろうと言ったのは勝人だと春海は言いました。
カウンターで話を聞いていた外国人男性が2人に向かって車の鍵を投げ「跪いて生きるより立って死ぬ方がいい」と言いました。
警察がバーに乗り込んだ時、もうそこに2人はいませんでした。
2人が行きついた先は…
メキシコっぽい派手なペイントを施した車で2人が逃走を続けていると、後ろから大型トラックが突っ込んできました。
事故死として2人を始末しろと命じた小久保によるものでした。
2台の行く先には検問があり、多くのパトカーと警察が待ち構えるなか勝人は猛スピードで突破します。
トラックは横転して上手いこと切り抜けましたが、追ってくるパトカーから逃げる間に勝人たちは車ごと崖から落ちてしまいました。
その頃、捜査を続けていた長谷川のもとに部下から連絡が入り、小久保が収賄の容疑で立件できるほど真っ黒な人物であることが浮上します。
崖から落ちた車から離脱していた勝人と春海は、とある町でタクシー移動していました。
あとは海に向かうだけ、というところでしたがもう日が暮れるから海に行くのは明日だと勝人が言います。
お酒を飲む店に選んだホストクラブで、勝人は春海に「この中からタイプの奴を選べ」と言いました。
ホテルで書いた“死ぬまでにやってみたいこと”を叶えてあげようとしたのです。
春海は隣に座っていたホスト(二宮和也)を選びますが、キスする寸前でいつの間にか店内に潜入していた小久保が拳銃を向けました。
2人は怪しげな地下倉庫に連れて行かれます。
高級車のトランクにあった金を返せと言われますが、もう使い切ってしまっていました。
小久保は勝人と春海に拳銃を向けましたが、その時、側近である逸見が小久保のこめかみに銃口を付けました。
小久保が動けなくなった隙に2人は外へと逃げ出します。
海の匂いがしたトンネルの先では警察が待ち構えていました。
勝人は取り押さえられ、春海は保護されかけて勝人の元に走り寄ります。
倒れた勝人を抱きかかえて座り込んでいると、黙って見ているだけの警察たちに「何してるの?死にそうなんだよ、救急車呼んで!」と怒鳴りました。
救急車の中で長谷川は2人の様子を見て「わかんねぇな…」と呟きました。
実は勝人は意識不明のフリをしていて、隙をついて救急車から警察たちを放り出します。
そのまま向かったのは勝人の実家でした。
家に入ることもできずに、死にたくないと泣き出す勝人を春海は抱きしめました。
そして「怖くないよ、大丈夫」と言って勝人の手を引いて海へと歩きだします。
辿りついた砂浜で、持ってきたお酒を飲んだ勝人は春海の肩に体重を預けて人生の幕を閉じました。
【ネタバレ】『ヘブンズ・ドア』感想
もしも余命がわずかだと知ったら
設定からして“色々あったけど結局ハッピーエンド☆”的な展開はありえないわけですよ。
3日もつかどうかなんて余命の男と、7年も入院していて余命ひと月ほどの女の子と。
そんな2人が海を見るっていう目的だけのために強盗したり警察から逃げたりするっていう現実的に考えたら絶対無理な話、とか言ったら実もフタもないけどそんな話です。
人によるけど私はバッドエンドではないと思う。
悲しい終わりではあるけれど。
vito
今更だけどヘブンズ・ドアの二宮さん
どストライク😍
ひぇえぇえええ pic.twitter.com/xSGJWNpGbW— ユウカ。 (@1105jny) May 20, 2016
きっかけこそ不純だけど私にとっては見てよかったと思う作品であり、何年かに一度ふと見たくなる作品でもあります。
フィクションだからこその展開もありつつ、生きる事だとか死ぬ事という絶対に逃げられないテーマで綺麗に描かれた作品だなと思うんですよね。
綺麗っていうとニュアンス的にちょっと違うような気もするけど。
上手って言葉を使うほどチープなもんじゃないし、見事って言葉を使うほど巧妙ってわけでもないみたいな。
vito
もし自分が余命3日もないって言われたらどうするだろう。
何をするだろう。
もしそこに海を見たことがないっていう14歳の少女が現れたら一緒に病院から抜け出すのかな、とか。
強盗する度胸はないからたぶんそれはしないと思うけど、とか。
じゃあもし自分が入院しっぱなしの、余命一月ほどなんて状態だったとして。海も見たことがなかったとして。突然入院してきた男について行くだろうか、とか。
vito
年の差のある男女という組み合わせについて
vito
たぶん“映画を観る”ということを意識して初めて見たのが『レオン』だったからだと思うんですけど。
この『ヘブンズ・ドア』の元になったドイツ映画『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』は男性2人だったのに対して、リメイクするにあたって性別を変えて年の差も加えたのはどうしてだったんだろう。
vito
勝人が長瀬智也で、春海が福田麻由子だったのも良かった。
こういう人なんだなっていうのも細かい説明なしに想像しやすいというか。
vito
ボーっと見ていると見逃しちゃうよ、なキャスト陣
名もないホスト役二宮和也、というのは先ほど書きましたけど、それ以外にも“この人出てるの?”みたいな場面が結構あります。
冒頭で勝人が働いていた車工場の先輩として出ているのが柄本佑だったり、2人が逃走し始めた頃に立ち寄った服屋の店員がPUFFYの吉村由美だったり、ホスト二宮のいるホストクラブの客に土屋アンナがいたり。
vito
あと見逃すはずもない尺で出てくる人ですが個人的には大倉孝二がヘタレっぽいキャラの役をやっているのがツボです。
『ヘブンズ・ドア』まとめ
「ヘブンズ・ドア」
監督 マイケル・アリアス
主演、長瀬智也。ドイツで大ヒットした映画「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」が原案の青春ロードムービー。余命僅かな勝人と長くは生きられない少女、春海。
命を燃やすようにひたすら海へと向かう逃避行に心揺さぶられた。長瀬さんファンにお勧め。 pic.twitter.com/wAcvy8EF3z— 海羽 (@kaiha_saeco) November 2, 2019
以上、ここまで『ヘブンズ・ドア』をレビューしてきました。
- ロードムービーが好きなら一度見てみて欲しい作品
- もし自分が勝人だったら・春海だったらなんて考えながら見るのも楽しいと思います
- あと数日なんて余命を切られたら、あなたは何をしますか?
▼動画の無料視聴はこちら▼