世界的ベストセラーであり、実写映画も大ヒットした『ハリー・ポッター』シリーズ。
その第1作『ハリー・ポッターと賢者の石』の出版から20周年を記念して、2017年にイギリスの大英図書館で行われた展覧会の様子や、原作者であるJ・K・ローリングのインタビュー、映画版キャストによる原作の朗読などを収めたのが、ドキュメンタリー映画『ハリー・ポッターと魔法の歴史』です。
『ハリー・ポッター』シリーズの執筆にあたってローリング氏が影響を受けた逸話や伝説、薬草学の文献を、本人のコメントとともに紹介。
さらに、後世には科学として利用された魔法なども、学芸員や専門家の解説とあわせて紹介されています。
50分程度の比較的短い作品ですが、見どころたっぷりです。
大英図書館で行われた展覧会は国際巡回されており、2018年のニューヨーク開催に続き、日本でも2021年に開催予定で、ファンの方々は待ち焦がれていることでしょう。
今回はそんなハリポタ好きにはたまらないドキュメンタリー映画『ハリー・ポッターと魔法の歴史』をネタバレありでご紹介します。
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目次
『ハリー・ポッターと魔法の歴史』作品情報
作品名 | ハリー・ポッターと魔法の歴史 |
公開日 | 未公開 |
上映時間 | 50分 |
監督 | ジュード・ホー |
ナレーション | イメルダ・スタウントン |
出演者 | J・K・ローリング デヴィッド・シューリス イヴァナ・リンチ ワーウィック・デイヴィス ミリアム・マーゴリーズ |
【ネタバレ】『ハリー・ポッターと魔法の歴史』感想
“錬金術”と“現代科学”、そして魔法の繋がり
『ハリー・ポッター』シリーズ第1作である『ハリー・ポッターと賢者の石』を執筆するにあたって、原作者のJ・K・ローリングが影響を受けたというのが、錬金術師のニコラス・フラメル。
同じ名前で作中にも登場するのですが、賢者の石の創造にただ一人成功し、666歳を超えてもなお存命だといわれている人物です。
モデルとなった実在のフラメル氏は、15世紀初頭のパリに住んでいたとされています。
ローリング氏が描いたように不死の存在ではありませんでしたが、死後も彼の墓石は魔法の品として残っていました。
展覧会の展示物の中には、そんなフラメル氏が残した賢者の石を作るための指南書があります。
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修復作業はされていますが、その美しい挿絵付きの巻き物は色鮮やかで、とても1600年代に作られたものとは思えません。
ローリング氏は研究資料としてフラメル氏の本を持っていたようですが、今回このドキュメンタリーの中で初めて本物を目の当たりにし、とても感激している様子が見受けられます。
そして、このような錬金術を現代科学の基礎だと語るローリング氏は、同時に科学の時代に入った現代でも魔法を信じる心は大人も子供も一緒だと話しています。
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J・K・ローリングが描く“魔法世界”
学芸員の目から見ても、洗練された魔法が描かれているという『ハリー・ポッター』シリーズ。
細かなディティールまでしっかりと作り込まれ、繊細かつ挑戦的な魔法世界になっています。
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中でも独特だったのが、マンドレイクのイラスト。
ローリング氏が描いたマンドレイクは、魔法薬の材料であり一見すると葉のついた植物なのですが、引っこ抜いてみると根の部分が人のような姿をしています。
そして、成長したマンドレイクの根の悲鳴を聞くと、気絶したり、最悪の場合は死に至るのです。
そんなマンドレイクにまつわる伝説を記した実在の文献では、もっとリアルな人間の男性の姿をしています。
このような伝説が生まれたのには、人のように見える根の形だけでなく、根自体に毒があり、人に幻覚作用を与えるからだともいわれています。
ホグワーツで幻覚を起こす薬は使いたくなかったというローリング氏は、代わりに回復薬として登場させました。
これに関連してローリング氏が影響を受けたのが、ニコラス・カルペパーの薬草学、そしてハーブ事典です。
1600年代当時、医師にしか扱えなかった薬草が、カルペパー氏のハーブ事典の登場により、庶民でも扱えるようになったのです。
大金をはたいて薬を買わなくてはならなかった庶民の生活が変わり、医師たちはカルペパー氏に反発したといいます。
薬草の特徴だけでなく、占星術も交えて記されているというカルペパーのハーブ事典。
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大ベストセラーを生んだローリング氏の創作意欲を掻き立てるようなハーブ事典、一度目にしてみたいものです。
“魔女”の存在
ハーブ事典を世に送り出したことで医師たちに反発されたニコラス・カルペパーは、“魔法使い”だとして告発されています。
薬草を大釜で煮る様子は、確かに怪しく見えるかもしれません。
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そもそも、魔術というのは一般庶民に根付いていたもの。
人々が病気や怪我をした時に、魔女の作る薬を頼りにしていた時代がありました。
劇中では、魔女は村の相談役のような存在だったという話も登場。
日本の作品でも、スタジオジブリの映画『魔女の宅急便』で、主人公・キキの母で魔女であるコキリが薬草から薬を作り、町の人と信頼関係を築いている姿が描かれています。
魔女裁判などという歴史もありますが、元々はコミュニティの中で必要とされていたのです。
もう一つ、魔女といえば思い浮かぶのが空飛ぶほうきではないでしょうか。
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展覧会では魔法のほうきも紹介され、その重要性が説かれています。
“杖”や“呪文”というモチーフ
前述のほうきもそうですが、魔法使いと聞いてイメージするものはいくつかあります。
『ハリー・ポッター』シリーズの中でいうと、“杖”はとても重要な存在ではないでしょうか。
ホグワーツでは皆が杖を持っていますが、一つとして同じものはありません。
それほど各々にとって大切な魔法の杖は、正しい振り方と正しい“呪文”によって魔法が発動されます。
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思いつきで作るのが楽しかったというローリング氏ですが、物語の鍵となる重要な呪文にはしっかりと意味を持たせたり、実在の文献を参考にしたりとこだわったそうです。
例えば、三つの許されざる呪文。
インぺリオ(服従させる呪文)、クルーシオ(苦しみを与える呪文)、そしてアバダケダブラ(死の呪文)。
展覧会では、この誰もが知っている呪文である「アバダケダブラ」に初めて言及したとされる13世紀の書物も展示されました。
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『ハリー・ポッター』のテーマは“喪失感”
J・K・ローリングは最後に『ハリー・ポッター』シリーズのテーマは“喪失感”だと語っています。
第1作『ハリー・ポッターと賢者の石』を執筆中に母を亡くしたというローリング氏。
その出来事があったからこそ、今ある『ハリー・ポッター』シリーズが書けたといいます。
そして、母を亡くした日に描いていたというイメージイラストは、ローリング氏が『ハリー・ポッター』シリーズを語るうえで非常に重要なものとなっているそうで、このイラストも展覧会にて展示されました。
ローリング氏のイラストはとても味わい深く、心に残るようなタッチです。
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ホグワーツの全体図を描いたスケッチや、手書き原稿の展示にも協力したローリング氏。
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何か閃いた時、疑いを持った時、図書館に行くハーマイオニーは、ローリング氏と重なるところがあるのかもしれませんね。
『ハリー・ポッターと魔法の歴史』ネタバレ感想:まとめ
展覧会「ハリー・ポッターと魔法の歴史」東京&兵庫で開催 – 魔法にまつわる貴重な歴史的資料を展示 – https://t.co/JqoSkduoZ7 pic.twitter.com/3KuDTMIf64
— Fashion Press (@fashionpressnet) December 9, 2019
いかがだったでしょうか。
魔法を信じるすべての人が思わずわくわくしてしまうようなドキュメンタリー映画『ハリー・ポッターと魔法の歴史』。
劇中にも登場した展覧会の日本巡業は、2021年秋より兵庫県立美術館にて、2021年冬より東京ステーションギャラリーにて開催予定です。
まだまだたっぷり時間があるので、『ハリー・ポッター』シリーズを復習しながら来日を待つのも良いかもしれませんね。
そして、図書館という魔法の海へ旅に出てみるのもおすすめです。
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