『ハリエット』は、奴隷として虐げられていた人生に別れを告げ、黒人奴隷解放運動家として多くの黒人奴隷を救い出したハリエット・タブマンの生涯ついての実話です。
南北戦争の戦火の中、ハリエットが取った行動の数々は、今も讃えられています。
- ハリエット・タブマンは、南北戦争の真っ只中、黒人差別撤廃と奴隷解放運動に力を注いだ
- 最も注目する点はキャストたちが着ている衣装の緻密な時代考証
- 黒人差別と奴隷解放に尽力したハリエットの最期の言葉
それでは『ハリエット』を一部ネタバレありでレビューします。
映画『ハリエット』作品情報 2020年公開の『ハリエット』は、アメリカでの奴隷解放に命を捧げ「黒人たちのモーセ……
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目次
『ハリエット』作品情報
作品名 | ハリエット |
公開日 | 2020年6月5日 |
上映時間 | 125分 |
監督 | ケイシー・レモンズ |
脚本 | グレゴリー・アレン・ハワード ケイシー・レモンズ |
出演者 | シンシア・エリヴォ レスリー・オドム・Jr ジョー・アルウィン ジャネール・モネイ |
音楽 | テレンス・ブランチャード |
『ハリエット』あらすじ【ネタバレなし】
時は1820年代、メリーランド州で奴隷として産まれたミンティ別名ハリエット(シンシア・エリヴォ)は、南部の大富豪ブローダス家の使用人として、幼い頃から働かされていました。
ハリエットはいつか自由になって、家族と共に幸せな日常を送ることを夢見ていました。
しかし、ある日、雇用主の死によってハリエットは売りに出されそうになってしまいます。
危険を察知した彼女は、奴隷制が廃止された遥か遠くのペンシルベニア州に逃亡を企てます。
【ネタバレ】『ハリエット』感想
ハリエットがとった英雄的行動
鈴木友哉
彼女は遡ること200年近く前の1800年代に北米大陸で起きた南北戦争で活躍した黒人女性です。
黒人奴隷として生を受けた彼女は、長年白人たちの奴隷という立場に苦しんでいました。
鈴木友哉
ハリエットはその生活に長く翻弄され、苦悩してきました。
南北戦争時に取った彼女の行動は、現代のアメリカでも賞賛され、尊敬され、讃えられています。
2020年に発行された新20ドル札の顔にまで選ばれるほどのアメリカを代表する人物です。
『ハリエット』を見ていると戦火の中、多くの黒人奴隷を救ってきたハリエットの行動力に胸が張り裂けそうになります。
劇中で一つ印象深い場面があります。
物語の終盤辺り、ハリエットが雄弁に演説をする場面です。
議長の黒人男性は、距離が離れた場所にいる奴隷を助けることはできないと発言するも、彼女はその言葉を端から否定し、力強く語ります。
「裕福に育った人は、奴隷の苦しみが分からない。従者として産まれた黒人たちは、毎日鞭に打たれ、寝床もなく、物心付いた時から、労働という意味も教えられないままに働かされている。こうしている間にも苦しんでいる人たちはたくさんいる。汽車がなくても、嵐に遭っても、私は歩いてでも奴隷たちを助けにいきたい」
鈴木友哉
同じ境遇に生きた人だからこそ、同じ苦しみを理解することができるという優しさが滲み出ている素晴らしいシーンでした。
『ハリエット』は生涯一日も休むことなく、黒人奴隷の解放に向けて奔走した力強い女性の姿を描いています。
『ハリエット』の衣装はその時代の空気感を生み出す大切な要素
鈴木友哉
映画には、それぞれ大切な役割があります。
物語の根幹の部分となるシナリオ、そのストーリーを映像で表現する監督とカメラマン、そして作品をより現実的に見せるための演者が揃って、初めて映画が成り立ちます。
昔から作品の良し悪しを決めるのは、1に脚本、2に監督、3に役者という順番で映画の良し悪しが左右されると言われています。
でも、時には映画を観ていて、音楽が美しかったり、楽曲がその場面の雰囲気と合致していたりと、映画のスコアにも耳をそばだてて聞いてしまうことがあります。
またCGやアニメーションを駆使して製作された作品の視覚効果や若く見せるメイクや老けメイクといった技術が高度だと、そこにも目がいってしまいます。
『ハリエット』では、主役、エキストラ関係なく、作品に出演する役者が着ている衣装への細かい気配りが、観ていて手に取るように分かります。
特に、西部劇など過去の時代を扱う作品の衣装は、その時代に流行したファッションを研究しないと、その年代の雰囲気や空気感は作り出せないものです。
本作では、エキストラも含めキャスト自身が用意したのか、衣装担当であるポール・タズウェルが用意したのか、またはレンタルしたのかは定かではないですが、時代考証に見合った衣装を上手に取り入れています。
鈴木友哉
作中で登場するエキストラが南北戦争時代を思い起こさせる服を着ているシーンがあります。
一度にたくさんの人数が出演する場面でも全員同じ服装が用意されている点にポール・タズウェルの丁寧さがよく分かります。
鈴木友哉
ハリエットの最期の言葉には、彼女の生きた証がある
『ハリエット』が、日本で2020年6月に公開されたのは、とても意義深いです。
北米では、2019年11月1日に公開されており、日本ではいつも通り数ヶ月遅く、しかもコロナウィルスや緊急事態宣言が原因で、さらに後ろ倒しで公開になってしまいました。
鈴木友哉
海外の出来事にも関わらず、日本国内でも悪いニュースもいいニュースもメディアを通して連日流れてきています。
100年以上前に起きていた卑劣な差別は、姿形を変えて、時が経った今でも根底は変わらず残り続けています。
『ハリエット』では黒人差別をかなり辛辣に描写しています。
冒頭で大富豪の白人が、自由を得るために交渉したハリエットをこう罵ります。
「奴隷は白人にとっての財産。気に入った奴隷はブタと同じ。家畜と同じ。」
鈴木友哉
相手を1人の人間として扱わず、まるで家で飼っている動物のように扱う態度にイライラさせられるのではないでしょうか?
こんな劣悪な環境で育ったハリエットの気持ちに共感せざるを得ません。
作中、彼女はいつも自由を選ぶか、死を選ぶかと口癖のように話しています。
鈴木友哉
視点は少し違えど、同じ南北戦争時代を舞台にしている映画『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』もあわせて鑑賞したら、南北戦争や黒人差別の問題に対して一段と理解が深まることでしょう。
本作で取り上げられている差別問題は、100年経とうが、200年経とうが、人の心が変わらない限り、何も解決されません。
91歳で大往生したハリエットが、亡くなる間際に言い遺した最期の言葉は「みんなの居場所を用意するわ」でした。
鈴木友哉
『ハリエット』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
以上、ここまで『ハリエット』をレビューしてきました。
- アメリカ史に残る伝説の女性にスポットを当てた伝記映画
- 時代考証のしっかりした衣装
- 黒人差別と奴隷解放に尽力したハリエットの最期の言葉にすべてが詰まっている
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