SFとはSciense Fictionの略で科学的な空想に基づいたフィクション作品のことを指す、というのは常識だと思いますが、SFの中でも特にハードSFと呼ばれる分野があります。
ハードSFは主流、あるいは本格と呼ばれるものですが、科学的に正しい、もっと言うと科学的知見や科学的論理をテーマの主眼においた作品です。
文学ジャンル的な定義をごちゃごちゃ書くと面倒なことになるので、本稿では「科学的に正確な映画」という定義で話を進めます。
ニコ・トスカーニ
ハードなおすすめSF映画・アニメ9選
まずは宇宙が舞台の作品を紹介します。
ハードSFの舞台で多いのは宇宙で、宇宙は人類がほぼ開拓できていない未知の世界です。
未知の領域にロマンを感じるのは当然のことで、宇宙を舞台にしたSF作品は山ほど制作されています。
ニコ・トスカーニ
宇宙を舞台にしたSF作品は非常に数が多いため、複数取り上げつつ、「科学的に正しい宇宙の描写」について解説していきます。
『2001年宇宙の旅』(1968): 圧巻の宇宙描写
名匠スタンリー・キューブリック監督の古典的名作。
共同脚本家として重要な役割を果たしているのはアーサー・C・クラーク(1917-2008)。
イギリスのSF作家で、ロバート・A・ハインライン(1907-1988)、アイザック・アシモフ(1920-1992)と並ぶビッグスリーと称された超大物です。
ニコ・トスカーニ
最初の原始人が出てくるシークエンスが終了し、宇宙船が飛んでいる場面に切り替わると、何かが足りない気がします。
音がしないのです。
『スター・ウォーズ』や『スタートレック』などの古典的SFではゴウゴウとエンジンの噴射音がするのに、それがありません。
どちらが正しいか、というと科学的に正しいのは『2001年宇宙の旅』です。
宇宙空間は真空です。
音が聞こえるという現象は、音の振動が空気を震わせることで起こる現象で、真空である宇宙空間が無音の世界になるのは自明のことです。
ニコ・トスカーニ
後に取り上げる何本かの作品もすべて宇宙空間のシーンは無音です。
映画の舞台は架空の2001年で、この世界では2001年時点ですでに一般人の宇宙旅行に成功しているようです。
旅客らしき人々と、彼らにサーブしている客室乗務員の姿が描かれていますが、この描写も科学的です。
宇宙船の客室乗務員は帽子をかぶり、体にピッタリフィットする制服を着ています。
ニコ・トスカーニ
同じく、体にフィットする制服も宇宙空間での最適解です。
飛行機の客室乗務員がつけているようなスカーフをしていたら無重力空間ではフワフワ浮いてしまって邪魔で仕方ありません。
ピッタリとフィットした服装がSF的なガジェットの役割も果たしていて、科学的に正しく映像的な効果もある、二重に効果が上がっています。
客室乗務員の女性たちは無重力の船内を普通に歩いていますが、字幕から解釈するにどうやら靴に磁石が組み込まれているようでこれで靴底を設置させているようです。
ニコ・トスカーニ
何気ないセリフも科学的です。
宇宙船のクルーが番組のインタビューに答える場面で「ディスカバリー号は地球から8,000万マイル離れているので、交信に要する7分間はカットして編集している」と前置きしています。
8,000万マイルはおよそ1億3,000万km。電波は秒速30万kmなので、到達に7分7秒かかります。
距離と交信にかかる時間をわざわざ考慮したSF映画は本作と『インターステラー』(2014)ぐらいしか知りません。
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『ゼロ・グラビティ』(2013): 3Dで見せる宇宙
驚きの映像美を次々と生み出しているアルフォンソ・キュアロン監督のSF映画。
宇宙での船外活動中に事故に遭った主人公が地球に帰還するまでを91分間のリアルタイム進行で描いています。
『ゼロ・グラビティ』は『2001年宇宙の旅』の無重力描写を21世紀の技術でさらに進化させたような映画で、こちらも無重力の宇宙空間での描写がリアルです。
映画はまず、船外活動のシーンから始まりますが、見てみるとジョージ・クルーニー演じるマットの宇宙服には色々な方向に噴射機構がついています。
ニコ・トスカーニ
宇宙空間には重力という抵抗が無いため、一度放ったものは何もしないと止まりません。
手からボールを放しても落ちないし、紙飛行機を飛ばすと何か障害物にぶつからない限り止まりません。
マットが劇中でウォッカをストローで飲むシーンがありましたが、なぜわざわざストローを使うかというと、無重力空間でグラスを傾けても液体が落ちてこないためです。
宇宙空間は真っ暗な真空空間で、運動を止めるものがありません。
ですので、停止したい場合は進行方向の逆側にエネルギーを加えなければなりません。
加えて、宇宙空間には上下左右が存在しないため、姿勢制御のために色々な方向に噴射をする必要があります。
ニコ・トスカーニ
同作は3Dで公開されましたが、明らかに奥行きを意識した画面づくりをしています。
宇宙空間に飛び出したゴミや人物が手前に飛び出してくるようなシーンが多くありましたが、3Dで観た時の効果は抜群で、これほど3Dであることに意味のある映画を他に知りません。
ニコ・トスカーニ
キュアロンは次回作のアナウンスがまだありませんが、次は何をやってくれるのか実に楽しみな監督です。
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『プラネテス』(2003-2004): 将来できるかもしれない宇宙ビジネス
谷口悟朗監督のテレビアニメ。
原作は幸村誠のコミックです。
宇宙空間のゴミ「スペースデブリ」を回収するデブリ屋を主人公にしたSF作品。
まず第一話。
ニコ・トスカーニ
人間は地球上の環境でしか生存することができません。
宇宙船も宇宙服もその内部で地球上の環境を人工的に再現しています。
完全に密封しないと命取りになるため、宇宙服は簡単に脱ぎ着できるような構造になっていません。
船外活動中に「ちょっとトイレに…」と思っても無理なので、消去法でオムツをすることになります。
実際の宇宙飛行士も宇宙服の下はオムツをしているらしいですが、ビジュアル的によろしくないせいか、宇宙服の下にオムツの描写は『プラネテス』以外で見たことがありません。
ニコ・トスカーニ
また、『プラネテス』は2070年代の近未来で宇宙開発が商業化された世界を描いていますが、デブリの回収が専門職として成立しているのもリアルです。
デブリ(スペースデブリ)とは何らかの理由で宇宙空間に漂っている人工物、要は宇宙ゴミです。
宇宙空間に人工衛星を打ち上げれば、制御不能になって巨大なゴミになる可能性があります。
宇宙飛行士が船外活動を行えば、何らかのミスで備品を落とす可能性があります。
それらはすべてデブリとなります。
たとえ微小なものでもデブリの放置は宇宙開発にリスクをもたらす危険性があります。
ニコ・トスカーニ
となると、デブリが船外活動中の飛行士の宇宙服にぶつかって宇宙服に損傷をもたらす可能性があります。
宇宙船にぶつかれば宇宙船を損壊させる可能性があります。
たとえ微小なものでも宇宙船に穴が開いたとなると、そこから空気が漏れる可能性があり非常に危険です。
『プラネテス』のデブリ屋は窓際部署のような扱いを受けていましたが、必要な仕事であることに違いはありません。
ニコ・トスカーニ
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『オデッセイ』(2015): 宇宙飛行士の優秀さ
巨匠リドリー・スコット監督による火星での生存を描いたSF映画。
宇宙飛行士で植物学者の主人公が一人火星に取り残されながら、知恵を振り絞って生存する描写が極めてリアルに描かれています。
ニコ・トスカーニ
火星に取り残された経験どころか、今もって火星に人類が着陸したことすらないので確かなことは言えませんが、言えるのは宇宙飛行士はハイパーエリートだということです。
では、どのような人が宇宙飛行士になれるのでしょうか?
日本人が宇宙飛行士になる場合、まずはJAXA(宇宙航空研究開発機構)に入社する必要があります。
ニコ・トスカーニ
- (2)大学(自然科学系※)卒業以上であること。
※)理学部、工学部、医学部、歯学部、薬学部、農学部等- (3)自然科学系分野における研究、設計、開発、製造、運用等に3年以上の実務経験を有すること。
(なお、修士号取得者は1年、博士号取得者は3年の実務経験とみなします。)- (4)宇宙飛行士としての訓練活動、幅広い分野の宇宙飛行活動等に円滑かつ柔軟に対応できる能力(科学知識、技術等)を有すること。
- (5)訓練時に必要な泳力(水着及び着衣で 75m: 25m x 3回 を泳げること。また、10分間立ち泳ぎが可能であること。)を有すること。
- (6)国際的な宇宙飛行士チームの一員として訓練を行い、円滑な意思の疎通が図れる英語能力を有すること。
出典:jaxa
(5)は一見無関係に見えますが、訓練時に必要な能力です。
なぜかと言うと、無重力空間を大規模に再現するのは不可能なので、船外活動の訓練を比較的環境の近い水中で行うためです。
(6)は他国のクルーとコミュニケーションをとるための必須能力。
ニコ・トスカーニ
もはや人類にとって宇宙に行くことは不可能なことではなくなりましたが、難易度が高いことに違いはありません。
こんなにいっぱい条件があるのも、宇宙に行って研究や船外活動に従事するには宇宙が本来、人間含む生物にとって不毛の超危険地帯だからです。
これだけの条件を満たしたハイパーエリートが、最長10年を超える訓練を経てようやく宇宙に行くことが許されます。
『オデッセイ』に登場するマーク(マット・デイモン)もきっと相当入念に訓練を重ねてきたのでしょう。
ニコ・トスカーニ
以上からわかるとおり、『アルマゲドン』(1998)みたいに、基本的な単語のスペルすらロクにかけない人物が数日訓練を受けただけで宇宙に行くことはありえません。
ニコ・トスカーニ
これはSFではなく実話ものですが、『アポロ13』(1995)や『ファースト・マン』(2018)の宇宙飛行士がトラブルに見舞われつつも生還できたのは、彼らがハイパーエリートかつ入念に訓練を重ねてきたためです。
そういった意味でも『オデッセイ』は宇宙飛行士の姿を正しく描いていると言えます。
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続いてはシミュレーション的なSF映画を紹介します。
「もしも超巨大怪獣が現れたら?」
「もしも宇宙人がやってきたら?」
そういうSF映画は山ほどありますが、それを「現実に人類はどう対処するだろうか?」という展開に落とし込んでいる作品は決して多くありません。
ニコ・トスカーニ
『シン・ゴジラ』(2016): もしも巨大怪獣に日本社会が立ち向かったら
『シン・ゴジラ』は「もしもゴジラが現れたら?」というある種再現ドラマのような設定に立脚した、『ゴジラ』シリーズでもとびきりユニークな作品です。
光の巨人もモスラもガメラも現れることなく、日本はこの事態にマンパワーで対処することを余儀なくされます。
2020年、現実世界でも感染症拡大で非常事態宣言が布告されましたが、ゴジラ出現で日本政府は非常事態宣言を発令し、ゴジラの駆除に自衛隊が防衛出動しました。
ニコ・トスカーニ
『シン・ゴジラ』は大規模な戦闘シーンもありますが、同じかそれ以上に会議のシーンが多く、やたらと会議したがる日本社会の構造もよく表現されています。
恋愛ドラマや人間ドラマは潔いまでに割愛して、ここまでドライなドラマに着地させたのは実に大胆だと感心しきりでした。
ニコ・トスカーニ
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『コンタクト』(1997): もしも地球外からメッセージが来たら
『コンタクト』は地味ですが、これも「もしも○○が○○したら」という思考実験を元にしているという意味で『日本沈没』や『シン・ゴジラ』と似た存在といえます。
原作者は本職の天文学者だったカール・セーガン(1934-1996)。
『コンタクト』は「もしも地球外から何らかのメッセージを受け取ったら人類はどうするのか?」という思考実験です。
典型的なSF描写はほとんどなく、科学、宗教、政治といった様々な側面からの議論が中心となっています。
ジョディ・フォスター演じる主人公は異星人から「また会おう」という曖昧な挨拶を受け取って映画は完結します。
ニコ・トスカーニ
続いてはあってはならない郵政思想に基づいた世界を描く映画です。
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『ガタカ』(1997): 優生学の行きつく先
遺伝子操作の技術が高度に発達した世界を描いたSF映画です。
『ガタカ』の世界は遺伝子操作により、優れた知能と体力と外見を持った「適正者」と自然妊娠で生まれた「不適正者」が存在する世界。
不適正者は社会的にも個人レベルでも差別されている世界で、不適正者のヴィンセント(イーサン・ホーク)が身分を偽って宇宙飛行士を目指すという内容です。
ニコ・トスカーニ
映画と同じように人類は、優生学による過ちを犯したことがあります。
歴史上でも悪名高きナチス・ドイツです。
オトマー・フライヘル・フォン・フェアシューアー(1896-1969)は戦前、戦後に至る時期の遺伝学の権威でした。
弟子にアウシュビッツで囚人に数々の人体実験を行ったことで悪名高いヨーゼフ・メンゲレ(1911-1979)がいます。
メンゲレに比べると知名度は低いですが、フェアシューアーもナチスにおいて重要な役割を果たしています。
ニコ・トスカーニ
フェアシューアーは自身の研究結果から「障害は遺伝する傾向にある」と主張し、障碍者の中絶と断種(不妊手術)の実行を主張します。
当時のドイツで中絶は禁じられていましたが、独裁者ヒトラーの元、凄まじいスピードで法律が改正され、障碍者は次々と強制的に中絶・断種されました。
さらにフェアシューアーは優生学の観点からヒトラーのユダヤ人排斥も後押ししたと言われています。
ドイツが敗戦すると裁判にかけられましたが、フェアシューアーは軽微な罰金刑を課されただけでした。
ニコ・トスカーニ
フェアシューアーの件は極端にしても、遺伝子が優先されるとそれによって差別が起きることは十分に考えられる話です。
現実世界でも、受精卵の状態でゲノム編集を行った中国の研究者が有罪になり懲役3年の刑を課されるという事件がありました。
ニコ・トスカーニ
『ガタカ』はNASAによる「現実的な映画」ベスト7で1位に選出されています。
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続いては古代生物をよみがえらせるご存じあの映画です。
『ジュラシック・パーク』(1993): 恐竜を復活させる方法
ニコ・トスカーニ
『ジュラシック・パーク』に登場する恐竜は、琥珀に閉じ込められた蚊が吸血した恐竜の血液を使ってDNAを採取し、これを解析・復元した上で欠損部位を現生のカエルのDNAで補完。
さらにこれをワニの未受精卵に注入することで復活したという設定になっています。
公開当初は「リアル」と言われていたようですが、残念ながらこの方法は理論的に不可能であることが後にわかりました。
血液には赤血球、白血球、血小板などの細胞成分が含まれていますが、これらには寿命があります。
赤血球は100から120日ほど、白血球は20日から25日ほどです。
細胞が死滅すればDNAもバラバラになるため、ジュラ紀や白亜紀の琥珀に保全された蚊から恐竜の血液を採取しても遺伝情報の復元は不可能です。
ニコ・トスカーニ
恐竜の大きさや全体のフォルム、どんな動き方をしたかは発掘された化石からある程度推測可能です。
では、色や鳴き声はどうでしょうか?
これは完全再現は不可能ですが、ある程度の科学的裏付けで推測ができます。
生物学には「生物分類」というものが存在します。
ニコ・トスカーニ
例えば、人類は下記に分類されます。
界…動物界
門…脊椎動物亜門
綱…哺乳綱
目…サル目
科…ヒト科
属…ヒト属
種…ホモサピエンス
ニホンザルはこのような分類になります。
界…動物界
門…脊椎動物亜門
綱…哺乳綱
目…サル目
科…オナガザル科
属…マカク属
種…ニホンザル
ヒトに近いとされるニホンザルは「サル目」までは同じなので、ヒトとサルは生物学的な距離が近いということがよくわかります。
ニコ・トスカーニ
恐竜は現存生物では比較的爬虫類に近いと言われていますが、爬虫類の代表種であるイリエワニは下記分類になります。
ドメイン…真核生物
界:…動物界
門…脊椎動物亜門
綱…爬虫網
目…:ワニ目
科…クロコダイル科
属…クロコダイル属
種…イリエワニ
恐竜の代表格であるティラノサウルス・レックスはこうなります。
界…:動物界
門…脊椎動物亜門
綱…爬虫網
目…竜盤目
科…ティラノサウルス科
属…ティラノサウルス属
種…ティラノサウルス・レックス
「爬虫網」まで一緒なのでイリエワニとティラノサウルス・レックスは生物学的距離が比較的近いということがわかります。
復元した恐竜のDNAをワニの未受精卵に注入したのは、爬虫類と恐竜が比較的近い生物だからという理由に基づいていることがわかります。
『ジュラシック・パーク』の視覚効果スタッフは動物園に足を運んで観察を重ねたそうですが、おそらく現存する爬虫類をもとに劇中に登場する恐竜の色や鳴き声を決めたのでしょう。
実際、『ジュラシック・パーク』は恐竜を復活させるメカニズムはともかく恐竜の再現度はなかなかの正確性と評価されています。
『ジュラシック・パーク』は最初期のCG成熟期に作られた映画で、その後CGは視覚効果に無くてはならない技術として物凄いスピードで進化していきます。
ニコ・トスカーニ
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最後は未知の生物の言語を解読するSFです。
『メッセージ』(2016): 未知の言語を解読する
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督によるSF映画。
ある日、世界各地に巨大宇宙船が現れ、言語学者のルイーズ(エイミー・アダムス)が調査に協力することになる…という内容です。
映画全体で巧みな叙述トリックが使われており、あらすじを書いてしまうとつまらないので内容にはツッコマず、劇中の描写に触れたいと思います。
『コンタクト』の異星人が極めて曖昧なメッセージしか送らなかったのに対して、『メッセージ』の異星人はお喋りです。
異星人は完全に未知の言語を話すため、ルイーズは「自分たちの名前」のような具体的なものから入り「歩く」などの行動へと進めていく方法でコミュニケーションをとっていきます。
ニコ・トスカーニ
映画はビジュアルにもこだわっています。
未知の言語を話す異星人は未知の文字を使いますが、この文字にも制作陣のこだわりが見えます。
映画で言語アドバイザーを務めたカナダ・マギル大学言語学部のジェシカ・クーン准教授は劇中の文字について「架空の言語でありながら、一貫性がとてもしっかりしている」と絶賛していますが、この「一貫性がある」ことは非常に重要です。
文字には表音文字と表意文字の二種類があります。
表音文字はアルファベットに代表される一つ一つの文字に意味がなく、それぞれが音を表現するものです。
ニコ・トスカーニ
対して、表意文字は一つ一つの文字が意味を持ちます。
“話”という一文字だけで、”speak”を表現できる漢字などその代表例ですね。
『メッセージ』に登場する異星人の文字は表意文字らしいです。
表音文字にしても表意文字にしても、「一貫性がある」のは重要なことです。
例えば、暗号解読の手段に「頻度分析」と呼ばれる手段があります。
この頻度分析は「その暗号が元々どこの言語で書かれているのか」が判明していて暗号文が十分な長さであるのが(統計的なズレが出るため)前提ですが原始的な暗号を解読するには非常に有効な手段です。
例えば、英語で最もよく使われるアルファベットは”E”です。
暗号が一定のパターンでスクランブルされていて、たとえば平文(元の分)の”E”に当たる部分を暗号文では”φ”に置き換えていたとします。
暗号解読者はスクランブルのルールは知らなくても、平文が英語であることがわかっているとします。
すると、暗号文中で最も出現頻度が高い記号”φ”が平文では”E”であると推測できます。
ニコ・トスカーニ
これはヒエログラフなどの失われた古代文字や未知の言語の解読にも使うことができます。
こういった読解方法はその文章に一定のルール、つまりは一貫性がなければ成立しません。
解読対象の文章が十分な長さであることも重要です。
15世紀に制作されたと考えられているヴォイニッチ手稿は未だに解読がされていない謎の文字で書かれています。
ヴォイニッチ手稿はあまりにも誰も解けないため、デタラメ説も出ましたが、数学的な分析の結果一貫性を認められデタラメ説は否定されました。
しかし、240ページあるヴォイニッチ手稿は、挿絵が多く含まれるため書かれている文字のサンプル数が十分でなく言語学者たちは読解に苦慮しています。
おまけに描かれている挿絵も抽象的過ぎで何を指しているのかさっぱりわからず、ヒントになるどころか悩みの種になっています。
ニコ・トスカーニ
同作はアカデミー賞で作品賞、監督賞、脚色賞を含む8部門の候補になりましたが、このこだわりぶりが映画の評価へと繋がったのでしょうね。
映画『メッセージ』作品情報 『メッセージ』は、『魔法にかけられて』のエイミー・アダムスと『ハート・ロッカー』の……
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ハードなおすすめSF映画・アニメ9選まとめ:科学的に正しいことの必要性
- 『2001年宇宙の旅』
- 『ゼロ・グラビティ』
- 『プラネテス』
- 『オデッセイ』
- 『シン・ゴジラ』
- 『コンタクト』
- 『ガタカ』
- 『ジュラシック・パーク』
- 『メッセージ』
以上、色々と書きましたがハードSFだけがSFというわけではありません。
『スター・ウォーズ』シリーズや『パシフィック・リム』(2013)を見て「科学的におかしい」などとツッコミを入れるつもりは筆者としても毛頭なく、荒唐無稽作品には荒唐無稽作品なりの良さがあると思います。
ただ、SFによく出てくる描写が科学的にどうであるかを知っておくと、よくできたハードSFを観た時に作品に対する感銘度が変わってくるのも確かです。
取り上げた作品の制作者たちの丁寧な仕事に敬意を示しつつ、この辺で筆を置きたいと思います。
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