準備段階でフラグてんこ盛り!
終始一難去ってまた一難の、ドタバタフライトコメディ!
当初パニック映画を作ろうとしていた監督が構想2年でリサーチを重ねていくうちに、働いている人たちの面白さを知って内容を修正したほど誠実で現実味のある上質な作品です。
- 監督は『ウォーターボーイズ』『スウィングガールズ』の矢口史靖
- 全日本空輸(ANA)全面協力によるリアルな演出にも注目!
- 映画の登場人物にはモデルが存在する…らしいですよ
それでは映画『ハッピーフライト』をネタバレありでレビューします。
目次
映画『ハッピーフライト』作品情報
作品名 | ハッピーフライト |
公開日 | 2008年11月15日 |
上映時間 | 103分 |
監督 | 矢口史靖 |
脚本 | 矢口史靖 |
出演者 | 田辺誠一 時任三郎 綾瀬はるか 吹石一恵 田畑智子 寺島しのぶ 田中哲司 平岩紙 中村靖日 肘井美佳 森岡龍 正名僕蔵 藤本静 佐藤めぐみ 長谷川朝晴 江口のりこ 柄本明 小日向文世 いとうあいこ 宮田早苗 明星真由美 森下能幸 田山涼成 入山法子 菅原大吉 竹中直人 木野花 ベンガル 笹野高史 岸部一徳 |
音楽 | ミッキー吉野 |
【ネタバレ】映画『ハッピーフライト』あらすじ
羽田発ホノルル行き1980便
この物語の主人公は、シミュレーションテストにてトラブルに対処できずテンパって感情的になり空港に戻れないまま海に着水をキメてしまう、機長昇格訓練中の副操縦士・鈴木和博(田辺誠一)。
OJT最終日となる路線訓練の試験は、羽田発ホノルル行き1980便。
この試験に合格すれば鈴木は機長に昇格できるのですが、優しくて大体は合格をくれる望月貞夫教官(小日向文世)は風邪をひいてしまい、代わりに鬼教官として有名な指導教官・原田典喜(時任三郎)と乗務することになります。
一方、新人CAの斎藤悦子(綾瀬はるか)はホノルル便で初めての国際線フライトに乗務することとなっていました。
しかし、搭乗開始前のブリーフィングに遅刻し、悦子の同期たちが口をそろえて「超怖いって有名なチーパー(チーフパーサー)」と恐れる山崎麗子(寺島しのぶ)に叱られてしまいます。
鈴木と悦子が乗務するホノルル便に関わってくるグランドスタッフ・木村菜採(田畑智子)は、出会いもなく体力的にも疲れてしまっていて退職を申し出ているのですが、上司の森田亮二(田山涼成)に却下されています。
せめて後輩の吉田美樹(平岩紙)を育ててからにしろと叱咤されるも、吉田はお気楽にのほほんとしていて先行き不安でした。
いざ、離陸!
鈴木は原田とのブリーフィングで台風13号が西から接近しているけれど、関東にかかるのは午後になるので離陸には影響がないこと、滑走路が舗装作業であることを確認。
悦子は同様に先輩CAたちと修学旅行の学生のテンションに巻き込まれないようにすること、デザートの盛り付けには気を付けることなどを確認。
それぞれ乗務に備えます。
機体のヒーターに問題が発生し整備部門でちょっとしたいざこざが生まれていた頃、鈴木と原田はCAたちとのブリーフィングを行い、機体のことも含めて最終確認が済んだ頃。
乗客の搭乗が始まります。
滑走路に鳥が集まっているのを見た管制官がバードパトロールに駆除を要請したり、オーバーブッキングの調整をしくじったために中堅CAの田中真里(吹石一恵)が乗客からクレームを浴びたりと、すでに一難去ってまた一難という状況のなか着々と離陸準備は進んでいきました。
そしていよいよホノルル線離陸、直後に鳥がぶつかりバードストライクのおそれに見舞われたり、鈴木のうっかりで雲に突っ込んでしまったりもしますが無事に飛行が安定してベルトサインを消すに至ります。
ここからは、満席でやること盛りだくさんのCAチームがドタバタしだすところ。
初の国際線で半人前な悦子は乗客からのオーダーを把握しきれずに失敗ばかりで、山崎からも厳しく指導され「もうキャビンに出なくていい」とまで言われて自信を失っていきます。
そんな中、CAたちに戦慄が走る出来事が起きてしまいます。
まさかの食後のデザートが足りないという事態。
しかし、ここで山崎が悦子の料理の腕を見込み、機内に残っていた食材でどうにかタルトタタンを作って事なきを得ます。
その頃、グランドスタッフの木村は荷物を取り違えられてしまったという乗客・太田孝三(日下部そう)のために、全力疾走し転んでもまた走って、太田のキャリーバッグを持った女性が乗ったリムジンバスを追いかけました。
そして無事に荷物を交換したところ太田から名刺を渡され、仕事が終わったら空港のレストランで待ち合わせしようと誘われました。
重大トラブル発生、ホノルル便の行く先は…?
落ち着いたのも束の間、山崎のもとに翼に何かぶつかるのを見たという乗客から報告が入ります。
その直後、オートパイロットが外れて、急に速度が表示されなくなるトラブルが発生します。
テンパって判断を誤りそうになる鈴木でしたが、原田の指導で機体は安定します。
しかし、エアデータコンピューターが作動しないため、管制室に連絡をしてエマージェンシーを宣言。
羽田に戻るという選択を余儀なくされます。
事態はまるで、シミュレーションテストの時に鈴木が失敗したシチュエーションそのものでした。
エンジンに何か入ったという情報を聞いた整備士・中村弘樹(森岡龍)は、慌てて自分の整備道具を確認します。
離陸前にホノルル便の整備をしていた時、もしかしたら…と思い焦ったのです。
そして自分の工具箱を開けると、スパナが一本ありませんでした。
整備士総動員で片っ端から探している最中、中村の上司・小泉賢吾(田中哲司)が「まさかエンジンの中じゃないだろうな」と聞いてくるも、中村は返事ができませんでした。
もしそうだったら、ホノルル便のトラブルの原因そのものになるからです。
しかし、幸いスパナは社会見学に来ていた小学生がイタズラで持ち出しただけだと判明します。
大変なことが起きているとは知らない木村は、終業時間を迎え太田との待ち合わせに向かうためルンルン気分で帰ろうとしますが、そこにホノルル便が戻ってくるという連絡が入りました。
乗客の休憩場所とホテルの手配を言い渡され、太田の名刺をシュレッダーにかけてしょんぼり仕事に戻ろうとした時、ふと飛行機研究会のオタクたちが見ていたブログの存在を思い出します。
ホノルル便の離陸直後の写真が載っているブログをオペレーションコントロールセンター(OCC)に連絡すると、中島詩織(肘井美佳)が写真を拡大してピトー管が折れていることを突き止めます。
そして燃料、計算を行った新しいフライトプランを、鈴木と原田に伝えました。
しかし悲しいことに台風が接近中、それも予報ではフライトには影響がないはずでしたがすでに関東で暴風雨。
OCCでも雷が落ちてパソコンが使い物にならなくなってしまい、責任者の高橋昌治(岸辺一徳)が機転を利かせて出発ロビーにある模型でアナログ中のアナログでの対応を検討します。
ハッピーフライト!
さて、コックピットでは鈴木と原田がタイミングを見計らい羽田空港での緊急着陸を決定し、山崎はサービス要員の顔を忘れ保安要員として動くようにとCAたちに指示します。
その時、房総半島に積乱雲が覆いかぶさるように立ちはだかり、避けても避けても雷の危険から逃げられず機体に落雷。
しかし、これが功を奏してエアスピードが戻ります。
それとともに、台風が通過して風向きが変わったのではないか?と気付いた高橋により着陸する滑走路を決定します。
不安な鈴木の隣で「まぁ、なんとかなるだろ」と頭をフル回転させる原田、緊迫するコックピット。
管制室、OCCのメンバー、整備チーム、全員が見守るなか、ホノルル便はどうにか無事に着陸しました。
管制官たちは次の仕事に、グランドスタッフたちは到着した乗客たちへの対応に、と息つく間もなく駆り出されます。
木村はこっそり太田と待ち合わせしたレストランに向かいますが、太田はいませんでした。
しかし、席に座ってため息をついていると太田が現れます。
一方、ホノルル便に乗っていた乗客たちを見送る悦子に、「やっぱり私、CAになりたいから勉強します」と声をかけてきた女子高生がいました。
悦子が山崎から叱られたすぐ後にも、声をかけてきていた子です、
そのとき悦子は「やめておいた方がいいよ」と言ったのですが、フライト中に少し成長した悦子は笑顔で「キッビシイわよー!」と言って見送るのでした。
鈴木は原田から「結果は後で報告する」と言われ、このフライトが最終審査だったことを思い出します。
2人で機外に出ると、やっぱりピトー管が折れていました。
鈴木がエンジンについていた鳥の羽を見つけて手に取ると、その羽は風にさらわれて空高く飛んでいきました。
【ネタバレ】『ハッピーフライト』感想
何度見ても面白くて、ハラハラする作品
vito
航空業界は普段の私の仕事などとはかけ離れたところにあって、生活においても何なら飛行機は一度しか乗ったことがないくらいなんですけど。
全日空の全面協力というところで衣装も本物、ロゴマークも本物、エキストラも社員が参加で、偽物感というか“本物に限りなく寄せている別の物”みたいな違和感を抱かずに見られるところが好きです。
もし大人の事情でオリジナルの制服だとかマークを用いなきゃならなくて妙なコスプレ感が出ちゃっていたら、仕方ないにしても冷める瞬間があっただろうなと思うし『ハッピーフライト』はその点において満点です。
何なら機体も実際にANA国際線で使用されていたボーイング747-400を日本の航空業界史上初の撮影目的でのレンタルを経て本物を使っている徹底ぶりだし、旅客ターミナルとか機体整備工場とかも実際の場所でロケしたっていうんだから凄い。
vito
あと見ていて面白いなぁと思うのは、各所それぞれ何かしら起きているところの主要人物たち(副操縦士の鈴木和博、CAの斎藤悦子、グランドスタッフの木村菜採、オペレーションコントロールセンターの高橋昌治)が、一度も顔を合わせずに進行していくところです。
操縦士とCAたちは顔を合わせてはいるんですけど、個人として一対一でっていうのはないので。
何かこう、それぞれの場所でアクシデントなり何なりが起きていて最終的に繋がっていく系のストーリーって進行していくなかで誰かと誰かが接点を持ったり直接会話したりして繋がる作品が多いように思うので、ちょっと新鮮な感じがするというか珍しいような感じがします。
『ハッピーフライト』においてはホノルル便の飛行機が、それぞれを繋いでいるというか。
飛行機の一つが無事に飛ぶために、こんなにたくさんの人が関わっていて、それぞれに物語があるんだなぁと気付かされたりもします。
vito
好きな場面や登場人物の関係性
場面として好きなところは、初の国際線で浮かれていた悦子が失敗コンボの末に乗客に嘔吐されて制服のエプロンを汚された上に山崎から叱られて、号泣からのデザート事件で自信を取り戻すところまで。
その少し前、食事を配っている時に悦子は肉と魚のバランス配分を考えずに肉が足りなくなってしまうんですけど、山崎が“こうするんだよ”ってお手本を見せるんです。
それに倣って魚を勧める悦子を、山崎がちゃんと見ていたんだなとわかる場面だったりもして。
vito
山崎のちゃんと人を見て対応するところとか、自分が仕事をしている上で“こうした方がいい”と思うことを、実践をもって下に継承していく感じがたまらなく良いです。
ただ怒るだけの上司ではなくて、ちゃんと叱る上司っていうね…だから総括責任者を任されているんだねっていう。
あと好きな登場人物の関係性については、まずオペレーションコントロールセンターの高橋・中島。
コントロールセンターの責任者でパソコンに疎い高橋と、無線担当でありパソコンの扱いに慣れている中島なんですけど。
本編ではお互いの良いところを最大限に生かして、トラブル対応にあたっています。
vito
そして整備士チームの中村・小泉。
新人のドック整備士の中村と、ライン整備士で新人相手にも妥協を許さず厳しい面のある小泉。
この2人の関係性はフライトの外、準備段階からぎくしゃくして描かれているんですけど、これもまたエンドロールでは他の整備士たちと並んで飛行機に手を振り頭を下げる場面があって、良い関係を築いているんだなぁと思えます、
あと、場面でも関係性でもなく好きなのは管制官の水野頼子。
これはもう、演じているのが江口のりこなのが最高です。
レーダー室の渡辺に対して「公務員としての自覚が足りない」っていうのを他の管制官と愚痴りながら業務をこなしている場面があるんですけど、そこのテンポも温度感も最高に好きです。
vito
映画『ハッピーフライト』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
以上、ここまで『ハッピーフライト』をネタバレありでレビューしてきました。
- 飛行機に乗ること、見ること、関わる仕事が好きな人のみならず、きっと無関心な人でも楽しめる作品
- 序盤からフラグ立ちまくりでずっとドタバタしているのであっという間にエンドロールです
- フィクションだけど登場人物にモデルが存在していて、本物の制服やロゴ、機体を使っているので現実味があって、より楽しいです