心の栄養、体の栄養、そして大切な何か…に気づかせてくれる映画。
キャッチコピーは「わけあうたびに わかりあえる 気がする」。
北海道・洞爺湖の湖畔にある夫婦が経営する「カフェ・マーニ」。
春夏秋冬、季節ごとに訪れる不思議な訳ありのお客さんたちとのほっこりまったり癒されるストーリー。
- この素晴らしい映画を言葉にするのはとても難しい。とにかく観てほしい!心からおすすめできる映画。
- ショートカットの原田知世がとってもキュート!森ガールファッションが素敵すぎ。
- 「わけあえる幸せ」を実感させてくれる描写が満載。
小規模上映から口コミでじわじわ広がり、話題となった観客満足度の高い映画!理由は観ればわかります。
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目次
『しあわせのパン』作品情報
作品名 | しあわせのパン |
公開日 | 2012年1月28日 |
上映時間 | 114分 |
監督 | 三島有紀子 |
脚本 | 三島有紀子 |
出演者 | 原田知世 大泉洋 平岡祐太 森カンナ 八木優希 |
音楽 | 安川午朗 |
【ネタバレ】『しあわせのパン』あらすじ・感想
作中で登場する、オリジナル絵本「月とマーニ」
「初恋の相手はマーニだった。」
りえ(原田知世)のひと言から『しあわせのパン』は始まります。
小学生の時にりえが近所の図書館で出会った「月とマーニ」という絵本。
「月とマーニ」の内容
少年マーニは 自転車のかごに月を乗せて
いつも東の空から 西の空へと走っていきます。
ある日 痩せ細った月が言うのです。
「ねえ マーニ 太陽を取って 一緒に お空にいると とってもまぶしくって」
「ダメだよ 太陽を取ったら困っちゃうよ」
「どうして?」
「だって 太陽を取ったら 君がいなくなっちゃうから そしたら 夜に道を歩く人が困っちゃうじゃないか」
「大切なのは“君が照らされていて 君が照らしている”ということなんだよ」
深いブルーの表紙に、品のある月の絵が描かれているこの絵本。
『しあわせのパン』を観た人がこぞってググり「買いたいっ」と欲した絵本なんです。
しかし、これは作中オリジナル作品。
残念なことに絵本としては書籍化されていません。
それだけ『しあわせのパン』における「月とマーニ」のお話は、重要で印象に残るものなのです。
絵がとっても綺麗、そしてストーリーをりえが音読するときのアニメーションも絵本っぽさを残したままで味があります。
りえはマーニのことが大好きで、人生でずっとマーニを探してきました。
彼女は大人になるにつれて「好きじゃないもの」が周りに増殖することに違和感を感じるように…ただ1人の家族である父を亡くしたとき、りえの心は限界値に達してしまいます。
「心がひとりで小さくなって…もうマーニはいないのだと、心に決めた」
彼女は完全にシャットダウンしてしまいました。そんなりえを水縞尚(大泉洋)が北海道の月浦で暮らそうと誘ってくれたのです。
この物語は「人と人」についてがテーマのひとつでもあります。
挽きたてで淹れたての珈琲のように香ばしく、焼きたてのパンのように温かいお話。
この映画はステキな大人のおとぎばなしだという人も。
オトナ心をくすぐって、まぁまぁ楽しく生きるヒントがたくさん散りばめられているんです!
月浦で夫婦が経営する「カフェ・マーニ」
水縞尚とりえが湖のほとりで営む、カフェ・マーニ。
1年ちょっと前、水縞夫婦は月浦にやってきてこのカフェをオープンしました。
りえの淹れるコーヒーと尚の焼きたてパン、季節のお野菜の料理がこのお店の看板商品たち。
近所の常連さんが早朝からもう窓辺に座っています。
この地域に根差した憩いの場。
カフェ・マーニの前には「ツキウラ」というバス停があります。
立地最高!北海道のバスは運行時間がゆったりなのです。
映画のロケ地は洞爺湖。一度は行ってみたい、確実にそう思わせます。
カフェ・マーニ恒例の朝の風景…妻のりえが珈琲豆をミルでカリカリカリっと音をさせながら手挽きして、丁寧に布のフィルターで1杯ずつコーヒーを淹れ、ふんわーり香ばしいアロマがお店いっぱいにたちます。
夫の尚は大きな窯で薪のはぜる音をパチッパチッとさせながら丹精込めたパンを焼きます。
1階はカフェスペースで、2階には遠くからのお客様が泊まれるよう温かいベッドが用意してあります。
春夏秋冬、それぞれの季節に訪れたちょっと訳ありなお客様のお話が描かれていきます。
斎藤香織(森カンナ)の傷心旅行は一番の誕生日に。
夏。ダルそうにピンクのトランクをひきずりやってきた東京のデパートで勤務している斎藤香織(森カンナ)。
彼女にとっては傷心旅行。
本当は沖縄に行くはずだったけれど…彼にドタキャンされ北海道の月浦へ。カフェ・マーニに2泊宿泊。
着いた早々に大きなため息をつく彼女。
そりゃそうですよね、ドタキャンされたんだもの…トランクには日焼け止めや「沖縄恋旅」なんぞと書かれているパンフが。
傷をえぐるような中身。
しかも2日目は香織の誕生日、さんざんなのです。
友達に湖から電話します。
「今ビーチ!やばいよ、日焼けして。もう最っ高だよ。お土産楽しみに待っててね!」
と楽しげに話す香織。
自分で自分を追い込んでしまっていました…。
ところが、水縞夫婦の心ほぐす優しさと、近所の青年・山下時生(平岡祐太)と過ごした時間で、香織は東京で溜めてきた「心のコリ」がとれ、次第に変化していくのです。
彼女の無謀な月浦での「沖縄土産探し」に一生懸命に付き合ってあげる時生の姿や、香織に似合う花を一輪プレゼントする様子に胸キュン。
2日目の夜は、カフェ・マーニによる香織のためのスペシャルバースデーパーティー。
その場でひとつのパンを半分こにして、微笑みながらほおばる水縞夫妻を見て…香織は何かに気づくのです。
香織のお土産は、カフェ・マーニの素朴なパンになりました。
そこには北海道でちんすこうを探していた頑なな彼女はもういなかったのです。
そして「りえさん、私、今までで一番好きな誕生日でした」と、とびきりの笑顔を見せるのでした!
親子の愛、家族を亡くした悲しみ…秋と冬はとびきり切なくほっこりするお話
バス停でひとり佇む不登校気味になった少女・未久(八木優希)。
心配になった水縞夫婦はカフェに招きます。
実は彼女は鍵っ子で、帰宅するといつもひとり、机にぽつんと晩飯代1,000円が置いてあるだけ。
ママが不倫の末に男の人と出て行ってしまったという悲しい家庭事情…パパ(光石研)は多忙なホテル勤務。
未久のパパは寂し気に「ひとりじゃなかったらできますよ。誰かと一緒にならできることってあるんですよ」と、カフェ・マーニに来て水縞夫婦を羨ましそうに見てつぶやくのです。
「ママはもう戻らない…」
父と娘、お互いが孤独と戦っていました。
かぼちゃのポタージュを飲みたいのに飲もうとしない未久。
未久「パパ…未久…パパと一緒に泣きたかった…」
パパ「ああ…」
そう言いながら泣いてしまうパパ。
父を想う娘のいじらしさに泣けて泣けて…月夜に手を繋いで帰る親子が目に焼き付いています。
阿部さんの大きなトランクの中身が大活躍するのです…。
冬になり、雪で閉ざされた月浦に、ある老夫婦(中村嘉葎雄・渡辺美佐子)がやってきます。
2人は人生を終わらせようとしてました。
思い出のプロポーズの地で最期のときを、と。
死まで束の間の休息を得ようと訪れたのがカフェ・マーニでした。
ただならない様子を尚は察知し、りえにも「気をつけて見ていて」と促します。
特に頑ななオーラを放つのは夫・阪本史生で、死への決意は堅そうなのです。
妻・アヤは度々せき込み、苦しそうにしています。
しかし、奇跡の起こるカフェ・マーニで、史生が「死」を思いとどまらせるような変化がアヤに起きるのです。
お豆さんのパンが、2人にまた明日も生きようとする活力を与えます。
「人は乾杯の数だけ幸せになれる」
何か良いことがあったら乾杯して、何か残念なコトがあったら乾杯して。
1日の終わりを誰かと今日も「乾杯」と締めくくれたら、それは幸せだと。
本当によくできたストーリー構成に、じっと食い入るように観てしまいます。
「わけあうたびに わかりあえる 気がする」に通じる。
水縞夫婦は、とにかく可愛いんです。
ひとつ良いことがあると、ひとりひとり持っていた小銭をなんとなく貯めることにしていたり。
夫婦なのに「水縞くんっ」って呼んでいたり。
ちょっと変わっているけど、どこかお茶目で。
自分たちの信じることを心を込めてやっていく、そんな地に足の着いた人間らしい暮らしをしています。
尚が好きだという言葉「カンパニオ」。
直訳すると“共にパンを分け合う人々”、そんな意味なのだそうです。
尚は自分なりの解釈でカンパニオを「仲間」という意味で捉えています。
それが家族の原点だと思っているのだと話す場面があります。
尚はりえを愛しているのが丸わかりです。
でも、尚は「夫婦」ではなく「パートナー(仲間)」として、りえと共に歩んできたということがこの言葉で理解できます。
「ここで無理して笑うことないよ」
「僕の欲しいものはひとつだけですから」
りえに話しかけるとき、彼はいつも優しくいたわりのある言葉を言います。
人間として、この「優しさ」がお互いに持てたなら、どんなにかいいパートナーシップを築けるでしょう。
春、水縞夫婦のもとにやってくることが決定したとびきり素敵なお客様のニュースが!
ラストの終わり方が幸せすぎて最高なんです!
飛び跳ねたくなる最後は必見ですよ。
『しあわせのパン』まとめ
以上、ここまで『しあわせのパン』について紹介させていただきました。
- さすが北海道出身、大泉洋。馴染み方が半端ない、草原とパン焼き釜が世界一似合う男と言っても過言ではない!
- 「自分たちの信じることを心を込めてやっていく、そんな地に足の着いた人間らしい暮らし」を仲間と一緒に、そこに幸せがある。
- 夫婦が経営する「カフェ・マーニ」、1年先に予約が決まった「大切な愛おしいお客様」とは…
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