『半世界』あらすじ・ネタバレ感想!大人が抱える様々な苦悩をリアルに描いた人生劇

出典:シネマトゥデイ

阪本順治さんが監督で、稲垣吾郎さんが主演を務め、脇を固めるのも長谷川博己さん、渋川清彦さんと実力派俳優が揃った映画『半世界』。

40歳を目前にして、それぞれの生き方に悩む大人たちをリアルに描いた作品です。

ポイント
  • 無精ひげを生やし、炭作りに勤しむ男くさい稲垣吾郎さんの姿が新鮮
  • 家族や友情、職場関係など大人なら必ず直面する苦悩に共感する
  • 長谷川博己さんの鬼気迫る演技にも注目
  • 田舎が舞台だからこそ人の生き方が際立ち、感情移入しやすい作品

それではさっそく『半世界』の作品情報・あらすじ・ネタバレ感想を書いていきたいと思います。

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『半世界』作品情報

『半世界』

出典:映画.com

作品名 半世界
公開日 2019年2月15日
上映時間 119分
監督 阪本順治
脚本 阪本順治
出演者 稲垣吾郎
長谷川博己
池脇千鶴
渋川清彦
竹内都子
杉田雷麟
菅原あき
牧口元美
信太昌之
堀部圭亮
小野武彦
石橋蓮司
音楽 安川午朗

【ネタバレ】『半世界』あらすじ・感想


家族に関心がない高村絋(稲垣吾郎)の生き方

父親から製炭業を受け継ぎ、日々ひとりで森から木を伐採して運んでは窯で炭を作り続ける毎日。

手を抜くことなく日々真面目に仕事をする一方で、中学生の息子・明(杉田雷麟)が学校でいじめを受けていることに向き合うこともなく、妻・初乃(池脇千鶴)に教育を任せてしまっていました。

それでいて、自分に強く反抗する明に対する不満を幼なじみの岩井光彦(渋川清彦)に愚痴ります。

光彦には明に関心を持っていないのがバレていると正論を突き付けられて、まさにそうであったことを気付かされるのです。

しかし、いきなり関心を持つよう意識してもそのやり方が分からない。

「靴のかかとを踏むな」など、とてつもなく不器用なやり方で、なんとか明と向き合おうと努力をし始めます。

一方で、突如町に戻ってきた沖山瑛介(長谷川博己)が引きこもっている時には、なんとか家から外に出そうと、暇なら自分の仕事を手伝うように言います。

家族には無関心でも、仲の良い友達にはやたらとお節介を焼くという姿が妙にリアルなのです。

反抗期の息子がいる父親役を、元アイドルである稲垣吾郎さんが自然に演じていることがとても印象的でした。

瑛介(長谷川博己)が町に戻ってきた理由とは…

長谷川博己さんが演じる沖山瑛介は、幼なじみの絋や光彦に連絡もせず、急に町に戻ってきました。

自衛隊員を退役して戻ってきた瑛介は、とても無口で表情も暗く、人との接触を露骨に避けている様子。

それでも絋の仕事を手伝い、酒を飲み交わしていくうちに少しずつ笑顔も見せるようになっていきます。

絋の息子・明にはいじめっ子への反撃の仕方を教えるなど、周囲の人間にも心を開き始めます。

しかし、絋と車に乗っている時に、光彦の実家である中古車屋で、ろくに支払いもせず車を荒らした状態で乗り回した上で返しにやってきた業者と光彦がもめ合いになっている様子を目にして仲裁に入ります。

しかし、悪徳業者だったためさらに暴力をふるいにかかってきます。

そこで瑛介の様子が一変。

我を失った様子で業者を殺してしまいそうなくらいに追い詰めてしまいます。

その後、瑛介は姿を消します。

初めは戻ってくるのを待とうと思っていた絋ですが、ある日瑛介が楽しそうに話をしていた部下・早乙女の実家に心当たりを求めて電話をすると、その部下がすでに亡くなっていたことを知ります。

早乙女は退役後、コンバットストレスに耐え兼ねて海で入水自殺をしていたのです。

瑛介は部下をそこまで追いやってしまったのは自分の責任である、と思いつめていたのでした。

実は瑛介は姿を消したあと、同じ田舎の漁港で働いていました。

きっと、早乙女が亡くなった海にもっとも近い場所だったからでしょう。

突如降りかかる、誰にでも起こり得る出来事

物語終盤、明とも心を通わすことができて、これから絋の生活も色鮮やかになっていくのだろうという時でした。

初乃が作った弁当を食べている最中、絋の体に異変が起きるのです。

苦しそうに胸をおさえ、倒れこむ絋。

製炭作業はひとりで行っていたため、そのまま時間が経ってしまいます。

いつも製炭所に顔を出す先輩に見つけられ、病院に運ばれるもそのまま息を引き取ってしまいました。

葬式では初乃が「私も入る!」と号泣しながら、絋が納められた棺に抱きつきますが、明がそれを止めて蓋を閉める際に「お願いします」と一言伝えます。

その姿からは父と心を通わせたことで、たくましく成長した頼もしさが伝わってきました。

きっと絋亡き後、初乃をしっかり支える存在になっていくのでしょう。

この世の中は、『半世界』 の集合体なのかもしれない

今作のタイトルである『半世界』、一見するとその意味は分からないかもしれません。

劇中でも出てくるわけではありませんが、見ているうちにその意味がなんとなく分かってくる台詞があります。

ひとつはまだ瑛介が戻ってきてすぐ、「お前らは世間しか知らない。世界を知らない。」と言い捨てた言葉。

それに対して、絋が「難しいこと言うなよ。」と返したように、この段階では意図は伝わりません。

しかしそれが、世界を知ってしまったことでストレスを抱えて自殺した部下のことが頭から離れない瑛介の、ぶつける先の見つからない気持ちが漏れた言葉であったことが後に分かります。

そして絋もある時、瑛介に「こっちも世界なんだよ。いろいろあるんだよ。」と言います。

実際に世界を見てきた瑛介にとっては“世間”でも、絋にとってはそれが世界なのだということでしょう。

これは誰にでも当てはまることではないでしょうか。

それぞれが、それぞれの世界で生きている。

それらが集まってより大きな世界を形成しているのだと私は思います。

世界を考えさせる言葉は最後にも出てきます。

それは絋が亡くなったあとのシーン。

瑛介と光彦が子供の頃に、3人で埋めたタイムカプセルを掘り起こしに山に入ります。

そして、中身を確認したあとに光彦がもう一度そのまま埋めることを提案するのですが、その時に「これからも続くんだから」とつぶやきます。

絋が亡くなっても、自分たちの世界は続くという意味でしょう。

40手前、人生の折り返し地点=半分なのです。

人それぞれ半分ずつ違う世界の中で生きています。

そして誰かと会うことで世界がつながり、この大きな世界は作られているのではないでしょうか。

『半世界』

この物語だけで言えば、人生の折り返し地点に立った男たちの世界を描いた物語ですが、年齢や性別を問わず、見る人それぞれに世界があることを認識させる作品です。

『半世界』まとめ

以上、映画『半世界』について感想を述べさせていただきました。

要点まとめ
  • ただ男の生き様を描くだけじゃない、老若男女全ての人が共感できる人生の物語
  • 稲垣吾郎さんのイメージを刷新する役柄
  • 実は物語の主軸にいるのは瑛介(長谷川博己さん)かもしれない

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