映画『ガリーボーイ』あらすじ・ネタバレ感想!ムンバイ最大のスラム街ダラヴィを舞台に描かれるラッパーの夢

映画『ガリーボーイ』あらすじ・ネタバレ感想!

出典:Real Sound

本作『ガリーボーイ』を一言で説明するなら、インド版『8 mile』と言いたい。

ただ、映画『8 mile』を知らない世代もいるようなので、果たしてこの表現が正しいのか甚だ不安です。

映画『8 mile』とは、アメリカのヒップホップ業界の頂点を目指して奮闘する白人ラッパー・エミネムの実話(当時、黒人ばかりの業界に白人が躍進することは珍しく、彼は相当苦労しています)を映像化した作品です。

さて、本作『ガリーボーイ』ですが、物語は先ほど紹介した作品とすごく似ています。

本作はインドのムンバイに暮らす青年がHip-Hop業界でラッパーとして成長する姿を重厚な趣で製作し、実話を基にしている作品です。

ポイント
  • “ガリーボーイ”の“ガリー”とは何を指すのか?
  • ヒンディーのラップは、滅多に耳にすることのない必聴の楽曲
  • 本作は、本来のボリウッド作品と一線を画す作品

それではさっそく映画『ガリーボーイ』をネタバレありでレビューします。

映画『ガリーボーイ』作品情報

作品名 ガリーボーイ
公開日 2019年10月18日
上映時間 154分
監督 ゾーヤ・アクタル
脚本 リーマー・カーグティー
出演者 ランヴィール・シン
アーリアー・バット
シッダーント・チャトゥルヴェーディー
カルキ・ケクラン

映画『ガリーボーイ』あらすじ


大学生のムラド(ランヴィール・シン)は、ムンバイのスラム街に生まれた。

彼は学費を送ってくれる両親に黙って裕福な家の娘と交際し、地元の悪友とつるんでいた。

ある日、大学のキャンパスでフリースタイルのラップパフォーマンスをする学生 MC Sher(シッダーント・チャトゥルヴェーディー)と出会ってラップに魅せられた彼は、フリースタイルのラップ大会での優勝を目指す。

出典:シネマトゥデイ

【ネタバレあり】映画『ガリーボーイ』感想レビュー

貧困社会で苦しむ青年“ガリーボーイ”とは

“ガリーボーイ”とは、一体どんな意味が含まれているのか、この観点から本作について考察していきたいと思います。

日本の寿司屋さんにある生姜の“ガリ”ではありません。

ガリーには“路地裏の”と言う語意があり、本作の主人公ムラドの生活環境を指しています。

現地には行ったことがないので、ムンバイのスラム街ダラヴィの街並みがどのようなものなのか。想像を絶します。

映画を観る限りでは本当に汚く、ごみ溜めのような場所に見えます。

映画『スラムドッグ・ミリオネア』でも、同じスラム街が舞台になっています。

本作『ガリーボーイ』では、貧民街の汚さをしっかり表現しており、『スラムドッグ・ミリオネア』を観てから本作を観れば、ダラヴィという街がどんなに劣悪な環境なのか、本当によく分かります。

そんな掃き溜めのような貧困層の地域に暮らす主人公ムラドが苦渋を味わいながらも、ラッパーへの道を一歩ずつ一歩ずつ進み、現実の厳しさに直面しながらも奮闘する彼の姿に共感を覚えます。

どんな環境下でも、ムラドの姿勢は苦労して才能を伸ばして磨けば花を開かせることができると体現してくれています。

“ガリーボーイ”の出自が路地裏だろうが、下級市民だろうが、そんなことは関係なく成功するには本人の意思と努力で成功できるとムラドの姿を通して教えてくれています。

本作『ガリーボーイ』はインド社会で今まさに社会問題になっているカースト制度や貧困を作品に盛り込みながらも、インディアンラップを全面に打ち出した今までにない珍しい作品です。

本作は、インドにヒップホップがあることを証明したばかりか、劇中歌のクオリティーにも注目です

この映画の予告編を初めて見た時、私自身驚いたことはインドにラップがあることでした。

ヒップホップと言えば、やはり本場アメリカを思い出しますね?

日本にもラップを用いたヒップホップ・グループは多数います。

しかし、インドにラッパーっているのかと疑問に思えるほど、この国でのヒップホップ人口は低いのかもしれません。

ヒンディー語?ベンガル語?テルグ語?タミル語?

一つの国で11言語の会話が使用される中、一体どの言葉でヒップホップが歌われているのか気になるところでもあります。

実際に調べたところ、本作『ガリーボーイ』は全編ヒンディー語で撮影されているようですので、ラップ部分もまたヒンディー語で収録されています。

そんな世界的に見ても定着していないインドのラップが、本作を通して国際的にも知られるようになっている点もまた『ガリーボーイ』の魅力でもあり、見どころのひとつです。

ただ、映画で取り上げられるているこの国の社会的問題はまだまだ根強く、本作に登場する主人公ムラドはラッパーを夢見ながらもつらく苦しい耐え難い日々を送る青年です。

映画の中盤あたりで、ケガをした父親の変わりに仕事を引き受けると言う物語の設定があります。

ムラドはラップの大会に行くために仕事を休みたいと雇用側に直談判します。

けれど、雇い人は「使用人の子供は使用人の子供らしく、身の丈にあったことをしろ」とムラドのことを冷遇しぞんざいに扱っています。

インド人は、社会が抱えるカースト制度の中で押し潰されるか抗うかして、この厳しい世の中を生き抜いていかないといけない今を過ごしています。

平和な日本とは縁遠い貧困と言う現実が、半ば当然のように彼らの生活に悪い影響を与えています。

主人公が差別を受ける場面を観て、今のインドにはカースト制度がまだまだ根強く残り、身分の違いから来る差別が猖獗を極めていると深く実感させられました。

また、青年ムラドの住環境だけでなく、彼の親子関係も折り合いが悪くお互いの価値観のズレからすれ違いばかり。

父親は大学を卒業して就職して欲しいと息子に想いを託しますが、ムラドはラッパーとしての成功を目指します。

インドの劣悪な環境で抵抗しながら自身をラップ業界の高みへと持っていこうとする主人公の奮闘する姿が脳裏に焼き付き、鮮烈な場面として、忘れられません。

もう一点、ムラドの葛藤と平行して本編で流れる音楽にも着目して聞いて欲しいです。

劇中で流れる多くの楽曲の中、もっとも印象的な場面で使用されている曲があります。

曲のタイトル「Mere Gully Mein 俺の路地では」は、主人公ムラドが共同製作者のMCシェールとミュージック・ビデオを製作するシーンで選曲されています。

この場面はインド映画お得意のミュージカル仕様の迫力あるシーンですが、スラム街を舞台にしているせいもあり、豪華絢爛な華やかさはなく、泥臭さと暑苦しさがスクリーンから漂ってきそうです。

主人公ムラドは、差別、貧困、格差など、彼を取り巻く環境を逆手に取って、鬱屈した日々の苦悩をラップのリリックやライムに乗せて、逆境をバネに歌い上げる姿は息を呑むほど説得力があります。

本作『ガリーボーイ』は、作中で使用されている楽曲もセットにして楽しんで欲しい作品です。

ボリウッド、インド映画という枠を越えてきた完成度の高い作品です

観終わって、私の心に残った所感は本作『ガリーボーイ』は従来のインド映画とは一線を画しているという結論に至りました。

一体どういうことかと言うと、インド映画のイメージとは、歌って踊って、衣装がゴージャスで、セットが壮大で作品全体がきらびやかという印象を持っていました。

しかし、本作が漂わせている作品の雰囲気は物語の中盤まで少し暗澹としていて、出口の見えないトンネルを歩いているような感覚です。

ムンバイ最大のスラム街の掃き溜めには、将来の希望も見いだせないムードを漂せている反面、尽力する主人公の姿が輝いて見え、彼の行動に賛同し激励したくなります。

本作には、インド映画では欠かせなかった玲瓏たる歌と躍りの場面は影を潜め、主人公ムラドの苦悩や葛藤、焦燥感と言った人間誰もが持つ感情を全面に押し出したヒューマンドラマとして製作されています。

今までに、こんな作品があっただろうかと思わせるほど、心にズシッと来る内容の濃い作品としても仕上がっています。

過去には『スタンリーのお弁当箱』『めぐり逢わせのお弁当』『マダム・イン・ニューヨーク』など、従来のインド映画のイメージを覆す作品が製作されていますが、本作はこれらの映画の斜め上をいく他に類を見ない作品です。

先に挙げた作品には、ダンスシーンがなくてもカラフルに彩られた場面が多くありますが、この映画『ガリーボーイ』はスラム街で生きる現実という徹底したリアリズムで構築され、全編通してダーク感漂う濃密な映像とシナリオに昇華させています。

同様のヒップホップ映画『パティ・ケイク$』も彷彿とさせ、鬱屈して遣瀨ない毎日をラップのリズムやライムに乗せて紡ぐ主人公ムラドが歌う歌に勇気づけられます。

特に、インドのラップ業界のトップを決めるファイナルステージでのシーンは、つらいスラムでの生活をリリックとライムに乗せて歌を披露する彼の奮闘に感動が押し寄せてきます。

身分差別にも遭い、貧困社会の底辺でもがき苦しみ、“ガリー”と言う“路地裏”から這い出した一人の青年が、ラップ大会で優勝して未来への冀求を掴み取る場面には胸がいっぱいになります。

この物語は、貧民窟に暮らす青年がラップ業界と言う特殊な世界で紆余曲折し、苦慮しながらも大成していくまでを描いたストーリーです。

本作は、ラッパーの夢を追う青年の活躍が物語の軸になっていますが、この話は誰にでも当てはまる私たちのストーリーです。

作品を観ながら、青年ムラドを応援してください。鼓舞してください。

そして、映画を観ているあなた自身に声援を送ってください。

本作『ガリーボーイ』は、私たちみんなの物語です。

映画『ガリーボーイ』まとめ

以上、ここまで映画『ガリーボーイ』についてネタバレありで紹介させていただきました。

要点まとめ
  • “ガリーボーイ”は、インド社会が抱える今の状況のことです
  • 本作で使用されている楽曲のレベルの高さにも注目です
  • 従来のインド映画のイメージを覆してきた本作は、誰にでも起こり得る物語です