2019年2月25日に行われた第91回アカデミー賞作品賞を含む、3部門を受賞した『グリーンブック』。
主演のヴィゴ・モーテンセンは『ロード・オブ・ザ・リング』のアラゴルン役で世界的に人気を得ました。
本作『グリーンブック』は、実話に基づいた人種差別というシリアスなテーマながら笑いもあり、温かく不思議な感覚を味わえます。
- 物語が進むごとに自然と打ち解ける二人の関係性が微笑ましい
- 強く生きつつ悩みを抑えきれなくなったドクター・ドナルド・シャーリー(マハーシャラ・アリ)の表情に心打たれる
- 60年代の匂いをより強くさせてくれる音楽にも注目
それではさっそく『グリーンブック』についてレビューしたいと思います。
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『グリーンブック』作品情報
作品名 | グリーンブック |
公開日 | 2019年3月1日 |
上映時間 | 130分 |
監督 | ピーター・ファレリー |
脚本 | ニック・バレロンガ ブライアン・ヘインズ・クリー ピーター・ファレリー |
出演者 | ヴィゴ・モーテンセン マハーシャラ・アリ リンダ・カーデリーニ ディメター・マリノフ マイク・ハットン イクバル・セバ セバスティアン・マニスカルコ |
音楽 | クリス・バワーズ |
『グリーンブック』主要キャスト
トニー・“リップ”・バレロンガ(ヴィゴ・モーテンセン)
- ニューヨーク州ブロンクス生まれのイタリア系アメリカ人。
- 世界的に有名なニューヨークのナイトクラブ、コパカバーナに12年間用心棒として勤める。
- 有名な黒人のピアニスト、ドン・シャーリーの運転手の仕事を受けるが、黒人の運転手を務めることに抵抗を感じる。
- しかし、有名なピアニストでありながら各地でひどい扱いを受けるドンの姿を見て考えが変わり始める。
ドクター・ドナルド・シャーリー(マハーシャラ・アリ)
- 黒人ピアニスト、作曲家、編曲家。
- 心理学や典礼芸術の博士号を持っており、8か国語を話すこともできる。本物の天才。
- 黒人差別が横行しているなか、不遇な対応をされて悩む。
ドロレス・バレロンガ(リンダ・カーデリーニ)
- トニーの愛妻。トニーと二人の息子を献身的に育てる。
- 気性の荒いトニーが唯一頭が上がらない相手。
【ネタバレ】『グリーンブック』あらすじ・感想
主人公であるトニー(ヴィゴ・モーテンセン)も黒人に対する差別意識が奥底にある
本作『グリーンブック』のもっとも大きな見どころは、黒人に対する差別意識を抱えながらも運転手として共に行動することで、少しずつ変化するトニーの考え方にあります。
主人公であるトニー・“リップ”・バレロンガ(ヴィゴ・モーテンセン)は、ニューヨークのナイトクラブで用心棒を務めていましたが、そのクラブが改装のため閉店するところから物語は動き出します。
大食いに自信があったトニーは、大食い対決の賞金で一時的にお金を得るなどしていましたが、子供もいるため職を探すことになります。
その間に、家の修理に来た黒人作業員に妻のドロレス(リンダ・カーデリーニ)が水を差し出したコップをこっそりとゴミ箱に捨てる描写が描かれているのです。
このことからも、トニーもどこか黒人に対して差別意識があることがうかがい知れます。
そんな彼が紹介を受けた仕事が天才黒人ピアニストの運転手でした。
面接に行くと現れたのがドクター・ドナルド・シャーリー(マハーシャラ・アリ)です。
彼のツアーに帯同するという仕事の話をいざ聞くと、運転だけではなく身の回りの世話係も兼ねているということを伝えられ、「俺は召使いじゃない」と突っぱねてトニー自ら仕事を断ります。
シャーリーは黒人が単独で行動するには危険すぎるため、ナイトクラブで過去何度もトラブルを解消してきた実績を持っているトニーの腕を欲していました。
そのため、ギャラなどトニーが提示した条件を受けることでトニーを運転手として雇うことになるのです。
「グリーンブック」という黒人のために生まれた本が与えるのは安全か?それとも束縛か?
タイトルの『グリーンブック』とは、1936年から1966年までの間に出版されていた、黒人が利用できる宿泊施設などを掲載したガイドブックの名前です。
本作の舞台となっているのは、黒人がバーに行くとそれだけでも暴力を受けることが日常的にあった時代。
その時代において、このグリーンブックは必需品と言えるもので、トニーもこの本を見ながらシャーリーを宿に案内することになります。
しかし、シャーリーもただピアニストとして機械的にツアーのスケジュールをこなしていくわけではありません。
胸の内では当然ながら差別に苦しんでいました。
グリーンブックを無視して自由に行動してみたいという想いはあったのです。
そして夜に一人でバーに行くことで暴力を受けるほか、警察に拘束されてしまうという事態を引き起こすことになります。
同行者としてトニーがその際の対処をすることになるのですが、少しずつシャーリーの苦悩を知ることで彼の想いを尊重するようになり、お互いに信頼し合う関係になっていきます。
人種差別によるシャーリー(マハーシャラ・アリ)の悩みはシャーリーにしか分からないものだった
人種差別と聞くと白人と黒人で分けられ、黒人が蔑視されるという漠然としたものをイメージしますが、シャーリーが抱えている悩みは同じ黒人にも分からないものだったのです。
シャーリーは、小さい頃からピアノに向き合い腕を磨き、いつしかピアニストとして白人の前で娯楽として音楽を届ける存在となっていきました。
それらの会場はもちろん白人だけが入れる場所ばかりで、黒人が入ることは許されません。
しかし、自分だけはピアニストとして演奏をしているわけです。
そんな活動をし続けているうちに、自分が何者なのか分からない悩みに苛まれるようになってしまったのでした。
その想いがあふれ出たシャーリーの言葉が「白人でもない、黒人でもない!」というものでした。
人間として自分がどんな存在なのかを見出すことができない苦悩が、その一言で伝わってきます。
この一言があることで、本作をただ人種差別だけにフィーチャーした映画としてではなく、一人の男性が生涯の親友と出会うことでずっと抱えていた苦悩を乗り越える人生ドラマとして観客は見守るようなスタンスに変わるのです。
二人が打ち解け、共に歩み始めた辺りからの温かさが抜群に心地良い
始めは黒人に対して差別意識の強かったトニーですが、一緒に時間を過ごすうちにその差別意識がなくなるどころか、それまでの自分のように黒人差別をする人間に対する怒りを露わにします。
その想いが顕著に表れたのが、クリスマスイブの日にシャーリーが演奏を依頼されたレストランでの出来事でした。
演奏前に食事をすることにした二人とバンドメンバー。
先にバンドメンバーとトニーはレストランに入っていたのですが、後から入ってきたシャーリーは入口で止められたまま入ることができません。
その様子を席から見ていたトニーが間に入るのですが、それでも入ることは許されませんでした。
さらに、シャーリーの楽屋として用意された物置に食事を運ぶからそこで食べるよう提案されます。
その扱いに我慢できなくなったトニーはレストランの責任者の胸ぐらにつかみかかるのです。
結果、レストランに入れないのであれば演奏をすることを拒否するというトニーの脅しにも近い言葉にシャーリーも乗っかり、レストランを後にします。
その後、2人が訪れたのは町中で見つけた黒人が集まるバー。
その中にあるステージでシャーリーはピアノを弾くのですが、今まで演奏してきたクラシックのアレンジとは全く違い、その場でバンドとセッションをしながら弾くスタイルの自由さに、自分の居場所を見つけたかのような楽しそうな表情を見せます。
その様子をトニーはカウンターで見守っていました。
人種差別というものは消えなくても、その中で自分らしい生き方を見つけることができるという希望を感じられるシーンです。
その後、クリスマスイブの夜までに帰宅するという当初の契約通り、トニーは親戚が集まってパーティーを行っている家に帰ります。
シャーリーはトニーを見送った後、自分の家であるカーネギーホールの上階に戻るのですが、シャーリーには家族がいないため孤独のクリスマスを迎えるのかのようなシーンになりますが、その後トニーの家に戻るのです。
トニーの親戚は黒人差別意識の強い人たちだったため、一瞬戸惑いを見せますが、トニーの親友であることを受け入れて温かく迎え入れるのです。
それまで自分が何者か見出すことができない、という大きな苦しみを抱えていたシャーリーに、新しい家族ができたという喜びに観客は包まれてこの作品の幕は閉じます。
『グリーンブック』まとめ
\今、観たい映画No.1/
👑アカデミー賞 👑
作品賞・脚本賞・助演男優賞受賞🏆がさつな用心棒(#ヴィゴ・モーテンセン)
✖️
天才ピアニスト(#マハーシャラ・アリ)#トニーとドン 2人の最強の出会いが奇跡の実話に✨#グリーンブック 大ヒット公開中🚙🎶https://t.co/EaW5xz5GbJ pic.twitter.com/F4gBkkNa5g— 映画『グリーンブック』公式 (@greenbook_jp) 2019年3月1日
本作はただ人種差別をテーマにした作品ではなく、「グリーンブック」という黒人専用のガイドブックの堅苦しさや、シャーリーの立場だからこそ感じる自分の存在価値への疑問など、様々な背景に胸を打たれる映画でした。
ノンフィクションという点も、より映画への感情移入をさせるポイントだと思います。
- 人種差別問題の根強さを、暗すぎない内容で知ることができる。
- たまに出てくるジョークやユーモアには心から笑える楽しく明るい作品。
- カデミー賞5部門ノミネート中3部門受賞も納得の満足度が最後に待っている。
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