映画『ばあばは、だいじょうぶ』は認知症をテーマにした作品で、ミラノ国際映画祭2018で非常に高い評価を受けたことが話題になった作品です。
原作は10万部を超えるベストセラーとなった児童向け絵本で、小学生の読書感想文の課題図書にも選ばれるなど、教材としての評価も高いようです。
また、同映画祭において史上最年少で最優秀主演男優賞を受賞した人気子役・寺田心くんの演技は一見の価値ありです。
- W主演を務めたスズエ役の富士眞奈美と翼役の寺田心の演技は圧巻
- ジャッキー・ウー監督による密かに忍び寄る認知症の魔の手を表現する演出が秀逸
- 認知症の恐ろしさと、その家族の苦難や葛藤が非常にリアル
少子高齢化が進み、認知症が身近になりつつある今だからこそ、学ぶことの多い映画であると思います。
目次
『ばあばは、だいじょうぶ』作品情報
作品名 | ばあばは、だいじょうぶ |
公開日 | 2019年5月10日 |
上映時間 | 98分 |
監督 | ジャッキー・ウー |
脚本 | 仁瀬由深 |
原作 | 楠章子 |
出演者 | 冨士眞奈美 寺田心 平泉成 内田裕也 松田陽子 土屋貴子 |
音楽 | 田中和音 |
『ばあばは、だいじょうぶ』あらすじ
両親、喜寿を迎えたばあば(冨士眞奈美)と暮らす小学生の翼(寺田心)は、どんなときも優しく励ましてくれるばあばが大好きだった。
そんなばあばが“わすれてしまう病気”になり、同じ質問を何度もしたり、得意だった編み物もできなくなったりする。
戸惑う翼が距離を置き始めたある日、ばあばは靴も履かずに家を出ていってしまう。
出典:シネマトゥデイ
『ばあばは、だいじょうぶ』みどころ
楠章子の絵本を原作とした、認知症を患った祖母を孫の視点から描いた人間ドラマ。
ミラノ国際映画祭2018の外国語映画部門で最優秀主演男優賞と最優秀監督賞を獲得した。
メガホンを取ったのは『キセキの葉書』などのジャッキー・ウー。
祖母をドラマ「やすらぎの郷」などの冨士眞奈美、孫を『パパはわるものチャンピオン』などの寺田心が演じる。
出典:シネマトゥデイ
『ばあばは、だいじょうぶ』を視聴できる動画配信サービス
『ばあばは、だいじょうぶ』は、下記のアイコンが有効になっているビデオ・オン・デマンドにて動画視聴することができます。
なお、各ビデオ・オン・デマンドには無料期間があります。
- 動画の配信情報は2019年5月24日時点のモノです。
- 動画配信ラインナップは変更される可能性もありますので、登録前に各サービスの公式ページにて必ずご確認ください。
ご覧のとおり、2019年5月24日現在はどこのビデオ・オン・デマンドでも配信開始となっておりません。
動画配信が開始になり次第、追って情報を掲載させていただきます。
【ネタバレ】『ばあばは、だいじょうぶ』感想レビュー
天才子役・寺田心の感情が込められた魂の演技は圧巻
2019年で、早くも芸能生活8年目を迎えた天才子役・寺田心ですが、その演技力や表現力も年を追うごとに磨きがかかってきています。
また、今作で彼が演じた役は、典型的なおばあちゃん大好きっ子です。
普段は「ぶりっこ」や「あざとい」という印象を持たれがちな心くんにとっては、いい意味で非常にマッチした配役だったと感じました。
こういう役をやらせたら右に出る子役はいないと思います。
そして心くんの凄さを語るうえで、外せないのが「泣く演技」の上手さです。
他の演技能力もかなりレベルが高いですが、その中でも涙を流す技術に関しては頭ひとつ抜けていると思います。
『ばあばは、だいじょうぶ』においても、各所でその高い技術を垣間見ることができました。
特に印象に残っているのが、認知症を発症し裸足のまま深夜徘徊をする祖母・スズエを探しに、心くん演じる翼が涙を流しながら街を駆け回るシーンです。
胸に祖母の履物を抱え、必死に街を探し回る姿には涙を誘われました。
ミラノ国際映画祭2018の最優秀主演男優賞受賞は、ぴったりハマった配役と、高い技術力に裏打ちされています。
演じ分けが見事!認知症にかかる祖母を演じた富士眞奈美の演技も鳥肌モノ
認知症患者を演じることは、私たちが想像する以上に難しいことだと思います。
やはり、このような病は「なってみなければわからないもの」に分類されますし、リアルに演技するにはそれなりの覚悟も必要になってくると思うのです。
私自身、視聴前に一番不安だったのが、認知症の祖母役を務める富士眞奈美さんの演技でした。
しかし、いざ蓋を開けてみると、見事に認知症患者を演じる彼女の姿を目の当たりにすることになり、衝撃を受けました。
あまりにリアルすぎて「本当に認知症にかかってしまったのではないか」と怖くなってしまうくらいでした…。
富士眞奈美さんの危うさや、儚さが満ち溢れる演技は本当に見事だったと思います。
また、彼女の本当に凄かった点は、正常な状態と認知症の状態の巧みな演じ分けです。
物語序盤の優しいおばあちゃんが、完全な認知症患者になってしまう終盤に至るまでを非常に細かく、そして段階的に演じ分けていました。
特に中盤の正常か認知症発症なのか分からないグレーゾーンの演技は、観ていて鳥肌が立つほど不気味で印象深いです。
富士眞奈美さんの迫真の演技は必見です。
ジャッキー・ウー監督の構成や演出の素晴らしさ
実は上述したミラノ国際映画2018にて、最優秀監督賞を受賞したのが『ばあばは、だいじょうぶ』でメガホンを取ったジャッキー・ウー監督なのです。
そんな彼の素晴らしかった点を私なりに分析してみました。
ひとつ目は映画のストーリー構成の上手さです。
『ばあばは、だいじょうぶ』の原作となった絵本は、わずか37ページ。映画の上映時間は98分あります。
普通の監督なら原作に様々な設定や展開を上乗せしなければ、98分を持たせることは難しいと思います。
しかしジャッキー監督のストーリー構成は、原作にほとんど無駄なものが足されていないのです。
あくまで原作の設定を丁寧に補足する形で描かれているので、原作の魅力がより一層増していた印象を受けました。
無駄な部分がほとんどないので物語がスムーズに展開し、観ていて退屈な時間が全くなかった点も好印象です。
ふたつ目は、認知症の表現が巧みだった点です。
今作で一番のこだわりを感じたのは、認知症の進行を段階的に見せていく演出です。
最初は些細な違和感から始まり、徐々に歯車が狂っていき、最後には取り返しがつかなくなるという一連の流れにとてもリアリティがあってゾっとしました。
私たちの日常にも認知症の魔の手が忍び寄っているかもしれないと思わせる演出だったと思います。
注意喚起の観点から見ても、素晴らしい演出であることは間違いないです。
洗練されたストーリー構成と巧みな演出で、作品を彩ったジャッキー監督に心からの賛辞を送りたいです。
『ばあばは、だいじょうぶ』まとめ
🌟舞台挨拶🌟
イオンシネマ港北ニュータウン
5/11(土)14:00回終了後
登壇者(予定):#冨士眞奈美 さん、#寺田心 さん、#ジャッキー・ウー 監督ある日、ばあばは、靴も履かないで家を出たきり、いなくなってしまった。 「ばあば、どこへ行ってしまったの?」
やがて、翼は、ばあばの秘密を知る…👣 pic.twitter.com/X5le2LlN2M
— 全国公開中!映画『ばあばは、だいじょうぶ』 (@Grandma_is_Okay) 2019年5月8日
以上、ここまで『ばあばは、だいじょうぶ』を紹介させていただきました。
- 寺田心の天才的な泣き演技
- 富士眞奈美の圧巻の演技
- 監督の巧みな演出
- 認知症の恐ろしさ