『ゴーストランドの惨劇』あらすじ・感想!鬼才パスカル・ロジェが送る狂気と感動に満ちた田舎ホラー

映画『ゴーストランドの惨劇』あらすじ・ネタバレ感想!

出典:『ゴーストランドの惨劇』公式ページ

人形だらけの不気味な家に引っ越してきた一家が、突然異様な闖入者ちんにゅうしゃたちに襲われてしまい…。

そこから16年、トラウマを抱えながらホラー作家として成功した次女が、あの家にまだ暮らす家族の元に戻ってきてみると…?

ポイント
  • 恐ろしすぎる闖入者たちとバイオレンス描写
  • 溢れるホラー愛
  • 現実と虚構を通して成長する少女の感動の物語

それではさっそく映画『ゴーストランドの惨劇』をレビューしたいと思います。

『ゴーストランドの惨劇』作品情報

映画『ゴーストランドの惨劇』作品情報

出典:映画.com

作品名 ゴーストランドの惨劇
公開日 2019年8月9日
上映時間 91分
監督 パスカル・ロジェ
脚本 パスカル・ロジェ
出演者 クリスタル・リード
アナスタシア・フィリップス
エミリア・ジョーンズ
テイラー・ヒックソン
音楽 トッド・ブライアントン

『ゴーストランドの惨劇』あらすじ


双子で気ままな姉のヴェラと内気な妹のベスを育ててきたシングルマザーのポリーンは、片田舎にある叔母の家を相続し、娘たちを連れて引っ越す。

だが、新居に到着して早々2人組の暴漢が家に侵入し、ポリーンは娘を守ろうと必死に抵抗する。

その出来事から16年後、ベスは小説家として成功したが、ヴェラは心を病んでいた。
出典:シネマトゥデイ

『ゴーストランドの惨劇』みどころ

映画『ゴーストランドの惨劇』みどころ

『マーターズ』などのパスカル・ロジェが監督と脚本を担当した衝撃のホラー。

双子の姉妹を襲う悪夢のような出来事を描く。

ドラマシリーズ「ティーン・ウルフ」などのクリスタル・リード、ドラマなどに出演してきたアナスタシア・フィリップス、『ブリムストーン』などのエミリア・ジョーンズらがキャストに名を連ねた。
出典:シネマトゥデイ

『ゴーストランドの惨劇』を視聴できる動画配信サービス

『ゴーストランドの惨劇』は、下記のアイコンが有効になっているビデオ・オン・デマンドにて動画視聴することができます。

なお、各ビデオ・オン・デマンドには無料期間があります。

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注意点
  • 動画の配信情報は2019年9月12日時点のモノです。
  • 動画配信ラインナップは変更される可能性もありますので、登録前に各サービスの公式ページにて必ずご確認ください。

ご覧のとおり、2019年9月12日現在はどこのビデオ・オン・デマンドでも配信開始となっておりません。

動画配信が開始になり次第、追って情報を掲載させていただきます。

『ゴーストランドの惨劇』感想レビュー【ネタバレなし】

恐怖の屋敷と闖入者たち

シングルマザーの母に連れられてフランスからアメリカのド田舎の家にやってきた双子の姉妹ヴェラとヴェス。

叔母が長年そこで住んでいて、亡くなって空き家になったので困窮する母子家庭の彼女らはド田舎でも仕方なく越してきたのでした。

ヴェスは美少女ですが根暗でホラー小説を愛し、自分でも執筆をしている文学少女です。

一方のヴェラはスマホ中毒で、明け透けで今どきの女の子で双子でも性格は正反対でした。

そんな引っ越し初日、引っ越し先に向かう道中で一家の車の横を不気味なアイスクリーム屋のトラックが通り過ぎます。

そんなことを気味悪がっている間もなく、到着した家で待っているのはおびただしい数の人形の数々。どれも経年劣化していておぞましい見た目をしています。

こんなところで暮らすなんて…とヴェラは不満げですが、ヴェスは少し気に入っている様子でした。

荷ほどきをしている最中、突然ヴェスの股間から血が出てきます。

高校生くらいの見た目の彼女ですが、今さら初潮を迎えたのです。ここら辺はちょっと『キャリー』を連想しますね。

まだだったのかと馬鹿にするヴェラを母親は叱り、その後、外でふてくされていた彼女に妹を支えてあげてと優しく言いました。

そんなことをしていた時、家に突然2メートル近いスキンヘッドの巨漢と、魔女のような見た目をした中年女が家に入り込んできます。

巨漢は母親をまず叩きのめすとヴェラを家の地下室に連れ込んでしまいます。

ヴェスはそれを止めようとするもどうしようもなく、後ろからは魔女が迫ってきていました。

と、そこに決死の覚悟で母親が突っ込んできて魔女を刺殺、地下室でヴェラに何かをしようとしている巨漢も殺害しました。

ヴェスはそこで目を覚まします。彼女は16年前に家族に起きた惨劇の夜の夢を見ていたのです。

ヴェスは夢を叶えてホラー小説家になり、ベストセラーを連発していました。

優しい夫と可愛い息子と幸せな家庭も築いています。

しかし、あの惨劇の夜に心に大きな傷を負ったヴェラと、その面倒を見ている母親は未だにあの不気味な家に住んでいました。

ヴェスはそのことを気にかけ、自分だけ幸せになっていることに罪悪感を覚えていました。

そんな中、半狂乱になったヴェラから電話がかかってきます。

「助けて!」そう叫ぶ彼女の声を聞いたヴェスは、たまらずにあの家に戻るのでした。

母は相変わらずの様子でヴェスを迎えてくれますが、ヴェラはやつれた酷い姿になっており、地下室にこもって奇声を上げたり、暴れたり手が付けられません。何かに怯えているようです。

そして、ヴェスもヴェラと対話しているうちにある真実に気づき、恐怖のどん底に突き落とされます…。

ホラーオマージュとバイオレンス描写が尋常ではない

冒頭、ホラー小説好きのヴェスがもっとも信奉するホラー作家H.P・ラブクラフトの肖像画がどアップで映ります。

クトゥルフ神話の原型を作った人物で「狂気の山脈にて」や「インスマウスの影」などの、外宇宙からやってきた古来よりの邪神や先住人類の痕跡をたどる人間が巻き込まれる恐怖などを描いたSFホラー作家です。

生きている間は本は一冊しか出版されず、死後に評価を受けてスティーヴン・キングやダン・オバノン、H.R.ギーガーなど様々なクリエイターに影響を与えました。

ここで彼に関する引用があるのは、ホラーを愛するヴェスの信奉心を描くためです。

実際の本作のストーリーはサイコホラー異常者に襲われるサイコホラーであり、ラブクラフト的なものではないのですが、その中に監督が敬愛、信奉するホラー映画たちへのオマージュが詰め込まれているのは、ヴェスのラブクラフトへの想いと重なります。

要するに、パスカル・ロジェ監督はヴェスに自己投影しているわけですね。

本作の不気味な田舎の家描写は、どうしても『悪魔のいけにえ』を連想しますし、人形の描写は『サスペリア2』、恐ろしい闖入者たちは『サプライズ』や『ファニーゲーム』、そして所々で『シャイニング』を思わせる演出も出てきます。ホラー愛が炸裂してます。

そして、さすがマーターズの監督だけあって暴力描写は容赦ありません。

可愛い美少女も容赦なくボコボコにされ、超痛そうです。

しかし、屋敷のドアや狭い廊下や室内の暗さを使って、決定的な残酷シーンはなるべく露悪的に映さないようにしているのもわかります。

意外と常識人ですね、ロジェ監督(笑)でも音だけで十分に嫌なんですけどね。

一方で、この映画が偉いのは、ホラー的なストーリーを通して少女の成長や人が生きていくために必要なものを描いているところです。

主人公ヴェスは現実世界よりも、もう死んでしまった過去の作家の世界に耽溺しています。

そして彼女は怖がりで苦手なものが多いゆえに、ホラー小説を書いてそれをセラピーにしているように見て取れます。

ちなみにラブクラフトの作品には巨大なタコのような怪物がたくさん出てきますが、それも彼がタコや魚介類が苦手だったからだそうです。

ヴェスが現実から空想に逃げ込んでいるのに対し、ヴェラは現実主義的でサバサバしており、即物的な物の見方しかできていません。

この対照的な双子の描かれ方、そして強く優しい母親の存在が物語のテーマを表しています。

空想と現実主義で過酷な障壁を乗り越える

ヴェスは序盤でいきなり初潮を迎えます。彼女は大人になったのです。

そこから時を置かずして、家にモンスターのような犯罪者たちがやってきます。

彼らの動機は分かりません。そいつらの動機などどうでもいいのです。

この犯人たちは大人になった途端にやってくる様々な生きる上での障壁や理不尽の象徴のようなものです。

みなさんにも社会に出た途端「生活するだけでこんなきついのか」と思った記憶はあるかと思います。

そんなつらい現実に立ち向かうために、ヴェスのような空想をして逃避するのはある種の対処療法として効果的です。

自分を守ることに繋がります。しかし、それは一時的なものです。

あくまでも最終的には現実を見つめて立ち向かわなければなりません。

この主人公の双子は、人間が生きていくために必要な象徴のようなものです。

そしてヴェスにとって過去の存在でしかなかったラブクラフトが、彼女が目指すべき未来に変わる場面もあり、夢が目標に変わって障壁を乗り越える原動力に変わっていく様は感動的です。

本編を見ないと何のことかわからないと思いますが、中盤であるどんでん返しはこのような空想力で自分を守りつつ現実に立ち向かうというテーマを象徴しているものです。

詳しく言えないのがもどかしいですが、しっかり恐いホラーでありながら、最後は感動が待ち受けているのは保証します。

『ゴーストランドの惨劇』まとめ

以上、ここまで映画『ゴーストランドの惨劇』について紹介させていただきました。

要点まとめ
  • 恐ろしすぎる屋敷と闖入者たちにガクブル
  • 痛みの伝わる暴力描写
  • ホラーだけど現実に立ち向かうすべを教えてくれる感動的で教育的な映画。いずれお子さんにも見せましょう。