2022/2/4(金)から公開される映画『ギャング・オブ・アメリカ』の見どころをネタバレなしでご紹介!
伝説のギャング、マイヤー・ランスキーの晩年を『アイリッシュマン』にも出演したハーヴェイ・カイテルが演じ、ランスキーを取材する作家・ストーンを『アバター』のサム・ワーシントンが演じます。
自身を“ビジネスマン”と呼ぶランスキーですが、その一方で「マーダー・インク」と呼ばれる犯罪集団の設立に関わった恐ろしい一面も持つ人物として知られています。本作はギャングとして多く逸話を残してきた、ランスキーの栄光と喪失を描いた伝記映画です。
・伝説のギャングから学ぶ人生の教訓
・堅気がギャングの世界に惹かれる理由とは?
それでは『ギャング・オブ・アメリカ』をネタバレなしでレビューします。
目次
『ギャング・オブ・アメリカ』あらすじ【ネタバレなし】
伝説のギャング、マイヤー・ランスキーを取材する
1981年、マイアミ。落ちぶれた作家のストーン(サム・ワーシントン)は、妻から愛想をつかされながらも、大きな仕事をつかもうと必死だった。そんな最中、多くの偉業を成し遂げながら、巨大な犯罪組織を率いたことでも恐れられているギャング、マイヤー・ランスキーの取材をする機会を得る。
晩年のランスキー(ハーヴェイ・カイテル)とカフェで待ち合わせたストーンだが、ランスキーは自伝の執筆をする際に「原稿は自分が許可するまで世に出すな」「他所で私の噂を聞いたらすべて報告すること」と条件を突きつける。そして「裏切ればただでは済まない」と、ストーンを静かに脅す。しかしその後のランスキーは穏やかにストーンのインタビューに答えていく。しかしランスキーは既にストーンの身辺を調査しており、隙のない立ち振る舞いを見せていた。
支配こそ成功の秘訣
幼少期をロシアで過ごしたランスキーは、おじが丸腰にもかかわらず兵士に殺害されたことで、力と支配こそが重要だと考えるようになる。1912年、数字に関心を持ったランスキーはNYへ越すと10歳にして賭場の世界に引き込まれていく。
あるとき、自分と同じよそ者が賭場でイカサマをし、ゲームを支配していることに気づいたランスキーは、ゲームを“する側”から“支配する側”を目指すようになる。その気持ちは、ランスキーの父が真面目ゆえに人生を楽しむことができなかった背景も影響していた。
その日のインタビューを終えたストーンは、ランスキーの過去に呼応するかのように、モーテルに宿泊している若い女性・モーリーンと親しくなっていく。
相棒・バグジーとの出会い
1918年になると、ランスキーはギャング団を結成。数字に強いランスキーは、殺しも喜んで引き受ける男“バグジー”ことベン・シーゲルと手を組む。2人の勢力は大きくなり、やがて運び屋を探す大物ギャング、ラッキー・ルチアーノとの仕事も実現する。
やがてランスキーはアンという女性と酒場で知り合い、2人は結ばれる。しかし生まれた息子は障害を持ち、2度と歩けないと宣告された。力と支配こそが人生だと信じるランスキーは、息子のハンデにショックを隠せなかった。それでもランスキーは自らの事業に力を尽くし、息子たちを見放すことはしなかった。
ストーンはモーテルに戻ると、ついにモーリーンと一夜を共にしてしまう。まるでランスキーの生き様に影響されるかのように、冴えない人生と決別する振る舞いを見せるストーンだが、ある問題が生じてしまう。
「マーダー・インク」設立とアンとの不仲
1937年、ユダヤ人であるランスキーはナチスの組織を成敗するために、彼らの集会にユダヤ系ギャングを大勢送り込むと、暴動に発展する。
ランスキーは「自分がいる限り、二度とユダヤ人を迫害させない」と強い意志を示していた。
そして、どんな残虐な殺しもいとわない殺人株式会社 「マーダー・インク」の設立に深く関与するようになる。
ランスキーたちのビジネスの邪魔をする者は次々と「マーダー・インク」によって粛清されていった。ついにはドイツという共通の敵を葬るため、ランスキーは政府と手を組むことさえあった。
ところが「マーダー・インク」の登場以降、ランスキーと妻・アンとの関係が悪化してしまい、偉業を成し遂げ続けていたランスキーに悲しい運命がやってくる。
一方で、インタビューを続けるストーンの様子は、常にFBIに監視・盗聴されていた。
FBIはランスキーが隠しているとされる3億ドルにもなる資産の行方を追っていたのだ。FBIはストーンに接触すると、情報をくれた見返りに報酬金を出すと条件を持ち出してくる。果たしてストーンはランスキーを売るのか、それとも…。
『ギャング・オブ・アメリカ』感想
見る前に知っておくと良い用語を簡単に説明!
映画『ギャング・オブ・アメリカ』はマイヤー・ランスキーの伝記映画であり、実名の組織や人物名も多数登場します。そこで、知っていればより映画を理解できる用語を簡単に解説してみました!作品の鑑賞前に読んでおけば、より内容に入り込めるかもしれません。
ラッキー・ルチアーノ
イタリア系犯罪組織「コーサ・ノストラ」の最高幹部・組織改革者。犯罪シンジケートの立案者でもあります。
“組織改革者”と呼ばれるだけあり、マフィアならではの古いしきたりにとらわれず、人種にこだわらない合理的なビジネスで勢力を拡大していきました。
ランスキーとは重要なパートナー関係として知られており、映画の中でも、まだランスキーが若い頃からルチアーノと積極的に仕事をしています。
マーダー・インク
ギャング・マフィアによる縄張り争いを抑制するため、殺人を規律化するために立ち上げられた組織。
別名「殺人株式会社」とも呼ばれるこの組織では、主にギャングたちのビジネスのために運用され、私欲のためではなく反逆者たちを粛正することがメインでした。その手口は残忍で、作中でも屈指のバイオレンス描写でその脅威が描かれています。
謎の3億資産
作中でFBIが突き止めようとしているランスキーの隠し資産。
インタビューを受けている頃のランスキーはマイアミで隠居生活をしていますが、FBIは彼を監視・盗聴してまで隠し資産の在処を暴こうとしています。
しかしその実態も確実ではなく、3億資産はスイスの銀行口座などに隠されているなど、様々な憶測が飛び交いました。現在もランスキーの資産の所在は明らかとなっていません。
暴力描写が無ければ若者向けの教材でもいける映画
ギャング映画と言えばバイオレンス描写や組織内で起きる裏切り・下剋上などが見どころですが、晩年のランスキーを演じるハーヴェイ・カイテルはギャングならではの威圧感があまりなく、身なりの良い高齢者にしか見えません。(しかしストーンの身辺調査を行なっていたり、カフェで入り口に背を向けて座らないなど、いくつものを死線をくぐってきたオーラは感じられます)
そんな彼から語られるのは、生涯に渡って学んだ人生の教訓です。生きる上で何が本当に大切なのかをハーヴェイ・カイテルの重厚な演技で教えてくれる作品です。(実際、作中では「金を失っても何ともないが、健康を失えば厄介だ」とストーンに話すシーンがあります)
ランスキーが闇社会で圧倒的な成功を収めながらも、本当に大切なものを次々に失っていく過程はどこか切なくすら感じられます。さながら「しくじり先生」のような内容になっており、暴力描写さえなければ中高生向けの教材にしてもいいくらいの教えが詰まっていました。
本作は血沸き肉躍るようなギャング・アクション映画というより、栄光と喪失を経験したランスキーだからこその、説得力ある“人生の教訓作品”といえるでしょう。
人はなぜギャングの世界に惹かれるのか?
ランスキーの取材をしているストーンですが、次第に彼の生き方に触発されるそぶりを見せていきます。
妻との関係が上手くいっていないストーンは、ランスキーが「人生の選択では迷わないことだ」と言うと、妻がいながらモーテルで知り合った女性と“迷わず”一夜を共にします。
そこで気になるのは、なぜストーンをはじめ、我々のような堅気の人間は闇社会に興味を持つのでしょうか?
ランスキーは自らのことを「ギャング」ではなく「ビジネスマン」と呼んでおり、腕っぷしよりも数字に強い人物でした。
それゆえ法に触れる行為を除けば、成功に対する姿勢や野心は起業家とあまり変わりません。彼がギャングの世界に身を投じたのは、ユダヤ人としての出自や、幼い頃から力がものを言う世界を目の当たりにした背景があったためでしょう。
だからこそ、私たちは「生きるか死ぬか」の世界で培われたランスキーたちのビジネススキルや、人生における価値観に強く惹かれるのかもしれません。彼らのビジネスや人生の考え方は実生活に反映できる点も多くあり、そうしたビジネス書も存在しています。
『ギャング・オブ・アメリカ』は並みの人間ではたどり着けないランスキーの商才や価値観にも惹かれる作品でした。
『ギャング・オブ・アメリカ』あらすじ・感想まとめ
・私たちがギャングの世界に惹かれる理由が再確認できる作風
・ランスキーから学ぶ人生の教科書のような映画
以上、ここまで『ギャング・オブ・アメリカ』をレビューしてきました。
ヤマダマイ