犯罪を意図した行為でも、その実現が不可能であれば罪に問われない。
これを“不能犯”といいます。
主人公は視線一つですべての人間を死に導く男。
あなたの心が支配される、スリラー・エンターテイメント!
- 逮捕できない殺人犯VS希望を捨てない刑事。最後に笑うのはどっちだ?!
- 次から次へと起きる事件に気付けば心が支配されている感覚に陥る…かもしれない
- ヒリヒリする作品が好きな人には絶対おすすめ!!
それでは『不能犯』をネタバレありでレビューしていきます。
目次
『不能犯』作品情報
作品名 | 不能犯 |
公開日 | 2018年2月1日 |
上映時間 | 106分 |
監督 | 白石晃士 |
脚本 | 山岡潤平 白石晃士 |
出演者 | 松坂桃李 沢尻エリカ 新田真剣佑 間宮祥太朗 テット・ワダ 菅谷哲也 岡崎紗絵 真野恵里菜 忍成修吾 水上剣星 水上京香 今野浩喜 堀田茜 芦名星 矢田亜希子 安田顕 小林稔侍 |
音楽 | 富貴晴美 |
【ネタバレ】『不能犯』あらすじ
殺しの依頼を引き受けるという“電話ボックスの男”
殺したい人がいるなら、どこかの公園にある電話ボックスの下に連絡先を貼れば“電話ボックスの男”が殺してくれる。
そんな都市伝説のようなものがありました。
高円寺のアパートで起きた殺人事件の容疑者宅を訪れたのは、杉並北警察署の多田友子(沢尻エリカ)。
朗らかな声で「すみませーん!」と呼びかける声にうっかりドアを開けてしまった容疑者は多田が警察官だとわかった瞬間に逃亡を図りました。
多田は新人の相棒、百々瀬麻雄(新田真剣佑)とともに正義の名のもとに容疑者を捕獲、公務執行妨害で鮮やかに逮捕するのでした。
その頃、連続変死事件が話題となっていました。
多田と百々瀬が向かった現場の飲食店で倒れていた被害者は木島功(水上剣星)。
防犯カメラに映っていたのは、黒いスーツの男に水をかけられたあと突然苦しみだした様子でした。
水に毒物が入れられていたのではないかと疑うも、検死の結果木島がかけられたのはただのガムシロップを入れた水。
毒物は検出されず、結果として人が死んではいるものの、ただのガムシロップ入りの水で殺人が行えるはずはないため黒いスーツの男は“不能犯”とされました。
百々瀬は大学で心理学を学んでいたこともあり、事件はプラシーボ効果によるものではないかと言い出しました。
つまり思い込み、一種の洗脳。
ただもしそうであっても立証が難しいというところで足踏みしてしまいます。
謎が解けないまま起きてしまう次の事件
連続変死事件について特に進展のないまま次の事件が起こります。
ある夫婦と男性1人、女性2人が一つの部屋で殺し合ったような事件現場。
また、その家の近くにある公園では夫婦の隣人が不審死を遂げていました。
夫婦は羽根田健(忍成修吾)と妻の桃香(水上京香)、隣人は島森広志(小林稔侍)。
公園での島森の不審死は、健が電話ボックスの男に島森を殺してほしいと依頼した結果です。
健が殺人依頼をした理由は、かつて桃香が窓を開けてうたた寝をしているところに島森が侵入し強姦したからでした。
依頼を遂行した男は、健に「今日はこれから出張だそうですが、危険人物から解放された喜ばしい日なのだから仕事を忘れて家に帰ったらどうですか」と言いました。
言われた通りに仕事を放棄した健が家につくと、リビングには下着姿の女性が2人寝転がっていました。
テーブルには薬物や注射器が散乱していて、奥のソファには見知らぬ男と桃香がだらりと座っていました。
桃香はクラブで知り合ったという人たちと、健の出張中に薬物を楽しもうとしていたのです。
隣人の島森に強姦されたというのも嘘で、注射器を捨てるところを見られて問い詰められ、咎められたというのが真相でした。
健は桃香のために電話ボックスの男に頼ってまで島森を殺したというのに、目の前の光景と真相に自暴自棄になり、見知らぬ男と床に転がる女性たちを次々に硝子の容器で殴り殺しました。
そんな健の様子を見て桃香は「私の幸せ取らないでよ!」と言い彼を包丁で刺しました。
刺された健は、そのまま桃香の頭部を殴り、殺してしまったのでした。
“不能犯”の尻尾を掴んだけれど…
公園での現場でも、殺し合いの現場でも、木島事件の時に防犯カメラに映っていた黒いスーツの男が目撃されていたことで多田はその男が関与していることを察します。
現場検証をしている時、窓の外に男がいました。
同僚の夜目美冬(矢田亜希子)とともに任意同行に応じるよう声をかけに行くと、男はあっさり同行し、取り調べに応じました。
男の名は宇相吹正(松坂桃李)。
このところ頻発している変死事件について、現場で必ず目撃証言が上がっていることを問いましたが、「やっていない」と答えるだけでした。
ここで宇相吹は夜目にマインドコントロールをかけたため、夜目からは宇相吹のことが少年に見えていました。
そして「虫がついている」と言われるままに腕を見ると細い虫が這っていました。
宇相吹は夜目の手を舐めようとまでしますが、虫に噛まれたと思い込まされた夜目は、任意同行だからもう帰っていいかと聞く宇相吹に対して頷き釈放してしまいました。
この時、取り調べに同席していた多田には虫が見えず、目の前で何が起こっていたのかよくわからずに不思議な気持ちを抱えていました。
その夜、夜目は入浴中に虫に噛まれた腕が膨れ上がった少年の幻想を見て、カミソリで腕を深く切って死んでしまいます。
夜目が取調室やお風呂場で見た“少年”は、鑑識の河津村宏(安田顕)の息子でした。
昔、夜目は河津村の息子に痴漢の容疑をかけたことがありました。
「やっていない」と言う少年に対して犯行を決めつけるような態度を取り、結果として少年は首を吊って自殺してしまったのです。
そのことを根に持っていた河津村が宇相吹に殺しを依頼し、夜目は自殺のような形で死に、純粋な動機ではない殺しの依頼をした河津村もまた階段から足を踏み外して転落して死にました。
仕事の帰りに多田は、過去に担当した事件の犯人で今は更生した川端タケル(間宮祥太朗)が勤める寿司屋を訪れました。
川端は“あの時多田が泣きながら自分を説得してくれたから今の自分がある”と言い、感謝の気持ちを述べました。
多田はその場で、最近は連続殺人事件以外に爆弾事件も多発しているという話を聞きます。
堂々と事件を起こす“不能犯”、宇相吹正
犯人は宇相吹だとわかっていながらも立証が不可能なことにより捕まえられない状況で、また事件が起こります。
木村優(真野恵里菜)は10歳の時に離婚した両親に、それぞれ引き取られた姉・夢原理沙(芦名星)を殺してほしいと宇相吹に依頼しました。
母親に引き取られた理沙は今や人気ジュエリーデザイナーとなり、父親に引き取られた自分は父の借金を返すために体を売る毎日でした。
ある時、たまたまネットで理沙の結婚を知り、お祝いの言葉と、自分の現状を手紙にしたためたのですが返事はありませんでした。
音沙汰のないまま理沙の店を訪ねた時、自分が妹の優であることに気付いたはずなのに無視をされ「体を売っている汚い女」だと思われたことが許せなかったのです。
理沙は宇相吹のマインドコントロールによって車で事故を起こしますが、死には至りませんでした。
運ばれた病院は理沙の婚約者である大学病院の医師が勤める病院でした。
多田は理沙が入院している病院へ行き、事件当日のことを聞けば当然のように宇相吹と接触があったことを知ります。
しかし、宇相吹が関わっているというのにどうして殺さなかったのか疑問に思いました。
宇相吹が理沙に接触した時に言ったのは「身近な人があなたを殺してほしいと依頼してきた」ということ。
そのことが頭から離れない理沙は情緒不安定になり、婚約者と仲好さそうにしている看護師に不信感を覚えます。
そして自分を差し置いて2人がデキている幻想に苛まれ、婚約者を殺してしまいました。
宇相吹は優に連絡をし、理沙の車のダッシュボードに入っていたものを部屋の届けておきましたと言います。
優が仕事を終えて帰宅するとドアの前に封筒のようなものが置いてありました。
その中には、結婚式の招待状と、いつか理沙に出した手紙の返事が入っていました。
理沙の「自分ばかり平穏に暮らしてしまってごめんね」という言葉と「今の仕事が嫌なら自分の店で働かないか」という誘いの言葉に、後悔した優は首を吊って自殺しました。
後日、取調室で理沙に押収した携帯を渡す多田。
そこには優からの留守電が入っていました。
理沙が婚約者を殺すように宇相吹に依頼してしまったという謝罪の言葉を聞いて、理沙は「あんな男のために優が死ぬことなかったのに」と泣きました。
多田の正義、貫く希望
理沙は、妹の仇を討つために宇相吹に会わせて欲しいと多田に頼みます。
多田は理沙を宇相吹のところに連れていきますが、宇相吹がコントロールできてしまう理沙に、彼は殺せませんでした。
理沙はナイフで自分の首を切り、そのナイフを宇相吹に握らせ「この男が私を殺したと言って、優と私の気持ちを繋いで」と多田に言い残して事切れてしまいました。
現場に応援で駆けつけた刑事たちに連行された宇相吹でしたが、真相は多田が知っているの一点張りで自供しません。
多田が「宇相吹が理沙を殺した」と言えば逮捕することができる。
しかし多田は嘘を言ってまで逮捕することが正しいとは思えませんでした。
結局多田は目の前で起きた本当のことを言い、宇相吹は釈放されました。
多田が少し前に起きた連続爆発事件に巻き込まれて重体の百々瀬が入院している病院を訪れ、これで本当によかったのか自責の念にかられていたところに川端がやってきました。
川端が「多忙で食事もろくにとれていないのではないか」と心配したフリをして持ってきたお弁当とお茶には睡眠薬が仕込まれていて、多田が目を覚ました時には車いすに乗せられ知らない場所にいました。
川端は、連続爆弾事件の犯人は自分で、更生したフリをしていたのは多田が絶望する姿を見たかったからだと言います。
そして多田の目の前に置かれた二つの携帯が爆弾の起爆装置であり、片方にかければ百々瀬のいる病室に仕掛けた爆弾が、もう片方にかければ側にある幼稚園に仕掛けた爆弾が爆発すると告げました。
どちらを爆発させるか問われているところに、宇相吹がやってきます。
川端の職場の先輩から殺しの依頼をされたからでした。
川端を救いたければ自分を殺すしかないと、また選択を迫られた多田は宇相吹を刺しました。
怯んだ川端を手錠で柱に繋ぎ、起爆装置の携帯を真っ二つに折って警察各所に連絡しながら多田は百々瀬の病室に向かいます。
多田は事態の周知で避難する病人たちの間を逆走しながら爆弾を回収して、屋上に置き、被害者を出す事なく収束させました。
一方自力で柱から抜け出した川端は公衆電話で爆弾を操作しようとしましたが、宇相吹が現れ足元に爆弾があるという幻想を見せられて死んでしまいました。
そして後日、多田と宇相吹が2人きりで対面した時。
「希望であんたを殺す」と宣言した多田に、宇相吹は「愚かだねぇ、人間は」と言い去っていきました。
【ネタバレ】『不能犯』感想
気になるダークヒーロー?宇相吹
これ、漫画が原作っていうことだけは知っていたんです。
でも設定とかはよく知らなくて、そんな状態で見ました。
なんか面白い作品ないかな~なんて数あるタイトルを眺めているなかで、なんとなく見てみたくらいの。
vito
めちゃくちゃ雑に説明するとしたら、宇相吹正が依頼を受けてドーン!する話です。
vito
あと松坂桃李の演技力についてスゴイスゴイと各所で言われているなか、ちゃんと見たことがないなぁというのもあり、どんなもんかなぁと思いつつで見てみて「なるほどなぁ」と思いました。
いろんな表情を持っている役者さんって魅力的ですよね。
そこまで詳しくない私としては爽やかな好青年的なイメージしかなかったので、こういう役をもっと見たいです。
vito
原作読んだらわかるのかな。
『不能犯』において宇相吹はダークヒーローなのかなぁ…彼なりの“正義”で動いているわけではないからヒーローではないのか。
vito
登場人物・キャストについて思うことなど
他のキャストに言及すると、多田は沢尻エリカでよかったです。
まっすぐな正義感と頑固なくらい希望を捨てない姿勢が、凛とした表情と声で表れていました。
そういう意味でちょうどよかった。
vito
地味にびっくりしたのが百々瀬なんですよね。
新田真剣佑ってお芝居上手いんだね…と思いました。
vito
あらすじでは割愛した、行きつけのラーメン屋さんでの場面が好きです。
あとは個人的に芦名星が好きなので、がっつりお芝居してるところが見られてよかったです。
vito
川端は…更生した人、っていう時点で爆弾事件の犯人かなって予想がついてしまって。
vito
もしくは直近で『脳男』を見ていなかったら気付かなかったかもしれない。
『脳男』でも更生した人間が結局罪を犯す描写があったのです。
vito
目の奥が見えない感じが怖い人だなって印象なので、更生したフリをしていた凶悪犯としてはぴったりだなって。
vito
『不能犯』まとめ
【鬼は外…客はウチ…】
映画『#不能犯』の大ヒット記念豆まきが、大阪の舞台挨拶で行われたらしいですねぇ…#松坂桃李(@MToriofficial )さん、#沢尻エリカ さん、#白石晃士 (@shiraishikouji )監督が映ってますねえ…クク…愚かだね、人間は… #不能犯 #愚かだね人間は #映画不能犯 #節分の日 pic.twitter.com/jrM1sy1pjM— 映画 『不能犯』 公式 (@FunohanMovie) February 3, 2018
以上、『不能犯』についてレビューしてきました。
- 次々起きる事件と、犯人はわかっているのに逮捕しようのないヒリヒリ感が楽しい!
- 殺しの依頼をする人、される人それぞれの事情や感情が紐解かれたときの絶望感にハマっていくこと間違いなし
- ちなみに“結局死んでしまった依頼者”は殺しの動機が純粋じゃなかったからそうなったんですよ、という話
- どういうことかちょっとわからないな!っていう人は是非映像で、その目で確認してください☆