『FUNAN フナン』あらすじ・感想!激動のカンボジアを生きた家族を描く感動のアニメーション映画【ネタバレなし】

『FUNAN フナン』あらすじ・感想!激動のカンボジアを生きた家族を描く感動のアニメーション映画【ネタバレなし】

出典:『FUNAN フナン』公式ページ

『FUNAN フナン』は、1970年代カンボジアのクメール・ルージュ(ポル・ポト政権下)の激しい抑圧下で、離れ離れになった息子を探すために奮闘する夫婦を描きます。

本作の監督であるドゥニ・ドーの母親の実体験を基にしており、第42回アヌシー国際アニメーション映画祭では見事グランプリを獲得しました。

クメール・ルージュとポル・ポトに関して日本では、ドキュメンタリーや近現代史を扱う番組で取り上げられることがありますが、一般的に詳細は知られていないことが多く、本作では政権下での過酷な実態と市民たちの抵抗を知ることができます。

ポイント
  • 自国民を苦しめるポル・ポト政権の過酷な政策
  • ドゥニ・ドー監督の母親の実体験を基にした作品
  • アニメーションで描かれる美しいカンボジアの風景

それでは『FUNAN フナン』をネタバレなしでご紹介します。

『FUNAN フナン』作品情報

映画『FUNAN フナン』

Les Films d’Ici – Bac Cinema – Lunanime – ithinkasia – WebSpider Productions – Epuar – Gaoshan – Amopix – Cinefeel 4 – Special Touch Studios (C) 2018

作品名 FUNAN フナン
公開日 2020年12月25日
上映時間 87分
監督 ドゥニ・ドー
脚本 ドゥニ・ドー
出演者 ベレニス・ベジョ
ルイ・ガレル
音楽 ティヴォルト・アジャマン

『FUNAN フナン』あらすじ【ネタバレなし】


1975年4月。

カンボジアの首都プノンペンが、現政権打倒のために勢力を拡大していたポル・ポト率いるクメール・ルージュによって占拠されます。

夫のクン、3歳の息子ソヴァンと一緒にプノンペンで幸せに暮らしていたチョウは、自身の家族や親類たちと共にクメール・ルージュの指示のもと、地方の農村へ強制退去させられることに。

その移動の道中でチョウたちは、ソヴァンとはぐれてしまいます。

ソヴァンを見つけられないままクメール・ルージュの政策である原始共産主義のもと、農村で過酷な労働をさせられるチョウたち。

映画『FUNAN フナン』

Les Films d’Ici – Bac Cinema – Lunanime – ithinkasia – WebSpider Productions – Epuar – Gaoshan – Amopix – Cinefeel 4 – Special Touch Studios (C) 2018

夫のクンは労働の合間にソヴァンの行方を何とか探そうとしますが、何も情報を掴めず2人はそれぞれ、別々の労働場所へと引き離されてしまいます。

そして、ソヴァンが見つからないまま2年近くが経過。

ずっと続いている長時間の労働は、チョウと共に働いていた実の母親や妹の精神や体力も蝕んでいきます。

そんな中、ようやくソヴァンの居場所の手がかりを見つけたクンがチョウに会いに来ますが、彼女もまた過酷な労働によりすでに衰弱しきっていました。

映画『FUNAN フナン』

Les Films d’Ici – Bac Cinema – Lunanime – ithinkasia – WebSpider Productions – Epuar – Gaoshan – Amopix – Cinefeel 4 – Special Touch Studios (C) 2018

クンの必死な介抱により何とか回復したチョウ。

彼女は最後の力を振り絞り、クンと共にソヴァンを探しに向かいます。

『FUNAN フナン』感想

『FUNAN フナン』で描かれるクメール・ルージュが支配していた1975年~79年という時代は、『ジョーズ』、『ロッキー』、『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』などの人気有名映画が、続々と公開された時期であり、比較的最近のように感じられます。

日本でも高度経済成長期が過ぎ、第二次世界大戦後からの見事な回復を遂げていた頃。

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まさかそれと同時期にカンボジアでは、階級差の無い農業をメインとする“原始共産主義”という理解しがたい前時代的な政策によって、国民の自由が奪われていたとは信じられない話ですが、全て実際に起こった出来事なのです。
映画『FUNAN フナン』

Les Films d’Ici – Bac Cinema – Lunanime – ithinkasia – WebSpider Productions – Epuar – Gaoshan – Amopix – Cinefeel 4 – Special Touch Studios (C) 2018

ポル・ポト率いるクメール・ルージュ支配下の時期を扱った作品には、アメリカ人ジャーナリストとカンボジア人の助手からみた混乱と恐怖を描くアカデミー賞受賞作『キリング・フィールド』、クレイアニメーションにより当時の悲劇を描く『消えた画 クメール・ルージュの真実』、ポル・ポト政権に蹂躙されたカンボジアの映画史を描く『シアター・プノンペン』などがあります。

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そして『FUNAN フナン』はよりミクロな視点で、ある家族の身に降りかかる理不尽と過酷な環境をアニメーションで描いているため、当時の多くの一般市民に何が起こったのかをより身近に感じることができる作品です。

自国民から全てを奪ったポル・ポトと原始共産主義

ポル・ポト(本名サロト・サル)は、カンボジアの比較的裕福な農家の家に生まれました。

ポル・ポト

出典:Wikipedia

フランスのパリへ留学中に共産主義に傾倒し、帰国後から政治活動に積極的に参加するようになります。

そして、カンボジア国内で拡大していく彼の政治勢力は、後にクメール・ルージュと呼ばれるようになりました。

ポル・ポト率いるクメール・ルージュは1975年4月に首都プノンペンを制圧後、身分階級差の無い農業中心の“原始共産主義”を目指そうとします。

そのため、資本主義である都市住民を敵視し、家や財産を取り上げて農村に強制移住させました。

そして、医者や教師、役人、国内の人気歌手までも粛清。

ポル・ポトがこのような極端な思想に至った背景には、本人自体があまり勉学の成績が良くなかったため、インテリ層に対する劣等感があったのでは?との説もあります。

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また、プノンペン制圧前のロン・ノル政権に対しては国民の不信感が非常に高かったため、それに反比例して当初はクメール・ルージュを支持し、組織に参加する国民が多かったようです。

そのため、『FUNAN フナン』にも“オンカー”という市民の生活を管理するクメール・ルージュの行政組織の人間たちが多数登場。

映画『FUNAN フナン』

出典:IMDb

クンのいとこであるソクという男性もオンカーとして活動しており、すっかり変わってしまったソクに対し、クンは信用できないと考えます。

しかし、当初は組織に忠実で厳しかったソクも、クンの息子を探す必死な姿に心を動かされ、危険を承知で彼に手を貸そうと行動しました。

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本作は異常な状況の中でも人間性を失わず、相手を思いやり、圧政に抵抗しようとした当時の人々の姿が描かれます。

そして、この話はドゥニ・ドー監督の母親の実体験がもとになっており、監督は実写映画よりも普遍的に描くことができると考えてアニメーションでの制作を選んだそうです。

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また、市民の殺害シーンや暴力シーンをあえて直接描かないことによって画面の隅で起こっている非人道的な行いを観客に想像させ、人間の狂気をよりリアルに感じさせました。

美しいカンボジアの風景と世界観を支える声優陣

『FUNAN フナン』では主人公たちの過酷な状況とは対照的な美しく穏やかなカンボジアの風景にも目を引かれます。

『怪盗グルーの月泥棒 3D』等を担当してきた、本作のアートディレクターであるミッシェル・クルーザは2回カンボジアを訪れ、様々な風景を記録しました。

夕日に輝く水田や巨木が立ち並ぶ雄大な自然、クメール王朝の遺跡などがアニメーションならではの美しさで描かれています。

映画『FUNAN フナン』

Les Films d’Ici – Bac Cinema – Lunanime – ithinkasia – WebSpider Productions – Epuar – Gaoshan – Amopix – Cinefeel 4 – Special Touch Studios (C) 2018

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カンボジアといえばアンコール・ワット遺跡群が人気の観光地ですが、他の一般的な自然の風景も見てみたくなります。

また、主人公チョウの声を『アーティスト』で第84回アカデミー賞助演女優賞にノミネートされた実力派のべレニス・ベジョ、夫のクンの声を『グッバイ・ゴダール!』等のルイ・ガレルが演じています。

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2人の出演作を観たことのある方は、本作の声の演技にも注目してください。

『FUNAN フナン』あらすじ・感想まとめ

いかがでしたか。

クメール・ルージュの悪政により、カンボジア全体で約170万人以上が犠牲になったといわれ、国の立ち直りには大変な時間がかかりました。

ポル・ポト自身は1998年に病死。

また、政権の高官が大量虐殺の罪で有罪判決になったのもつい最近の話であり、あまりに過酷な状況だったために当時を語りたがらない人も多く、政権崩壊から40年以上たった今でも全容がすべて明らかになったわけではありません。

そして、現在のカンボジアはリゾート地として日本でも人気が高く、プノンペンやアンコール・ワットのあるシェムリアップなど観光客が集まる場所には、当時の悲惨な面影は感じられません。

しかし、このような歴史は絶対に忘れてはならないものであり、旅行する際にはぜひその土地の歴史も学んでみてください。

要点まとめ
  • クメール・ルージュとカンボジア国民の抵抗を描く実録アニメーション
  • 過酷な場面の合間に入る癒しの自然風景
  • 周囲の人間に対する“疑心暗鬼”、“自己保身”の中に残る“良心”を描くコロナ禍の2021年こそ観てほしい作品