女優・松林うららが初の長編映画プロデュースに挑戦し、4名の監督による連作スタイルで完成した映画『蒲田前奏曲』が9月25日よりヒューマントラストシネマ渋谷、キネカ大森ほかで全国順次公開中です。
今回は、『蒲田前奏曲』の第2部「呑川ラプソディ」に出演されている福田麻由子さんと和田光沙さんにインタビューさせていただきました。
あの独特な空気感の「女子会」はどのように生まれたのか?撮影中の雰囲気などもお話いただきました。
映画『蒲田前奏曲』福田麻由子×和田光沙インタビュー
−−『蒲田前奏曲』の第2番『呑川ラプソディ』の出演はどういった経緯で決まりましたか?
福田麻由子(以下、福田)「穐山監督の『月極オトコトモダチ』という作品を見させていただいて、同作のトークショーに呼んでいただいた時に初めて穐山監督とお話させていただきました。穐山監督も私が出演している映画『疑惑とダンス』を見てくださっていて、たぶんその流れで思い出しいただけてオファーをくださったのだと思います。」
和田光沙(以下、和田)「私は、お芝居のワークショップで松林うららさんと初めてお会いして、その時に「私のプロデュースする作品に出てくれませんか?」とメッセージをいただきました。穐山監督とは今回の現場が初めてです。」
−−今作は独特な空気感の女子会が展開されますが、現場ではどのようなコミュニケーションを取られていましたか?
和田「女性同士で和気あいあいと楽しい現場でした。」
福田「演じていて『この人たち本当に仲良いのかな?』とは思っていましたけど(笑)、私たち自身の撮影は和気あいあいとしていてすごく楽しかった思い出があります。」
和田「カットごとに笑い合ってましたもんね。ただできあがった作品を見させてもらって、予想以上にギスギスしている雰囲気に仕上がっていたのでビックリしました。」
−−穐山監督いわく、あえて冒頭はみんな見栄を張っていて、だんだん皮を剥がしていくテイストで描きたかった意図があったとおっしゃっていました。
和田「その演出が知らないところでされていたので、すごいなと思いました。」
−−福田さんと伊藤沙莉さんは『女王の教室』(’05)でも共演されていましたが、久しぶりの共演で印象に残っているエピソードはございますか?
福田「実は『女王の教室』ぶりではなく、その3年後に『霧の火』(’08)という市原悦子さん主演のスペシャルドラマで、私が市原さんの幼少期を演じさせていただいて、沙莉が妹役で共演しているんです。沙莉は『女王の教室』からずっと尊敬の対象であり、一番話しやすい特別な存在でしたが、そこから一緒にお芝居するのは10年以上ぶりでも全然変わっていなくて。もちろん彼女の中で積み上げてきたものはたくさんあるので変化がないわけではないのですが、私が昔から尊敬していた部分や、彼女の魅力は何も変わっていなくてそれがすごく嬉しかったです。」
−−福田さんも伊藤さんも自分から距離感を詰めていくのが上手なイメージですが、どちらから声をかけたのですか?
福田「あれ、どっちだろう?」
和田「最初に現場に入られていたのは福田さんだったような。沙莉さんの方が後から入ってましたよね?」
福田「そうかも…。確か温泉のシーンが最初で、その後に沙莉が来て。」
−−伊藤さんだけ温泉に入ってなかったですもんね。
和田「そうなんですよ。だから入り時間が少し遅かったんですが、でもすぐに『久しぶり!』となって話が盛り上がっていたのを見ていました。」
福田「本当に不思議な関係です。頻繁に連絡を取る友達のような感じではないのですが、たまにふと思い出したりするし、会って話が詰まることもないし、本当に幼なじみという感じで私は勝手にずっと思っています。」
−−和田さんは劇中で唯一の既婚者で、いわばバランサーという立ち位置でしたが、キャラクター性や距離感など意識された点はございますか?
和田「女性にとっての幸せは何?と20代後半で立ち止まり、考えられるひとつの『結婚』という選択をした人の視点と、一方で『結婚』を選択した上での葛藤を出せたら良いなと思いました。そうすることで各キャラクターそれぞれの『女としての幸せ』が浮き立って来るんだろうなと思い、意識していました。」
−−福田さんは、麻里役を通して「自分が今まで知らなかった生き方をひとつ知りました」というコメントをされていましたが、どういった意味合いを含んでいたのでしょうか?
福田「私は基本的に麻里のような思想はあまり分からないタイプで、どちらかというと(伊藤沙莉演じる)帆奈寄りの思想なんです。ただ、私は共感できる部分がないとお芝居ができないので、私なりに麻里のことを考えた結果、今作の良いところは帆奈の生き方も麻里の生き方も否定するわけではなく、お互いの価値観を縛りつけていないところだと思いました。演じていても麻里の強さをすごく感じましたし、『何かを選択する』という点においては一緒じゃんと思えてスッと落ちてきました。」
−−何かを自分の意思で選択する意味では「何か」が違っていても価値観は一緒という意味で、役に共感できたということなのですね。
福田「麻里も周りに流されて生きているわけではなく、彼女は彼女なりに考えてプライドを持ってこの生き方をしているのが演じた感覚として分かったのも良い経験になりました。」
−−和田さんはあの女子メンバーの中では、どのキャラクターに共感する部分が強いですか?
和田「みんなそうかもしれないですけど、松林うららさんが演じたマチ子は自分の今の環境と同じだなと思いました。実際に私も20代の中盤の頃には同じ経験があって、同級生と集まった時に『まだ芝居続けているの?』というやり取りもありましたし、そういう意味ではマチ子に感情移入してしまう部分はありましたね。」
−−中盤以降で空気がガラッと変わる展開が待っていますが、「福田さんのもともと持っているふわふわした雰囲気があったから成立した」と穐山監督がおっしゃっていて、実際あのシーンまでの伏線は意図的に意識して演じられましたか?
福田「伏線の意識はありませんでしたが、麻里をクスッと笑えるキャラクターにしたいと思っていて、本人は至って真面目だけどいちいち帆奈の癇に障るような感じを作りたかったというのはあります。後半にイライラが爆発するところがあるので、楽しく見られる憎めない感じのキャラクラーになったらいいなと思いながら演じていました。」
−−『呑川ラプソディー』の中には色々なメッセージ性が詰まっていますが、お二人から見た本作の良さや見どころをお聞かせいただけますでしょうか?
福田「まず、企画そのものが挑戦的だし、本当に面白いなと思っています。フィクションですが、松林さんが自分の魂を削って挑まれている作品ですし、お芝居をやっている人はマチ子を他人事じゃなく思えるし、お芝居ではなくとも何かと戦っている人たちにもすごく刺さる作品だと思います。色々な場所で色々なマチ子の顔を4人の監督が撮っているので、それぞれ違うテイストで切り取られているのも新しいですし、クスッとできるようなユーモアに溢れた作品に仕上がっているのが見どころです。実際私は『呑川ラプソディー』の台本しか読んでいなかったので、完成した作品を見て『これがやりたかったんだ!すごい!』って感動しました。」
和田「松林さんの人を引っ張っていく力でひとつの形にしたことが凄いという気持ちです。本当にひとつの作品として質の高いエンターテイメントになっています。女優さんやそうではない方にとっても普遍的なテーマですし、出てくる男性キャストも嫌な奴に見えても人間味があってすごくチャーミングで、女性も男性も楽しんでいただける作品だと思います。」
−−女性向けの映画と捉えがちですけど、男性が見ても楽しめますよね。
和田「本当にそう思います。男性の方にも見てほしいですね。」
福田「私も男性の感想が気になります。女性は共感するポイントが多いと思いますが、男性が見ることで新しい思想が生まれると思うし、逆にその話を聞いて女性も新しい発見が生まれると思うので、ぜひ女性の方も親しい男性を連れて見に行ってほしいです。」
メイクアップアーティスト / 藤原玲子
ヘアスタイリスト / YAMA
衣装協力 / Ray BEAMS
インタビュー・構成 / 佐藤 渉
撮影 / 白石太一
『蒲田前奏曲』作品情報
出演:伊藤沙莉、瀧内公美、福田麻由子、古川琴音、松林うらら、近藤芳正、須藤蓮、大西信満、和田光沙、吉村界人、川添野愛、山本剛史、二ノ宮隆太郎、葉月あさひ、久次璃子、渡辺紘文
監督・脚本:中川龍太郎、穐山茉由、安川有果、渡辺紘文
企画:うらら企画
製作:「蒲田前奏曲」フィルムパートナーズ(和エンタテインメント、ENBUゼミナール、MOTION GALLRY STUDIO、TBSグロウディア)
特別協賛:ブロードマインド株式会社、日本工学院
配給:和エンタテインメント、MOTION GALLRY STUDIO
公式サイト:https://www.kamataprelude.com/
公式Twitter:@kamataprelude
第2番『呑川ラプソディ』あらすじ
監督・脚本:穐山茉由
出演:伊藤沙莉、福田麻由子、川添野愛、和田光沙、松林うらら、葉月あさひ、山本剛史
アルバイトをしながら女優をしているマチ子。
大学時代の友人5人と久々に女子会をするが、独身チームと既婚チームに分かれ、気まずい雰囲気に。
そこでマチ子は蒲田温泉へ行くことを提案する。
5人は仕事、男性のことなどを話し合い、次第に隠していたものが丸裸になっていく。
9月25日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷・キネカ大森にて他で全国順次公開中!