ごきげんいかがでしょうか。
ねお
皆さん、フランス映画は好きですか?
この記事は、「フランス映画」と聞いて“綺麗で可愛らしい街並み”“お洒落な恋人たちの恋愛物語”みたいな想像をした人を積極的に裏切っていく「フランス映画入門」を目指して執筆しました。
例えば、『ミッドナイト・イン・パリ』やディズニー・ピクサーの『レミーのおいしいレストラン』などでは“綺麗でお洒落なフランス”が描かれていますが、どちらも「フランスを舞台にしたアメリカ映画」です。
フランス人の監督が、フランス人キャストを起用して制作した映画には、よりディープなフランス・パリの世界が広がっています。
フランス映画の魅力を知ってもらいたい!ということでおすすめのフランス映画を3作品ピックアップしました。
ぜひチェックしてみてください。
- 『ポンヌフの恋人』…路上生活者の男女の美しく退廃的な純愛物語
- 『若い女』…すべてを失った30代前半女性のパリでの生活をユーモラスに描く
- 『プレイタイム』…単純明快なコメディと突出した芸術性が融合した傑作
『ポンヌフの恋人』
1991年に公開されたレオス・カラックス監督による長編作品。
パリのポンヌフ橋を舞台に、天涯孤独のホームレスの青年アレックスと病を患い放浪している女画学生ミシェルによる純愛を退廃的な美しさで描いた作品です。
ちょっと考えれば驚くことではないのですが、パリのような大都会であれば当然住む人皆がお洒落な“パリジャン”であるはずもなく、貧しい地域でギリギリの暮らしをする人々がいます。
貧富の差は名作フランス映画『最強のふたり』でも鋭く描写されていますが、本作『ポンヌフの恋人』冒頭のホームレスの収容所のシーンなどでは、より生々しく冷たく社会の最底辺に生きる人々が描かれています。
ねお
酒に酔い車に片足を轢かれたアレックスと、失明の危機と失恋に絶望し放浪しているミシェルが偶然出会い、アレックスが生まれて初めて“恋心”を抱くところから物語は始まります。
希望の光が射してはまた沈むような薄暗いストーリー展開だからこそ、不意に訪れる美しい瞬間が見事に際立ちます。
二人の生活の場でもある廃れたポンヌフ橋で、フランス革命200周年を祝う派手な花火と音楽をバックに踊り狂うシーンは本作のハイライトであるだけでなく、映画史に残る圧倒的な美しさです。
『若い女』
2018年に公開されたレオノール・セライユ監督による長編作品。
本作でカンヌ国際映画祭のカメラドール(新人監督賞)を受賞しています。
恋人と別れ、お金も仕事も住む場所も失った30代前半の女性、ポーラがパリを彷徨い自立していく姿をユーモアたっぷりに描いた作品です。
恋人に頼りきりの生活が突然打ち切られ、着の身着のまま大都会パリに放り出されて自暴自棄、なんとか住み込みのベビーシッターとショッピングモールの下着屋での仕事にありつき満身創痍で新しい人生を歩み出す。
文字にすると美しさとか可愛さとは無縁な荒っぷりですが、実際に映画を観ればこのポーラという女性が持つ独特な魅力に徐々に惹き込まれていくはずです。
その場しのぎの嘘で厳しい現実を乗り越えていく破天荒な性格でありながら、“一期一会”的な人との出会いを大切にし、(雑然とした都会では嘘くさい響きの言葉ですが)人の優しさとか温もりとかを信じているような、心の奥底には確かに輝きを持っている人なのです。
ねお
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『プレイタイム』
1967年に公開されたジャック・タチ監督による長編映画。
ガラス張りの高層ビルが立ち並ぶ近代化したパリで、タチ本人が演じる「ユロ氏」がアメリカからの団体観光客とともに右往左往する作品です。
『ミスター・ビーン』シリーズにも多大な影響を与えたとされる“言葉を介さない笑い”と、資本主義や物質社会に対するアンチテーゼが融合したシニカルで芸術的なコメディ映画です。
ねお
パリ郊外のヴァンセンヌに作られたモダニズム建築群からなる巨大セット、通称「タチ・ヴィル」。
極度に効率化、量産化された歪な社会に振り回される「ユロ氏」を面白おかしく描きつつも、背景に映る「タチ・ヴィル」の外観や内装はどのアングルでも洗練された印象を受ける緻密な設計で、単純に“資本主義の批判”というスタンスの作品ではありません。
物語の起承転結ではなく、場面ごとの鮮烈な“絵”で観るものに強いインパクトを与えるという、映画だからこそ可能な表現の最高峰の一つを観たことを実感しました。
明確なメッセージ性はないものの、きっと観た人それぞれが、その人なりの解釈でメッセージを受け取ることになる作品。
ねお
フランス映画のすゝめ:まとめ
世間が想像する理想化された観光都市とは異なる“リアルなパリ”を描く映画をご紹介しました。
フランス映画にしかない“美学”を感じられる3作品、新しい刺激を求めている方におすすめです!